前回の更新から4ヶ月以上開いた事を心よりお詫び申し上げます。
これからも不定期更新ではありますが、エタるつもりは更々無いので、まあ暇な時にでも読んでいただければと思います。
後、久し振りに一人称視点で書いたので書き方が変化しているかもしれません。
「…………う、んん…………ここ、は……」
とても長い間眠っていた気がする。漠然とそんな事を思いながら私はゆっくりと目を開けた。
私は体をベッドから起こして辺りを見回すと、どうやら寝ていたのはラボの奥に備え付けられたベッドの様だった。
「私は確か何者かの奇襲を受けて腹部を負傷して…………そこで…………そこ、で…………」
そこで、と呟いた次の瞬間に去来したのは恐怖の記憶。向けられた銃身から吐き出された弾丸が自分の体を貫く感触が、自分を焼き焦がす程の熱さを伴う痛みが、熱い筈なのに体を指先から冷やしていく冷たさが………
「…………はぁっ…………はぁっ…………はぁっ…………」
目の前がぼやけて…………
真っ暗になって…………
なにも聞こえなくて…………
とても寒くて、寂しくて………
いやだ…………怖い…………
いやだいやだいやだいやだいやだいやだ
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
私は本当に生きている? それとも既に私は────
─────死んでいる?
「大丈夫だよくーちゃん。もう怖い思いをさせた奴は居ないし、くーちゃんはちゃんと生きてるから」
「ああ、それに俺達は此処にいる。クロエ、お前は一人じゃないよ」
「お、かあさま? 一夏、さん?」
ガタガタと死の恐怖に震えているクロエをいつの間にかやって来た一夏と束が左右から抱き締めながらそっと心配はいらないと声を掛ける。
「私は…………私は…………」
「くーちゃん、私達は生きてる。いっくんもマドちゃんも、くーちゃんもちゃんと生きてるから。何も心配しなくても、怖がらなくても良いんだよ」
「束さん《・ ・ ・》の言う通りだ…………だからさ」
おかえり、クロエ
私は一夏さんにおかえりと言われると、瞳から涙をこぼした。涙と共に溢れて来るのは怖かったという気持ちだ。
「う、あ、あぁ…………あああぁぁあああああ!! 怖かった、怖かったです!! 死んじゃうんじゃないかって!! もう皆に会えないんじゃないかって!!」
私はお母様と一夏さんにしがみつきながらひたすら涙を流した。
「…………お母様、一夏さん。もう大丈夫です」
あれから数分後、涙を流しきった私は目元を真っ赤にしながらもしっかりとした口調で大丈夫だと二人に告げた。
するとお母様と一夏はゆっくりと体を離した。二人は私がしっかりと自分達の目を見ながらそう言う姿に心配はもう要らないと思ったのか私に向かって柔らかく微笑んだ。
「…………うん、良い顔だ。もう心配は要らないな」
「だね。でもちゃんと目を覚ましてくれて良かったよ」
クロエはふと疑問に思う。あの時自分は致命傷レベルの傷を負った筈なのにどうして助かったのか? と。
「お母様、一夏さん、私はdどうやって助かったのですか?」
クロエは一夏と束に説明を求めるとあの時の状況を説明し始めた。
「お前はあと一歩で死ぬ所だったんだよ。失血による血圧の低下でな。事実、一時期にとは言えお前の心臓は鼓動を停めた」
「でも私はこうして生きてますよ?」
ますますもって分からない。一体あの時何があったというのか。クロエは一夏に問いかける事で続きを促す。
「まあ正確にはお前を救ったのは俺じゃなくて白天、いや白騎士なんだよ」
「白騎士が…………」
「そう、あの時お前を死の淵から呼び戻せたのは白騎士の生体再生機能が働いたからだ」
生体再生機能、あの機能は白騎士だけに発現し、他のどのコアも発現しなかった機能である。その白騎士いや、白天を持つ一夏さんが居なければというのも納得だった。しかしそこでお母様は(一夏にとって)爆弾発言を放り込む。
「まあいっくんの応急処置もあってこそだとも思うけどね」
「……………………どうだろうな」
一夏は束の言葉に顔を背けながらそう答えた。発言までの長い間が出来る限り言及を避けたいという心情を物語っていた。だがそんな反応に疑問を抱くのはクロエである。
(…………何故一夏さんは顔を背けるのでしょうか。……ん? 応急処置?)
「あの一夏さん? 応急処置ってどんなことをしたのですか?」
クロエの問いかけに一夏はビクリと体を跳ね上げた。
「し、心臓マッサージと……ゴニョゴニョ」
「すみません、心臓マッサージと……何ですか? 聴こえなかったのでもう一度……」
「…………じ、人口呼吸」
へえ、人工呼吸ですか。ん? 人工呼吸?
