深海の都の話   作:林屋まつり

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五話

 

 目を、あけた。

「制空権の争い、……特に気にしなくていいというのも楽ですね。

 もう、気にする余裕はありませんが」

 空には相変わらず莫大量の艦載機が待っている。数では黒、質では白。状況は五分。

 自分が介入すれば戦局は傾くだろう。それにより制空権を得られるかもしれない。

 けど、もう、そんな余裕はない。

「そうですね。

 この状況で大局のために力を割く。……それは、面白くありません」

 眼前にいる、一人の艦娘。

 第一航空戦隊の同僚。加賀がいる。

 

 加賀さん、と。赤城は呼びかけようとする。けど、

 軽く首を横に振る。代わりに、空に向かって矢を放つ。

 加賀は眉根を寄せる。放った矢は艦載機となり、辺り一帯を爆撃。周囲の深海棲艦を轟沈する。

「仲間、と思っていましたが?」

「違います。

 あれは呪詛の塊、特に仲間意識はありません」

 ぽっかり空いた場所。そして、赤城は妖精を通じて周囲の深海棲艦をさらに遠ざける。

「深海棲艦を制御できるのですね」

「妖精さんを通じれば、ある程度は。

 元々、深海棲艦も《がらくた》が構築した存在ですから」

 妖精は《がらくた》の神使。呪詛の出力元である《呪詛の御社》を通じてなら、こちらの指示を通せる。もっとも、自分の近くのみ、そして、行動範囲の制限や加害対象の指定くらいだが。

 そして、加賀にとってその事実はどうでもいい。要は、

「では、赤城さん。

 貴女との勝負に余計な気遣いは不要ですね。それは幸いです」

「そうですね。……では、」

 赤城の言葉に、加賀は頷く。二人は弓を向ける。矢を構える。

「「始めましょう」」

 そして、最強と名高い一航戦、その戦いが始まった。

 

