闇に堕ちた元提督 作:きんにく同盟
読んでいただけたら嬉しいです。
日野祐一
俺はなんとか、近くのケーキ屋にて、バームクーヘンを購入し、鎮守府に戻った。
最近、インタビューを行う頻度が多かったせいか、常識というのを欠いていたと思う。まさか、手土産を持参せずに来るとは……
夕張が話している時、ふと視線をやった場所に向って進んでいると、大正ロマンを感じさせる建物があった。
建物が発するノスタルジーに浸っていると、小さな女の子達が中から出てきた。服装は学校の制服だ。
普通の女の子が軍に何の用で来るか常識的に説明できないので、艦娘なのだろう。
しかし、艦娘というのは皆、容姿端麗なのか?
今時の女子にあれクラスはなかなかいない。
だが、声を掛けてもナンパではない。
インタビューなのだ! 俺は表情を柔らかくする。
「すいません、ここの提督さんと今日、インタビューの予定をした者ですが……」
小さな女の子4人は固まる。
話しかけられると思わなかったのだろう。
「提督さんはここにいるかな?」
すると、長い銀髪の女の子が
「いるけど、名前を聞いてもいいかい?」
「日野祐一です。提督さんと約束したんだけど、道に迷っちゃって……ハハハ。」
4人でヒソヒソ話している。すると、リーダーのポジションなのか、長くてストレートな黒髪をした女の子が前にでてきて
「少しいいかしら?」
と言った。
足が少し震えている。大人に話しかける機会が少ないのだろう。
「どうしたんだい?」
「提督の名前は?」
「草部雪美少尉…だったかな?」
それを聞くと、彼女たちの緊張が解れるのが分かった。
可愛いな……名前なんて、調べようがあるのに
薄い警戒心に自分自身が緩んで行くのを感じる。
「君たち、良かったらこれあげるよ……」
先程のケーキ屋で余分に買ったクッキーをあげた。取材にアクシデントは付き物だからね。
クッキーをあげてから、彼女たちの態度は軟化し、今では普通に話せるようになっていた。
あれから、分かったのは彼女たちは駆逐艦という位置づけである事。
それと、それぞれの名前だ。
リーダーシップを張っていて、俺の正体を恐いながらも暴こうとしていたのが暁ちゃん。あの黒髪ロングの娘だ。
そして、初めに話してくれた、銀髪の娘が響ちゃん。
さっきは黙っていたけど、話していく中で明るいと分かったのが雷ちゃん。
雷ちゃんとは瓜二つで大人しいこの娘は電ちゃん。
「へー、じゃあみんなは強いんだね〜」
「そうよ、まあ私は長女だから一番だけどね!」
ちょうど良い、この娘たちにもインタビューしてみよう。
先程の夕張だけでは、少なかったのだ。
「じゃあ、君たちにもお話を聞いていい?」
良いと、了承を得たので、個人に聞いてみることにした。
「そうだね〜、まずは電ちゃん。提督さんってどんな人?」
「はわわ!?……優しいのです……」
そして、個人に順番で聞いていく。
実は、これは作戦なのだ。
個人に当たり障りの無い質問をぶつけてゆき、範囲を広げていく、そして最後に全員に質問する。
最後の質問は全員なので、さほど重大な事では無いと錯覚させる事ができる。
「じゃあ、最後に質問ね。えーと、天川少尉って人知ってる?」
暁「うーん、知らないわ。何処の提督?」
響「………」
雷「知らないわよ、誰?」
電「わからないのです。」
「そうか……でも、ありがとう!場所は大体分かったからもういいよ。引き止めて悪かったね…」
4人と別れる。
はあ〜、収穫なしか……まあ、事件も事件だから、艦娘たちも変わっているのかな?
確か、4階だったな…
階段を上っていく、俺はエレベーターを極力使わない。健康に気を使ってというわけではなく、考えを纏めるのには、運動がいいと分かっているからだ。
コン…コン…コン…コン
あの子たち、可愛いかったなあ〜。
父性という物が自分の心にあったのだなと実感した。
だから……会話の違和感に気づかなかった。
人は当時者と傍観者に別れる。
当時者にしか分からない事もあれば
傍観者にしか分からない事もある。
だが、真実を理解するには
同時の視点からの情報が必要になる。
どうでしたか?
感想や要望、聞きたい事があればどうぞ。
そろそろ、ジャーナリストは終わりにします。