be with you いつもそばに   作:グリアノス

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第18話です。



5/24 加筆修正を行いました。


第18話 小さな島で

「それじゃあ束お姉ちゃん、よろしく頼むよ」

 

「うん、任せてよ」

 

俺が束お姉ちゃんの隠れ家兼ラボに来てから既に数日が経ち、此処での生活にも少しずつなれた頃、俺は手術用のベッドに横たわっていた。

 

理由としては失明した左目を義眼にすることで再び見えるようにしよう、というわけだ。

 

「手術の内容の確認をするね。これから麻酔を掛けていっくんの左目に義眼を移植するよ。今回は念のために全身麻酔でいっくんの意識を飛ばして処置を行うからね」

 

束お姉ちゃんは麻酔の準備をしながらそう言った。

 

因みに今回俺の左目に使われるのは視力を無事だった右目と同じに調整した極普通の義眼だ。最初はドイツで開発されたヴォーダン・オージェ(オーディンの瞳とも呼ばれているらしい)という擬似的なハイパーセンサーを搭載したものをマドカとクロエに薦められたがきっぱりと断った。脳にかかる負担が凄そうだし、何よりも武術を嗜む者としてセンサーを内蔵した眼なんて使う気になんてならないからな。

 

……全く、ドイツも随分と突拍子の無い物を作ったな?。あれか? ドイツの科学は世界一ィィィィィッ!!!! って奴なのか? やれやれ、流石はドイツというかなんというか。

 

おっと、考え事をしてるうちに準備が整ったみたいだな。

 

ああ、束お姉ちゃん達のご飯の説明しとかなきゃ。

 

「あ、束お姉ちゃん、鍋にカレー作ってあるから俺が動けない間は皆でそれ食べてて」

 

「分かったよ。それじゃあいくよ」

 

そこで俺は麻酔が効いてきたのか急速に意識が遠のいていった。

 

 

 

 

 

 

 

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うん、麻酔はちゃんと効いてるね。よし、安全かつ確実に終わらせよう。

 

いっくんの左目がまた見えるようになったらまた薙刀の稽古をつけてあげなきゃね。それにISの訓練もしなきゃだし、一般教科もしっかり教えておかないといけないね。これはくーちゃんとマドちゃんにも手伝ってもらおう。

 

…………それにデート位行ってみたいし。

 

ああ、こんなにやることが沢山あるのは私が姿を隠す時以来だよ。

 

ふふ、のんびりなんかしてられないかもね、いっくん。

 

 

 

 

 

 

 

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「ふむ、視力は問題無いな。感覚は……まあ慣れればどうという事も無いだろ」

 

束お姉ちゃんの手術を受けてから数日後、俺は移植した義眼の調子を確認していた。

 

それにしても、治療用ナノマシンってのは凄いな。肉体の損傷に対する修復速度が格段に上がってる。ちょっとした切り傷なら半日程度で消えるんじゃないか?

 

「一夏兄さーん、昼ご飯の準備手伝ってー」

 

俺が考え事をしているとマドカが俺を呼びに来た。

 

「悪い、すぐ行くよ」

 

さて、午後もやることが山積みだな。

 

…………しかしなんか最近やたら身体能力が上がったような? 束お姉ちゃんに相談してみるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、今日は夕方まで私とISを使った戦闘訓練をするけど何か聞きたい事ってある?」

 

「大丈夫だ、いつでも行けるぞ」

 

昼食後、俺とマドカは戦闘訓練のために屋外に出てきていた。

 

普通は歩行訓練だったり飛行訓練なりを重点的にするらしいが束お姉ちゃん曰く、いっくんはISのことだと規格外みたいだから基本的な事をやってみて問題が無ければ戦闘訓練に移って良いと思うよ。だそうだ。

 

全く、束お姉ちゃんもなかなか無茶苦茶言うなあ。誰が規格外か。

 

……まあ実際問題は無かったんだが。

 

