深海の都の話   作:林屋まつり

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 宴の話、だからと言うわけではありますが、今回はちょろちょろと脱線します。
 賑やかしの一環としてお楽しみいただければ幸いです。

 では、仮定の話、金剛が言仁と会った後、家に愉快な邪魔者(いぶきその他)が突貫しなかった場合です。


一話 ― 脱線

「それじゃあ、お疲れー」「お疲れ様なのですっ」

「お疲れ様デシター」

 疲れたー、と肩を落とす猫背な鈴谷と、彼女の背中を抑えて無理矢理猫背を矯正しようとする電。

 二人を見送って、伸びを一つ。

「んー、…………今日も、頑張った、デス」

 さて、帰りましょう。……確か、明日は可愛い妹達が戻ってくる日です。

 三人でこの都の散歩をするのも楽しいかもしれません。…………楽しみ一つです。

 と、

「金剛」

「あ」

 これはもうっ! 条件反射ですっ!

「テイトクーっ!」

 大好きな人の声、その姿、それを見たらギュっとせざるを得ないですっ!

 下は地面なので、膝を落とすのはちょっと躊躇。なので、

 ひょい、と小さな提督を抱き上げて、ぎゅっ!

「んー」

 柔らかな抱き心地と、ふわりと心地よい匂い。たまらないですっ!

「金剛、いいかな?」

「むー、ずっとギュっとしてたいデス」

「それじゃあお話できないよ?

 それとも、金剛は僕とお話するの、いや?」

「な、……そ、そんな事絶対にNoデスっ! テイトクとたくさんお話したいデスっ!」

 うー、提督、たまにすっごく意地悪な事をいいます。

 ………………けど、そんな時に見せてくれる悪戯っぽい笑顔、可愛いです。

「意地悪な事言ってごめんね。金剛。

 なんていうか、金剛って可愛いからついこういう事言いたくなっちゃんだ。……誰か言ってたな、子供は好きな女の子に構って欲しくて意地悪しちゃんだって」

 …………もーっ! どうしてこういうところでそんな事言うんですっ! か、可愛いとか、好きな女の子とか、そういう事は、こう、私の部屋で、お布団のところで、二人きりで、言って欲しいですっ!

 けど、……頑張ります。呼吸を落ちつけて、

「もうっ、テイトク意地悪デスっ!

 ば、罰として、今夜はテイトク一人占め、デスっ!」

 なんて言ってみたです。提督、いろいろ忙しいし、…………無理と、思います。

 けど、言った者勝ちですっ!

 困ったような表情で謝罪される覚悟。けど、

「うん、いいよ。

 元々金剛の家に行くつもりだったし、ちょっとお願いしたい事があるからね。…………ね、だから、金剛」

 予想外の反応に固まる私に、提督は手を伸ばして、頬に触れて、

「今夜は僕と、ずっと一緒にいようね」

 ………………………………轟沈したです。

 

「お花見、デスカ?」

「うん、……明々後日にお花見をやるんだ。

 それで、元々僕一人で行くつもりだったんだけど、ちょっと前に来た、長門たちいるでしょ? みずが連れてきた」

「明日戻ってくる、デス?」

 いつもはこの都にいないのですけど、定期的に資材とかを持ってここに来るです。

「うん、それで、長門と、……あとは、誰か一人、お花見に誘おうって思ってね。

 けど、そうなると僕だけじゃなにかあった時に対応できるか不安だから、念の為大鳳と金剛にも一緒に来てもらおうって思ったの」

 えーと?

「…………その、テイトク」

「なぁに?」

「お花見、って、何デス?

