やっぱり難しいものです。
「皆さーん。席に座ってくださーい。」
教室に入って来た先生が声を掛ける。皆ぞろぞろと席に着いた。
「全員揃ってますねー?ではHRを始めます!」
生徒達からはまばらな声しか上がらなかった。
山田先生(さっき黒板に書いていた)が反応の少なさに狼狽えていた。
「じゃ、じゃあ自己紹介から始めましょうか。
そうですね、廊下側の人達からお願いします。
あ、前の教壇の上でお願いします。」
廊下側の生徒が順番に自己紹介をしていく。その殆どが緊張している。誰だってそんなものだ。
俺だってお腹痛いし。
お腹の痛みから気を紛らす為に前の一夏を見る。
一夏はひたすら誰かに目線を送っていた。その先にいるのは黒髪ロングでつり目な女子だ。背も高そう。
あれが一夏の好みなのか。
「(おい一夏。)」
「(なんだ?アーク。)」
「(お前ちらちらあの女子見てるけど、タイプか?)」
「(いやいや。あれは幼馴染だ。)」
「(幼馴染ねぇ……。好きなのか?)」
「(なんでそうないてっ!?」
突然の破裂音と頭を抱える一夏。
その横には煙を上げる出席簿を携えた織斑先生。
「私語は慎まんか!馬鹿共が。」
「す、すみません……」
一夏に制裁を下した先生は教壇に立つ。
「先ずは馬鹿共の自己紹介でもさせるか。
織斑、前に来い。」
「はーい……」
一夏が呼ばれて壇上へ上がる。
「えっと…織斑一夏です。一年間宜しくお願いします。」
一夏がお辞儀をして戻ってくる。それと入れ替わりに俺も教壇に向かう。
教壇に立つといろいろな視線が飛んでくる。
単純な好奇心や明確な敵対心。
「アーク・ストライドだ。所属はイタリア本国と企業の両方。これから一年間宜しく頼む。」
これだけを言い終えて、席に戻る
それに合わせて先生が教壇へ上がる。
「諸君。私が一年間担任を務める織斑千冬だ。徹底的に叩き込んでやるからな。覚悟を決めておけ。」
言い切った瞬間、教室が振動する。
声で。
窓が震え、棚から物は落ちる。
黄色い声の爆発だった。
「(み、耳が……)」
一夏は悶えていた。
隣のレベッカは動かない。
俺は……大丈夫な訳無いよね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
二時間目。
織斑先生が教壇に山田先生は教室の前の方のドア付近に椅子を置いて座っている。
「さて、授業を始める前に決めなければいけないものがある。クラスの代表だ。」
代表?普通は委員長とかそういうのでは?
俺と同じ疑問を皆も持ったのか教室がざわつく。
「クラス代表はそのままの意味だ。クラス長と同じで会議への出席などの雑務を行う。それとクラス対抗戦にも代表として参加することになる。クラス代表は一年間固定の為心して決めるように。他薦自選問わずだ。」
委員長ねぇ。何処のクラスにもやりたがる奴は居るだろうし。
わざわざ面倒を背負う必要も無い。
そのうち誰かが出て来るはず。
「はい!織斑君を推薦しまーす!」
「賛成!」
一夏の名前が呼ばれると、同調して続ける奴が出て来る。
まー一夏だし。俺関係無いし。
「私はストライド君かな〜」
「私もー」
俺そんな面倒な事したく無いぞ。
「ふむ。織斑とストライドの二人か…。他には居ないか?居ないのならーー」
「ちょっと待ってくれよ!俺やるなんて少しもーーー」
慌てて立ち上がる一夏。
「お待ちください!」
机を強く叩いて立ち上がったのは金髪縦ロール。
確か、イギリスだったか?その代表候補生。確か課長からのメールにも名前があった気がする。
「そのような選出など有り得ませんわ! 第一ISに関して唯の素人である男がクラス代表だなんて恥晒しでしかありませんわ! このセシリア・オルコットにそのような屈辱に甘んじろと!? そもそも、実力からしてこのわたくしがクラス代表となるのは必然ですの! 大体、このような後進的な島国で暮らす事がどれだけ耐え難い苦痛で――」
早口でまくしたてるオルコット。
なんというか『今時の子』って感じだなぁ。
見た目からしてお嬢様なのに勿体無い。
そして、イギリスも日本と同じ島国だ。
「――イギリスだって大したお国自慢ねぇだろうが! 世界一不味い料理の覇者に何年君臨してんだか!」
あ……(察し)
「あっ、あなたねぇ……ッ! わたくしの祖国を侮辱しましたわね!」
「最初に侮辱したのはお前だろうが!アークも黙って無いでお前もなんか言ってやれ!
えっ。俺?
急に振られても困るが、二人の視線がそれを強要する。
「イタリア料理が一番美味い。」
クラスの一部が机から崩れ落ちる。
俺は真面目に言ったつもりだが。
「け、決闘ですわ!!」
「いいぜ。四の五の言うより遥かに分かりやすい。」
「ハンデは幾らですの?」
「んなもんいるか!」
「いいでしょう。ならばわたくしが勝利した暁には下僕…いや奴隷になって貰いますわ!」
「なら俺が勝ったら、頭を地面につけて貰うぜ!」
瞬く間に決闘へ流れて行く2人。
正直一夏では勝てないだろう。相手が同じ素人ならともかく、相手が悪すぎる。
代表候補生。それはオルコットの言う通り、エリートで無ければ務められない。その上、専用機持ち。この上ない程最悪な敵だ。
「話しは決まった様だな。来週の月曜日にアリーナで代表決定戦を行う。オルコット、織斑、ストライドの3名は各自準備をしておくように。」
織斑先生が話を打ち切る。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!オルコットと一夏はともかく、なんで俺も参加するんですか?」
この決闘は2人のものの筈。俺が戦う理由が無い。クラス長はやりたく無いから。
「貴様が選ばれたからだ。自薦他薦は問わんと言っただろう。何度も言わせるなよ。」
そう言って織斑先生は山田先生を連れて教室を出て行った。
ちょっと理不尽過ぎませんかねぇ……