IS 漆黒の機影   作:シルフィードAS

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第三話

結果から言えばこのクラス代表決定戦で一夏は勝てなかった。

先週から昨日までで、一夏に教えられる分は全て教え切った。

ISの操作の基本。相手(オルコット)の情報とその弱点。

戦いに対する心構え。シュミレーターも使って、ISの「感覚」を体に覚えさせた。

それでもたったの一週間。どれも等しく焼き付け刃(偽物)でしか無く、代表候補生(本物)のオルコットには届かない。彼女は一夏の何百倍もISと共に居たのだ。勝ち目は一夏には悪いが、無いに等しかった。

だが、それでも一夏は自分に出来る事を最大限発揮した。

あの射撃型のオルコットにブレードレンジに入るギリギリまで詰め寄った。

その頑張りに俺も応えなければいけないだろう。

たとえ、巻き込まれただけでも。

 

 

 

よしっ!

悪くない気分だ。熱くも無く、冷めても無く、その間。

最高のコンディションだ。

 

「アーク。頑張れよ!」

 

一夏が声をかけてくれる。

自分が負けたばかりだというのに、俺の応援をする。

中々出来ない事を平然とした笑顔でやる一夏はいい奴だ。

だから俺も笑顔でそれに応える。

 

「おう!俺の戦い、良く見ておくんだな!」

 

そう言って、俺はディアボロをカタパルトから射出させる。

 

「アーク・ストライド。ディアボロ、出撃する!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

アリーナに出た俺にオルコットから通信が入る。

 

「あら、逃げずにのこのこと出てくるとは。余りにも遅いのでわたくし、てっきり逃げたかと思いましたわ。」

「逃げる訳ないだろ。格下相手に、逃げる強者がどこにいるよ。」

「っ!わたくし相手に格下とは……。実力も理解していないのかしら?代表候補生と名乗っているようですが……所詮イタリアだと分からせてあげましょう。」

「へぇ……。イギリスのオンボロ貴族様には、世界のトップが何処か、ご存知無い様だ。

何処(イタリア)がNo.1だと教えて差し上げよう!」

 

照らし合わせたかの様に、試合開始を告げるブザーが鳴る。

瞬間、オルコットのスターライトMK-Ⅵ(スナイパーレーザーライフル)が火を噴いた。

それを射線から離れて躱し、type-Sへ換装する。

今回のtype-Sは前回のプリセット装備では無く、自由に組換えてあるカスタムバージョンだ。

アサルトライフルもより大型のものにへ更新されている。

そのアサルトライフルを二丁、展開しての射撃。

集弾性の高さを活かしてオルコットを狙う。

射撃姿勢のまま、動きの無かったオルコットにそれなりの数が当たる。

そのまま、射撃を続ける。

オルコットからも、反撃として、レーザーが放たれるが、直撃弾はまだ無い。……それでもレーザーということもあり、エネルギーは削られるのだが。

そんな攻撃の応酬が少しの間続く。

 

「成る程、只の案山子では無いということですか。」

「当たり前だろ。代表候補生なんだ。強いのが前提条件。お前もそうなんだろ?」

「当然ですわ。わたくしも、少々本気を出しましょうか。」

 

オルコットはスターライトMK-Ⅵのレバーに手を掛けて、

強く引いた。

 

「ここからのわたくしは少々違いますわよ!」

 

スターライトMK-Ⅵから放たれるのは、単発レーザー。

幾ら火力と速度が高かろうが当たらなければどうということは無い。

そう思った俺はサイドブーストでレーザーを躱そうとスラスターを軽く吹かせた。

その俺に飛んで来たのは、単発レーザーでは無く、細かなレーザー弾の嵐。

スターライトMK-Ⅵから今迄とは毛並みの違うレーザーが放たれて俺は慌てて上へ、瞬時加速(イグニッションブースト)で緊急回避をする。

 

「くそっ。なんて奴だ。無茶苦茶しやがって。」

 

レーザーの弾幕から逃げ切り、瞬時加速がタイミング良く切れる。スピードが落ち、PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)をアクティブ。

PICでオルコットの方を向き直す瞬間、

俺にレーザーが直撃する。

 

 

 

「(決まりましたわ!レーザーマシンガンの弾幕から抜け出して一息ついた所へ、フルチャージ済みのレーザーライフルの直撃。これを避けられた方は今迄、誰も居ませんわ。)」

 

わたくしはいけないとわかりつつもつい、これが決まると笑みが零してしまう。

 

「(……いけない癖ですわね。これも。何とかしなければ。)」

 

自分をそう戒めつつ、相手……アーク・ストライドを見る。

レーザーが直撃し、吹き飛んで行った彼には、情けない父親が重なって見えた。

 

「(所詮、男などこんなものです。口だけはまあ、達者でしたが。)」

 

腰部に展開していたブルーティアーズを収納しようとしたとき、そのうちの一基が突然爆発した。

その上、別の一基も爆発に巻き込めれて誘爆する。

その爆発を懐で受けてしまい、エネルギーは残り7割を切る。

あの男を睨むが、笑っている。

 

「(何ですの。あの男は。何故、笑えるのですか!)」

 

 

 

 

 

 

「(ふーっ。何とか、決まったぜ……。)」

 