これにはマドカとクロエに束お姉ちゃんもドン引きだった。しかしマドカとクロエはともかくなんで束お姉ちゃんまで引いてるんだよ。

 

なんでも本当に出来るとは思って無かったそうだ。

 

クロエはあり得ないものを見るような眼で見てきたし、マドカは、

 

「これで初心者とか……飛行中の安定感なんて私と遜色が無いんだけど……」

 

と、影を作りながらぶつぶつと呟いていた。……うん、あれは地味に怖かった。

 

…………あー、要らん事を思い出したな。

 

さて、気を取り直して今はマドカとの戦闘訓練だな。

 

「「戦闘開始!!」」

 

俺とマドカはそう叫ぶと同時に空に飛び立った。

 

今回俺が纏っているのは新月で、マドカは束お姉ちゃんが造り上げた藍月(らんげつ)という機体を纏っている。

 

俺達は空中で向き合うと互いに武器を振りかぶってぶつかり合った。

 

因みに俺は柄の部分を長めにしてあるダブルセイバーを使い、マドカは両手にブレードライフルを使っている。

 

マドカは基本的に大型のブレードライフルを両手に持ち、射撃と近接格闘を織り混ぜた戦い方をしてくる。更に藍月にはビットと呼ばれる思考操作で稼働する独立機動型の射撃兵装を搭載している為、遠距離戦や遮蔽物のある所ではでたらめな強さを見せるからとても厄介な相手と言えるだろう。

 

因みに初めて戦った時はまだ左目の包帯が外れて無かったとはいえフルボッコにされた。

 

具体的にはビットとライフルでの飽和射撃で。

 

……しかしあのレーザーを曲げるの(偏向射撃、またはフレキシブル・ショットと呼ばれるらしい)反則じゃないかな。最小限の動きでの回避が出来ないのはキツい。

 

俺は振り下ろされるブレードライフルを受け流しているとマドカが声をかけてきた。

 

「……一夏兄さんはやっぱり規格外だな」

 

「そうか? そうでも無いだろ」

 

マドカがそう言うのにも理由がある。

 

素人目で見てもマドカの近接格闘戦の強さはかなりのものだ。当然全ての攻撃を受け流し続けるのは今の俺には不可能だ。故に繰り出される攻撃を武器でそのまま受け止めたり、体を反らしたり、切っ先が届かない位置まで下がる事で攻撃を避けたりする。

 

「……ならなんで至近距離で放たれた弾丸やレーザーが避けられるんだよ!?」

 

マドカの言う"至近距離から放たれた弾丸やレーザー"とは俺が攻撃を受け流し切れずに攻撃に対して避ける動作を取った時に攻撃している方とは逆のブレードライフルから放たれた物だ。

 

「そんなもの銃口が俺に向いた瞬間に撃たれても避けられる様に動いてるんだよ。でもレーザーなんかは至近距離で曲げられたら多分当たるぞ?」

 

至近距離からの射撃なんて正直避けるので精一杯である為に俺はマドカにそう言うが、

 

「無茶苦茶言うな!! あれは使うのに物凄い集中力が要るんだよ‼ 一夏兄さんとの近接格闘戦中にそんなことしたら速攻で斬られるわ!! 第一そんなことはが出来たらビットを使うよ‼」

 

マドカに凄い勢いで反論された。

 

「お、おう、そうなのか」

 

マドカの勢いに俺は相槌を打つだけだった。

 

…………でも確かに向けられる意識に隙間が出来たら斬るかもな。

 

「くッ、こうなったら」

 

マドカは俺が攻撃に対して防御するのに合わせて後退瞬時加速で距離を取り、自分の周辺に十二機(・ ・ ・)のビットを展開した。

 

俺は展開されたビットを見た瞬間、顔を引きつらせた。

 

「な、なあ、ビットの最大稼働数って十機じゃなかったっけ?」

 

「ふふん、強くなるのは一夏兄さんだけじゃ無いんだよ‼」

 

