深海の都の話   作:林屋まつり

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 脱線その二。
 お花見お留守番組がのんびりするだけの閑話です。


四話 ― 脱線

 

「確かに受け取った。

 忙しいところすまないな」

 為朝さんの言葉に「いいよ」と応じる。

 そんなに忙しくないからね。今日を見越していろいろと仕事を調整してくれたのと、

「はあ、……これでこっちは終わり。疲れたよ」

 ぐたー、と机に突っ伏す時雨。彼女の助力のおかげだね。

「お疲れ」

 さて、為朝さんへに頼まれた物を渡して、こっちの仕事はこれで終わり、司令官も、もう会場に到着したかな。

「そういえば、為朝。

 おじさんもお花見に行ったんだよね?」

「主は《呪詛の御社》を消すと言っていたが、どうするのか」

「それも、その一環かい?」

 ぐたー、と伸びている時雨が視線を向ける。その視線の先には竜宮の宝物である二つの宝珠。

「そうだ。言仁には世話になるな」

「いいさ、司令官も特には気にしていないみたいだし」

 手を振ると為朝さんは謹直に頷いて部屋を出た。さて、

「お仕事はこれで終わり、と。……思ったより早かったね」

「仕事、僕がいたころより少なかったけど、提督が調整してくれたのかい?」

 問いに、頷く。司令官には気を使わせて、少し申し訳ないね。

 もっとしっかりしないと、

「もっとしっかりしないと?」

「…………考えている事を言い当てられると、面白くないよ」

 じと、とした視線を向けると時雨はくすくすと笑って、

「僕ならそう考える。って思っただけだよ。

 それで、当事者じゃないから言うけど、例え響がどれだけ優秀であっても、提督は事前にある程度仕事を片付けるだろうね。

 優しいのは美徳だけど、少し困るよね」

「そうだね」

 頷く。私も、優しい司令官は、好き。……けど、こういうところで気を使われたくはない、な。

「どちらにせよ仕事は終わりだよ」

「これ以上はやらないのかい?」

 少し悪戯っぽい時雨の言葉に、私は溜息。

「無理させない、っていうのも困ったものだよね」

 

「はーっ、……終わったあ」

「お疲れ様」

 来たのは瑞鶴。彼女は一つ伸びをする。

 彼女には都の哨戒をお願いした。……と言うか、駆けこんできた彼女にやる事をせがまれてお願いしてみた。

「あとは、ええと、他戸と、早良、っていう子がやるみたいよ。

 まあ、散策ついでらしいけど」

「了解。

 それで瑞鶴、今夜はどうする? 部屋はあるし泊まって行くかい?」

 司令官がいる時は絶対にしない提案。けど、司令官はいないからね。

「是非っ!」

 そして、嬉しそうに応じる瑞鶴。時雨は首を傾げて「翔鶴は、……いないか。けど、元の僚艦の陸奥や金剛と、比叡もいるんじゃないのかい?」

「いるんだけどねえ」

 はーっ、と。肩を落とす瑞鶴。「なにかあったの?」

「いやね。

 ほら、……えーと、言仁君? お花見に行ったでしょ? 翔鶴姉と長門と」

 頷く。もちろん、私も行きたかったけどね。けど仕方ない。司令官の留守を護るのも秘書の役割だ。

「そうだけど、瑞鶴も行きたかったのかい?」

「まあ、お花見は興味あるし、翔鶴姉と遊び歩くのはやりたかったんだけどね。

 じゃなくて、ほら、……えーと、なんて言うの? 陸奥と、あと、金剛が言仁君の事気に入っててね。それで、一緒に行けなくてやさぐれてるのよ。

 雰囲気悪くてさ、正直逃げたかったわ」

「お疲れ様」

 …………む。……いや、瑞鶴に言っても仕方ないか。

 苦笑する時雨。

「ま、そういうわけで居座るわね。

 あ、なにか手伝える事があるならやるわよ?」

「ありがとう。

 私達はこれから食事にするけど、一緒に来る?」

「うんっ、行く行くーっ」

 居座ってもいいって言われたからか嬉しそうに瑞鶴。……いいけど、どれだけ戻りたくなかったんだろうね?

