be with you いつもそばに   作:グリアノス

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第21話です。






第21話 真夜中の戦い

「くーちゃん……お願いだから……」

 

「束お姉ちゃん!! クロエ!! …………ッ!?」

 

ラボの奥にたどり着いた俺の目に写ったのは、思わず目を背けそうになる光景だった。

 

そこには腹部を大きく負傷して血の気がほとんど無いクロエと、そのクロエを助ける為に涙を流しながら処置を続ける束お姉ちゃんがいた。その光景はあまりにも痛々しいものだった。

 

「……いっくん? どうして此処に? マドちゃんは?」

 

そこでラボに入ってきた俺に気がついたのか、束お姉ちゃんが驚いた顔をしながら声をかけてきた。

 

「マドカよりクロエの方がヤバそうだからこっちに来たんだよ」

 

「束お姉ちゃん、俺にも何かできる事が「ピィーッ、ピィーッ、ピィーッ」ッ!!!! クソッ!!!!」

 

俺が束お姉ちゃんに何かできる事があるかと聞こうとするとクロエに繋がれたバイタルから状況の悪化を告げるアラームが鳴り響いた。

 

俺はすぐさまクロエの傍に駆け寄り、すぐさま胸部圧迫による心臓マッサージを試みた。

 

「束お姉ちゃん!! 応急措置は俺がやるから早く処置を!!」

 

「分かってるッ!!」

 

俺は叫ぶように声を張り上げながら心臓マッサージを続ける。

 

「……ああもう、クロエ許せよ‼」

 

俺はクロエの鼻を左手の指で塞ぎ、右手で顎先を持ち上げながらクロエの口に直接酸素を送り込んだ。

 

所謂、人工呼吸だ。

 

状況が状況の為、四の五の言ってられないとは思うが罪悪感を感じてしまうのはしょうがないと思う。

 

とりあえずは正直に言って謝ろう、うん。

 

よし、クロエを助ける理由が増えた。何が何でも助けるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

クロエの心臓が動きを停めてから十分が過ぎた。

 

「くぅっ…………はぁっ…………はぁっ…………」

 

俺は先程から心臓マッサージと人工呼吸を繰り返していた。

 

そのかいもあってか血流は何とか止まらずにいた。

 

だが俺の体力にも限界がある以上ずっと続けられる筈もなく、早くうまい対処法を見つけたいというのが本音だ。

 

しかし束お姉ちゃんも色々手を尽くしてはいるがクロエの治療に対して有効な手段を見つけられないでいた。

 

原因はクロエが既にあまりにも多くの血を流してしまっている事だろう。

 

早い話が血が足りないのだ。

 

「~~~ああもう!! 何をするにも血が足りないよ‼ これじゃあ…………これじゃあくーちゃんを助けられないよ……」

 

束お姉ちゃんは、頭を掻きむしりながら大声を上げるが次第にその声は今にも消えそうな程に小さくなっていった。

 

束お姉ちゃんの呟きが俺の耳に届いた瞬間、俺の中でとある感情が沸き上がってきた。

 

…………何でだよ。どうして諦めるんだよ。

 

本当にもうできる事は無いのか?

 

クロエが死ぬ事を認められるのか?

 

束お姉ちゃんはクロエの母親だろう?

 

……ああ、これは怒りか。

 

諦めそうな束お姉ちゃんに対して、

 

そしてそれに肯定しつつある俺に対して、

 

そんな俺達に感じている怒りなんだろうな。

 

ああ、情けない。俺も、束お姉ちゃんも、

 

クロエもマドカも必死になって戦ってるのに俺達の有り様はなんだ!!

 

俺は束お姉ちゃんに対して声を張り上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「甘えるなッ!! 篠ノ之束ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

束お姉ちゃんは俺の声に体をビクリとはねあげる。

 

「きっと方法はある!! 諦めるにはまだ早いだろうが!! 白騎士事件の時だって……」

 

そこで俺が白騎士事件の話を持ち出したその時、何かが頭の中で引っ掛かった。

 

待て、今の引っ掛かりはなんだ、白騎士事件? 白騎士?

 

 

 

 

 

 

 

 

待て、白騎士(・ ・ ・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………ッ!