 加賀は前へ、前進しながら艦載機を解き放つ。

「来ましたか」

 応じる赤城は副砲を放つ。砲撃は真っ直ぐに加賀に向かう。回避、赤城も当たるとは思っていない。

 加賀は自身の周囲を飛行する艦載機に指示を飛ばす。銃撃。

「そう、きましたか」

 空へと向けず、加賀は艦載機を自分の周囲に展開する。艦載機からの銃撃。そして、加賀自身も機銃を使い赤城を狙う。

 完全に、一対一。制空権を掌握して僚艦の援護するという空母のあり方を無視した戦い方。おそらくは、

 私と戦うためですか、と。赤城は思う。

 意識しすぎ、かもしれない。けど、今はそれでもいい。

 艦載機、そして、加賀自身の銃撃を回避しながら、赤城は弓を引く。

「爆装、粉砕しなさい」

 直上に向かって放つ。直後、向きを変えて副砲で砲撃。加賀は回避。けど、加賀の周囲にある艦載機を粉砕。

「上」

 加賀は眉一つ動かさず弓を引く。矢を放つ。

 上、赤城の放った艦載機は直上から迫る。爆撃、下から迫る加賀の艦載機は爆撃を銃撃にて爆砕。

 赤城の艦載機は急旋回して主の元へ、そして、それを追撃する加賀の艦載機。

 赤城は砲撃しながら甲板を向ける。間に合った。

 間一髪、赤城の艦載機たちは甲板を滑るように着艦。同時に矢の形となり赤城は身を低くする。

 頭上を薙ぎ払う銃撃。身を低くしながら、幾千とやり体に染みついた動作をおこなう。

 つまり、矢を矢筒に回収、と同時に引き抜く。番える。

 この一連の動作に加賀は目を見開く。回避動作中、そんな不安定な姿勢なのに、着艦、そして、発艦の準備が異様に早い。

 赤城は姿勢を正す、どんな姿勢であれ発艦出来るが、加賀の艦載機は通過した。なら、確実に射抜く。

 けど、

「簡単にはいきませんか」

 加賀は機銃で牽制。直撃が難しい機銃の掃射は、驚くほどの正確さで赤城の弓を狙う。

 当然、弓が破壊されれば艦載機を飛ばす事は出来ない。それでも副砲で戦うつもりだが、戦力の低下は確実で、だから、回避。しながら発艦。

「一挙動分、遅れましたね」

 が、矢を番えているのは加賀も同様。そして、矢が放たれる。

 赤城の放った矢は艦載機と変化、加賀の艦載機を破壊しようと散開。そして、

「え?」

 加賀の放った矢は変化せず、そのまま赤城に直撃。

 当たったのは体。多少の衝撃はあるが元より艤装をまとった赤城の装甲は正規空母に等しい、ただの矢が当たったところで損傷にもならない。

 けど、

「相手が自分の思い通りに動く。自己の想定通りと思う。

 最悪の慢心ね」

 鋭い声。赤城の放った艦載機は、先に放っていた加賀の艦載機と空戦を演じ、想定外の一撃に動きを止めた赤城は、すでに照準を合わせている加賀の機銃から逃げられず、

「くっ、……つ」

 機銃が全身を叩く。移動しながら掃射範囲から逃れ、同時に副砲を放つ。

「っと」

 加賀は回避。回避しながら甲板を掲げ着艦。それを矢筒に叩き込み迫る艦載機を機銃で迎撃。

 撃墜が重なる。赤城は艦載機に戻るように指示。加賀の放つ機銃を回避しながら艦載機は赤城の元へ。

 矢を矢筒に戻し、副砲で砲撃。

 加賀は砲弾を右に回避、そのまま赤城の横まで疾走。

「追いかけっこ、ですか」

 付き合いましょう、と赤城は艤装を起動する。すでに真横に位置取り、向き直る加賀に向かって駆け出す。前へ、進み、加賀が機銃を構えたのを見て右へ。

 赤城がいた場所を機銃の銃弾が通過。いくつか当たるが、大した損傷ではない。加賀の方を向いて砲撃。

 加賀は前に移動して砲弾を回避、同時に赤城を追いかける。

 追撃と迎撃、移動を重ねながら機銃と副砲で相手を狙う。

 艦載機の発艦には矢を抜いて弓に番え、構えて放つという動作が必要になる。赤城も加賀も現状でそれは可能だが。

 とはいえ、砲撃戦の最中では放った艦載機も即座に撃墜される。それは、妖精さんにも申し訳ない。…………必要と判断したら躊躇なく実行するが。

 加賀は銃撃、けど、赤城は回避。

「思ったより速いですねっ! 元巡洋艦の本領発揮という事ですかっ!」

 機銃を回避されながら、加賀は笑みで告げる。同時に放たれた砲撃が当たる、が。眉根を寄せるだけで移動続行。

「そちらこそ、意外と硬いですねっ! 流石は元戦艦ですねっ!」

 赤城は笑い加賀は笑う。笑いながら攻撃と回避を繰り返す。

「そう、私は元加賀型戦艦っ!

 だからですかっ! こうして、砲撃を交わす事さえ、楽しいと思えるのはっ!」

「好戦的なのですねっ!

 もっとクールな人と思っていましたがっ!」

「加賀型戦艦としての性格でしょうっ!

 正規空母はもっとクールなのかもしれませんねっ!」

 楽しい、と。赤城は内心、深いところで同意する。

 元より戦闘を楽しむ性格ではない。確かに強くはなった。けど、それはただ単に彼女と並び立ちたいと、そう思ったから。

 だから、少し戸惑う。確かに、今、加賀と戦う事を楽しい、と思ってしまっているのだから。

 やっぱり、私も軍船ですね。と、苦笑。

 戦う事を是としている。なら、

「負けるのは、悔しいですね」

「そう、敗北を是とするなどあり得ません。

 大切な人のために戦う。誰かと並び立ちたいがために戦う。平穏を護るために戦う。それもいいでしょう。

 けど、戦うなら、前提で勝利をしなければなりませんっ!」

 吼えるように応じる。そう、負けるつもりはない。…………けど、強いですね、と加賀は思う。案の定だが、赤城の錬度は自分を超える。

 自分より強い、そう確信している。追撃と迎撃、砲撃と銃撃を重ね。無理を承知で艦載機を飛ばす。空母としてではなく、加賀として、全力を尽くして赤城と戦う。……だからこそ解る。けど、