落ち着いてクロエ・クロニクル、一夏さんは心臓の停まった私にどうしたか。それは人工呼吸。そう、
人 工 呼 吸
つまり私は一夏さんに、一夏さんに…………
そこまで思い至るとクロエの顔がみるみる赤くなっていく。
「あ、あわわわわわ」
「いや、本当にごめん! 他に手段がなかったとはいえすまない事をしたと思ってる!!」
一夏が色々と言い訳を並べているがクロエにとっては今はそれどころではなかった。
「はわわわわわわわ」
「ていっ」
ずびしっ!
「あうっ」
あわあわはわはわと混乱するばかりのクロエに束は軽くチョップを打ち込んだ。軽い掛け声に比例して大した威力も無いチョップだったがクロエが落ち着きを取り戻すには十分だったようだった。
「そ、その、クロエ。なんと言うか、悪かったな」
ポリポリと頬を掻きながらクロエに謝る一夏だったが、クロエが一夏に視線を向けると一夏の右手に包帯がぐるぐる巻きにされているのが目に映った。
「もう良いですよ。一夏さんは私の命を救ってくれましたから。ところで一夏さん、その右手はどうしたんですか?」
私が一夏さんに右手の事を聞くと一夏さんは再びバツの悪そうな顔をしてサッと目を逸らした。
「あー、まあなんだ、これは勢いに任せたが故の負傷だな」
「いっくんは侵入者相手にキレて対戦車ライフルを持ち出してきたのは良いんだけど、それを片手で、しかも連射したから右手が暫く使い物にならなくなったんだよ。結果は右手の掌に罅が入っていておおよそ全治一週間ってところだね」
「対戦車ライフルを片手で連射するって…………またなんて無茶をするんですか」
あれは本来両手で、しかも十分に固定した状態で使う物の筈なのに片手で扱うなんて事をすれば怪我をするのはむしろ当然だと思います。
「…………俺もお前やマドカを傷つけられて頭に血が昇ってたんだから仕方ないだろ」
一夏さんはぶっきらぼうにそう言うとそっぽを向いてしまいました。でもまあ、こうも想ってくれるというのはなかなかどうして嬉しく思えますね。
「一夏さん」
「なんだ?」
「ありがとうございます」
「どういたしまして、だ」
やはりお礼を言うのは大切ですからね。うん、一夏さん満更でも無いみたいです。
あ、そう言えば、
「一夏さん、そう言えばお母様の事を“束お姉ちゃん”とはもう呼ばないんですか?」
再び 一夏さんは私の質問にビクッと体を跳ね上げた。
「い、いや、その、お前が死にかけた時に束お姉ちゃんに「束って呼んでって言ったよね?」…………束さんに発破かけた時に呼び捨てにしたらそのままそう呼べって言われてな」
なんとも居心地が悪そうに答える一夏さんに私は断るに断れなかったらしいですね。まあ恋人同士と言うのにお姉ちゃん呼びってどうなんだとは思っていましたから、むしろ何故今までそうじゃなかったのかと聞きたい位なんですが。
「なるほど、でもまあ良いじゃないですか。私としてはさん付けも無くて良いと思いますけど」
「だよね! くーちゃんもそう思うよね! でもいっくんたらそこだけはって譲ってくれないんだよ!」
「そ、そうですね」
「いずれさん付けも無くすから今は勘弁してくれ!」
私の言い分に異常に食いついたお母様に私は少し仰け反りながらそう答えると一夏さんは堪らず叫ぶように声を上げた。
まあ一夏さんには再開した時に呼び名を改めなかったツケが来たと言う事なのかも知れませんね。
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「ねえいっくん、これからどうしようか?」
「そうだな。亡国機業にこの島の事がバレた以上、此処にはもう居られないぞ」
二人の言う事はもっともだと思う。今回の襲撃が失敗した以上奴等は今回以上の戦力を投入してくる事は目に見えている。
「うーん、こういう時に頼れる人が居れば良いんだが…………」
しかし頼れる人か…………千冬お姉ちゃん? いや、駄目だ。千冬お姉ちゃんは今ドイツだ。束お姉…………束さんの事がある以上、国家の目につくことは避けたい。
しかしそうは言ってもこのまま宛もない逃避行を始めれば確実に破滅するしなぁ…………
頼れる人が…………頼れる人が…………
「うーん、俺も千冬お姉ちゃんみたいに日本と交渉出来れば良かったんだが。そうすれば更識さんみたいな護衛を……」
いや待て、あの人ならもしかしたら…………
あの人は、更識楯無の人となりは信頼出来るが日本政府に関わりがある以上、完全に信用は出来ない。しかし相手がこの世界中が探し求める
「束さん、一人、交渉してほしい人がいる」
「いっくん? それって一体……」
「ああ、今から説明する。マドカ、向こうに居るクロエを呼んでくれるか?」
読んでいただきありがとうございます。