オルコットを辛くも退けた。
彼女は強い。少なくとも、type-Bとtype-Fは今後、彼女には通用しないかもしれない。
「やったな!アーク!」
「ああ!……薄氷の勝利って奴だがな。正直、次やって勝てる気がしない。」
「確かに結構ギリギリだったもんな。でも今勝ったのはアークなんだ。もっと胸張れよ!」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。言っとくがこのあとは俺との対戦だぞ?そんなんで大丈夫なのか?」
「そうだったな……。まあ大丈夫だ!アークに教わったことと、オルコット戦の経験を活かして見せるぜ!」
「ほぉー。大した自信だ。漢として、無様な姿だけは見してくれるなよ。」
「あったりまえだ!あんま自信過剰だと、俺が
「言うじゃねーか!……おっと、もう時間だ。
一夏!気合い入れて掛かって来い!」
「おうよ!俺の全力をぶつけてやるぜ!」
時間もないので、一夏との会話を打ち切り、ディアボロの置かれたピットへ走って向かう。距離はあまり無いので直ぐに到着する。
自動ドアが開いて、中に飛び込む。
ディアボロは……あった。殆どが修理されている。
30分足らずで此処まで修復されるとは……IS学園、侮れんな!
「あっ!ストライド君!やっと来ましたか!もう試合始まりますよ。急いで下さい!」
「山田先生!了解です。直ぐ
「はい!もう修復は完了してます!」
「ありがとうございます。じゃあもう行きます!」
そう言って、直されたディアボロに乗り込む。
システム、オールグリーン。何時でも行けるな!
type-Sへ換装を終え、ディアボロをカタパルトへセットする。正直
「もう出てもいいですか?」
「はい!大丈夫ですよ。」
「じゃあ……ディアボロ、出ます!」
カタパルトによって速度の乗ったディアボロはアリーナ中央まで、飛び出した。
「来たか!アーク!」
「待たせたか?」
アリーナのボルテージは最高潮!闘うには最高のステージだ!
「織斑、ストライド。準備はいいな?」
「「勿論っ!」」
「よろしい。試合開始だ!」
織斑先生が開始を告げ、ブザーが鳴った瞬間、一夏は
「先手必勝だっ!」
「突撃なんざ甘いぜ!」
飛び込んできた一夏の肩を踏みつけて、上をとりつつ、
「さあオルコット戦の復習といこうか!」
「望むところだ!」
後ろに下がりつつ、一夏へとレーザーを叩き込む。が、一夏も案山子ではない。壱零停止による緩急、三次元螺旋機動(教えてない)を駆使して、被弾を避けている。
「良い動きだ!けどな、隙だらけだぜ!」
一夏の両サイドへ、わざと外したレーザーを置くように撃つ。
一夏の次の動きを上下の機動のみに制限させることが出来る。
そうなれば、一夏は上に逃げる。そこを撃ち抜くって寸法だ。
「うおっ!あぶね!」
俺の狙い通りに一夏は上に逃げる。
「そこだ!狙い撃つ!」
放った三発のレーザーは、右肩、胸部、
レーザー自体には衝撃はあまりないのだが、流石はロングバレルライフル。
吹き飛び、地面に転がる一夏だったが、その顔には勝利を諦めていない、不敵な笑みが浮かんでいる。
「まだ終わってないぞ!アーク!」
「当たり前だ!仕切り直しといこうぜ。一夏!」
試合開始時と同じ位置から、再開する。
右手にギミック内蔵ブレード。左手に
一夏に体で覚えさせてやる。近接機の恐ろしさを。
「それはブレードのモードか?」
「ああ。
瞬時加速で一気に彼我の距離を詰める。衝撃強化散弾銃の射程は短く、効果的な運用には、ブレードレンジ一歩手前まで距離詰めるしかない。
一夏は多分、カウンターを狙っているんだろう。ブレードを下げている。
ならば。一瞬、サイドブーストを吹かし、フェイントで一夏の思惑を崩す。
正面を通り抜け、一夏の側面に衝撃強化散弾銃を突き出し、先ずはワントリガー。
一夏がブレードの腹で受けようとするが、それは悪手。この場合の正解は、着弾に合わせて距離を置くことだ。
この銃は並の散弾銃ではない。ヒットストップのみに狙いを絞った、近接特化仕様。
一夏はその特性が見破れなかった。それ故、防御の為の行動が
一夏自身の首を強く締めた。一夏の動きが、ほんの僅かの時間、完全に静止する。
そのチャンスを俺が見逃すわけもなく、
一夏へとブレードを叩きつけた。
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シャワーから流れるお湯が身体の上を流れて行く。
あまり高くない温度に設定されたそれは、セシリア・オルコットのヒートアップした頭を緩やかに冷ましていく。
「(アーク・ストライド……。イタリア代表候補生で世界2番目の男。)」
あの男も、織斑一夏も。
自分が見てきた男とはまるで違っていた。
卑屈で、軟弱で、女の視線から避けようと、隅で縮こまっているのが男。そんな認識を打ち壊すような男だった。
一人は経験の薄さを意地と気合いで埋めようとしてきた。
一人はどんな局面からでも、勝利を掴み取らんとする、必勝への意思。
今の男達には、どちらも欠けたものである
その印象は記憶の奥底へと、痛烈に刻みつけられた。
男=軟弱。という固定観念を根底から崩すには、あまりにも強すぎた。
「(もっと……もっと闘いたい。闘い、打ち勝ち、さらなる高みへ、登り詰めたい!)」
そして、隠れていた闘争本能を目覚めさせるには丁度良かった。
古来、貴族とは軍人であった。闘争という長い歴史があるのだ。
彼女の、オルコットの家は、イギリスの名門貴族であり、その歴史が長いことは想像に難くない。
彼女には、オルコットの血が通っている。長い長い闘争が育んだ血が、流れている。