5月18日 加筆修正を行いました。
「千冬さん、私を鍛えて下さい」
稽古をするために篠ノ之道場に来た私に箒が突然そう言ってきた。
……話が見えんな。昨日此処で何があったというのだ。
一夏に昨日何があったのか聞いても何故か教えてくれなかったんだがしっかりと聞いておくべきだったか?
「まてまて、話が見えん。理由を一から説明してくれ」
まずは何があったのかを知っておかないとな。
「……………………という訳です。」
「なるほどな。それで私に鍛えてほしいというわけか」
箒が私に鍛えてほしいという理由を聞くと昨日何があったのか大体分かってきた。
……しかし一夏は最近束に似てきたんじゃないか?アイツのやり方とそっくりだ。
それにしても誰よりも強くなれ、か。アイツもなかなか言うようになったものだ。アイツにも束に負けず劣らず指導者の素質があるのかも知れないな。
「よし、ならば柳韻さんと束にも頼むとしようか」
私がそう言うと箒は疑問に思ったのか、
「父さんと姉さんにもですか?」
そう聞き返してきた。
「私が誰かに何かを教えた事は無いんだ。それに私や束、柳韻さんを越えるんだろう?ならばいっそのこと全員から教えを乞えば良い」
柳韻さんは先ほど奥に居るのを見かけたし、束は恐らく研究室でコアを造っているだろう。
さあ、二人の所に行こうか。
「そうか、それで私と束を呼んだのか」
「ふふ、まさかちーちゃんに教えを乞うとはね。それはちょっと予想してなかったよ」
私達は柳韻さんと束に事情を話した。
「箒ちゃんには悪いけど私はコアの製造といっくんの指導で忙しいから今は無理かな」
む、束には断られたか。
「…………箒、強くなりたいなら小学三年生になるまでひたすら鍛練を積みなさい」
……おいおい。
私は束の様子を伺うと、束も柳韻さんの意図を理解したようだった。
箒は柳韻さんの意図を図りかねている様だがな。
「……少し早すぎませんか?」
「……お父さん本気なの?」
わかったが故に私達は柳韻さんに聞き返した。
「ああ、このまま順調に実力を伸ばしていけば何とかなるだろう。それに私が二人に"あれ"を教えたのもそれぐらいだったろうに」
柳韻さんは私達にそう言う。
「しかしですね「それならやっぱりちーちゃんが鍛えて上げたら?」……束」
私の言葉に束がそう被せると、
「ああ、それが良いだろう。それにきっと君にも良い経験になる」
束に続いて柳韻さんもそう言ってきた。
箒も私に期待の眼差しを向ける。
そこに遅れてやって来た一夏がその場の雰囲気に
「ん?何かあったの?」
そう呟いた。
「んー、やっても良いんじゃない?」
二人に続いて一夏までもがそう言った。
さらに箒の期待の眼差しが強くなる。
……、
…………、
………………断れるか!!ああもう、ここに私の味方は居ないのか!!
(……仕方ない、観念するとしようか)
「……はぁ、わかった。だが私に期待はするなよ?」
私はため息をつきながらそう言った。
すると箒は見るからに嬉しそうな顔をしながら私にありがとうございますと礼を言った。
まったく、どうなっても知らんぞ?