 あの、危ない事、デス?」

 やった事ないです。……ちょっと変な事を聞いているかもしれないです。

 けど、なにかあった時、というのが気になります。

 もしそれが危険な事であっても、……いえ、危険な事であるなら、提督を護るためにも参加します。絶対に、提督は護ります。…………けど、そもそもお花見がどんな事かわからないです。

「桜の花を見ながらする宴会だよ」

「え、宴会、デス?」

 それはやった事あります。夕立が来たときとか、なんというか、冗談みたいな量の酒が用意されて都の皆でどんちゃん騒ぎをした記憶があります。

 それに、桜の花。……とても綺麗だって聞いています。見れるならみたいです。けど、

 けど、それと提督のお話しする不安が結びつかないです。

 私のそんな疑問を見てとったのか、提督は困ったような表情。

「ただね。その主催者がねえ。……悪い子じゃないんだけど、尊治っていう、僕と同じ魔縁なんだ。

 地上で、悪の秘密結社みたいなのを作っていろいろと好き勝手遊んでる。……まあ、奔放というか、我が侭というか、…………そんな子」

「魔縁デスカ」

「彼だけじゃなくてね。

 良くも悪くも我が侭で影響力が高い子だから、他にもいろいろと声をかけているみたいなんだ。

 さすがに、宴席で暴れるなんて無作法をするような馬鹿じゃないと思うけど、一応ね」

 そうですか。

「騒ぎたいっていうのもあるだろうけど、他にも目的があるみたいだからね。

 それで、長門達にはその事を聞いて欲しいんだ。…………その、そういう事情なの。ごめんね、金剛。巻き込んじゃって」

 申し訳なさそうな提督。……反則です。そんな可愛い顔されたら、断る気なんて全然なくなっちゃうです。

「そんな、全然気にしなくていいデスっ! ワタシに任せてクダサイっ!」

「うん、ありがと、金剛。

 あ、もちろん、お花見は存分に楽しんでいいからね。お酒もご飯もあるし、吉野は桜の名所なんだ。尊治が我が侭言って賑やかな事になるだろうから。きっと楽しいよ」

「そうデスネっ!」

 お花見も、お酒もご飯も楽しみですっ! けど、もちろん一番は「テイトクとお出かけ、楽しみでデスっ!」

 前に、鈴谷がデー、…………こほん、一緒にお出かけに行きました。凄く羨ましかったです。

 だから、一緒にお出かけ楽しみですっ!

「いいけど、お酒呑みすぎちゃだめだよ?

 金剛、あんまり強くないんだから」

「うっ?」

 思い出すのは、夕立が来て数日後の宴会。

 参加者の大半が酔い潰れてしまいました。私も、その、だめだったです。

 最後に残った深海棲艦は肝臓が近代化改修された下戸棲艦響と、…………あと、初めて見たですが、白い変なお面をつけた舞風だけだったです。

 …………というか、強くないっていうか、……弱くないです。ただ、「テイトクたち、強すぎデス」

 深海棲艦がばたばたと倒れる中、井上さんやおじさん、提督たち魔縁は顔色一つ変えず飲み続けてたです。

 というか、なんで飲めるんです? 提督、すっごく小さいです。

 提督は胸を張って、悪戯っぽい笑顔。

「ふっふっふっ、格の違いを知るといいよ」

「ああもうっ、可愛いデスっ!」

 ぎゅっ

「あ、あれ? この反応は意外」

 小さい子供が精一杯尊大そうな、背伸びした仕草。すっごく可愛いですっ!

 

 さて、夕ご飯。一人の時はさっ、と作っちゃいますけど、提督がいるのでしたらそんな事言ってられません。

 自慢の英国式カレーっ、とくと味わってもらいますっ! …………そして、その後は、「デザートは、ワタシ、デスっ!」

「…………どうしたの? 金剛」

 はっ? 思わず口に出してしまいました。

「な、なんでもないデスっ!」

「そう?」

 また部屋に戻る提督。ふぅ、と一息。気をつけないと、

 な、何せ、今夜は提督と二人きりです。……ど、どうしよう。

 お風呂とか、……お、同じ布団で寝ても、いい、ですね?

