お花見お留守番組がのんびりするだけの閑話です。
「確かに受け取った。
忙しいところすまないな」
為朝さんの言葉に「いいよ」と応じる。
そんなに忙しくないからね。今日を見越していろいろと仕事を調整してくれたのと、
「はあ、……これでこっちは終わり。疲れたよ」
ぐたー、と机に突っ伏す時雨。彼女の助力のおかげだね。
「お疲れ」
さて、為朝さんへに頼まれた物を渡して、こっちの仕事はこれで終わり、司令官も、もう会場に到着したかな。
「そういえば、為朝。
おじさんもお花見に行ったんだよね?」
「主は《呪詛の御社》を消すと言っていたが、どうするのか」
「それも、その一環かい?」
ぐたー、と伸びている時雨が視線を向ける。その視線の先には竜宮の宝物である二つの宝珠。
「そうだ。言仁には世話になるな」
「いいさ、司令官も特には気にしていないみたいだし」
手を振ると為朝さんは謹直に頷いて部屋を出た。さて、
「お仕事はこれで終わり、と。……思ったより早かったね」
「仕事、僕がいたころより少なかったけど、提督が調整してくれたのかい?」
問いに、頷く。司令官には気を使わせて、少し申し訳ないね。
もっとしっかりしないと、
「もっとしっかりしないと?」
「…………考えている事を言い当てられると、面白くないよ」
じと、とした視線を向けると時雨はくすくすと笑って、
「僕ならそう考える。って思っただけだよ。
それで、当事者じゃないから言うけど、例え響がどれだけ優秀であっても、提督は事前にある程度仕事を片付けるだろうね。
優しいのは美徳だけど、少し困るよね」
「そうだね」
頷く。私も、優しい司令官は、好き。……けど、こういうところで気を使われたくはない、な。
「どちらにせよ仕事は終わりだよ」
「これ以上はやらないのかい?」
少し悪戯っぽい時雨の言葉に、私は溜息。
「無理させない、っていうのも困ったものだよね」
「はーっ、……終わったあ」
「お疲れ様」
来たのは瑞鶴。彼女は一つ伸びをする。
彼女には都の哨戒をお願いした。……と言うか、駆けこんできた彼女にやる事をせがまれてお願いしてみた。
「あとは、ええと、他戸と、早良、っていう子がやるみたいよ。
まあ、散策ついでらしいけど」
「了解。
それで瑞鶴、今夜はどうする? 部屋はあるし泊まって行くかい?」
司令官がいる時は絶対にしない提案。けど、司令官はいないからね。
「是非っ!」
そして、嬉しそうに応じる瑞鶴。時雨は首を傾げて「翔鶴は、……いないか。けど、元の僚艦の陸奥や金剛と、比叡もいるんじゃないのかい?」
「いるんだけどねえ」
はーっ、と。肩を落とす瑞鶴。「なにかあったの?」
「いやね。
ほら、……えーと、言仁君? お花見に行ったでしょ? 翔鶴姉と長門と」
頷く。もちろん、私も行きたかったけどね。けど仕方ない。司令官の留守を護るのも秘書の役割だ。
「そうだけど、瑞鶴も行きたかったのかい?」
「まあ、お花見は興味あるし、翔鶴姉と遊び歩くのはやりたかったんだけどね。
じゃなくて、ほら、……えーと、なんて言うの? 陸奥と、あと、金剛が言仁君の事気に入っててね。それで、一緒に行けなくてやさぐれてるのよ。
雰囲気悪くてさ、正直逃げたかったわ」
「お疲れ様」
…………む。……いや、瑞鶴に言っても仕方ないか。
苦笑する時雨。
「ま、そういうわけで居座るわね。
あ、なにか手伝える事があるならやるわよ?」
「ありがとう。
私達はこれから食事にするけど、一緒に来る?」
「うんっ、行く行くーっ」
居座ってもいいって言われたからか嬉しそうに瑞鶴。……いいけど、どれだけ戻りたくなかったんだろうね?
