be with you いつもそばに   作:グリアノス

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第3話です

5月7日 加筆修正を行いました。

加筆修正に伴い、サブタイトルの変更しました。


第3話 語られる夢

 

 

 

 

 

 

僕が決意を新たにしてから早くも一週間が過ぎた。

 

今日も僕は道場で箒と共に稽古に励んでいた。

 

それにしてもあの時の千冬お姉ちゃんと柳韻さんは凄かったな。あの瞬きすら許されない様な緊迫感は今でも忘れられないよ。

 

「一夏、稽古中に考え事をしていると怪我をするぞ?」

 

そんな風にものおもいに耽っていると僕が考え事をしていると察した箒が僕を嗜めてきた。

 

っと、流石に気を抜きすぎか。さて、稽古に集中しないとね。

 

「ゴメンゴメン、もう大丈夫だよ」

 

「そうか。なら良いが」

 

僕がそう言って素振りを再開すると、箒も納得したようで再び素振りに戻った。

 

僕もいつかあの場所に立てる様になりたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、気持ちの乗った良い素振りだったよ。ついこの前とは大違いだね」

 

僕と箒が素振りを終えて少し休憩を取っていると奥からやって来た束お姉ちゃんが声をかけてきた。

 

「あ、束お姉ちゃん」

 

「姉さん、見ていたんですか?」

 

僕達は束お姉ちゃんの方に向き直って返事を返した。

 

「やあいっくん、今日も元気かい? 元気なら束さんはハッピーさ。箒ちゃんは今日も可愛いね。でももう私の事をいっくんみたいにお姉ちゃんとは呼んでくれないのかな?」

 

束お姉ちゃんは僕達に対して、かなり独特な挨拶をしてきた。

 

しかし凄いな。今のを一息で言ったよ。

 

…………うん、僕も束お姉ちゃんの真似をしてみようかな。

 

「僕は元気だよ。束お姉ちゃんがハッピーなら僕も嬉しいな」

 

あ、なんかこういうの楽しいね。うん、またやろう。

 

「そ、そんなお姉ちゃん等と、は、恥ずかしいではないですか」

 

箒は恥ずかしがりやだなぁ。全く、箒も束お姉ちゃんの事は大好きなんだから素直になれば良いのにね。

 

「んー、いっくんはなかなか嬉しい事を言ってくれるじゃないか。箒ちゃんはそんなに恥ずかしがらなくても良いのにね。まあそんな所もまた可愛いんだけどね」

 

箒は束お姉ちゃんに可愛いと言われて真っ赤になっている。……うん、これは確かに可愛い。

 

しかし今日の束お姉ちゃんはやたらと機嫌が良いけど何かあったのかな?

 

「それはそうと、とても嬉しそうだけど何か良いことあった?」

 

僕が束お姉ちゃんに尋ねると束お姉ちゃんはよくぞ聞いてくれたと言わんばかりの表情を浮かべた。

 

「実はね、漸く私の夢が形になりそうなんだよ♪」

 

束お姉ちゃんは満面の笑みを浮かべ、とても嬉しそうに言った。

 

「束お姉ちゃんの夢?」

 

うーん、束お姉ちゃんの夢って何だろう?

 

「うん、いっくんと箒ちゃんにも見てほしいんだけど、二人共見てくれるかな?」

 

束お姉ちゃんは僕の疑問に答える様にそう言った。

 

「うん、僕にも束お姉ちゃんの夢を教えてほしいな」

 

「私も知りたいです」

 

束お姉ちゃんは僕達の返事に嬉しそうな顔をした。

 

「そっかそっか、なら稽古が終わったら私の研究室に案内するからねー」

 

僕達にそう言うと束お姉ちゃんはその場を離れた。

 

「……姉さんが何を見せたいのか分からないが取り敢えず今は稽古だな」

 

「うん、そうだね」

 

そう言って僕達は稽古に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして稽古を終えた僕と箒を束お姉ちゃんは自宅にある研究室に連れて行った。

 

そこはコンピューターや、モニター、足元にはコンピューターに繋がれたコード類で溢れていて如何にも研究室という雰囲気だった。

 

うわぁ、こういうのこの前アニメで見たよ!! なんかカッコいい!!

 

僕は興奮を覚えながら研究室を眺めていると一つのモニターが目に入った。

 

ん? なんだろ、これ。

 

「ねえ、束お姉ちゃん!! この画面に映ってるのは何?」

 

そのモニターには西洋の甲冑を模したようなものが写し出されていた。

 

「おっ、いっくんなかなかめざどいね。それが束さんの夢そのものなのさ。まあ正確には夢を叶える翼って所かな」

 

「翼?私には鎧にしか見えませんよ?」

 

束お姉ちゃんの言葉に疑問を感じた箒がそう質問する。

 

うん、僕にも鎧にしか見えないや。

 

「うん、ある意味その通りなんだけど、それを説明するために束さんの夢を聞いて貰いたいんだけど聞いてくれるかい?」

 

僕と箒は無言で頷いた。

 

「いっくんと箒ちゃんはこの空を越えた先に何があると思う?」

 

僕は束お姉ちゃんの質問に、「確か宇宙だっけ?」と、返した。

 

「お? よく知ってたね、いっくん。それで私はその宇宙に行きたいのさ」

 

「ですが宇宙に行くこととその鎧とどう関係するのですか?」

 