 とくんとくん、と。鼓動。その緊張、嫌じゃないです。けど、

「お料理に、集中しないといけまセン」

 小さく、提督に聞こえないように気をつけて、自分に言い聞かせます。

 提督に食べてもらう手料理。ちゃんとやらないといけません。

 

「Heyっ! テイトクっ! ご飯出来マシタっ!」

「あっ、カレーだね?」

「Yesっ! 英国式カレーっ! 自慢のレシピデースっ!

 どうぞ、召し上がれ」

「ありがと金剛。……これは、具がないんだね」

「溶けるまで煮込みまシタ。

 具がなくてもその旨みはちゃーんと溶け込んでマス」

「そうなんだ。皆いろいろなカレーがあるんだね」

「そうデースっ、…………お口に、合えば、嬉しい、デス」

「うん、……って、金剛。一緒に食べようよ」

 あ。

「い、いいデス?」

「ご飯は家族と一緒に食べるのが一番だよ。

 金剛は違う?」

「ち、違わないデスっ、一緒に食べマスっ」

 家族、その言葉、凄く嬉しいです。少し早足で、胸を手に抑えて、自分の分を用意。

 待っていてくれた提督に嬉しさを感じ、対面に、

「それじゃあ、いただきます。金剛」

「い、いただきマス」

 …………提督に手料理食べてもらうの、どきどきします。

 ま、不味くないでしょうか? 味見した時は美味しくできましたけど、けど、提督は? …………うー、喜んでくれるか、不安です。

「…………えーと、金剛。その、そんなにじっと見られると、……」

「あっ、ご、ごめんなサイっ!」

 食べにくいですよね。そんな事したら。………………反省です。

 提督はくすくすと笑って「いいよ。手料理、誰かに食べてもらうのって緊張するよね」

「テイトクも、デス?」

「あはは、うん、僕もそうだった。

 井上のお母さんに料理教えてもらってね。早良と他戸と一緒に食べた時は緊張したなあ」

「テイトクの手料理」

 それは、興味ありますっ! 食べてみたいですっ!

「それでものすっごい勢いで駄目だしされた」

「あ、そうだったんデス?」

「井上のお母さん料理すっごく上手なのに容赦なく比べるんだもん。

 初心者じゃ勝てないよ」

 くすくすと笑う。そして、

「けど、金剛の手料理はすっごく美味しいよ」

 不意に言われた言葉。不安に感じていた事を、大丈夫、と言ってくれて、

「えへへ、よかった。…………嬉しいデス」

 自然に、笑みが浮かんじゃいました。

 

「んー」

 いつもより体を丁寧に洗います。

 ちゃんと泡立てて、爪先から指先まで、丁寧に、それにしても、

「もー、テイトクも、女心が解ってないデス。

 せっかく見てくれるなら、一番綺麗なところを見て欲しいデース」

 お仕事終わって、一汗かいた後、それより、ちゃんとお風呂に入って綺麗になったところを見て欲しいです。

 体を洗って、髪も洗って、シャワーで洗い流します。ちゃんと、泡が残らないように、丁寧に、

 ふと、…………確か、お風呂。

 前に、響と一緒に盗み見した大鳳秘蔵の乙女漫画にそんなのがあったような。……確か、

 えーと、……男の人がお風呂に入っている時に、…………せ、背中を流す、って、言って、……お、お風呂にっ!

 提督と、お風呂っ!

「ふ、……あ」

 そ、それって、……え、ええと、ちょ、ちょっと落ち着くです。落ちついて、順番に考えるです。

 何せ、これは提督と触れあう大切な時間。そ、そうっ! いつも子供扱いされているし、ここは、私がリードしないといけないですっ!

 確か、乙女漫画だと男の子はいきなり女の子に突貫されて、それで悲鳴を上げたりあわあわしたりしてました。

 提督のそんな姿見た事ないです。……っていうか、私がよく提督に見せているような。………………ま、まさか、提督が私を子供扱いするのは、これが原因ですっ?