 

 

 

 

 

 

これだッ!!

 

「束お姉ちゃんッ!! 白騎士だッ!! 白騎士の生体再生機能なら!!」

 

白騎士の操縦者生体再生機能ならばクロエを救える可能性がある!!

 

しかも白騎士のコアはリセットされてない以上、機能が働くかも知れない!!

 

俺が白騎士の名前を出すと束お姉ちゃんも俺の言いたい事が分かった様だった。

 

「いっくんッ!! 今すぐ白天を私にッ!!」

 

「分かったッ!!」

 

頼む白騎士、どうかクロエを助けてくれ‼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

******************************************

 

 

 

 

 

ズガンッ!!!!

 

「ぐうっ!?」

 

「なかなか頑張ったみたいだけどここまでね」

 

パイルバンカーの一撃をモロに食らい壁に叩きつけられた私を見下ろしながらスコールはそう言う。

 

ク、クソッ、今のでシールドエネルギーが……

 

スコールは私を一瞥するとラボの奥に足を向けた。

 

「い、行かせる訳にはいかない!!」

 

私はスコールの足を掴みながらスコールを睨み付ける。

 

「……はぁ、もう戦えないんだからそんな無駄な事しない、のッ!!」

 

スコールはそう言いながら私の腹を蹴りあげた。

 

「うぐっ!?」

 

蹴られた所が痛い。正直言って泣きそうだ。

 

でも、ここでコイツを通したら皆が危険だ。

 

私は意識を朦朧とさせながらもスコールの足を掴み続けた。

 

「ああもう!! しつこいわね!!」

 

スコールは私を蹴り続けるが私は断固として手を離さなかった。

 

スコールは私のしつこさにうんざりしたのか、ラファールの右腕と共にアサルトライフルを展開した。

 

生身の状態でアサルトライフルで撃たれれば私はズタズタになるだろう。

 

うぅ、こ、ここまで、か……みんな、ごめん……

 

アサルトライフルから吐き出される弾丸が私を蹂躙する。私はそんな未来を垣間見た。

 

そしてアサルトライフルの引き金が引かれる瞬間、

 

 

 

 

 

ズダァン!!!!

 

 

 

 

一発の銃声が響いた。

 

 

 

 

そして放たれた弾丸は私に向けられていたアサルトライフルを粉々に破壊した。

 

「おい、人の妹に何を向けてるんだよ」

 

この声は、い、一夏兄さん?

 

「ホントだよ。マドちゃんやくーちゃんの事といい、随分と好き放題してくれたね?」

 

束義姉さんまで……

 

二人は大の大人ですら気を失うレベルの怒気を発しながらスコールを睨み付けていた。

 

「……あらあら、これは流石に分が悪いかしらね」

 

スコールは若干顔を引きつらせながら後ずさった。

 

「おいおい、まさかここまでしておいてただで帰れると思ってないよな?」

 

「落とし前はつけてもらわないと、ね?」

 

おおう、二人共マジギレしてるな。というか良い笑顔なのが冗談抜きで怖い。

 

「怖い怖い。でも逃げさせてもらうわ」

 

スコールはそう言うとラファール・リヴァイヴを展開し、二人とは反対方向に飛び去った。

 

「束お姉ちゃんはあの女を追いかけてくれ。俺もすぐ行くから」

 

「うん、分かったよ。……ふふ、私の大切なものに手を出した事、骨の髄まで後悔させてやるよ」

 

束義姉さんは黒いオーラを撒き散らしながらスコールを追いかけていった。

 

あー、スコールの奴死ぬんじゃないか?

 

「あー、うん、まあなんだ、こっぴどくやられたみたいだが大丈夫か?」

 

一夏兄さんは顔を引きつらせながら束義姉さんを見送った後、私に向きなおった。

 

うん、流石に一夏兄さんもドン引きしたみたいだな。

 

「死ぬかと思ったよ。二人が此処に来たって事はクロエは無事なんだよね?」

 

私は壁にもたれ掛かりながら一夏兄さんに問いかけた。

 

ああ、口の中が鉄臭いったらないな。

 

「ああ、なんとかな。さて俺も行くよ。あの女を追いかける、というか束お姉ちゃんを色んな意味で放っておけないからな……」

 