マドカは年齢から見ればかなり大きいと言える胸を張りながらドヤ顔をきめた。

 

流石は俺の妹だな。ドヤ顔も千冬お姉ちゃんに似て可愛い。

 

…………それじゃ現実逃避はこの辺にしとかないとな。

 

「これでも食らえぇえええええっ!!!!」

 

マドカはそう叫ぶと同時にビットを俺に飛ばしながら両手のライフルを連射してきた。

 

「…………ふぅ、上等だぁああああああ‼!!」

 

俺は半ば叫ぶ様に声を上げて、ビットに向かって突っ込んで行った。

 

 

結果? 当然撃ち落とされたぞ? いや、なかなか恐いぞ? 時間差でぶち抜きに掛かってくるレーザーとか。

 

しかし以前より命中精度が増してるんだけど更に腕を上げたのか。やれやれ、マドカは強いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………やり過ぎた」

 

あれから夕方まで戦い続けたために疲れて眠ってしまった一夏兄さんを見ながら私はそう呟いた。

 

それにしても一夏兄さんって近接格闘戦の強さがハンパ無いな。何度言ったか忘れたけど本当に初心者なのか? ……これであの欠点が無ければ完璧なのにな。

 

「……これでも戦闘には自信あったのに」

 

一夏兄さんの近接格闘戦の強さは正直言って私以上だ。さっきもビットを六機も落とされたし。

 

私は一夏兄さんの見せた強さに少しヘコんでいた。

 

しかも一夏兄さんの本来使う武器って薙刀らしいし、ダブルセイバーなんて初めて使ったって言ってたな。

 

なんかえらく気に入ってたからあれが新月のメインウェポンになるかもね。

 

しかし束義姉さん(試しに呼んでみたら凄く喜んでいた)は一夏兄さんは長柄の武器に対する才能が凄く高く、このまま才能を伸ばしていけば千冬姉さんレベルになる、と言ってたけどここまでとは思わなかったな。

 

「……っと、そんなことより一夏兄さんを運ばないと」

 

私は再び藍月を展開して眠っている一夏兄さんを担いでラボに戻って行った。

 

それにしても悔しいなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………う、ん…………」

 

…………あれ……俺は……

 

「ん? 目が覚めたかい?」

 

ようやく視界の焦点が定まると束お姉ちゃんの顔が写り込んだ。

 

……あれ、じゃあこの後頭部に感じる柔らかいものは、

 

「私の太ももだね」

 

「考えを読まないでよ」

 

俺の抗議にも束お姉ちゃんはただ微笑むだけだった。

 

「…………まあ、役得だから良いけどさ」

 

「うん、私もいっくんの可愛い寝顔が見れて良かったから気にしないで良いよ。さ、もう夜も遅いしお風呂入って来なよ」

 

時間は……九時過ぎか。大分寝てたみたいだな。

 

「そうするよ。束お姉ちゃんはこれから研究室に行くの?」

 

「うん」

 

それなら後で夜食でも持って行こうか。

 

「んじゃ。後で夜食持って行くから」

 

俺はそう言って風呂場に行こうとするがちょっと待って、と束お姉ちゃんに呼び止められた。

 

「どうしたの?」

 

「…………んっ」

 

俺が聞き返すと束お姉ちゃんは目を瞑って唇を突き出した。

 

「………………ん、ちゅ……」

 

俺は束お姉ちゃんを抱き締めて唇を重ねた。

 

一分、二分とキスを続けていたがこのままじゃ抑えが効かなくなりそうだったので俺はゆっくりと唇を離した。

 

「…………あっ……」

 

束お姉ちゃんは名残惜しそうな顔をするが俺が耳元でまた今度ね、と囁くと束お姉ちゃんは真っ赤になった。

 

ああ、束お姉ちゃんの可愛さは反則だろ。

 

俺はそんなことを思いながら風呂場に向かった。




読んでいただきありがとうございます。


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