 負けるのは面白くない。

「ごめんなさい、赤城さん」

 艦娘である加賀は、目の前にいる赤城とは初対面。ただ、あきはから指輪を持った赤城がいる、と聞いていた。その時、横須賀鎮守府の吹雪が一緒にいたので、あるいは横須賀鎮守府所属では、と推論はしていた。

 ただ、それだけ。確かに一航戦の同僚として感じる親しみはあるけど、それは強いて無視していた。

 だから、赤城との勝負にこだわる必要はない。尊治に対する義理立てならば、後ろの空母三人娘と一緒に制空権の取り合いをしていた方が遥かに有意義だろう。

 けど、

「これも、加賀だから、ですかね」

 初対面であるにもかかわらず、ここまで、赤城を意識してしまうのは。

 自分の想いに巻き込み、付き合わせた事、申し訳ないと思うが。それでも、この選択を否定する事だけは、出来ない。

 だから謝り、けど、動きは止めない。

「ねえ、赤城さん」

 機銃を回避した艦載機を回収する赤城。その間にも副砲で牽制する。隙は、ない。

 加賀は副砲を回避しながら矢を抜いて構える。発艦。

 移動中の発艦、艦載機は大きく旋回して赤城に迫る。けど、その頃には赤城も矢を構えている。

 迎撃の艦載機。そして、赤城は加賀自身を副砲で狙う。

 戦闘中、……慢心、気を抜けば即座に撃沈されるだろう。その中で、

「楽しいですか?」

 応じる言葉はない。副砲を放ちながら、赤城は鋭い視線を上に向ける。

 撃ち合う艦載機。状況は五分。さらに飛ばそうとしたのか、弓を構える。が、加賀はそれを許さない。矢を抜く。放つ。

 放たれた矢は艦載機とならず、赤城の弓を穿つ。それで破壊される弓ではないが、打撃に姿勢が揺れ、発艦に失敗。

 加賀は艦載機に帰還を指示。後ろに下がりながら甲板を掲げる。が、赤城の艦載機はそれを追撃する。

 させない。機銃による牽制で艦載機を引き剥がす。けど、

「つっ?」

 赤城の副砲が火を噴く。甲板を掲げ、直撃。

「く」

 甲板に異常はない。着艦は成功、だが。加賀は眉根を寄せる。

 副砲は、痛いですね。と、

「追撃しますっ!」

 自分と、放った艦載機に言い聞かせるように赤城は声をあげる。

 艦載機は旋回しながら、再度加賀に迫る。赤城は弓を構える。けど、

「させませんっ」

 加賀の機銃が赤城を銃撃。赤城は発艦を諦め、加賀は弓を引く。

「艦載機、発艦」

「え?」

 赤城の放った艦載機は容赦なく加賀を銃撃している。けど、加賀は眉を寄せるだけで耐えきり、発艦。

 艦載機が飛翔する。加賀に向かって銃撃を行っていた艦載機は、横から放たれる加賀の艦載機による銃撃で撃墜。艦載機を撃ち落とし、加賀の艦載機は彼女の周囲を旋回。そして、

「突撃します。

 全機、援護を」

 言葉とともに加賀は赤城に向かって駆け出す。彼女の周囲を艦載機が舞う。

 加賀の機銃、そして、艦載機の銃撃。そのすべてを赤城に叩きつける。

「出来ますか、ね」

 迫る銃弾を見据え、赤城は一息。覚悟を決める。

 回避、では遅い。加賀はともかく銃撃する艦載機を振り切る事は出来ない。

 副砲では当てられない。狙いを定めた瞬間に散開されれば、追いかける事は出来ない。

 だから、

「くっ」

 銃撃され、けど、真っ直ぐに加賀を見据える。

 負けない、と。

 

 手を伸ばしても、届かない。

 必死になって走っても、追い付けない。

 並び立ちたいのに、…………彼女は、ずっと、ずっと先にいる。

 けど、せめて、

 

「私の誇りにかけて、負けるわけには、いきませんっ!」

 

 負けない。

 彼女が作った平穏を妨げるのなら、絶対に、負けない。

 

