5/23 修正。
「うあぁああぁぁぁぁあああっ!! マドカッ!! マドカッ!! マドカッ!!」
「い、一夏兄さん……グスッ」
「良かったっ……生きてっ……生きてまた会えたっ……」
俺はもう二度と会えないと思っていた妹を涙を流しながらひたすら抱き締めていた。
マドカも少し涙ぐみながら抱き締め返してくれた。
どうしてこうなったのかというと少し時を遡る。
「いっくん、隠れ家に着いたら会わせたい人が居るんだ」
束お姉ちゃんは俺と共に太平洋のど真ん中を飛びながらそう言ってきた。
「会わせたい人?」
……へぇ、誰か一緒に行動してる人が居るんだ。てっきり一人で居るんだと思ってたよ。
俺が束お姉ちゃんにそう言うと、
「最初はそうだったよ」
「まあ、まずこの話をする前に私が姿を隠してから何をしていたかを聴いてもらえるかい?」
俺は黙って頷いた。
「ISが世間に認められてから世界各国でISの研究、及び開発が進んだのは知ってるよね?」
「 そんななかISを悪用しようとする連中ってが出てきてね、人道を無視した研究や実験を行っている所も在ったんだよ。私は身を隠している間にそういう違法な研究を行っている所を潰していたのさ」
束お姉ちゃんは実に忌々しそうな顔をしながら言った。
……なるほど、束お姉ちゃんはそういう所で胸くその悪いものを見たんだろう。
しかし違法な研究、ねえ? ……随分と気に入らない真似をする連中が居るんだな。
「いっくんに会わせたい人はそういう施設を潰した時に保護したんだよ」
「そうなんだ。で、誰なの?」
俺は束お姉ちゃんに訪ねるが、
「隠れ家に着いたら解るよ。ただ、いっくんやちーちゃんには朗報だよ、とだけ言っておくよ」
うーん、そう言われる凄まじく気になるな。
……しかし俺だけじゃなく千冬お姉ちゃんにも朗報って一体誰だろうな?
「それといっくん、飛ぶのに不自由は無い?」
「うん、新月が合わせてくれてるから問題無いよ」
とっても良い子だね、と俺がそう言うと束お姉ちゃんはとても驚いた様子だった。
「……いっくん、もしかして最適化終わってる?」
「うん、飛び始めて十五分位で一次移行しますかっていう表示が出てるよ。勝手にしたら不味いかと思ってしてないけど」
俺がそう言うと束お姉ちゃんはまさに開いた口が塞がらないといった顔をしていた。
「……誰かのアシスト無しでその速さって…………最適化って本来はもっと時間がかかる筈なんだけど……」
俺の言葉を聞いた束お姉ちゃんは何かぶつぶつと呟いていた。
「……え? これって普通じゃないの?」
俺は皆こんな感じかと思ってたんだけど。
「普通に飛んでるだけなら一時間は掛かるね」
……全然普通じゃなかったな。
「そうなんだ」
俺は微笑みながら束お姉ちゃんにそう言った。
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「なかなか嬉しそうだね、いっくん」
あんなに優しい微笑みを浮かべるいっくんは初めて見たよ。
「うん、だってこれは新月が俺に心を開いてくれてるって事だと思うんだ。誰だって相手に受け入れてもらえるのは嬉しいでしょ?」
「そっか、そうだよね」
本当にいっくんは凄いな。普通ならもっと威張ったり自慢したりする筈なのにそういう風に心から喜べるのはいっくんだけじゃないかな。
……いや、ひょっとしたらいっくんにISが反応するのはそこが関わってるのかもね。
いっくんはISの事を道具として見ていないからこそ、ISもいっくんに寄り添い、共に在ろうとするんだろう。
かつて私を含むあらゆるものを拒んでいた白騎士が自らの意思でいっくんを乗せた時みたいに。
……! そうだ、良いこと思いついた。
「よし、その子もいっくんの専用機にしようか」
うん、我ながら良い考えだね。
「それは良いね……………………ん? ちょっと待った。
いっくんは私に聞き返す。
ああ、そう言えばいっくんには伝えて無かったね。
「うん、いっくんには元々白騎士の後継機を渡すつもりだったんだよ。でも新月がいっくんをそこまで想ってるのに引き離すなんてあんまりでしょ?」
「そうだけど、良いの?」
いっくんは戸惑いを隠せないといった様子で聞いてきた。
「良いんだよ。それに最適化が終わった以上その子は既にいっくんの翼なんだよ」
「私としてもコアの初期化なんてしたくないしね」
私がそう言うといっくんも何とか納得したみたいだった。
「……分かったよ。しかし男が専用機を二つも持つなんて世界中のIS乗りが聞いたら怒り狂いそうだな」
「まあ良いんじゃない? なんだかんだ言いながらも顔が緩んでるよ?」
「……………………まあ実際嬉しいしね」
いっくんは緩む表情を誤魔化そうとしていたみたいだけど私に指摘されると誤魔化すのを諦めた様だった。
「ふふ、さあいっくん、早く新月を一次移行させてしまおうか」
いっくんは私の言葉に静かに頷いた。
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『最適化が完了しました。一次移行を行いますか?』