 

「と言うわけで、ご飯っぽいっ!」

 びしっ、と指を突き付ける夕立。それと、「ちょうどよかったですわ」

 微笑む熊野。司令官に呼んでもらった彼女。個人で喫茶店をやっているからか、結構料理上手なんだね。

「出来ましたわよ。

 少し待っててくださいな。夕立さん、お手伝いをお願いしますわ」

「了解っぽいっ!」

「あ、私も手伝うわっ」

 慌てて後に続く瑞鶴。さて、

「それじゃあ、僕たちは少し待ってようか」

「そうだね」

 すとん、と椅子に腰を落とす。

「あんまり変わってないね」

 辺りを見渡しながら時雨。

「まあね。それなりに掃除はしているから。

 最近は夕立が勝手にやってるけど」

「そうだね。いい娘だよね、僕の自慢の妹だよ。

 響、どうだい? お嫁さんに」

「なに訳の分からない事を言っているんだい時雨?」

「っていうか、なんで夕立が響のところに嫁がなくちゃいけないっぽい?」

 じと、とした口調で夕立登場。私もなんで夕立をお嫁さんにしなくちゃいけないのかわからない。

 時雨はしたり顔で頷く。

「ほら、そうすれば一番厄介な響がいなくなる。

 僕は円満に提督のお嫁さんになれるんだ」

「あの時に君を蹴りだした私の判断は間違えていないね」

「響に同意っぽい」

 本当に危険だ。大鳳もそうだけど、時雨も油断できない。

「喧嘩はそれまで、せっかくの食事なんだかそんな雰囲気は止めてくださいな」

 苦笑する熊野。一息。

 まあ、……なんだかんだで皆得難い友人だけどね。

 最後、瑞鶴も食事を並べて、さて、

「それでは、いただきます」

 熊野の言葉に皆が「「「「いただきます」」」」と、続いた。

 

「美味しーっ」

 目を輝かせる瑞鶴。熊野は嬉しそうに微笑んで「そう言ってくれるなら、作った甲斐がありますわ」

「うう、夕立はまだまだ修行不足っぽい。

 この味の再現にはどのくらい修業が必要かー」

 うむむ、と眉根を寄せる夕立。「勉強熱心ですわね」と、微笑む熊野。

「夕立は真面目ねえ」

「……真面目、…………うん、まあ、いろいろあったから、……っぽい」

 確かにそうだね。瑞鶴も、このあたりの事情は了解してくれているらしい。「そうなんだ」と頷く。

「そうだね。夕立。

 熊野を見習ってもっと料理を上達して欲しい。僕はそうしてくれると嬉しいよ」

「何が楽しくて時雨姉のために料理を学ばなくちゃいけないっぽい?」

 苦笑する夕立。うん、同感。

「そうですわね。夕立は、……提督にならいいのではないのでは?」

 楽しそうに笑う熊野。夕立も、少し言葉に詰まって「て、提督さんのためなら、が、頑張る、っぽい」

「言仁君だっけ? 人気者ね」

 ぱくぱくとご飯食べながら瑞鶴。そう、人気者なんだ。とても、とても困った事にね。……はあ。

「そうなんだ。人気者なんだよ。

 はあ、提督の事が好きな僕としては非常に困った事だよ」

 溜息をつく時雨。まったくもって同感だよ。

「……そ、そうなんだ。陸奥や金剛だけじゃないのね」

「…………いろいろ大変ですわね」

 そう、大変なんだ。……出来れば司令官が自覚してくれれば、もう少し楽なんだけどね。

 

 食事を終え、洗い物が終わったところで、声。

「ちぃーっすっ」「遊びに来たのですっ」

「あ、お客さん?」

「あら、そのようですわね。……これは、鈴谷と電ですわ」

 ぱたぱたと、入ってくる音。熊野には同感、声の主は、鈴谷と、電だね。

「おやつ持ってきたよーっ!

 夜更かししよー」

「経営者金剛さんが遊びに行ってるので、お菓子を銀蠅してきたのですっ」

 二人が持っているのは一抱えの袋。これでもかと入っているのはお菓子。

「あら、夜更かしですの?」

「熊野はしない? 寝るの早いもんねー」

「早寝早起きはレディの基本。

 とはいえ、そうですわね。たまにはお付き合いしようかしら」

「大歓迎っぽいっ!」

「確か、大きめの部屋あったよね。

 布団、何枚か持ち込んでおこうか。みんなで寝れるようにね」

 時雨の提案には賛成だ。……司令官がいないのは残念だけど、うん、これはこれで楽しい夜になりそうだね。

 

