IS 漆黒の機影   作:シルフィードAS

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第五話

オルコットを辛くも退けた。

彼女は強い。少なくとも、type-Bとtype-Fは今後、彼女には通用しないかもしれない。

 

「やったな!アーク!」

「ああ!……薄氷の勝利って奴だがな。正直、次やって勝てる気がしない。」

「確かに結構ギリギリだったもんな。でも今勝ったのはアークなんだ。もっと胸張れよ!」

「嬉しいこと言ってくれるじゃないか。言っとくがこのあとは俺との対戦だぞ?そんなんで大丈夫なのか?」

「そうだったな……。まあ大丈夫だ!アークに教わったことと、オルコット戦の経験を活かして見せるぜ!」

「ほぉー。大した自信だ。漢として、無様な姿だけは見してくれるなよ。」

「あったりまえだ!あんま自信過剰だと、俺が大物食い(ジャイアントキリング)しちまうぜ?」

「言うじゃねーか!……おっと、もう時間だ。

一夏!気合い入れて掛かって来い!」

「おうよ!俺の全力をぶつけてやるぜ!」

 

時間もないので、一夏との会話を打ち切り、ディアボロの置かれたピットへ走って向かう。距離はあまり無いので直ぐに到着する。

自動ドアが開いて、中に飛び込む。

ディアボロは……あった。殆どが修理されている。

30分足らずで此処まで修復されるとは……IS学園、侮れんな!

 

「あっ!ストライド君!やっと来ましたか!もう試合始まりますよ。急いで下さい!」

「山田先生!了解です。直ぐ出撃(出れ)ますか?」

「はい!もう修復は完了してます!」

「ありがとうございます。じゃあもう行きます!」

 

そう言って、直されたディアボロに乗り込む。

システム、オールグリーン。何時でも行けるな!

type-Sへ換装を終え、ディアボロをカタパルトへセットする。正直これ(カタパルト)いらん気がするけど。飛んで自分で出ればいいじゃん。

 

「もう出てもいいですか?」

「はい!大丈夫ですよ。」

「じゃあ……ディアボロ、出ます!」

 

カタパルトによって速度の乗ったディアボロはアリーナ中央まで、飛び出した。

 

「来たか!アーク!」

「待たせたか?」

 

アリーナのボルテージは最高潮!闘うには最高のステージだ!

 

「織斑、ストライド。準備はいいな?」

「「勿論っ!」」

「よろしい。試合開始だ!」

 

織斑先生が開始を告げ、ブザーが鳴った瞬間、一夏はブレード(雪片弐型)を片手に下げて、突撃をかましてきた。

 

「先手必勝だっ!」

「突撃なんざ甘いぜ!」

 

飛び込んできた一夏の肩を踏みつけて、上をとりつつ、LBRR(ロングバレルレーザーライフル)を展開する。

 

「さあオルコット戦の復習といこうか!」

「望むところだ!」

 

後ろに下がりつつ、一夏へとレーザーを叩き込む。が、一夏も案山子ではない。壱零停止による緩急、三次元螺旋機動(教えてない)を駆使して、被弾を避けている。

 

「良い動きだ!けどな、隙だらけだぜ!」

 

一夏の両サイドへ、わざと外したレーザーを置くように撃つ。

一夏の次の動きを上下の機動のみに制限させることが出来る。

そうなれば、一夏は上に逃げる。そこを撃ち抜くって寸法だ。

 

「うおっ!あぶね!」

 

俺の狙い通りに一夏は上に逃げる。

 

「そこだ!狙い撃つ!」

 

放った三発のレーザーは、右肩、胸部、非固定浮遊部位(アンロックユニット)を穿つ。

レーザー自体には衝撃はあまりないのだが、流石はロングバレルライフル。白式(一夏)を吹き飛ばすには充分だった。

吹き飛び、地面に転がる一夏だったが、その顔には勝利を諦めていない、不敵な笑みが浮かんでいる。

 

「まだ終わってないぞ!アーク!」

「当たり前だ!仕切り直しといこうぜ。一夏!」

 

試合開始時と同じ位置から、再開する。

LBRR(ロングバレルレーザーライフル)を収納し、type-Bへ換装。type-Sのままでも別に良いんだが、一夏に合わせて近接型でいくとしよう。

右手にギミック内蔵ブレード。左手に衝撃強化散弾銃(ヘビーショットガン)

一夏に体で覚えさせてやる。近接機の恐ろしさを。

 

「それはブレードのモードか?」

「ああ。type-B(ブレーダー)。近接特化仕様だ。驚いて、漏らすなよ?」

 

瞬時加速で一気に彼我の距離を詰める。衝撃強化散弾銃の射程は短く、効果的な運用には、ブレードレンジ一歩手前まで距離詰めるしかない。

一夏は多分、カウンターを狙っているんだろう。ブレードを下げている。

ならば。一瞬、サイドブーストを吹かし、フェイントで一夏の思惑を崩す。

正面を通り抜け、一夏の側面に衝撃強化散弾銃を突き出し、先ずはワントリガー。

一夏がブレードの腹で受けようとするが、それは悪手。この場合の正解は、着弾に合わせて距離を置くことだ。

この銃は並の散弾銃ではない。ヒットストップのみに狙いを絞った、近接特化仕様。

一夏はその特性が見破れなかった。それ故、防御の為の行動が

一夏自身の首を強く締めた。一夏の動きが、ほんの僅かの時間、完全に静止する。

そのチャンスを俺が見逃すわけもなく、

一夏へとブレードを叩きつけた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シャワーから流れるお湯が身体の上を流れて行く。

あまり高くない温度に設定されたそれは、セシリア・オルコットのヒートアップした頭を緩やかに冷ましていく。

 

「(アーク・ストライド……。イタリア代表候補生で世界2番目の男。)」

 

あの男も、織斑一夏も。

自分が見てきた男とはまるで違っていた。

卑屈で、軟弱で、女の視線から避けようと、隅で縮こまっているのが男。そんな認識を打ち壊すような男だった。

一人は経験の薄さを意地と気合いで埋めようとしてきた。

一人はどんな局面からでも、勝利を掴み取らんとする、必勝への意思。

今の男達には、どちらも欠けたものである

その印象は記憶の奥底へと、痛烈に刻みつけられた。

男=軟弱。という固定観念を根底から崩すには、あまりにも強すぎた。

 

「(もっと……もっと闘いたい。闘い、打ち勝ち、さらなる高みへ、登り詰めたい!)」

 

そして、隠れていた闘争本能を目覚めさせるには丁度良かった。

古来、貴族とは軍人であった。闘争という長い歴史があるのだ。

彼女の、オルコットの家は、イギリスの名門貴族であり、その歴史が長いことは想像に難くない。

彼女には、オルコットの血が通っている。長い長い闘争が育んだ血が、流れている。

彼女(オルコット家)は闘いに飢えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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