「と言うわけで、ご飯っぽいっ!」
びしっ、と指を突き付ける夕立。それと、「ちょうどよかったですわ」
微笑む熊野。司令官に呼んでもらった彼女。個人で喫茶店をやっているからか、結構料理上手なんだね。
「出来ましたわよ。
少し待っててくださいな。夕立さん、お手伝いをお願いしますわ」
「了解っぽいっ!」
「あ、私も手伝うわっ」
慌てて後に続く瑞鶴。さて、
「それじゃあ、僕たちは少し待ってようか」
「そうだね」
すとん、と椅子に腰を落とす。
「あんまり変わってないね」
辺りを見渡しながら時雨。
「まあね。それなりに掃除はしているから。
最近は夕立が勝手にやってるけど」
「そうだね。いい娘だよね、僕の自慢の妹だよ。
響、どうだい? お嫁さんに」
「なに訳の分からない事を言っているんだい時雨?」
「っていうか、なんで夕立が響のところに嫁がなくちゃいけないっぽい?」
じと、とした口調で夕立登場。私もなんで夕立をお嫁さんにしなくちゃいけないのかわからない。
時雨はしたり顔で頷く。
「ほら、そうすれば一番厄介な響がいなくなる。
僕は円満に提督のお嫁さんになれるんだ」
「あの時に君を蹴りだした私の判断は間違えていないね」
「響に同意っぽい」
本当に危険だ。大鳳もそうだけど、時雨も油断できない。
「喧嘩はそれまで、せっかくの食事なんだかそんな雰囲気は止めてくださいな」
苦笑する熊野。一息。
まあ、……なんだかんだで皆得難い友人だけどね。
最後、瑞鶴も食事を並べて、さて、
「それでは、いただきます」
熊野の言葉に皆が「「「「いただきます」」」」と、続いた。
「美味しーっ」
目を輝かせる瑞鶴。熊野は嬉しそうに微笑んで「そう言ってくれるなら、作った甲斐がありますわ」
「うう、夕立はまだまだ修行不足っぽい。
この味の再現にはどのくらい修業が必要かー」
うむむ、と眉根を寄せる夕立。「勉強熱心ですわね」と、微笑む熊野。
「夕立は真面目ねえ」
「……真面目、…………うん、まあ、いろいろあったから、……っぽい」
確かにそうだね。瑞鶴も、このあたりの事情は了解してくれているらしい。「そうなんだ」と頷く。
「そうだね。夕立。
熊野を見習ってもっと料理を上達して欲しい。僕はそうしてくれると嬉しいよ」
「何が楽しくて時雨姉のために料理を学ばなくちゃいけないっぽい?」
苦笑する夕立。うん、同感。
「そうですわね。夕立は、……提督にならいいのではないのでは?」
楽しそうに笑う熊野。夕立も、少し言葉に詰まって「て、提督さんのためなら、が、頑張る、っぽい」
「言仁君だっけ? 人気者ね」
ぱくぱくとご飯食べながら瑞鶴。そう、人気者なんだ。とても、とても困った事にね。……はあ。
「そうなんだ。人気者なんだよ。
はあ、提督の事が好きな僕としては非常に困った事だよ」
溜息をつく時雨。まったくもって同感だよ。
「……そ、そうなんだ。陸奥や金剛だけじゃないのね」
「…………いろいろ大変ですわね」
そう、大変なんだ。……出来れば司令官が自覚してくれれば、もう少し楽なんだけどね。
食事を終え、洗い物が終わったところで、声。
「ちぃーっすっ」「遊びに来たのですっ」
「あ、お客さん?」
「あら、そのようですわね。……これは、鈴谷と電ですわ」
ぱたぱたと、入ってくる音。熊野には同感、声の主は、鈴谷と、電だね。
「おやつ持ってきたよーっ!
