深海の都の話   作:林屋まつり

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九話

 戸が叩かれた。顔をあげる。

 家でぼんやりぼーっとしていたから、来客は、まあ、ちょうどいいかな。

 暇だし。

「はいはい、っと」

 戸を開ける。あ、「言仁」

「えーと、てーとくさんの居場所がわかったよ」

「え? ほ、ほんとっ!」

「うん」

「…………どうしたの?」

 なにか、浮かない表情の言仁。もしかして、

「てーとくに、なにか、あったの?」

「上がるね」

 有無を言わさず家の中へ。あまり、付き合いはないけど。言仁らしくない。

 だから余計に不安になる。言仁に続いてリビングへ。一息。

「秋月健也代将、彼は艦娘派遣依頼を行った春日清海少将のもとへ、依頼の報酬を受け取りに向かった際、春日少将に暴行。

 その場にいた春日少将の秘書艦、曙に止められて未遂に終わったけど、暴行は暴行だからね。春日少将の基地に拘留されている」

「…………え?」

 てーとく、が?

「なお、一般的な拘留の期間は半月から一月。

 各泊地で事前申請もなしに提督が一週間指揮をとれない状況が続けば、その提督は管理能力不足として解雇、泊地は解体だそうだよ」

「う、……そ」

 あそこが、なくなっちゃうの?

 天龍と喧嘩して、龍田に天龍と一緒に怒られて、てーとくに助けてもらって、……けど、そんなてーとくも一緒に龍田に怒られて。

 龍田とお勉強をして、途中で寝ちゃって怒られて、天龍と眠くなるよなってこっそり頷きあって、不貞腐れた龍田を二人で宥めて。

 秘書艦として苦手な書類仕事をしてて、全然進まなくて、龍田に助けてもらって、てーとくと三人で夜更かしして、そのまま龍田と一緒に寝て、…………そんな、宝物みたいな思い出がたくさんあるあの場所が、なくなっちゃう、の?

 てーとく、解雇されちゃう、の? 国を護るんだって、目を輝かせて、たくさん頑張ってたのに、みんなの事が大切だって、それが一番だって、いつも、いつもたくさん頑張ってたのに。

 

 全部、なくなっちゃう、の?

 

「そんなの、いや、よ」

 絶対に、いや。

「そうだよね。思い出の場所がなくなっちゃうのは、寂しいよね」

 ぽつり、声。同情してるの? …………違う。

 違う。言仁の顔を見ればわかるよ。言仁も、きっと、…………だから。

「言仁、私、てーとくに会いに行く」

 きっぱりと、告げる。

 死者が生者にあうのはよくないって言ってたけど、けど、それでも、

 絶対に、会いに行く。てーとくのこと好きだから。

 方法なんてわからないけど、それでも、絶対に会いに行く。

 きっ、と言仁をまっすぐ見据える。……言仁は、溜息。

「言っても聞かないよね。困った娘。

 じゃあ、島風。二つ、どちらを選ぶか決めて」

「うん?」

 二つ? 言仁は指を一本立てる。

「一つ、僕はこのまま帰る。君は好きにしていいよ」

 そして、もう一本。

「一つ、僕がその基地まで案内する。

 ただし、会って終わりだよ。また、元通り一緒に暮らすなんて事を考えてはいけない、し。その場合は僕が連れ戻す」

「…………意地悪」

 この都から出る方法、知らないの解ってるくせに、……それに、基地の場所も、解らない。

 あの時調べたのは、私のいる泊地からの道のりだけだった。苦笑。

「意地悪、そうだね。だから僕を嫌っていいよ。

 けど、死者が生者に会うんだ。ある程度の事は覚悟してもらわないとね」

「うー」

 ……会うだけ。…………視線を下に、今の、自分の足に視線を向ける。うん。

 この性能は解る、悔しいけど、前以上に早く動ける。だから。

「わかった、わよ」

 出し抜いてやるんだ。生者だろうが死者だろうが、関係ない。

 私は、てーとくの傍にいるんだ。

 

//.龍田

 