 だったらなおの事、これは、好機ですっ! そう、これで提督があわあわして、私がリードすれば、……提督は、もう、私を子供扱いしない、ですっ!

 子供扱いしなくなれば、私を一人の女性として見てくれ、あわよくば、て、提督の、お、おお、お嫁さん、にっ!

 よし、拳を握って、立ちあがって、

「よし、やるでぇぇぇぇえええええええええええええええええっ?」

 立ちあがって、つるっ、と滑って、どばんっ、と浴槽に着水。沈没。

 

「空きまシター」

「へえ」

 お風呂から出たら、提督が興味深そうに私を見てます。

「え? どうしまシタカ?」

 なにか変でしょうか? 浴衣は、変な風に着てません。大丈夫なはずです。

「あ、……ううん、髪の毛」

「あ」

 反射的に、後ろ髪に触れました。乾かした髪の毛、いつもはまとめてありますけど寝る前は解いてます。

 だから、いつもより後ろ髪が長く見えるはずです。

「ええと、変、デスカ?」

「ううん、久しぶりに見たなあ、って」

「そうデスネ」

 私がこの都に来て、最初の数日間以来、ですか。

 ………………はうぅう、あの時の事を思いだしたら、一緒にいろいろ思い出してしまいました。あの時は、いろいろ不安定で、だから、甘えたがりで、今じゃあ恥ずかしいようなお願いとかたくさんしちゃいました。

 また、……しちゃいたい、です。………………きゅう。

「ど、どうしたの金剛?」

 はっ?

「い、いえ、なんでもありまセンっ!」

「そう? ……けど、そうしていると金剛っていつもより大人っぽく見えるね」

「え、えーと、こっちの髪形の方が、好み、デス?」

 髪型は、もちろん大好きな提督の好みに合わせたいです。

「どっちの方がっていう事もないかな。

 いつもの髪形も可愛いし、元気で明るい金剛には似合ってる。ただ、今の髪形をしてる金剛も、大人っぽくて綺麗だよ。元が美人だからどんな髪型でも似合うんだね」

 …………え、えーと。

 言われた事がじわじわと、頭に届いて、その内容を理解して、…………けど、その前に、もう、体が反応してます。

「あ、はわ、はわあ」

 どきどきして、かーっとなって、ふるふるして、

「おーい、金剛?」

「ひゃーーっ!」

 

「…………テイトク、反則デス」

 お風呂に向かった提督にぶちぶち文句。

 だって、絶対に反則です。なんでいきなり、か、可愛いとか、綺麗とか、美人とか、そんな事をさらりと言うです。

 そういう言葉は、こう、もっとムードに気を使って、……ふ、二人きりで、…………あとは、……その、する、前に、とか、……………………と、ともかくっ! 不意打ちは禁止ですっ!

 そう、そんな反則をした提督を見返すです。気合を入れて立ち上がりました。

「ふっふー、今度こそテイトクを見返すデスっ!」

 と、いうわけで、金剛、抜錨、ですっ!

 私は脱衣所の出入り口へ、到着、シャワーの音を確認し、こ、これより、作戦行動を開始します。

 深呼吸、吸って、吐いて、…………呼吸を落ちつけて、……よ、よし。

 胸に手を当てる。ど、どきどきしています。

 これから、提督がお風呂に入っているところに、いくです。

 脱衣所への扉を開け、ふと、丁寧に畳まれた服。……提督が着てた、服。

 ごくり、…………って、「そ、そうじゃないデスっ!」

 だめですっ! いくら提督が着てた服だからって、そこに顔をうず「金剛?」「ひひゃいっ?」

 気がつけば服を手に取っていた提督の服を慌てて置きました。

「金剛、どうしたの?」

「はっ、あ。……あ、…………え、えと、えと、デス、ネ」

 そ、そうでした。

「お、おお、お背中、を、な、流しに来た、デスっ!」

 はうぅう、声が上擦ってしまいました。これじゃあだめです。いつもと同じです。

「そう、ありがと?