夜更かししよー」
「経営者金剛さんが遊びに行ってるので、お菓子を銀蠅してきたのですっ」
二人が持っているのは一抱えの袋。これでもかと入っているのはお菓子。
「あら、夜更かしですの?」
「熊野はしない? 寝るの早いもんねー」
「早寝早起きはレディの基本。
とはいえ、そうですわね。たまにはお付き合いしようかしら」
「大歓迎っぽいっ!」
「確か、大きめの部屋あったよね。
布団、何枚か持ち込んでおこうか。みんなで寝れるようにね」
時雨の提案には賛成だ。……司令官がいないのは残念だけど、うん、これはこれで楽しい夜になりそうだね。
「ここのお風呂は初めてですが、思ったより大きいのですのね」
軽く目を見張る熊野。そう、ここのお風呂は広いんだ。もともと、大人数が暮らす事も想定していたみたいだからね。
「うわーっ、ひっろ。
響っていつもこんな広いお風呂に入ってるの?」
妙にきらきらな瑞鶴。私は頷く。
「ここしかないからね。
暮らしているのは、私と、司令官と、大鳳の三人だけだけど」
「空いてるなら鈴谷もここで暮らしたいんだけどー
っていうか、提督と一緒に暮らしたいんだけどー」
「それはだめだ」
絶対にね。
「ぶーぶー」
ブーイングは当然無視。さて、お風呂に入ろうかな。
さっさと体を洗う。電が熊野に髪を洗われて心地よさそうにしている。面倒見いいからね、彼女は。
「そういえばさ、響」
「ん?」
ツインテールを解いて、軽く頭を振った瑞鶴が、
「響って、えーと、言仁君の秘書艦、よね?」
「そうだよ」
「鈴谷もやりたーいっ」「僕もまた秘書としてここで暮らしたいな」「夕立も提督さんのお手伝いをしたいっぽいっ!」
「うるさいよ後ろ」
ブーイングは当然無視。
「って、時雨も?」
「響が来る前はね。
先生にいろいろと教えてもらってたから、それで助言をしたりしていたんだ。……ただ、うん、お昼寝していた提督の寝顔があまりにも可愛くて、ついつい一緒の布団で抱きついてお昼寝しちゃってね。
それがばれて響に蹴りだされたんだ」
「その時の私には今でも英断を讃えたいと思ってるよ」
私の言葉に鈴谷と夕立がこくこく頷く。
「それはさすがにはしたないのではなくて?」
困ったように告げる熊野。時雨は頷いて「わかってるよ。提督以外にはしないさ。ただ、……仕方ないんだ。可愛くて」と、応じる。
「鈴谷も知ってる。
あれ、絶対に反則だよねー」
「提督さんの寝顔、夕立は見た事がないっぽいっ!」
愕然とする夕立に、のんびりとしていた電は、びしっ、と指を突き付けて「出遅れなのですっ!」
あ、夕立が沈んだ。
「あら、それはわたくしも是非見てみたいですね」
「いや、子供の寝顔はいいんだけど」
「よくないよ。
瑞鶴、それなら司令官の寝顔について小一時間は語ろうじゃないか」
「僕も参加するよ。
頭にあるあらゆる語彙を駆使して、提督の寝顔の愛らしさを語ろう」
「鈴谷もーっ」
「いらないわよっ!」
時雨と鈴谷と組んで瑞鶴の周囲をわらわらしていたら怒鳴られた。それは残念だ。
「いや、なにか選択の基準とかあるのかなーって思ってね。
陸奥とか、秘書艦になりたい、って言ってたし」
「私は司令官に直接改装してもらってね。
それでだよ」
まあ、いわゆる提督の行う改装とは違うけどね。……うん。
「ふふ、司令官の手が加わった特別な艦。……凄くいいね」
じとーっとした視線が突き刺さる。けど、無視して胸を張る。ぽつり、声。
「豊浦も交じってるじゃないか」
「ていっ」
「わぷっ? って、何するんだい」
あまり思い出したくない事を言い出した時雨にお湯をかける。
「豊浦?」
「司令官と同じ、魔縁だよ。
彼は苦手なんだ。あまり思い出させないで欲しい」
「わたくしはお会いした事ありませんわね。