「やっぱり、そうなるわよねえ」

「ったりめぇだろうがっ!」

 そのまんま、新田中将から聞いた事を伝えたら、案の定、天龍ちゃんが切れた。

 これはあ、頭を下げに行く、なんて流れにはならないわね~、…………けど、……同感。だから、

「それじゃあ、殴り込みと行きましょうか」

 絶対に、提督を取り戻す。その決意、天龍ちゃんと同じ。

 だから、私達は立ち上がった。

 

//.龍田

 

//.富山基地

 

「このまま、何事もなければいいわね」

 飛鷹が艦載機からの報告を聞きながら呟く。同感だ、と、那智は頷く。

「個人的にはなにかあった方がいいわ。

 はあ、夜に起きてるのはなんか、慣れないわ。こんな生活、早く終わって欲しいわ」

 山城は春日清海からの差し入れ、眠気に効くらしい、高濃度カフェインのドリンクをストローで少しずつすすりながら呟く。

「眠くない?」

 扶桑の問いに「大丈夫」と応じる。

「ま、こういう日々もたまにはいいんじゃない?」

 サンドウィッチを食べながら足柄。「遊んでいるわけではないぞ」と那智の言葉に手を振って応じる。

 ふと、飛鷹は、

「ねえ、私達、不幸なの?」

「ええ、私は不幸よ」

 どや顔で即答する山城は満場一致で無視。無視された事で山城はへこむがそれも無視。

「どうしたの? いきなり」

「いや、なんでも提督、ブラックがどうのこうの言われたらしいわ。曙から聞いたけど。

 それで、私達って不幸なのかなって。……私は元々ここで建造されたし、他は知らないからよく解らないんだけど」

「ふふ、そうね。私は不幸よ。

 前の泊地では幼女じゃなければだめだ、とかすっごい事言われて追い払われたし」

「…………なあ、山城。

 前々から不思議だったんだが、その泊地、やっていけてたのか? 駆逐艦だけとか、普通に考えたら詰んでいるのだが」

 那智の不思議そうな問いに、山城は顔をあげて「やっていけてないわよ。資材空っぽだし」

「なんでそんな偏った嗜好の提督がいるのだ?」

「知らないわよそんなの。

 そもそも、提督ってどうやってなるの?」

「試験、…………が、あったと思ったわ」

 飛鷹は首を傾げて呟く。あまり説得力はない。

「なんと言うか、緩すぎるのではないか?」

「人手不足なんでしょ。護らなくちゃいけない範囲広いし」

 足柄はサンドウィッチを食べ終え、次に何を食べるか視線を滑らせる。…………と。

「楽しい休憩は終わり。

 さて、兵器としての本分を果たしに行くわよ」

 飛鷹の言葉に、彼女たちは立ち上がった。出撃準備、例え相手が艦娘であっても、一つの兵器として敵を粉砕する。

 相手など考慮する必要はない、狙いを定めるのは清海であり、その清海が引き金を引いたのだ。銃弾に相手を選り好みする必要はない。

 例え、相手が何であれ撃ち砕くのみだ。意思を決め、動き出す。…………直前に、素っ頓狂な声。

「って、……曙っ?」

 

//.富山基地

 

//.富山基地

 

「さて、……と、天龍ちゃん達は、ちゃんとやってくれてるかしらねえ~」

 探照灯。そこに照らされながら突撃する天龍と、裏からこっそりと入り込む龍田。

 解りやすい、囮と本命。龍田にしては解りやす過ぎる。そう、

「ちゃんとやってくれる? はっ、あの程度でなにができるっていうの?」

 解りやす過ぎる。だからこそ、彼女はそこにいる。

 富山基地、春日清海少将秘書艦、曙。

 

「この基地の、艦娘ね~」

「秘書艦よ。第一艦隊の旗艦。

 で、あんたは、この前殴り込みなんてしてくれやがった糞野郎のところの艦娘ね」

「……提督の事、悪く言うのは許せないな~」

 天龍や島風が聞いたら震えあがるような、龍田の、激怒した声。

 それを理解し、曙は鼻で笑う。

「はっ、ろくな戦果も出してない劣等が、ばっかじゃないの?

