闇に堕ちた元提督 作:きんにく同盟
ジャーナリスト 日野 祐一
フリーのジャーナリストであり、軍事関連の暴露を生業にしている。人呼んで堕落のハイエナ。
そんな彼は、海軍には裏切り者が居たという事を高齢の為退役した軍人から聞いた。
その名も、天川 卓也。
彼が何をしたのかは、大体の所知っている。海軍上層部複数の集団暗殺…
だが、ここで不思議に思うだろう、何故そこまでやった人が指名手配もされずに野放しにされているのだろう。
何故、緘口令が敷かれていた訳でも無いのに、彼の名前とその行為が烈火の如く広がらずに、ネットでよく目にする都市伝説で話が済んでいるのか。
私が調べてゆくと、彼の有能さと人柄が垣間見えた。様々な鎮守府の提督にアポイントを取り付け話を聞いた。
彼が有能であり、敗戦どころか、一度の部下の轟沈もしてない事。
人海戦術……まあそれ紛いの捨て艦戦法を提示した上層部の作戦立案書をこき下ろし、従う必要は無いと提示勢の結束を高めた事。
そして、当時と言っても5年前だが、天川少尉の同期がかなりのお偉いさんになっていた。階級は中将だった。
たしか……そうだ! 高城中将
天川少尉と男同士の同期であり、互いに切磋琢磨していたライバルだったというが、他の同期の話を聞く所、ライバルだったものの、天川少尉に一歩及ばなかったという。
だが、高城中将はその事にコンプレックスを持つわけでも無しに、純粋に天川少尉に敬意を示していた。
「わかるかね、せめてライバルと思いたかったのだ…」
それが、インタビュー終わりに聞いた言葉だった。
私の好奇心は俄然変わらない。
こんな事初めてだ。
今迄、様々な軍人と司令官をインタビューしてきたが、皆が張りぼての誇りと、何とか食って行こうとし、軍にしがみついている輩だった。
まあ、これも平和の証だろうと諦めていた。
私は、堕落のハイエナと呼ばれているが、本当は誇り高い男を書きたかった。そして、日本人の素晴らしさを共有したかったのだ。
そして今‼︎ 私は自身の職業を天職に変えるチケットを発見つけてしまった!!
待てなかった私は、天川少尉が司令官として赴任していた鎮守府の現司令官にアポイントを取り付けていた。
何度も門前払いをくらったが、執念が勝ったという形でインタビューの約束を取り付けたのだ。
そして、今日が約束の日……
私は、我慢出来ずに約束の時間より早く着てしまった。
だけど、部下の人にも話を聞きたいから、ちょうど良かったかな。
歩いて、見えてきたのは、工場?みたいな所だ。
……たしか工廠だったか?
鉄がぶつかるような音がするので、行ってみるとアッシュグレーの髪の毛をした美少女がいた。
見ていると、こちらに気づいたようなので、話しかけた。
「あ!すいません。今日インタビューの約束をした日野ですが……」
「はい? 司令官はここにはいませんよ?」
「実は、司令官だけでは無くてですね。その周りの人たちにも話を聞きたくてですね。歩き回っていたんですよ。」
「え!?」
「ですから、まず初めに貴女にお話だけでも聞いて頂きたいのですけれど………よろしいですか?」
「あ、はい!私で良ければ!!」
性格の良さそうな活発な娘だ。
美少女でスタイルも良い、ここまできたら欠点を探すのが難しいくらいだ。
「では、まずお名前を伺っても?」
「夕張っていいます!」
以下、日常生活を浅く聞き慣らしてゆく、相手の気分が良くなるように盛り上げて
それが、取材の鉄則だ。
「なるほど! では、最後に……天川少尉についつ聞きたいのですが?」
「知らない。」
「え………?」
その顔には、一瞬だったが凍り付くような能面みたいな無表情が張り付いていた。
いままではあんなに明るかったのにだ。
すると、急に元に戻って
「あ……すいません!!何せ私は、最近になって赴任したので……」
「そうだったのか!ゴメンね。あとさ、これから提督さんにインタビューするんだけど……」
「他の娘達は休日だから、ほとんどいないですよ。」
「そうか……残念だな……。あ!そうだ。ここの提督さんって女性なの?他の人が言ってたけど……」
「そうですよ。」
「そうか……ありがとう。」
「いいえ、どういたしまして」
私は、インタビューするのに手土産を買い忘れたのを思い出し、戻る。
手土産が有るのと無いのでは、対応の仕方がかなり違う人もいるのだ。
女の人なら、甘いのがいいのか?と考えを巡らせているとふと気づいた。
先程…………
最近に赴任してきたなら、何故あそこだけ声のトーンが変わって能面みたいな無表情になったんだ?
前からいた人達に聞いた?
それにしては、憎しみと蔑み、慕い、哀が混ざった矛盾したような感じがした。
私も素人じゃない。これで、飯食っているのだ。こういう勘は外さない。
でも、それなら…
真実は美しい物ではない。
だから、人は偽善に酔いしれ、真に迫ろうとする者を
異端として排除する。
ならば、真実とは一体……
ありがとうございました。
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また、書いていきます。