 じゃあ、お願いね」

 …………失敗です。……突貫しなくちゃだめです。これじゃあ、不意打ちにならないです。

 これじゃあ提督慌てないです。慌てている提督を見て、それで大人の女性らしくリードする計画が、全然だめだめです。

 ちょっとしょんぼりしながら服を脱いで浴室への扉に手を当てて、扉を開けて、………………て?

「あ、金剛」

 裸の提督が振りかえりました。……は、……だ、か?

 ほっそりとした、まだ、細い、色白だけど、血色のいい体。幼い、しみ一つない柔らかそうな肢体。

「あ、……あ、…………あ、あ、」

「金剛?」

「ご、ごご、ごめんなさいデスっ!」

「って、金剛っ?」

 ばたんっ、と反射的に脱衣所へ。……はうう。

 へなへなと座っちゃいました。……うう、けど、ば、ばっちり見ちゃいました。

 目を閉じれば鮮明に浮かぶ、提督の、……その、えと、…………「ひゃぁあぁあああああ」

 ぺたん、と座ったまま、頬に手を当てて、変な声が出て、ふるふるして、……はうぅう。

 がちゃ、と。

「金剛、そんな格好でそんなところに座ってると風邪ひいちゃうよ」

「ひゃいっ? そ、そうデスっ、風邪ひいちゃいマスっ!」

 …………そんな格好。と、ふと、提督の言葉が気になって、どんな格好でしたっけ?

 視線を落とす。そこには大きさよりは、形の良さが自慢の、………………………………あれ?

「なんで、ワタシ、裸、デス?」

「お風呂に入るからじゃないの? 僕の背中、流してくれるんだよね?」

 不思議そうに首を傾げる提督。って、

「あ、あわっ、はうぅ」

 手をわたわたさせて、いろいろ頑張って隠して、……え、えーと、それで? ……ど、ど、どうすればいいんですっ?

「金剛?」

「ちょ、ちょっと待っててくだサイっ! 準備っ! 準備が必要デスっ!」

「準備? ………………まあ、うん、解ったよ」

 ぱたん、と扉が閉まって、ほう、と一息。けど、

「はううう、テイトクに、裸、見られちゃった、デス」

 へ、変じゃないですよね? ふ、太ってもいないはずです。それに、スタイルはいい、と思います。

 けど、提督、もしかしたら、…………思い出すのは秘書の響。もしかしたら、提督は、

「ロリコンなんて、そんなの、絶対に、Noっ! デ、ふばっ?」

「…………あのね、金剛。

 そんな格好でそんなところにいると風邪ひいちゃうよ。お風呂、入るなら入ろうよ」

 タオルを頭から被せられて、沈黙でした。

 

「で、では、失礼、します、ネ」

「うん、お願いね」

 目の前には提督の小さな背中。すべすべです。

 スポンジを泡立てて、それで丁寧に提督の背中を洗っていきます。

「ん、……気持ちいい。

 金剛にしてもらうの、……いい、な」

「……ど、どういたしまして、デス」

 心地よさそうで、少しくすぐったそうな声。

 ちょ、ちょっと、……艶、というか、…………ええと、……

「ふふ、ちょっと、金剛。……あ、ん、そこ、……だめだよ。くすぐったい、よ」

 あ、……あの。

「……ん、そこ、いいよ」

 …………その、……ええと、提督?

「…………気持ち、い」

 ふ、……あ、あ、えと、

「……あっ、……ん、金剛、…………上手、……だよ」

「だ、だめデスーっ!」

 こ、これ以上はだめ、これ以上はだめですっ! も、もうだめ、大破ですっ! これ以上は大破進撃で轟沈でだめですっ! 大破進撃はだめですーーっ!