 島風だっけ? こっちの命令も聞かないような欠陥艦娘なんて送ってきて、いい迷惑よ。……ま、勝手に撒き餌になってくれたんだから楽だったけどね」

「…………死にたい艦は、貴女ね」

「やってみな」突撃する龍田を前に、曙は笑う「イカレタ糞野郎に家族とか甘やかされた勘違い艦娘が、あたしたちに勝てるなんて、思いあがるなっ!」

 長刀が振り下ろされる。頭蓋直撃の位置。けど、曙は手をあげる。振り下ろされる刃に対し、横から掌を当て逸らす。

「え?」「遅すぎ」

 足が跳ね上がる、龍田の脇腹を打撃。

「つぅっ?」

 蹴飛ばされて、すぐに横に跳ねる。爆音。

「なに、これ?」

 解ってる。曙の持つ連装砲の砲撃、と。

 問題なのは破壊力。駆逐艦の扱う砲撃を遥かに超える。あるいは、戦艦にさえ迫るかもしれない。

「くっ!」

 さらに、後ろに跳躍。再度の砲撃が海面を打撃。盛大な水飛沫をあげる。

「駆逐艦の火力じゃないわね」

 ぼやく、と。苦笑。

「そんなの、当たり前でしょ」

 馬鹿にしたような言葉。曙は左手を示す。

「指輪?」

「あんたんところの島風が欲しがってたやつね。

 性能の上限を突破して、理論上は無制限の性能強化を叶える為の指輪。ケッコンユビワなんて勘違いしているのもいるらしいけどね。

 けど、そもそもこの指輪には装着する為の資格がある。ある程度の性能を持っている、ってね」

 つまり、

「ただの軽巡洋艦ごときが、指輪持ちであるあたしに勝てるわけないって事よ」

 呟くように言葉を紡ぎ、曙は駆け出した。龍田はその速度に目を見開く。

 島風より速い。反射的に長刀を振り下ろす、けど。「遅いっ!」

 振り上げた足が、長刀の柄を蹴りあげる。そして、砲撃。

「あ」

 砲弾は刃を捉え、圧し折る。踏み込みの音。

「ふっ」

 襟首を掴まれ、足を払われ、くるっ、と龍田は天地がひっくり返った事を自覚し、直後。

 海面に叩きつけられる。艦娘に浮力を与える艤装の効果で沈む事も出来ず、海面に打撃されて息を吐き出す。そして、

「くっ?」

 転がる。規格外の砲撃が海面に突き刺さる、爆発。盛大な水飛沫が上がる。

「きゃあっ」

 水飛沫、顔を手で庇い「素人」

 呟かれた言葉、水飛沫に突撃し突破した曙は最大加速で龍田を蹴飛ばす。

「つっ?」

 小柄な曙とは言え、最大加速の一撃を腕に受け、けど、「まだ、負けないわよーっ!」

 砲撃、単装砲が砲弾を放つ、まっすぐ、曙に迫る砲弾を曙は砲撃する。連装砲から二つの砲弾が放たれる。一つ、龍田の放った砲弾を弾き飛ばし、一つ。龍田に直撃。

「かっ、……く」

 大破。……崩れ落ちる龍田にかけられる声。

「聞きたかったんだけどさ。

 あんた達の泊地、あの程度の成績で申し訳ないって思った事ないの?」

「どういう、事、よ」

 成績があまり良くない事は龍田も知っている。けど、それは、

「私達が、弱い、って事?」

「違うわよ。泊地全体の事よ。

 大本営からの出撃命令を無視したり、そんなぬるい運営で申し訳なくないかって事」

「それは、……提督の方針よ」

 優しいから、艦娘達の事を第一に考え、難しそうだと思ったら出撃命令を流した事もあった。

 最初はハラハラしたけど、艦娘たちが第一だ、と言ってくれて嬉しかった。……溜息。

「ったく、あのさあ。

 あんたらの泊地の維持のためにどれだけの金がかかってるか、………………その様じゃあ、知らないか」

 曙は呆れたように溜息。泊地の維持。そのための金。

「どういう、事よ?」

「司令官の給料や必要な備品、消耗品、食費やら、それに、定期的に送られる資材やその運送費。

 泊地の維持にはかなりの金がかかってるのよ。深海棲艦に海を閉ざされて経済的にとんでもなく厳しいってのにね。それだけの負担の上に成り立っておきながら、自分たちの我が侭で大した戦果を上げないで申し訳なくないのかって聞いてんのよ」