レーザーの直撃を受け、吹き飛んでしまったが、幸いにも胸部装甲が厚い部分で、絶対防御は発生しなかった。

ダメージが想像より少ないとはいえ、

わざと倒れたままで、少しの間、動け無い演技をする。

そして、オルコットが腰のビットを戻す瞬間に、予め右手に展開しておいた、LBRR(ロングバレルレーザーライフル)で狙い撃った。

スコープを覗かず、ISの照準支援のみでの狙撃になったが、幸いにも外すこと無く、二基のビットの破壊と本体へのダメージを与えることが出来た。

 

(油断している所に決まったとはいえ、ダメージレースは俺が負けてる。6割と5割とはいえ一割の差は大きい。)

 

もう気は抜けない。

気を引き締めて再度、中距離での射撃戦に持ち込む。

二丁構えた1アサルトライフルで弾幕を広範囲に張りつつ、レーザーマシンガンを避け続ける。

狙撃には近く、マシンガンの弾幕には遠い。ISのマシンガンは近距離寄りで使われる為、有効射程が短い。アサルトライフルも同様だが、こちらの方が集弾性能が高いのでまだ戦える距離だ。

その距離を意識してとり続ける。

この戦法は防御主体だ。自身が構える武器では無く、相手の武器を優先した構え。

待ち続ける。エネルギー切れ、弾薬切れ。そして集中力が切れるその一瞬を。

待ち続ける。

 

 

薄い弾幕はプレッシャーとしては軽く、回避は容易だった。

そんな百日手の様な状況を崩したのはオルコットだった。

途中から自身の弾幕形成にビットを混ぜ始めたが、一向に有効打を与えられない。

苛立つオルコットはビットを更に展開すると、こちらへとジグザグとした機動を行うビットで新たな弾幕を形成し始めた。

 

このオルコットが操るビット「ブルー・ティアーズ」は、自身の脳波によって初めて機能する。

自機の周囲に配置して固定砲台として使うので無く、敵機の周囲に配置してこそ真価を発揮できる状態になる。

つまり、この局面まで、オルコットは本気を出して居なかったということになる。

様は、舐められていたのだ。

 

「やってくれるじゃあないか。本気を出して居なかったとは。」

「賢い獅子は最適を尽くすものですわ。非難を受ける謂れは無いですの。」

 

俺たちは、会話をしながらでも戦闘を続けている。

ビット(ブルー・ティアーズ)から放たれるレーザーの雨を躱しつつ、アサルトライフルで応戦をする。

展開されたビットは全部で16基。ここまでで破壊出来たのは2基。これはかなり危ない。アサルトライフルも決して装弾数は大型へ変更したとはいえ、多くは無い。収納すれば装填も可能だが、今は弾幕を張れる武器の方が良い。

結局武器は変えることなく射撃を続ける。

オルコットが八基のビットとマシンガンモードのスターライトMK-Ⅵで弾幕を張りつつ、残りの六基をこちらへ配置してくる。

流石に包囲されるのは不味い。

背後を取られないよう、バリアーまで下がる。

そこでtype-Fへ換装し、セルを一つ使い、ミサイルを放つ。

 

 

「考えたな……。ストライド。」

「……?寧ろオルコットさんじゃないですか?あそこ迄ストライド君を追い詰めたのは凄いですよ!」

「ストライドは自分から下がったのだ。」

「でも何故です?あのまま中距離戦を仕掛けるなら、下がらなくても良いですし、ビットから距離を取るなら上下の動きで充分な筈です。その上パッケージ変更だなんて……。」

「あのパッケージは防御型の筈だ。大方バリアーまで下がり、ビットに背後を取らせないようにして弾幕でも張るのだろうな。」

 

 

 

ミサイルを放ちつつ、別兵装へ切り替えていく。

腕にはマシンガン。両肩には二連リニアレールガン。アンロック・ユニット(非固定浮遊部位)に12連VLSミサイルからハイレーザーキャノンを二門。

兵装変更している間にミサイルの爆炎も晴れた。

爆炎から出て来たオルコットは何発か掠めたか、装甲が割れている部位がある。

 

「味な真似を……!その姿……それがパッケージ・シフトですか。」

「へぇ……。良く知ってるね。公式の場に出したのは学園に来てからなんだが?」

「独自の情報網がございましてよ。」

 

マシンガンで弾幕を張りつつ、リニアレールガンとハイレーザーキャノンで狙って行く。

オルコットのビットに囲まれないようにしつつ、バリヤに沿うような機動を続ける。

ビットの攻撃力では、正面装甲は抜けない。マシンガンモードのスターライトMK-Ⅵも同様だ。

怖いのはスナイパーモードのスターライトMK-Ⅵ。

連射は其処まで早く無い様なので速やかに終わらせたい。

スターライトMK-Ⅵのマシンガンを左肩部の追加装甲で受けながら、ハイレーザーキャノンでオルコット自身をしつこく狙う。

マシンガンを受け続ける追加装甲は緩やかに融解していく。まだ耐えていられるが、それも長くはない。速やかに撃破しなければ。

 

 

装甲強化型。それはISとしては邪道と言える存在。

高機動。

高火力。

それがISにおける強さの指標。

「(愚かですわ……。幾ら装甲が厚かろうと、弱点が無い機体などない。絶対防御が発動すればシールドエネルギーは5割は持っていかれる。それも、分からないとは。やはり男は愚劣ですわね。)」

 

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