「いい覚悟です」

 銃撃されながら艦載機を放つ。攻撃を受けながらとは思えない綺麗な発艦。

 艦爆。それは加賀の艦載機が放つ銃弾を回避しながら、真っ直ぐに突き進む。

 加賀は機銃掃射。艦載機も、旋回をしながら赤城の艦載機を追撃。けど、

「させませんっ!」

 掃射をする加賀を砲撃。加賀は姿勢を崩し、赤城の放った艦載機の爆撃が直撃。

「つ、……う」

 膝をつく、条件反射で甲板は護ったようだが。それでも彼女自身はぼろぼろで、戦えるようには見えない。

「退いてください。

 戻るのなら、追撃はしません。深海棲艦にも、手出しはさせません」

 けど、続けるなら相手になる。と、赤城は油断なく矢を手に取る。

「退け、ですか」

「また、いつでも相手になります。

 加賀さん、だから、この場は退いてください」

 加賀は俯いたまま顔をあげない。赤城は言葉を募らせる。

 赤城には加賀に恨みはない。……むしろ、感謝をしているくらいだ。

 いろいろ言われたが、結果として自分は大切にしたい事を自覚した。胸を張ってこの場に立つ理由を知る事が出来た。

 そのきっかけが彼女なら、邪険に思う理由はない。

 だから、見逃す、戦うならいつでも相手になる。なにかあったら庇おうと考えている。

 加賀は俯いたまま、顔をあげない。口を噤んでいる。……………………長い沈黙、赤城は不安に思い、加賀を覗きこむ。

 ふと、声。

「赤城さん、……教えてください」

「なんですか?」

「楽しかった、ですか?」

 問い。赤城が応じる前に、加賀は言葉を続ける。

「赤城さん、私は、ここにいる資格は、ないのです」

「ない?」

「あの吹雪が構築した平穏も、私には興味がありません。

 壊そうとも思っていませんし、護ろうとも思っていません。……正直、どうでもいいと思っています」

 それは、確かにここにいる資格はないだろう。皆、その平穏を構築する鍵、《呪詛の御社》を護るか、あるいは壊すためにいるのだから。

「なら、なぜ?」

 赤城は問う。問いながら思い返す。そう、

「なぜ、加賀さん。貴女は戦いに来たのですか?」

「私はね。赤城さん。

 提督に、捨てられたのです。なにも持たない、轟沈前提の出撃を命じられてね。……まあ、大した規模の泊地でもありませんでしたから、私の負担を維持できなかったのでしょう。けど、それはいいのです」

 捨てられた。その事を加賀は躊躇なくどうでもいいと切り捨てる。

 そう、大切な事はそれではない。

「かつて、戦艦加賀は条約によりなにもせず廃艦となりました。そして、艦娘加賀は出撃する事もなく捨てられました。

 戦うために存在する軍艦の私が、戦う事さえせず捨てられる? そんな事、認めるわけにはいきません」

 だから戦う、と、それこそが己の存在する意味なのだと、加賀は告げる。そして、赤城こそその相手にふさわしい、と。

 告げる。告げて、真っ直ぐに、最高の敵と見定めた彼女を見る。

 自身は傷を負い、そして、矢を向けられている。すでに赤城の勝利は確定で、それでも、その視線は不屈を訴える。

 だから、……加賀は、口の端を吊り上げる。

「赤城さん、貴女との戦い。

 この身滅ぶまで、退くという選択肢はあり得ませんっ!」

 足を跳ね上げる。弓を蹴り上げる。矢を蹴り飛ばす。

「つっ?」

「例えっ! それがどのような手段を用いてもっ!

 そう、今この瞬間、貴女と相対する時間が刹那でも続くのなら、いくらでも足掻きますっ!」

 足を跳ね上げ、腰を落とす。後ろに向かって跳躍。距離を離す。

「加賀さん」

 戦う、と。彼女は視線で不屈を伝える。撤退など、あり得ない、と。

 その結果この身を滅ぼす事になろうとも。…………赤城は、その視線を受けて、蹴飛ばされた矢を手に取る。弓に番える。

 

 口元には、笑み。

 

「なら、応じますっ!

 そして認めましょうっ! 加賀さんっ! 貴女と本気で撃ち合うのは確かに楽しかったですっ!