「こ、金剛? えーと、どうしたの?」

「た、大破進撃はだめなんデスっ! そういう事をしたら轟沈しちゃうデスっ!」

「…………あの、金剛? ……ええと、僕の背中、洗うの、いやだった?」

 はっ?

「ち、ちち、違いマスっ! 違うデスっ! あ、あの、そういう事じゃなくて、デスネっ!」

 そういうんじゃないです。ただ、その、て、提督の声を聞いてたら、あの、……え、ええ、えっちな、あの、…………その、

「ごめんね。嫌な事をお願いしちゃって」

「違うデスっ! 全然いやじゃなくて、あの、……その、…………デス、ネ」

 い、言えないです。えっちな事を考えちゃったなんて、……そんな事、提督に言えないです。

 えっちな女の子なんて、思われたくないです。

「い、いやじゃないデスっ! む、むしろテイトクと触れあえて嬉しかったデスっ! え、えとデスネ。

 ……そ、そうっ! お、女の子の事情デスっ! 女の子の事情でだめなんデスっ!」

「…………そ、そうなの? 女の子って、……ええと、大変、なんだね」

「そうデスっ! 女の子は大変デスっ!

 じゃ、じゃあ、流しマスっ!」

「うん、ありがと」

 しゃー、と背中を流しました。……あ、危なかったです。もう少しで轟沈だったです。

「ありがと、金剛。

 気持ちよかったよ」

「ど、どういたしまして、デス」

 どちらかと言えばこちらこそありがとう、です。提督の背中、すべすべして綺麗で、小さくて、可愛かったです。

「じゃ、じゃあ、ワタシはお布団の準備を「だーめ」はへ?」

 準備をしようとして、立ち上がりかけた私の手を掴む提督。

「裸で外にいたのに、温まらないと風邪ひいちゃうよ」

「そ、そうです、ケド」

 あの、それって、つまり?

「だから、一緒に入ろう」

 …………で、デスヨネー? って、

「あ、あの、そんな、あの、い、いい、デス?」

「いい悪いじゃなくて、入らなくちゃだめ。

 僕は、大切な金剛に風邪ひいて欲しくないのっ、金剛だって、僕が風邪ひいたら?」

「…………それは、もちろん、いや、デス、ケド」

 ごめんなさいです。提督。風邪で弱ってる提督を看病出来るなんて、それはそれでありっ! とか、思っちゃってごめんなさい。

「じゃあ、いう事を聞くっ!

 もうっ、そういうところは全然子供なんだからっ」

「…………ごめんなさい、デス」

 子供扱いして欲しくないです。……けど、少し冷えてきちゃいましたし、温まらないといけないです。

 けどお。それって、

「はい、金剛。お風呂に入って」

「……了解、デス」

 お風呂に入って「こーらっ」

 ぺし、と軽く額を叩かれました。

「え? テイトク?」

「金剛がいた異国はどうか知らないけどね。

 この国だとお風呂にタオルを入れちゃいけないの」

 はうっ? と動揺した隙に、提督は私に残された最後の装甲、タオルを問答無用にはぎとりましたっ!

 そうなれば、もちろん、…………ほ、本当に一糸まとわぬ姿、です。

「よし、それじゃあ入るね」

 そして、そんな私の腕の中に、すっぽりと、収まる提督。

 私の腕の中にっ! 提督がっ!

「ふふ、あったかいね」

「そ、……そうデスネ」

「一緒にお風呂ってのもいいね。

 うん、いい湯だねー」

「で、デス、ネー」

 なんで提督はいつも通りなんですっ! い、一緒にお風呂で、私の心臓大変ですっ!