「これからもよろしく頼むな。新月」
俺は新月に語り掛けながら新月を一次移行させた。
新月を一次移行させるとそれまでの滑らかなフォルムとは異なり、滑らかさの中に何処か鋭さを感じさせるフォルムになり、スラスターや脚部が先程よりも大きく変化していた。月明かりに照らされ暗闇にうっすらと浮かび上がるその姿はまさに太陽の光を受けて夜空にその身を隠す月の様だった。
「ははっ、随分と格好良くなったじゃないか」
そう言いながら辺りを飛んでみると今までとは感覚がまるで違った。
新月と自分の体が一つになった様な一体感はとても心地良いものだった。
「凄いな。この子となら何処までも飛んで行けそうだ」
俺はかつて無い爽快感を感じながらそう呟いた。
「…………………………」
俺は束お姉ちゃんの方を見るが束お姉ちゃんは心此処に在らずといった様子だった。
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「 おーい、束お姉ちゃーん、聞こえてるー?」
「…………………………はっ!?」
い、いけないいけない、新月を纏ったいっくんがあまりにも様になってて思わず見とれてたよ。これも惚れた弱味って奴なんだろうね。
「……ようやく反応してくれた」
……いっくんの反応を見る限り私は随分と呆けていたらしい。
「ゴメンゴメン、さあ気を取り直してさっさと隠れ家に行こうか」
私はそう言い、いっくんを伴って隠れ家に向かった。
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それからしばらく束お姉ちゃんに導かれるままに太平洋を飛び続けて俺と束お姉ちゃんは隠れ家のある小さな島にたどり着いた。
「此処が束お姉ちゃんの隠れ家なんだ」
「そうだよ。そして此処は白騎士が生まれた場所でもあるんだ」
そうか、ここで白騎士が生まれたのか。……うん、なかなか感慨深いものがあるな。
「そうなんだ。それでここの外部からの安全性はどんな感じ?」
俺は束お姉ちゃんに安全性について質問した。
「そうだね、この島は船舶の航路や航空機の飛行経路から大きく外れていて、尚且つレーダーはおろか衛星にも映らない特殊なカモフラージュをしているから見つかる心配は殆ど無いと言える場所になっているね」
「特殊なカモフラージュって?」
俺がそう聞くと束お姉ちゃんは分かりやすく説明してくれた。
「島全体にレーダーを無効化することが出来る光学迷彩を掛けているよ」
……島全体に光学迷彩とか……。そら見つからんわな。
「まあ話をしているうちに到着したね。…………くーちゃーん、マドちゃーん今帰ったよー」
ふむ、くーちゃんにマドちゃんか。一体どんな子だろうな?
すると向こうから二人の女の子がやって来た。片方は銀髪の小柄な女の子でもう一人は、
………………………え?
………………………まさか、そんな、
「……マド、カ?」
「そうだよ。久しぶりだね一夏兄さん」
俺の掠れる様な呟きにマドカは応えた。
俺はマドカの声を聞いた瞬間、溢れる涙で視界が歪んだ。
「本当に、本当にマドカなんだな……」
そしてついに涙を堪えられなくなり、俺はボロボロと涙を溢した。
「一夏兄さん、私はちゃんと此処にいるよ」
その言葉が引き金となって俺はマドカをおもいっきり抱き締めた。
「うあぁああぁぁぁぁあああっ!! マドカッ!! マドカッ!! マドカッ!!」
「い、一夏兄さん……グスッ」
「良かったっ……生きてっ……生きてまた会えたっ……」
俺はもう二度と会えないと思っていた妹を涙を流しながらひたすら抱き締めていた。
マドカも少し戸惑っていたが俺につられてか少し涙ぐみながら抱き締め返してくれた。
俺はしばらくマドカを泣きながら抱き締め続けた。
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良かったねいっくん、マドちゃん。
「お母様、マドカを抱き締めている方はどなたですか?」
いまいち状況が飲み込めないくーちゃんが私に聞いてきた。
「あの子は織斑一夏。マドちゃんのお兄さんで私の大好きな人さ」
「……そうですか」
…………ああ、なるほどね。
「ふふ、そんなに心配しなくても私はくーちゃんのことも大好きだよ」
そう言って私もくーちゃんを抱き締めた。
「……はい、私もです」
うん、くーちゃんも安心したようだね。良かった良かった。
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そして皆(というか俺)が落ち着いてから面識の無い者同士で自己紹介をすることになった。
なので俺は今、銀髪の小柄な女の子(束お姉ちゃんはくーちゃんと呼んでたな)と向き合っていた。
「織斑一夏です。しばらくお世話になります」
「篠ノ之
こうして束お姉ちゃんの元での生活が始まったのだった。
さあ、これからどんな事があるんだろうな?
読んでいただきありがとうございます。