あまり、この都には来ないのかしら?」
「来て欲しくない」「それについては同感」
私の言葉に時雨は頷く。そう、あまり会いたいタイプの人じゃないからね。
「時雨は、結構前からここにいたのです?」
ぽやー、となにか、とろけていた電。時雨は頷いて「そうだよ。提督とここで都の運営について勉強したりしていたんだ。あの頃はほとんど誰もいなくて、いぶきとかが遊びに来るくらいだったかな」
「今じゃあ結構賑やかになったわよねえ。……まあ、あまり喜べる事でもないか」
瑞鶴が困ったように言う。同感だ。つまり、それはそれだけ艦娘が死んだ、と言う事になるのだから。
「ふふ、あの頃の、一緒に勉強を頑張ってうんうん唸ってる提督も可愛かったな。
今じゃあ立派になってるけどね」
「その、ちょくちょく惚気を叩き込むのはそろそろやめてほしいのです」
「同感」
電の言葉に瑞鶴は頷く。非常に心外。
「えーっ、夕立はもっと提督さんの事を知りたいっぽいー」
「よし夕立。お風呂から出たら二人きりでお話しをしよう。
僕と司令官の思い出話だからね。大丈夫。明日になるまで頑張れるよ」
「…………流石にそれは遠慮したいっぽい」
きらきらとした時雨に、夕立は半端な笑顔で応じた。
「それじゃあ、パジャマパーティー、開始っ!」
「どんどんぱふぱふー、なのですっ!」「どんどんぱふぱふー、っぽいっ!」
よし。
「それじゃあ、司令官について語ろう」
「僕は頑張るよ」
「…………あんたら、部屋出て二人で語ってなさいよ」
瑞鶴に追い払われそうになった。時雨と首を横に振って寝転がる。
「お茶が入りましたわよ。
それとお菓子も、……まあ、この状況、だらしないなんて言う方が無粋ですわね」
「おー、わかってんじゃーん」
苦笑する熊野にけらけら笑う鈴谷。
「それじゃあ、お菓子をぽいぽいぽーいっ!」
受け取ったお菓子は夕立が適当にそこら辺へ。電が転がって一つを開けた。
「これは、電の好物っ、雷おこしなのですっ」
「飲み物は、紅茶。こぼさないでくださいね」
「もちろん、提督の物を汚したりはしないよ」
「そういえば、提督の寝室はどこ? 鈴谷見てみたいんだけど」
「却下」
「えーっ!」
「鈴谷っ! いくらなんでもいない人の私室を勝手に覗きこむなんて、無作法じゃなくて?」
じと、とした視線に鈴谷はそっぽを向いて「はーい」
「提督さんのお部屋。すっごく整理されているっぽい」
したり顔の夕立に鈴谷は突っ伏した。
「な、なぜ?」
「提督さんのお部屋をよく掃除してるっぽいっ!」
「次鈴谷っ!」
「だめだ。鈴谷に掃除させるくらいなら私が掃除をする」
「えーっ、鈴谷もーっ! 鈴谷も提督の部屋に入りたーいっ!」
「駄々こねないでくださいません? 妹として恥ずかしいですわっ!」
「ぶーっ」
「そういえば、最近は男の人もよく見かけるのです。
鳳翔さんのお店でお酒呑みながらわいわいしていたのです。熊野さんのお店はどうなのです?」
たぶん、大江山の鬼たちだね。電の問いに熊野は項垂れた。
「紅茶より、緑茶がいいと言われましたわ。
お菓子も、甘すぎるとか、少ないとか」
「まあ、熊野の喫茶店は、あまり男性向きじゃないかもしれないね」
時雨も苦笑する。そう、大江山から鬼たちが来て、この都は少しだけ賑やかになった。その事は、少し、嬉しい。
時の止まったような穏やかな時間も好きだけど、こういうのも楽しそうだな。って期待できる。
まあともかく、
「け、けどっ! じょ、女性に対しては好評ですわよっ!」
「和菓子」
「…………ま、負けませんわっ!
絶対にっ! あの鬼たちに、紅茶とクッキーの素晴らしさを理解させてやりますわっ!」
「お、おおう、熊野が燃えてる」
なにか、和菓子にトラウマでもあるのだろうか?