 考えた事もなかった、と。目を見開く龍田に曙はそう確信する。

 まあ、艦娘が知る必要もない事だけどね。だから、仕方ない事ではある。そもそも艦娘が気にする必要がない事なのだから。

 むしろ、それらの事をすべて開示して、護るべき人たちが得ている負担に相応する戦果をあげろと、最初に言って聞かせる清海が変わっているのかもしれない。

 曙はそれが悪い事とは思わない。自分たちは遊びで戦っているわけではない。負担を与え、期待を背負って戦っていると、その事を自覚して艦娘たちは訓練をし、出撃をしている。ゆえに、この基地にいる艦娘には、一切の甘えも妥協もない。

 けど、

「…………ま、この程度よね。って、扶桑?」

「曙、勝手に出ては提督に怒られるわ。

 それより、問題なく?」

「艦娘一人相手に負けないわよ。あたしは。

 それよりそっちは?」

「暇になったから来ちゃったわ」

 ひらひらと扶桑は応じる。つまり、……「天龍、ちゃん」

 小さな呟き。扶桑は視線を下に「ああ、龍田。天龍なら、まあ、あなたと似たような状況ね」

 つまり、大破。対して目の前にいる扶桑に疲労は感じない。

「ばからし、さて、さっさと寝よ」

 と、通信機が着信を知らせる。ばれたか、と曙は少しばつの悪い思いを得ながら通信に出る。と、

「なにあれ?」

 扶桑が目を見開く。聞きなれない爆音、風を切る音と機械の駆動音。

 そして、曙は通信の内容を聞く。舌打ち。

「秋月代将が誰かに奪回された。別動の別動ってわけねっ!」

 曙の言葉に、龍田は眉根を寄せる。そんなものに心当たりはない。

 その先にはヘリ。おそらく、誰かが回収のために寄越したのだろう。

「とんでもないものが、……って、こっちきたっ?」

 機銃の音が響く。扶桑は反射的に後ろへ。けど、ヘリに搭載出来る程度の機銃なら艤装を装備した艦娘の装甲を貫く事はない。

 だから、曙は銃弾を無視して連装砲を向ける。銃弾が自分を叩くが、案の定、大したダメージではない、曙は眉根を寄せる。

 向こうも、それを見越していたらしい。銃弾は曙に当たるが、それよりも傍らに倒れる龍田との間に突き刺さる。つまり「引き離す、って事ね」

 無視して連装砲で砲撃。ただのヘリなら一撃当てれば撃破できる。けど、甲高い音、二つ。

「砲撃を、撃ち落とした?」

「そういうことね」

 ヘリが高速で近づいてくる。扶桑は主砲を構えて「砲撃準備だけ、もう少し様子を見なさい」

 機銃による牽制だけだ。曙は扶桑に指示を出しながら再度連装砲で砲撃。が、先と同様に迎撃される。

 おそらく、ヘリには艦娘がいる。だが、その艤装に頼らずヘリの機銃を使ったという事は、こちらに積極的な害意は持っていないという事。

 それに、……曙は舌打ち。

 微かに聞こえた砲撃の音、そして、連装砲の砲撃を連続で迎撃する速射などから判断すると。

「狙撃者は、艦娘。それも駆逐艦、武装は、単装砲ね。それも、小口径の」

「それで、貴女の砲撃を撃ち落とした、という事?」

 指輪持ちである曙の砲撃力は戦艦にも迫る。その砲撃を真っ向から迎撃、撃ち落とすだけの砲撃力と、命中精度。つまり、

「指輪持ちね」

「そういう事。ったく、つまらないお仕事が、意外な大物が関わってきたって事ね」

 指輪持ち、その艦娘がいるという事だけで、最低でも少将の中でも上位。場合によっては中将までからんできている事になる。

「あの糞野郎にそこまでの価値があるって事?

