IS 漆黒の機影   作:シルフィードAS

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序章
序章 一


 正体不明(unknown)

 そう表示された機体は、俺の前でこちらを窺うように空を漂っている。その行動は、酷い既視感を覚えさせる。まるでロボットのような、そんな感じ。全身装甲(フルスキン)もそれに拍車をかけている。

 ふわふわと空に浮かぶ様は、隙だらけのようにも見れるが、その実全くと言っていい程に隙という隙が無かった。

 

「(何なんだ……。奴は。)」

 

 多分、こちらに攻撃の意思があればすぐさま迎撃するつもりなのだろう。

その上今さっきから通信が繋がらない。恐らくはジャミング用の電波でも流れているのだろうか。

 

 一瞬の逡巡。それで答えを出した俺は直ぐに行動へ移す。

 正体不明機の撃破及び鹵獲。

 

 俺の機体『ディアボロ』

 草薙重工イタリア支部にて開発された試作第三世代機。

 コンセプトは全局面完全対応万能機とのこと。

 この機体の特性として挙げられるのは、各種パッケージの保存・記憶・即時換装システムを保有していること。それはどんな(タイプ)のISでも的確に弱点を付くことが出来るということ。

 そんな最新鋭機なのだ。敗北は許されない。

 

 直ぐにパッケージ換装を行う。type-N(ノーマル)からtype-A(アサルト)へ。瞬間、『ディアボロ』は光に包まれる。換装は瞬時に終わり、新しい装備へと姿を変えた。

 奴は一瞬動揺した挙動を見せたが、直ぐに腰に吊られていたマシンガンを構えた。

 俺もビームカノンショーティを展開し、両手に一つずつ構える。

 戦闘は両者が同時に発砲した瞬間に幕を上げた。

 

 最初の一発は回避しあうことになった。一発目から当たってたまるか。

 まずはきっちり先制。戦闘の基本だ。先にダメージを入れられた後の戦闘にも影響を及ぼす。士気という形で。

 前に出ながらビームカノン・ショーティーを狙いを付けずに連射。距離はそこそこにある。詰めても問題ないくらいには。

 射線を予測させない攻撃に奴は戸惑いつつも回避し、マシンガンの特徴である面制圧力を生かした反撃を繰り出してくる。

 それを横に大きく孤を描きながら躱しつつ、武器を二振りのレーザーブレードに変更して、更に距離を詰める。

 レーザーブレードの火力は高い。基本的はシールドバリアに干渉されやすい為、機体そのものにはダメージは入りにくいが、シールドエネルギーは実体剣よりも大きく削ることが出来る。機体の鹵獲にはもってこいの装備だ。

 弾丸の雨の中をギリギリで潜り抜け、格闘戦に移行する。

 俺の方は既に格闘用の武装に対し、奴はまだ切り替え中だ。拡張領域(バススロット)からの切り替えで無い為か時間がかかるようだ。

 勿論、切り替えの隙を見逃すわけにもいかないので両手に構えたレーザーブレードを奴に向けて振り抜く。

 両方の剣が干渉しないように気を付けながら斬撃を繰り出して行く。奴も慌てて取り出した実体剣で応戦するも、こちらの方が手数も錬度も段違いで機体のシールドエネルギーを削っていく。

 そのまま押し切ろうとすると、突然警戒アラートがけたたましく鳴り響く。

 咄嗟に奴から距離をとり、アラートが鳴った理由を探す。

 それは直ぐに見つかった。

 ISだ。飛翔する人型などIS以外では実現していない……はずだ。

 俺はその機体へ目を向け、ロックオンする。

 しかし現れたデータは正体不明(unknown)

 現在交戦している奴と同じ。その上IFF(敵味方識別機)にすら引っかからない完全なunknownだ。

「IFFに引っかからないだと!?