「分かってる。私は此処で休んでるよ」

 

「ああ、それじゃあ行ってくる」

 

一夏兄さんは私に一言言って、そのまま束義姉さんを追いかけて飛び去った。

 

「ふう、少し眠るか……」

 

そこで私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

******************************************

 

 

 

 

 

 

 

「……何あれ怖いんだけど」

束お姉ちゃんを追いかけてひたすら飛び続け、追い付いた先で目にしたのはなかなか恐怖心を煽る光景だった。

 

ちなみに俺は今、新月に搭載されてるステルス機能を使って身を潜めてる。

 

「アハハハハハハッ♪」

 

しかし先程のラファールに加え、五機のゴーレムに対して武器を使わずに拳のみで圧倒している束お姉ちゃんはどうしようか…………

 

なんか凄く楽しそうだな? 俺は全然笑えねぇよ。

 

 

グシャッ!!!!

 

 

あ、一機潰れた。

 

「ちょっと!? あなた本当に人間!?」

 

さっきの女も凄く必死な顔をしながら戦ってるし…………

 

まあ、あれは怖いわな。

 

 

ガギョッ!!!!

 

 

今度はラファールのパイルバンカーか。

 

あれって確かラファールの切り札だったよな?

 

というか何て物むしりとってるんだよ。

 

ほら、あの女も有り得ないものを見たような顔をしてるし。

 

「…………俺要らないな、これ」

 

まあ、さっさと潰すが。

 

増援が来ないとも限らないしな。

 

そのためには、

 

「慈悲なんてくれてやるかよ」

 

何だかんだ言ってみたけどぶっちゃけ俺も撃つ気満々なんだよな。恨みもあるし。

 

俺は新月に積まれている対戦車ライフルを展開し、束お姉ちゃんを背後から狙っているゴーレムを撃った。

 

吐き出された弾丸はゴーレムに向かって真っ直ぐに飛んでいき、

 

 

ドゴシャッ!!!!

 

 

シールドエネルギーによる防御膜をあっさりと貫き、そのままゴーレムを粉砕した。

 

「ん? 今のはいっくん?」

 

「ああ」

 

 

ゴシャッ!!!!

 

 

束お姉ちゃんは目の前に迫っていたゴーレムを踵落としで沈めた後、俺に向きなおった。

 

 

 

ズダァン!!!! ドゴンッ!!!!

 

 

 

俺も視界に入ってきたゴーレムを撃ち砕きながら束お姉ちゃんに視線を送る。

 

「いっくんも心配性だな~。ここは私だけでも充分なのに、ね‼」

 

「まあ、そう言うなよ。俺もコイツらには恨みがあるんだ、よ!!」

 

そして俺はゴーレムの頭を回し蹴りを叩き込み、束お姉ちゃんは胴体に正拳突きを打ち込んだ。

 

結果、最後のゴーレムは頭部を吹き飛ばされ、鳩尾に大穴を開けて機能を停止させた。

 

「さて、次はお前だ……っと、随分と遠くに逃げたな?」

 

俺が残ったラファールに向きなおると既に奴は戦域を離脱しつつあった。

 

目を離した時間はそこまで長くない筈なんだが。

 

ズダァン!!!! ズダァン!!!! ズダァン!!!!

 

俺は遠ざかるラファールに対してライフルを撃つが、

 

「……駄目だ、全部外れた」

 

「ああ、ハイパーセンサーの探知外に出た。取り逃がしたね」

 

結局取り逃がす事になった。

 

「俺達は無理に追撃は掛けられないから完全に取り逃がしたな。流石テロリスト、逃げ足は一流だな」

 

「そうだね。この借りはいずれ返すとして、とりあえず私達も帰ろうか」

 

「ああ、さっさと帰ろうか。実はさっきから眠くて死にそうなんだ」

 

「戻ったらゆっくりと眠ると良いよ。やることは山積みだけどそれくらいの時間はあるだろうしね」

 

ともあれ今回は色々危なかったけどなんとかなったな。

 

俺は眠気を堪えながら、束お姉ちゃんは今後の対策を考えながらラボに向かって帰っていった。

 

 

 




読んでいただきありがとうございます。



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