「ここのお風呂は初めてですが、思ったより大きいのですのね」

 軽く目を見張る熊野。そう、ここのお風呂は広いんだ。もともと、大人数が暮らす事も想定していたみたいだからね。

「うわーっ、ひっろ。

 響っていつもこんな広いお風呂に入ってるの?」

 妙にきらきらな瑞鶴。私は頷く。

「ここしかないからね。

 暮らしているのは、私と、司令官と、大鳳の三人だけだけど」

「空いてるなら鈴谷もここで暮らしたいんだけどー

 っていうか、提督と一緒に暮らしたいんだけどー」

「それはだめだ」

 絶対にね。

「ぶーぶー」

 ブーイングは当然無視。さて、お風呂に入ろうかな。

 さっさと体を洗う。電が熊野に髪を洗われて心地よさそうにしている。面倒見いいからね、彼女は。

「そういえばさ、響」

「ん?」

 ツインテールを解いて、軽く頭を振った瑞鶴が、

「響って、えーと、言仁君の秘書艦、よね?」

「そうだよ」

「鈴谷もやりたーいっ」「僕もまた秘書としてここで暮らしたいな」「夕立も提督さんのお手伝いをしたいっぽいっ!」

「うるさいよ後ろ」

 ブーイングは当然無視。

「って、時雨も?」

「響が来る前はね。

 先生にいろいろと教えてもらってたから、それで助言をしたりしていたんだ。……ただ、うん、お昼寝していた提督の寝顔があまりにも可愛くて、ついつい一緒の布団で抱きついてお昼寝しちゃってね。

 それがばれて響に蹴りだされたんだ」

「その時の私には今でも英断を讃えたいと思ってるよ」

 私の言葉に鈴谷と夕立がこくこく頷く。

「それはさすがにはしたないのではなくて?」

 困ったように告げる熊野。時雨は頷いて「わかってるよ。提督以外にはしないさ。ただ、……仕方ないんだ。可愛くて」と、応じる。

「鈴谷も知ってる。

 あれ、絶対に反則だよねー」

「提督さんの寝顔、夕立は見た事がないっぽいっ!」

 愕然とする夕立に、のんびりとしていた電は、びしっ、と指を突き付けて「出遅れなのですっ!」

 あ、夕立が沈んだ。

「あら、それはわたくしも是非見てみたいですね」

「いや、子供の寝顔はいいんだけど」

「よくないよ。

 瑞鶴、それなら司令官の寝顔について小一時間は語ろうじゃないか」

「僕も参加するよ。

 頭にあるあらゆる語彙を駆使して、提督の寝顔の愛らしさを語ろう」

「鈴谷もーっ」

「いらないわよっ!」

 時雨と鈴谷と組んで瑞鶴の周囲をわらわらしていたら怒鳴られた。それは残念だ。

「いや、なにか選択の基準とかあるのかなーって思ってね。

 陸奥とか、秘書艦になりたい、って言ってたし」

「私は司令官に直接改装してもらってね。

 それでだよ」

 まあ、いわゆる提督の行う改装とは違うけどね。……うん。

「ふふ、司令官の手が加わった特別な艦。……凄くいいね」

 じとーっとした視線が突き刺さる。けど、無視して胸を張る。ぽつり、声。

「豊浦も交じってるじゃないか」

「ていっ」

「わぷっ? って、何するんだい」

 あまり思い出したくない事を言い出した時雨にお湯をかける。

「豊浦?」

「司令官と同じ、魔縁だよ。

 彼は苦手なんだ。あまり思い出させないで欲しい」

「わたくしはお会いした事ありませんわね。

 あまり、この都には来ないのかしら?」

「来て欲しくない」「それについては同感」

 私の言葉に時雨は頷く。そう、あまり会いたいタイプの人じゃないからね。

「時雨は、結構前からここにいたのです?」

 ぽやー、となにか、とろけていた電。時雨は頷いて「そうだよ。提督とここで都の運営について勉強したりしていたんだ。あの頃はほとんど誰もいなくて、いぶきとかが遊びに来るくらいだったかな」