「電たちのところにも鬼さんたちがどやどや来たのです。
最初は怖かったのですけど礼儀正しかったので安心したのです。けど、どわはははといきなり笑うのでびっくりなのです」
「笑い上戸っぽい?」
「それ、酒癖じゃないのかい?」
「結構よく笑うよ。あの鬼たち。割とどうでもよさそうな事で」
「酒好きで笑い上戸。
まあ、……なんて言うか、鬼らしいよね」
苦笑する時雨。うん、同感だ。ちなみに、
「ふふ、とはいえ私には勝てなかった。
ウオッカをジョッキで干せないのに勝とうなんて百年早いね」
ふっ、と格好よく笑う。
「下戸棲艦響に勝てる人なんて、そうそういないっぽい。
魔縁さん位っぽい」
「夕立、歓迎の宴会でぐらぐらしてたのです」
「うー」
電の言葉に頭を抱える夕立。ちなみに翌日は二日酔いでぽいぽい唸ってた。
「そういえば、確かに男の人いて珍しいなー、って思ってたけど、鬼?」
瑞鶴が首を傾げる。そういえば、彼女達はよく上にいたから知らないか。
「そうだよ。
ええと、竜宮と、大江山、それと、向こうからだけど飯縄山と鞍馬山、それと白峰山からも交流をって言う事で窓口が開いてる。
大江山とはいくつか行き来もあるよ。鬼がいる山だけど、瑞鶴も興味があったら行ってみるといい」
「鈴谷案内してあげようか? ちょくちょく遊びに行くし」
「危険はない、のよね。……なんか、鬼って聞くと凶暴なイメージあるけど」
「どわはははっ、って大声で笑う以外は気のいい人たちなのです」
「……いきなり笑われたらすっごく驚きそう。
っていうか、山?」
瑞鶴が首を傾げる。まあ、確かにね。
私達深海棲艦は海にある存在だからね。山、なんて珍しいだろうね。
ただ、
「司令官の縁故だね。鞍馬山と大江山は、白峰山はおじさん経由。……ただ、飯縄山はなんだろう?」
鞍馬山の天狗が来た時、司令官と知り合いだったらしい。すぐに打ち解けてた。白峰山はおじさんも一緒にいた。
けど、飯縄山はそうでもなさそうだったけど。
「それは守屋の紹介っぽい。
守屋、長野県での影響力高いっぽい。長野県の鬼とか天狗さん紹介してくれたっぽい」
「…………鬼? 天狗?」
瑞鶴がぐるぐると頭を抱える。熊野は苦笑。
「まあ、わたくしたちもいますし、そういうのがいてもいいのではないですの?」
「守屋は長野県にそういうの集めてたっぽい」
「なにか、企んでそうだね」
くすくすと楽しそうに笑う時雨。
「長野県は諏訪湖があるからね。
そこを中心に水運を強化するなら、艦娘を、戦いとは違う意味で欲しがるかもしれない。
人ではない存在、鬼や天狗が集まるのなら、艦娘の、暮らす先としては面白いかもしれないね」
「夕立も遊びに行きたいっぽいー
提督さんにお願いしてみるっぽいっ」
「守屋とは知らない仲じゃないし、いいんじゃないかな?」
たぶん。
「その守屋って、何?」
「司令官と同じ魔縁だよ」
「今は長野県にいるっぽい。たまに遊びにくるっぽい。
長野県も人減っちゃったから、鬼その他を集めてる。っぽい?」
「……結構、上もいろいろね」
軽く慄く瑞鶴「いろいろ見て回りたいよねー」と、鈴谷。
「あら? けど、それもいいですわね。
提督、人や艦娘に関わるのは戒めていますけど、それ以外は推奨しているようですし、わたくしもお菓子とか興味がありますわ」
「鬼は酒が凄いよー」
「…………それは遠慮しますわ」
きしし、と笑う鈴谷に熊野は苦笑を返す。あんまり、彼女も強くないからね。
「へー、いろいろあるのね。
基地にいたころは基地と海しか知らなかったわ」
瑞鶴が感心したように言う。応じるには時雨で「仕方ないさ、それが艦娘だからね」
「かもね」
苦笑。そう、それが艦娘の役割、……と思っている提督が多いのだろうからね。
だから、
「瑞鶴も、興味があるならそこに行ってみるといいよ。
なに、家はあるんだ。散策が終わったらここに帰ってくるといい」
私の、その言葉に瑞鶴は、きょとん、として、
「…………う、うんっ、……ま、それもそうよねっ!
せっかくの一軒家だもの、使わなくちゃ損よねっ!」
「……いや、一軒家についてはあまり言ったつもりはないのだけど」
なにか、琴線に触れたのかな?
ただ、……時雨がお菓子を一つまみ、食べて笑う。
「どちらにせよ。そう、お花見がどう転んでも、僕たち、こっちは楽しい事になって行く。
上も、楽しい事になっていればいいよね」
「そうだね、私も同感だ。
司令官のお土産話、今から楽しみだよ」
箱庭の世界もこうして少しずつ賑やかになる。