第11話です。
5月18日 加筆修正を行いました。
いっくんが白騎士を動かしてから一年が経った。
それにしてもあの後説明するの凄く大変だったねぇ。
私は一年前のあの日の事を思い出していた。
「おい束!! 一夏が白騎士を動かしたとはどういう事だ!?」
……うん、やっぱり驚くよねぇ。私もそうだったし。
私はちーちゃんに凄い勢いで揺さぶられながらそう思った。
うーん、話を始める事すら出来なかったよ。
「ち、ちいいちゃあああん、お、おおおちついてええええええ」
「これが落ち着いていられるかぁぁぁぁぁぁ!!」
そう言うと私を揺さぶる速度がさらに増した。
…………あぁ、ヤバイ、意識……が……、
そこで私の意識は飛んだ。
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「どういう事だああああああ!!」
「ち、千冬お姉ちゃん、落ち着いて束お姉ちゃんが死んじゃうから!?」
束お姉ちゃんが気絶してもなお揺さぶり続ける千冬お姉ちゃんを僕は必死になって止める。
……いやいやいや、流石にこんな形で死ぬなんてあんまり過ぎるよ!?
すると僕の目に竹刀を持ったままの箒が写った。
「あ!! 箒!! その竹刀貸して!!」
僕は千冬お姉ちゃんを必死になって押さえながら箒に声をかけた。
「あ、ああ」
箒は戸惑いながらも僕に竹刀を差し出した。
僕は竹刀を受け取ってすぅ、と息を吸い込み、
「いい加減落ち着けぇぇぇぇぇぇ!!!!」
竹刀を千冬お姉ちゃんの頭に渾身の力で振り下ろした。
バシイイイイイイン!!!!
「ぐおっ!?」
千冬お姉ちゃん(にとって)は突然の衝撃に呻き声を上げてゴロゴロと頭を抱えて転がった。
……余談だがこの時放った一撃は柳韻さん曰く、今までで一番いい。良い一撃だったらしい。
しかし剣道をやっていた頃は望んでも出せなかった一撃が剣道を辞めてから出せたとはなんともまあ皮肉な話だと思う。
僕はのたうちまわる千冬お姉ちゃんを放置して揺さぶりから解放されて床に倒れ伏す束お姉ちゃんに近づいた。
「束お姉ちゃん、大丈夫?」
束お姉ちゃんは僕が声をかけてもうーん、うーんと唸るだけだった。
「起きない、か。しょうがないね」
僕は倒れている束お姉ちゃんの頭を持ち上げて自分の太股に乗せた。
早く起きてよね、束お姉ちゃん。
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一夏君の一撃で沈められてのたうちまわる千冬ちゃん、千冬ちゃんに揺さぶられて気を失っている束、そしてその束に膝枕をしている一夏君。
そのあまりにも混沌とした状況に私と箒は同時に呟いた。
「「何だ、この状況は」」
さてどう収集を着けたものか……
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「~~~~ッ、……ふう、漸く痛みが治まったか」
ん? 千冬お姉ちゃんが復活したようだね。
「まったく何をするんだ、いち…………何をしてるんだ一夏」
千冬お姉ちゃんは僕を問い質そうとして僕に向き直ったが、膝枕をされている束お姉ちゃんが目に入ったのかそう聞き直した。
「束お姉ちゃんに声をかけても返事がなかったから膝枕してる」
僕がそう言うと千冬お姉ちゃんは、
「はぁ、さっさと起きろ、束」
溜め息を吐きながら気を失っているはずの束お姉ちゃんに声をかけた。
「ありゃ、ちーちゃんにはばれちゃったか」
…………意識が無いと思っていたけどどうやら既に起きていたらしい。
「いやー、いっくんの膝枕なんてかなりレアな体験が出来て良かったよ」
束お姉ちゃんはとても満足したような顔をしながら(サムズアップと共に)言った。
「こんなの言ってくれればいつでもやってあげるよ?」
「いっくんそれ本当!? ………………ゴホン、さていきなり話が逸れたけど話を続けようか」
一瞬本音が出てきた気がするけどどうやら話を続けるらしい。皆も今のは聞かなかった事にしたようだった。
やれやれ、なんとも締まらないね。
「それでいっくんが白騎士を動かした理由なんだけどまだ具体的な原因は解らないんだよ」
束お姉ちゃんは改めて僕が白騎士を動かせた理由は解ってない事を皆に告げた。
「現時点では白騎士のコア人格が関わっているのは確実なんだけどね」
「姉さん、コア人格とは何ですか?」
箒が疑問に思ったのか束お姉ちゃんに聞いた。
「実は白騎士を始めとした全てのISのコアには製造過程で人の意識に近いものが確認されてるんだよ。それを私はコア人格と呼んでるのさ」
この話は僕も聞いたね。
「話を続けるね。恐らく白騎士が動かなくなっていたのもコア人格が関係してるんだろうね」
束お姉ちゃんが自分の仮説を話すと今度は柳韻さんが質問した。
「束、お前は一夏君の事を国際IS委員会に報告するのか?」
「いや、しないよ。私はいっくんも白騎士も委員会に渡すつもりは無いね。白騎士は確実にバラバラにされるだろうし、いっくんは最悪モルモットだしね」
「そうか。なら良い」
柳韻さんは束お姉ちゃんの答えに安心したといった様子だった。
…………というかモルモットって実験動物だよね。
うん、絶対に嫌だな。
「だからいっくん、白騎士を動かした事は誰にも言っちゃ駄目だよ」
そんな考え事をしていた僕に束お姉ちゃんは真面目な顔でそう言った。
話も終わり、今はちーちゃんと二人きりになった。
「ところで束、白騎士はどうするんだ?」
大体の話を終えた私にちーちゃんは聞いて来た。
「そうだねー、コアはいっくんの専用機に使おうと思うよ」
「一夏の専用機に?」
ちーちゃんは聞き返す。
「こんなこといつまでも隠せると思う?」
私の言葉に苦い顔をしながら、
「無理、だろうな」
と答えた。
「私もそう思うよ。それにはっきり言って今の世界はいっくんには危険すぎる」
「だからこそいっくんには力が必要になる」
「そのための白騎士、か」
私の言葉にちーちゃんは続けた。
その日から私はコアの製造と同時にいっくんの専用機の作成をしていた。
いっくんには薙刀と共にISの操作方法を少しずつ学んで貰っている。
いっくんはISの操作方法を覚える事に最初こそ戸惑っていたけど今では進んで学ぶようになった。
まあ、いっくんはISが男には使えない事に凄く残念そうにしていたからどんな形でもISに乗れるのはうれしいんだろうね。
…………しかしいっくんは随分と上達が速いね。というかこの上達速度は異常だよ。
まったく、そこら辺はちーちゃんとそっくりだよ。
後、箒ちゃんはちーちゃんの指導のお陰でめきめきと実力をつけていっている。
うん、これなら私達の心配も杞憂に終わってくれるかな?
しかしちーちゃんはイメージに違わずなかなかスパルタだねぇ。箒ちゃんはちーちゃんの指導の後はいつもフラフラになってるからね。
まあ、箒ちゃんはやる気に満ち溢れているし、何だかんだ言いながらちーちゃんもまんざらでもないみたいだし、この師弟関係は続いていくんじゃないかな。
でもこんな生活も長くは続かなかった。
まったく、世の中無粋な奴らばっかりだよ。
千冬の暴走は書いててすごい楽しかったw
それでは、読んでいただきありがとうございます。