 私にとって戦いは吹雪さんと並び立つための理由でしかありませんでしたっ! けど、……今、貴女と相対して初めて、本気で勝ちたいとっ! 敵であるあなたを超えたいと、本気で思っていますっ!」

 そして、矢を放つ。矢は艦載機となり、加賀に機銃を向ける。

 その結果を見届ける事もせず赤城は加賀に迫る。副砲を向ける。

「んっ」

 加賀は艦載機を見据える。銃撃を半歩移動して回避。髪を銃弾がかすめる。

 ぎりぎりの回避。内心で冷や汗。啖呵切って見せたが、爆撃は思った以上に体に痛みを残している。

 けど、

「それでこそですっ!」

 これも戦いの結果だと思えば、悪いとは思えない。

 痛覚は体を縛る。代わりに、思考を加速させる。

 このまま、艦載機をやり過ごす。後ろに飛翔し、旋回してさらに銃撃を重ねるだろう。

 同時に前から赤城が迫る。どうするか。

 さらに一歩、すぐ横を艦載機が通過。体を反らし矢を放つ。迫る赤城を迎撃。同時に、

「追撃します」

 振り返る。旋回する艦載機を機銃で迎撃。炸裂の音が連続する。

 撃墜、そのまま前へ、加賀の背からも炸裂の音が連続。同時に、砲撃の音。

 赤城迎撃のために放った艦載機は撃墜されたらしい。疾走する加賀を赤城は副砲で追撃。

 けど、

 不利ですね、と。この状況を認識。傷はこちらの方が深い。副砲で穿たれた傷がずきずきと痛む。

 ならどうするか。ぎりぎりまで、速度を落とす。音で砲撃位置を関知、そして、回避できるぎりぎりの距離まで、追撃する赤城を近づける。そして、

 今、と。加賀は素早く矢筒から矢を引き抜く。そして、放り投げる。

「え?」

 投擲ではない。ただ、軽く後ろ手に放り投げる。けど、

「つっ?」

 不意に眼前に現れた矢に、赤城は反射的に速度を落とす。けど間に合わない。当たる。

 当たったところで痛みはない。けど、

「本当に、なりふり構いませんねっ!」

 視界がふさがれ、追撃の手が緩む。その隙に加賀は回頭。赤城に機銃を向けて掃射。

「私が今相対している貴女が、なりふり構う程度の実力であるとっ? それが己への評価なら腹立たしい限りですっ!」

「称賛と受け取りましょうっ!」

 機銃掃射を耐え、赤城は声をあげる。加賀は微笑し、矢を構える。

 赤城は強い。なりふり構うなどもってのほか、全力、全霊、あらゆる手段を使う。

 そして、それは赤城も同様。

 …………この人を相手に、ここまで、戦える。戦ってる。

 今まで演習を重ねてきたどの空母型の艦娘より強い。その実力は元より、全霊を尽くすその意思も、戦意も、ずっと、ずっと、強い。

 かつての、最強と謳われた一航戦の旗艦。そんな、過去の誇りではない。

 今、確かにここにいる艦娘、赤城が得ている誇り。そんな、あまりにも強い彼女と渡り合えているという、確かな誇り。

「加賀さん、貴女は、私が今まで戦ってきたどの空母より強いです」

「どの艦娘より、……だったら嬉しいのですけど」

「…………えーと、ごめんなさい」

 軽く俯く加賀に赤城は苦笑。強い、けど、やはり吹雪を筆頭とする大将代行達には及ばない。

 けど、

「そんな、強い貴女とここまで戦える。

 とても誇らしいです。加賀さん」

 強く、そして、柔らかく微笑む赤城に、加賀は軽く頬を染め、微笑。

 

 ずっと、こうして戦っていたい。もっと、もっと、こうしていたい。

 ……貴女と出会い、そして、こうして戦えている事、それが私の誇りなら。

 

 赤城さん。と、声。

 加賀さん。と、声。

 貴女と、こうして戦う事が出来て、本当に、

「高揚しますっ!」「上々ねっ!」

 声、声とともに二人は弓を構える。矢を番える。戦意を自らに叩き込み、そして、

 矢を放った。

 

 そして、…………

 

「……いつか、また、戦いましょうね。

 加賀さん」

 

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