「今じゃあ結構賑やかになったわよねえ。……まあ、あまり喜べる事でもないか」

 瑞鶴が困ったように言う。同感だ。つまり、それはそれだけ艦娘が死んだ、と言う事になるのだから。

「ふふ、あの頃の、一緒に勉強を頑張ってうんうん唸ってる提督も可愛かったな。

 今じゃあ立派になってるけどね」

「その、ちょくちょく惚気を叩き込むのはそろそろやめてほしいのです」

「同感」

 電の言葉に瑞鶴は頷く。非常に心外。

「えーっ、夕立はもっと提督さんの事を知りたいっぽいー」

「よし夕立。お風呂から出たら二人きりでお話しをしよう。

 僕と司令官の思い出話だからね。大丈夫。明日になるまで頑張れるよ」

「…………流石にそれは遠慮したいっぽい」

 きらきらとした時雨に、夕立は半端な笑顔で応じた。

 

「それじゃあ、パジャマパーティー、開始っ!」

「どんどんぱふぱふー、なのですっ!」「どんどんぱふぱふー、っぽいっ!」

 よし。

「それじゃあ、司令官について語ろう」

「僕は頑張るよ」

「…………あんたら、部屋出て二人で語ってなさいよ」

 瑞鶴に追い払われそうになった。時雨と首を横に振って寝転がる。

「お茶が入りましたわよ。

 それとお菓子も、……まあ、この状況、だらしないなんて言う方が無粋ですわね」

「おー、わかってんじゃーん」

 苦笑する熊野にけらけら笑う鈴谷。

「それじゃあ、お菓子をぽいぽいぽーいっ!」

 受け取ったお菓子は夕立が適当にそこら辺へ。電が転がって一つを開けた。

「これは、電の好物っ、雷おこしなのですっ」

「飲み物は、紅茶。こぼさないでくださいね」

「もちろん、提督の物を汚したりはしないよ」

「そういえば、提督の寝室はどこ? 鈴谷見てみたいんだけど」

「却下」

「えーっ!」

「鈴谷っ! いくらなんでもいない人の私室を勝手に覗きこむなんて、無作法じゃなくて?」

 じと、とした視線に鈴谷はそっぽを向いて「はーい」

「提督さんのお部屋。すっごく整理されているっぽい」

 したり顔の夕立に鈴谷は突っ伏した。

「な、なぜ?」

「提督さんのお部屋をよく掃除してるっぽいっ!」

「次鈴谷っ!」

「だめだ。鈴谷に掃除させるくらいなら私が掃除をする」

「えーっ、鈴谷もーっ! 鈴谷も提督の部屋に入りたーいっ!」

「駄々こねないでくださいません? 妹として恥ずかしいですわっ!」

「ぶーっ」

「そういえば、最近は男の人もよく見かけるのです。

 鳳翔さんのお店でお酒呑みながらわいわいしていたのです。熊野さんのお店はどうなのです?」

 たぶん、大江山の鬼たちだね。電の問いに熊野は項垂れた。

「紅茶より、緑茶がいいと言われましたわ。

 お菓子も、甘すぎるとか、少ないとか」

「まあ、熊野の喫茶店は、あまり男性向きじゃないかもしれないね」

 時雨も苦笑する。そう、大江山から鬼たちが来て、この都は少しだけ賑やかになった。その事は、少し、嬉しい。

 時の止まったような穏やかな時間も好きだけど、こういうのも楽しそうだな。って期待できる。

 まあともかく、

「け、けどっ! じょ、女性に対しては好評ですわよっ!」

「和菓子」

「…………ま、負けませんわっ!

 絶対にっ! あの鬼たちに、紅茶とクッキーの素晴らしさを理解させてやりますわっ!」

「お、おおう、熊野が燃えてる」

 なにか、和菓子にトラウマでもあるのだろうか?