うん、箒の言う通りだね。僕もそう思うし。

 

そして束お姉ちゃんの話は続いていった。

 

「今の人類が宇宙に行くためにはロケットが必要だけど、この子が完成すればもっと簡単に宇宙に行けるようになるんだよ。この子がいれば宇宙開発が進むだけではなく未発見の惑星の探査も行われるだろうね。この子は人類の新たな翼になる」

 

 

 

 

 

「だから束さんはこの子に」

 

 

 

 

 

 

「"その翼を以て成層圏を越え、無限に広がる宇宙を往く者"」

 

 

 

 

 

 

 

 

「"インフィニット・ストラトス"と名付けたのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

束お姉ちゃんは両手を広げて、まるで謳うように語った。

 

僕と箒は束お姉ちゃんの話を聞いてそのスケールの大きさに声を出せないでいると、束お姉ちゃんは、少し難しいか。と、笑っていた。

 

僕は束お姉ちゃんの夢に対してとても大きな興味と憧れを抱いていた。

 

 

 

 

 

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私は言葉が出なかった。

 

それほどまでに姉さんが抱いていた夢は大きかった。私には姉さんが言っている事を殆ど理解出来なかったが姉さんの夢は果てしなく大きい事は分かった。そして姉さんは本気で叶えようとしていることも。

 

(ああ、姉さんはいつか私の前から居なくなってしまうのか)

 

当然応援したいと思うし、私に出来る事があるなら助けにもなりたいとも思う。しかし私は決して小さくはない寂しさを感じながらそんなことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は束お姉ちゃんの夢を聞いたあの日から剣道と共に少しずつ宇宙の事を勉強するようになった。当然解らないことばかりなので、束お姉ちゃんに直接教わりながら毎日を過ごしていた。

 

 

 

ある日、僕は剣道の稽古を終え、束お姉ちゃんの所へ行こうとすると柳韻さんに呼び止められた。

 

「? どうかしたの?」

 

「いやなに、そういうわけじゃ無いんだ。ただ君にお礼を言いたくてね。一夏君、君がうちに来てから束はよく笑うようになった。君には感謝している」

 

僕は何もしてないんだけどな。

 

「僕が来る前は、束お姉ちゃんは笑わなかったの?」

 

僕は疑問に感じた事を柳韻さんに聞いた。

 

「ああ、あの子は小さい頃から周りの子よりとても頭が良くて私や妻が何かを教えるより早く色んな事を自分で覚えていってね、私達は情けない事にあの子にどう接していけば良いのかいつの間にかよく分からなくなったんだ」

 

「するとあの子はいつの間にか笑わなくなってしまったんだ」

 

僕はその言葉を聞いて疑問に思った事を聞いてみた。

 

「ん? それってただ束お姉ちゃんの頭が良かったっていう話だよね? それならただすごいねって褒めれば良いんじゃないの?千冬お姉ちゃんはそうやって褒めてくれるよ?」

 

僕はそうやって誉められるととっても嬉しいし。

 

でも僕の言葉は予想外だったのか柳韻さんは目を大きく見開いた。

 

 

 

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「ん?それってただ束お姉ちゃんの頭が良かったっていう話だよね?それならただすごいねって褒めれば良いんじゃないの?千冬お姉ちゃんはそうやって褒めてくれるよ?」

 

ああっ、私はなぜこんな簡単な事を忘れてしまっていたんだ。

 

私は一夏君の言葉に雷に打たれたような衝撃を受けた。

 

思えば私達はあの子に親らしい事が出来なかった思い込み、とあの子がひとりでに成長したと勘違いをしていた。

 

だが決してそんなことは無いのだろう。あの子が私達に笑顔を見せないのも当然だ。私達はただ戸惑うだけであの子に何もしなかったのだから。

 

「ああ、そうだな、たったそれだけで良かったんだな。どうして 、どうしてそんな簡単な事を忘れてしまったのだろうな」

 

私は涙を流しながらそう呟いた。

 

すると奥から私の妻である秋穂がやって来た。

 

「あなた、どうしたんですか?」

 

私は涙を拭うと自分が言った事と、一夏君が言った事、そして私達が抱いていた勘違いを秋穂に伝えた。

 

「あなた、今夜束とちゃんと話をしましょう? 私達はやっと気づけたんですから」

 

秋穂さんは瞳を潤ませながら柳韻さんに言った。

 

「ああ、そうだな。一夏君、本当にありがとう。君には大切な事を教えられたよ」

 

「一夏君、私からもお礼を言うわ。ありがとう」

 

私達はこの子がここに来たことにただ感謝した。

 

 

 

 

 

 

 

柳韻さんと秋穂さんは目を腫らしながら、でもとてもすっきりとした笑顔で僕にお礼を言った。

 

「どういたしまして」

 

僕も笑顔でそう返した。

 

僕はその事を千冬お姉ちゃんに話すと、千冬お姉ちゃんは、「ありがとう」と言いながら僕を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

そしてその日の夜、二人は自分の娘と話し合い、わかり会う切っ掛けを掴んだ。過ぎ去った時間はもう戻ることはないが、それでも彼らはゆっくりと、でも確かな絆を育んでいくだろう。

 

生きている限り絆はずっと紡いでいけるのだから……。




読んでいただきありがとうございます。

篠ノ之親子の和解の話はいずれ番外編でやりたいと思います。
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