「あ、そうだ。

 金剛、手、貸して」

「は、はいっ」

 提督は私の手を取って、そして、提督の前に絡めました。

「て、テイトクっ」

「やっぱり子供なのかな、僕も、……こうやって誰かにぎゅーってされるの、好きなんだ」

 だから、と。おねだりするような、甘えるような表情。

「……ね、金剛、僕の事、ぎゅって、してくれる?」

 ………………もう、だめです。……大破して、撤退は許されない、最後の装甲も解除され、で、とどめ、さされました。轟沈しました。

 

「はあ、……テイトク、もう、……危険すぎデス」

 大好きな男の子にあんな風にされたら、もう、女の子は大変に決まってるじゃないですか。そういうところ、解ってくれてないです。ひどいです。

 提督には居間でくつろいでもらって、その間にお布団の準備。している間もぶちぶち文句が出ます。だって、提督、女の子の繊細さを解ってくれてないです。攻め込まれたら、あっという間に大破です。……とまあ、まずは、布団一枚用意完了。そして振り返りました。

「もう一枚」

 一応、布団は二枚あります。干してある時用の予備とか、鈴谷とか友達がお泊りに来た時用とか。

 二枚、…………です?

「って、な、何考えてるデスっ!

 二枚、お布団は二枚デスっ!」

 ぶんぶん頭を振って、さて、と「金剛」

「あ、……はい、準備してるデス」

「ありがと」彼は首を傾げて「あれ? また一緒に寝たいの?」

「ふぁいっ? え、こ、これからもう一枚敷くところデスっ!」

 諸手をあげての歓迎。けど、それは抑えました。……あれ? 提督、どうしたです? なにか、面白い事言ったです?

 なぜかくすくすと笑っている提督。彼は布団を指して「もう一枚、どこに敷くの?」

「はわあっ?」

 へ、へ、部屋の真ん中にお布団がっ? 考え事いっぱいしてたら間違えました。いつもどおりにお布団敷いてしまったですっ!

「そんなに慌てなくてもいいよ。

 金剛は甘えたい盛りの女の子だもんね。一人で寝るのは寂しいよね」

「むー、こ、子供扱いしないでくだサイっ!」

 た、確かに提督に比べれば全然子供かもしれないです。

 けどっ、だからって子供扱いはだめですっ! 私はもう、立派な大人の女性ですっ!

「そっか、じゃあ、布団はどけようね」

 はしっ、…………はっ?

「金剛?」

 気がつけば歩き出す提督の手を掴んでいる私。…………うー、……こ、こうなったらっ! もう、やるしかない、ですっ!

「そうデスっ! ワタシは甘えたい盛りの女の子デスっ!

 一人で寝るのは寂しいからテイトクと一緒に寝たい、デスっ!」

 言っちゃったですっ! 言っちゃいましたっ!

 くすくす、と微笑。

「意地悪してごめんね。金剛。

 ……そうだね。うん、そういう意味じゃ僕も子供だね」

「へ?」

 どこか、寂しそうな苦笑。

「一人は寂しいんだ。

 だから、僕と一緒にいて欲しい。いいかな? 金剛」

「…………はい、ワタシも、一緒にいたい、デス」

 

 というわけで、提督と一緒にお布団の中へ。

 もう、こうなったら頑張るですっ、まずは、いつも通り提督をぎゅっとし「むぎゅっ?」

「ふふ、たまにはこういうのもいいよね」

 ぎゅーっと、提督に抱きしめられました。

 頭に感じるのは、丁寧に、優しく撫でてくれる感触。

「苦しくない? 寝心地、悪かったりしない?」

「だ、……だ、大丈夫、デ、……ス」

 全然大丈夫じゃないですっ!

 くらくらするような匂いとか、心地よく聞こえる鼓動とか、……も、もう、ど、どうすればいいんですっ?

「ん、こういうのもいいね。

 ふふ、金剛、いい匂いがする。……ん、これはよく眠れそう」

 なんでよく眠れそうなんですっ? ずるいですっ! 不公平ですっ! 私は全然眠れないですっ!