「電たちのところにも鬼さんたちがどやどや来たのです。

 最初は怖かったのですけど礼儀正しかったので安心したのです。けど、どわはははといきなり笑うのでびっくりなのです」

「笑い上戸っぽい?」

「それ、酒癖じゃないのかい?」

「結構よく笑うよ。あの鬼たち。割とどうでもよさそうな事で」

「酒好きで笑い上戸。

 まあ、……なんて言うか、鬼らしいよね」

 苦笑する時雨。うん、同感だ。ちなみに、

「ふふ、とはいえ私には勝てなかった。

 ウオッカをジョッキで干せないのに勝とうなんて百年早いね」

 ふっ、と格好よく笑う。

「下戸棲艦響に勝てる人なんて、そうそういないっぽい。

 魔縁さん位っぽい」

「夕立、歓迎の宴会でぐらぐらしてたのです」

「うー」

 電の言葉に頭を抱える夕立。ちなみに翌日は二日酔いでぽいぽい唸ってた。

「そういえば、確かに男の人いて珍しいなー、って思ってたけど、鬼?」

 瑞鶴が首を傾げる。そういえば、彼女達はよく上にいたから知らないか。

「そうだよ。

 ええと、竜宮と、大江山、それと、向こうからだけど飯縄山と鞍馬山、それと白峰山からも交流をって言う事で窓口が開いてる。

 大江山とはいくつか行き来もあるよ。鬼がいる山だけど、瑞鶴も興味があったら行ってみるといい」

「鈴谷案内してあげようか? ちょくちょく遊びに行くし」

「危険はない、のよね。……なんか、鬼って聞くと凶暴なイメージあるけど」

「どわはははっ、って大声で笑う以外は気のいい人たちなのです」

「……いきなり笑われたらすっごく驚きそう。

 っていうか、山?」

 瑞鶴が首を傾げる。まあ、確かにね。

 私達深海棲艦は海にある存在だからね。山、なんて珍しいだろうね。

 ただ、

「司令官の縁故だね。鞍馬山と大江山は、白峰山はおじさん経由。……ただ、飯縄山はなんだろう?」

 鞍馬山の天狗が来た時、司令官と知り合いだったらしい。すぐに打ち解けてた。白峰山はおじさんも一緒にいた。

 けど、飯縄山はそうでもなさそうだったけど。

「それは守屋の紹介っぽい。

 守屋、長野県での影響力高いっぽい。長野県の鬼とか天狗さん紹介してくれたっぽい」

「…………鬼? 天狗?」

 瑞鶴がぐるぐると頭を抱える。熊野は苦笑。

「まあ、わたくしたちもいますし、そういうのがいてもいいのではないですの?」

「守屋は長野県にそういうの集めてたっぽい」

「なにか、企んでそうだね」

 くすくすと楽しそうに笑う時雨。

「長野県は諏訪湖があるからね。

 そこを中心に水運を強化するなら、艦娘を、戦いとは違う意味で欲しがるかもしれない。

 人ではない存在、鬼や天狗が集まるのなら、艦娘の、暮らす先としては面白いかもしれないね」

「夕立も遊びに行きたいっぽいー

 提督さんにお願いしてみるっぽいっ」

「守屋とは知らない仲じゃないし、いいんじゃないかな?」

 たぶん。

「その守屋って、何?」

「司令官と同じ魔縁だよ」

「今は長野県にいるっぽい。たまに遊びにくるっぽい。

 長野県も人減っちゃったから、鬼その他を集めてる。っぽい?」

「……結構、上もいろいろね」

 軽く慄く瑞鶴「いろいろ見て回りたいよねー」と、鈴谷。

「あら? けど、それもいいですわね。

 提督、人や艦娘に関わるのは戒めていますけど、それ以外は推奨しているようですし、わたくしもお菓子とか興味がありますわ」

「鬼は酒が凄いよー」

「…………それは遠慮しますわ」

 きしし、と笑う鈴谷に熊野は苦笑を返す。あんまり、彼女も強くないからね。

「へー、いろいろあるのね。

 基地にいたころは基地と海しか知らなかったわ」

 瑞鶴が感心したように言う。応じるには時雨で「仕方ないさ、それが艦娘だからね」

「かもね」

 苦笑。そう、それが艦娘の役割、……と思っている提督が多いのだろうからね。

 だから、

「瑞鶴も、興味があるならそこに行ってみるといいよ。

 なに、家はあるんだ。散策が終わったらここに帰ってくるといい」

 私の、その言葉に瑞鶴は、きょとん、として、

「…………う、うんっ、……ま、それもそうよねっ!

 せっかくの一軒家だもの、使わなくちゃ損よねっ!」

「……いや、一軒家についてはあまり言ったつもりはないのだけど」

 なにか、琴線に触れたのかな?

 ただ、……時雨がお菓子を一つまみ、食べて笑う。

「どちらにせよ。そう、お花見がどう転んでも、僕たち、こっちは楽しい事になって行く。

 上も、楽しい事になっていればいいよね」

「そうだね、私も同感だ。

 司令官のお土産話、今から楽しみだよ」




 箱庭の世界もこうして少しずつ賑やかになる。
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