 ああもうっ、糞野郎なんて言わない方がよかったって事っ?」

「価値があっても言うでしょ、貴女の場合」

 図星をさされて曙は苦笑。間違いなく言う。視線を横に向ければ水飛沫に隠れて、龍田は随分と離れてしまった。

「龍田っ! 掴まれっ!」

 声に、龍田は反射的に手を伸ばす。同時に落ちてきたのは縄梯子。手を伸ばし、掴む。声、その主は、

「やっぱりあの糞野郎かっ!」

 曙の、苛立たしそうな声が聞こえる。そう、提督の声。

「よか、った」

 最後の力を振り絞って、龍田は縄梯子を掴んだ。

 

//.富山基地

 

//.龍田

 

「龍田っ! 提督っ! 無事かっ!」

 大破、ぼろぼろになった天龍ちゃんは荒い息で辺りを確認する。

「俺は無事だ。すまなかった。二人には迷惑をかけたな」

 提督は頭を下げる。ほう、と一息。

「ああ、無事ならいいんだ。……ほんと、よかったぜ」

 はあ、と深く息をついて天龍ちゃんは溜息。

 それと、もう一人。

「天龍?」

 その言葉に、天龍ちゃんは眼を見開いた。「うそだろ」と、声。同感。今でも私は信じられない、けど。

「島風、か?」

「う、うん」

 暗がりから島風が顔を出す。天龍ちゃんが目を見開いた。うん、当然よね。

 島風の表情は喜びよりも不安。そうよねえ。

「島風、お前」

「………………うん。私、轟沈して深海棲艦に、なった、んだ」

 とつとつと、普段の島風には全然らしくない口調。

 怖がるような、怯えるような、そんな言葉。

 島風、私達の第一艦隊旗艦、秘書艦。……けど、その姿は全然違う。

 多脚、っていうのかしらねえ。

 上半身はそのまま、けど、下半身が、昆虫の足みたいになってる。

「そう、……か」

 天龍ちゃんも言葉に詰まってる。当然、よね。けど、

「大丈夫よ~」

 いつも通り、なにも変わらない。

 島風は島風、深海棲艦になっても、それは同じ。

 我が侭で、いつも走り回ってて、小生意気で、……けど、強い意志を秘めた女の子。だから、

「……ああ、そうだな。

 龍田の言うとおりだ」

 怯えた表情を浮かべる島風を、天龍ちゃんは乱暴に撫でる。

 前みたいに、……まだ、島風が艦娘としていた時のように。

「天龍、……龍田、」

 ぽろぽろと、涙が零れる。ぼろぼろと、泣きだす。

「あ、あり、ありがと、……わ、私、こんな、……くっ、こんなに、なっちゃって。

 もう、…………ひくっ、もう、私、……」

「ほんと、……馬鹿な娘。

 そんな事で、貴女を突き放すわけないじゃない」

 丁寧に、ぼろぼろと涙を零す島風を撫でる。大丈夫だよ。って、伝わって欲しい。

「当たり前だろう、馬鹿。

 お前は俺たちのダチなんだ。つまらねぇ、心配すんじゃねえよ。……ばーか」

 ぼろぼろと泣いてる島風。天龍ちゃんも泣きそうに応じる。……それは、私も、

 大切な友達。なんだから。

「だから、もう泣くな島風」

 提督は、優しく島風を抱きしめた。

「深海棲艦かどうかなんて関係あるか。

 お前は、俺の大切な人だ。見た目なんて関係ない。島風が島風でいる限り、大切だって事には変わりないよ」

「てー、と、く。…………う、うん、うんっ」

 提督に抱きしめられて、ぼろぼろと涙を零す島風。……その気持ち、想像できるわ。

 深海棲艦になって、見た目も変わっちゃって、きっと、怖かったのよね。

 だから、何度でも言ってあげる。大丈夫だって、あなたは、私達の大切な友達なんだ、って。

「そういう事よー

 私達は確かに艦娘だけど、例え深海棲艦だったとしても、島風は私達の大切な友達なのよ」

「まったく、馬鹿な心配すんじゃねぇよ。

 外面が変わったからって、ダチを見捨てるかっての」

「ああ、その通りだ。

 また、あの泊地で皆で暮らそうな。島風」

 提督は島風を優しく撫でる。抱きしめられて、島風は幸せそうに微笑んだ。

 

「うん、……また、みんなで一緒に暮らそうね」

 

//.龍田

 

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