 

 

 IFFに引っかからない、ということは目視以外では有効的な識別は出来ず、友軍機へのFF(フレンドリーファイア)の対策が取れないということだ。

 もし今が夜でなくて良かった。ハイパーセンサーも万能ではないのだから。目視による確認が難しくなればそれだけ戦いづらくなる。

 しかし

 

「友軍機でないのは確かだ。戦闘を続行、目標を撃破する!」

 

 目視で識別出来るのならさっさと識別して敵機なら撃墜すればいい。簡単な話しだ。

 幸いにも援軍はこちらに来るには時間が掛かる。目の前の敵くらいは撃破出来るはずだ。

 速やかに墜とす。それが一番この状況に適した行動だと判断し、正面の敵へ斬りかかる。

 再度今さっきと同じ状況へ戻す。手数と近接格闘の練度の差で追い詰めていく。

 装甲は一部は融解し、配線が飛び出ていたり、内部でショートでも起こったのか火花が散っているところも確認出来る。

 もはや虫の息、墜ちるのは時間の問題の様にも思える。しかしこの絶望的な状況であっても正面の敵は戦意を喪失していない。

 いや、むしろ気にも止めていない。そんな感じの動きを繰り返す。

 俺にはそれがロボットに見えて仕方ない。まるで入力されたプログラムに沿って行動している人形に見える。まるでマリオネット(吊られた人形)のようだ。

 ……まぁそんなことは鹵獲なり、撃墜した機体からデータを抜き出してでも解析すればいい。

 まずは目の前のボロボロの機体を墜として増援の敵も撃破してからでも遅くない。

 俺は右腕のレーザーブレードを逆手に持ち替え、左手の方を刺突の構えを取らせる。

 一気にスラスターを吹かして、得られた推進力を活かして左手の剣で奴の右胸を突き刺し、右手の剣で首への鋭い斬撃。

 確実に残ったシールドエネルギーを吹き飛ばし、絶対防御を発動させる攻撃だった。

 しかし、左手の剣は右胸を貫き、右手の剣は首を刎ね飛ばした。

それはISにとって有り得ない事象であった。

 

 

 

 

「なんだと……。こんなことが……こんなことが有り得るのかっ!?」

 

俺は困惑した。ISには『絶対防御』という完全無欠の最強の盾があるはずだった。どんな攻撃にも確実に耐えるはずだった。

しかし、眼下にはもはやISではなく、ガラクタと言った方が正しいような、そんなものの残骸があった。

 

「……っ。今はこんなことを考えている場合ではないな。」

 

今必要なのは思考ではない。敵機の情報だ。幸いにして敵の援軍はいつの間にか撤退していたようだ。レーダーに奴らは引っ掛かった。戻って来ても十分に反撃が可能だ。

それならばと俺は首なしISの残骸を調べ始める。

 

 

 

 

機体を地面まで下ろし、武装を解除する。

地面に墜落した残骸は少し地面にめり込んでいる。

装甲は融解しているか無いことが多く、動くことが難しいレベルにあった。

内装もショートしていたり、爆発して無かったりしていて無残な状態であった。

そして一番大事な操縦者(パイロット)だがこの機体には誰もいなかった。というか人間が乗るスペースを機械が全て占領していた。元々人間が乗る様に作成されていなかったようだ。

それに関しては正直想像はしていた。首を刎ねた際に本来なら血液の一つでも飛び散るはずだった。しかし飛び散ったのは火花とオイルだけ。それが暗に人間は中にはいないと言っているようでもあった。

 

世界にはISの無人化を目指す計画は元々あった。しかし機械にはISのコアは反応せず、結局ISは女性にしか使えない物とされてしまっていてどこも研究などしていないだろう。

しかしここにその無人機が存在している。これはおかしい。現在の技術では、作られるはずがないものだからだ。オーバースペックも甚だしい。

こんなもの(無人機)を造れるのは天災(篠ノ乃束)ぐらいしかいないだろう。それほど技術力の差は大きい。

 

「なんでこんな物を……。とりあえず持ち帰ろう。」

残骸を一纏めにし、『ディアボロ』の共通武装であるアンカーでグルグル巻きにして機体下部に吊るして撤収した。

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