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千冬お姉ちゃんが箒を鍛える事が決まったのを見計らって僕は今日ここに来た目的を果たす事にした。
「束お姉ちゃん、お願いがあるんだけど良い?」
「いっくんが私に頼み事とは珍しいね?一体どうしたんだい?」
束お姉ちゃんは少し驚いた様子だったがすぐに続きを促た。
「うん、あのね……………………白騎士に会わせてほしい」
束お姉ちゃんは完全に予想外といった様子で僕に聞き返した。
「…………急にどうしたのさ?」
「わかんない。けど何でか白騎士の所に行かなきゃいけない気がするんだ」
僕は正直に答えた。
うーん、それにしても何でだろうね?理由が僕にもわかんないや。
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「白騎士に会いたい、か。うん、良いよ」
何でそう言ったのかはわからないけど、まあ無理に断る理由も無いしね。
「でも白騎士はあれ以降動かないままなんだけどね」
実はあの一件以降白騎士は全く動かなくなっていた。しかもこちらからのアプローチを受け付けない為、原因の特定すらままならない状態だった。
「そうなんだ。でも束お姉ちゃんでも動かせないのは意外だね」
「うーん、こっちの操作を全く受け付けないからどうしようもないんだよね。まあ私にも出来ない事はあるんだよ」
私といっくんは白騎士の眠っている倉庫に向かいながらそんな話をしていた。
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僕は束お姉ちゃんと共に白騎士の所にやって来た。
倉庫の奥では白騎士は膝をついて眠る様に身を屈めていた。
戻って来た時はミサイルの爆炎や爆風に晒されて煤だらけだったその姿も、あの後僕達が綺麗に洗浄したため以前の透き通るような白に戻っていた。
……ああ、やっぱり僕は白騎士が大好きなんだね。
そう思いながら白騎士を撫でると、
『ーーーーーーーーー』
以前の様に誰かが呼ぶような声を聞いた。次の瞬間、
僕は白騎士をその身に纏っていた。
え?インフィニット・ストラトスは男には反応しないって……
…………ええと、流石に予想外過ぎるんだけど、どうしよう……
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…………私も流石に予想外、というかこんなの誰が予想出来るのさ……
「ええと、いっくん?白騎士から降りれるかな?」
私は半ば現実逃避するようにいっくんにそう聞いた。
「あー、うん、ちょっと手伝ってほしいな」
これにはいっくんも戸惑ってるみたいだった。
私はいっくんを白騎士から下ろすと二人で頭を抱えた。
「「どうしよう、これ」」
私といっくんの呟きが重なった。
ほんと、どうしよう…………
ある程度落ち着いた私達は研究室に場所を移した。
「いっくん、情報を整理したいから解る範囲で何があったのか教えてくれる?」
私は備え付けの冷蔵庫から飲み物を取り出して、コップに注ぎながらいっくんに事情を聞いた。
「うん、まずは最近夢で女の人に呼ばれるんだ」
「"私のもとに来て"って」
「それでなんとなくなんだけど、僕にはその女の人が白騎士に見えたんだよ」
「今日、白騎士に会いたいって言ったのもそれが理由だよ」
「で、白騎士と夢に出てくる女の人の事を考えながら白騎士を撫でたら……」
「白騎士を展開した、か」
女の人、白騎士、私のもとに来て、か。これは間違いないかな。
その話を聞いて私はやはりコアの意識(便宜上コア人格と呼ぼうか)が関わっていることを確信した。
……まあ、いっくんが何故白騎士を動かせたのかはさっぱり見当がつかないんだけどね。
「いっくん、実はこの子達のコアには製造過程で人の意識に近いものが確認されてるんだ。白騎士の起動にはそれが確実に関係してるね」
「ん?それなら白騎士や他のインフィニット・ストラトスは生きてるの?」
いっくんは疑問を口にする。
「ある意味そうとも言えるね。だからこそ私はあの子達を物として扱わないんだよ」
「少し話が逸れたね。いっくんは誰かに呼ばれたって言ったでしょ?いっくんの聞いた声は恐らく白騎士のものだよ」
私がいっくんにそう言うと、
「そっか。ならまた話せると良いね」
いっくんはどこか嬉しそうな顔をしながらそう言った。
さて、詳しい事は追々確かめるとしてそろそろ皆の所に戻らないとね。
「さて、ちーちゃん達にもこの事を伝えないとね」
「そうだね、行こっか束お姉ちゃん」
私達は研究室を後にして皆の所に戻った。
「束、ずいぶん遅かったが何があったのか?」
お父さんの質問に対して私は起きたことを話した。
「皆、いっくんが白騎士を動かしちゃった」
「「「…………はああああああああああああ!?」」」
当然、皆はとても驚いていた。特にちーちゃんの驚きようは凄かったね。
読んでいただきありがとうございます。