 ……っていうか、いい匂いって、…………香水、とか持ってなくて、……という事は、

「――――っ!」

 わ、わ、私の、………………に、にに、匂い、です?

「きゅう」

 …………もう、……だめ、です。

 

「ん、…………うむ?」

 目、覚めました。いつのまにか寝ちゃっていたみたいです。

 少し、寝不足です。……だって、提督の寝顔が可愛すぎてなかなか眠れなかったです。仕方ないです。大好きな人の寝顔がそこにあって眠るなんて、そんな事出来るわけありません。

 まあ、そういうわけで、……って、「テイト、ク?」

 いない、です?

「テイトクっ?」

 慌てて起きて、リビングへの襖を開けて、……あ。

 とんとん、と軽快な音。…………は、あ。よかった、です。

 そこに、いる、です?

「おはよ、金剛」

「お、おはよう、デス」

 ひょい、と顔を覗かせたのはエプロンを着た提督。にっこりと笑顔で「もうすぐ朝ご飯出来るから、浴衣。ちゃんとして着てね」

「ふぇ?」

 ゆか、……た?

 慌てて起きたせいか、帯が外れてて、…………その、胸も半分くらい見えてて、下着、全部見えてて、

「ひにゃぁああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

「ああ、びっくりした。

 金剛、いきなり叫ばないでよ」

「はうう、ごめんなさい、デス。

 だってぇ、は、恥ずかしかった、デス」

「まあ、仕方ないよね」

 くすくすと微笑む提督。並んでいるのは純和食。白米と鮭、おみそ汁とお漬物です。

「じゃあ、ご飯出来たから食べてみて、……ええと、美味しいか解らない、けど」

 ちょっと心配そうな表情の提督。そんな表情が見れた事。それに、提督に作ってもらった。それで満足です。

 何より提督と二人で食べるご飯。嬉しいです。……こ、この状況は、し、新婚さん、と言っても過言ではないですっ!

 し、……新婚、さん。

「どうしたの? 金剛。苦手な物とかあった」

「はっ? い、いえ、大丈夫デスっ! テイトクが作ってくれたご飯、どれも美味しそうデスっ」

「そっか、よかった」

 安心したように、にっこりと微笑む提督。よかったです。…………ばれないように、深呼吸。

「え、えーと、で、デスネ。

 こうやって、ふ、二人きりでご飯を食べるって、し、新婚さん、みたい、な、……なんて、考えちゃった、デスっ!」

 言っちゃったですっ! 言っちゃいましたっ!

「金剛がお嫁さんか。……そうだね。それも、いいね。

 金剛と一緒なら、いつも楽しいよね」

「え、……えへへ、あ、ありがとう、デス」

 いい、って言ってくれました。嬉しいです。

 提督の事だから深く考えないで、一緒にいてくれる。っていう意味だと思うです。けど、

 一緒にいてくれて楽しいって、そういう風に思ってくれるなら、すっごく嬉しいです。

 では、……胸に幸せな気分を抱いて、手を合わせて、

「「いただき「来たわよ金剛っ!」」ふばっ?」

 提督と素敵な朝食の時。響いたのは知り合いの声。

「いぶき?」

 声の主は提督と二人きりの場所にどんどん入り込んで来たです。彼女は、知り合いの深海棲艦、戦艦の姫。

「いたわね。言仁君。

 ちょっとお話しいいかしら? 宴会の事なんだけど」

 




 作戦を確認し、その重要性を認識して抜錨する金剛。
 作戦の内容は奇襲、順調に進撃を続けるも、あと一歩と言うところで標的の罠にかかり奇襲が失敗。
 それでも強行した攻撃は外れ、逆に反撃を受け大破。撤退をしようにも提督からは大破進撃を強要され、最後の護りであった装甲を剥ぎ取られ、止めを刺され轟沈する金剛。

 …………最初にこんな煽り文句を考えました。
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