東京喰種endless   作:さかなたん

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第一話 開始

 いつも通りの朝。僕は目覚める。ベッドから出て一階へ降りると母さんがキッチンにいた。

 

「あら、おはようリンドウ。ごはんテーブルにおいてあるわよ」

「おはよう母さん」

 

 母さんが呼んだように僕の名は佐倉 竜胆(サクラ リンドウ)、今年から上井大学に通ってる普通の大学生である。

 そんな僕はテレビを見ながら朝食を口に運ぶ。家は朝は米派だ。

 テレビでは喰種(グール)が高田ビルの近くで人を食ったというニュースが流れていた。

 喰種とは人間を食することでしか、生きながらえることのできない怪人達のことである。

 

「また喰種の事件? 物騒な世の中ね~」

「喰種なんてそうそう会うもんじゃないから心配しなくていいでしょ」

 

 怖がる母を尻目に僕は言った。実際そうだろう、喰種は人を食うが人前で喰うわけがない、そんなことをしたら喰種捜査官に見つかって駆逐されるのが落ちだ。だから喰種は人通りのない所でしか人を襲わないはずだ。そういう所にあまり踏み込まなければ問題ないだろう。

 

「リンドウは冷静でいいわね~お母さんすぐに焦っちゃうから尊敬するわ」

「親が子に尊敬なんてしないでくれよ。じゃあ僕もう大学行くから。」

 

 食べ終わった食器を片付け、僕は着替えて大学へ向かった。

 

 

 

 

 

大学につくとまばらに学生が外にいるのがみえる。ベンチで本を読んだり、友人グループで笑いながら歩いたりと、実に平和な光景だ。

 僕もあのグループに混ざりたいものだが、僕は結構内気なタイプなので、ちょっと無理だ。まあそんな僕にも一人ぐらい友達はいるが……

 

「おーい! リンドウー!」

 

 ちょうどいいタイミングでそいつが来た。

 走りながらこちらへ向かってくるそいつに、僕はあいさつを交わした。

 

「おはようシュウ。朝から元気だね」

「いやー今朝、なくしてたと思った漫画見つかってテンション上がってよー」

 

 彼の名は升本 秀(マスモト シュウ)、常にテンションが高かったり、些細なことでも喜んだりとよく言えば明るく、悪く言えば、バカという感じの男だ。だが僕の子供の頃からの唯一の親友である。

 

「シュウはのんきでいいねーそろそろテストだっていうのに」

「毎日勉強してるから問題ないぜ!」

 

 シュウはそう言って親指を立てた。 

 先ほどシュウをバカと言ったが、彼は成績のほうは非常にいい。意外に真面目な性格で大体のことをそつなくこなせる男なのだ。

 立ち話も程々に僕らは教室へ向かい、ノートを広げて教授を待つ。

 となりの席では、おそらく友人同士であろう二人組が話をしている。

 

「だからー、カネキは本を読むだけじゃなくてもっと体を動かせってー、そんなんじゃモテないぞー」

「い、いいよ、僕は本を読むのが好きな大人しい女の子がいいんだ。ヒデの好みとはちがうよ」

「本当にお前は軟弱だなー。そういえば、この間言ってた、行きつけの店にいる可愛い子、今度俺にも見せてよ」

「見せてって言われても……別に付き合ってるわけじゃないし……まあでもよくその店にいるから、今日一緒に行こうよ」

「いいねー俺が品定めしてやるよ」

 ヒデと呼ばれている男は、笑いながらそう言った。

「何様だよ」

 

 カネキという方は苦笑しながらそう言った。

 仲のよさそうな二人だ。僕とシュウのような関係なのだろう。

 そんなことを思っていると、教授が入ってきて講義が始まった――

 

 

 

 

 

 今日の分の講義が終わり、帰ろうかと思ったら、シュウに止められた。

 

「この間、コーヒーの美味い店見つけたから今から行こうぜ!」

 

 確かに今日は昼までしか講義がなかったので、どこかに行くのもいい案だと思った。しかし……

 

「シュウ……それは僕が、コーヒー嫌いなのを知って言ってるの?」

 

 そう、僕はコーヒーが嫌いだ。どうしてあんな苦いものを飲めるかわからない。

 

「克服のつもりでいこうぜ、な?」

 

 確かに、大学生にもなってコーヒーが飲めないというのも、なんだか子供っぽい。

 

「まあ苦手なものをなくすいい機会だし……分かった、いこうか」

「オーケー!結構近いから早速行こうぜ!」

 

 シュウについていって、たどり着いた場所には、『あんていく』と書かれた小さな喫茶店があった。

 入るとコーヒーの芳醇な香りが漂ってきた。僕はコーヒーの香りは好きである。

 

「いらっしゃいませーお席にご案内します」

 

 髪で片目を隠してる可愛らしい定員さんが、席に案内してくれた。

 

「いい店だろ? 店員はあの可愛い子の他に美人な長髪の人もいるぜ?」

 

 シュウは気持ちの悪い笑顔でそういった。

 

「従業員じゃなくて、味に注目しろよ。」

「それなら問題ない。メチャ美味い!」

 

 自信満々だ。まあ他人がどう言おうと、コーヒーは苦いものだが。

 

「お前何にする?」

「うーん……そうだな……」

 

 コーヒーの種類には詳しくないが、たしかカプチーノってのはコーヒーにミルクとか味付けにチョコを入れるものだった気がする。それなら、僕でも飲めそうだ。

 

「カプチーノと食べ物はミックスサンドっていうのがいい。」

「OKわかった。すいませーん!」

 

 シュウは店員を呼んだ。

「ご注文お決まりでしょうか」

「ブラック二つにミックスサンド一人分で」

 

 シュウがそう注文し、僕は驚いた。

 

「お……おい! 別の頼むなよ! しかもブラック! ハードル高すぎるぞ!」 

 

 僕は珍しく取り乱してしまった。

 

「いいんだよ。ちまちまやるより、一気に克服しようぜ!」

 

 なんて図々しい奴だ。

 

「あのーご注文は以上でしょうか?」

 

 可愛いらしい店員さんは困っていた。

 

「はい!大丈夫です!」

「あ! 待ってくだモガ!?」

 

 店員を止めようと思ったらシュウに口をふさがれた。

 

「男らしく、ドン! と構えろ!」

「わかったよ……大人しく待つよ……」

 

 僕は、仕方なく折れた。

 

 

 

 

 

 適当に他愛のない話をしていると、大学で隣にいた二人が店に入ってきた。

 

(そうか……そういえば店に行くとか言ってたな、ここだったのか。) 

                                              

 その時ちょうど、注文したものが運ばれてきた。 

 おいしそうなサンドイッチにいい香りのコーヒーだ。

「な? 美味そうだろ?」

「ああ、すごく美味しそうだよ。」

 

 僕は冷静に返した。

「あ、砂糖とかミルクとか、絶対入れるなよ?」

「え?」

 

 ちょうど砂糖とミルクを大量に取ってきて、入れようと思っていた僕は、間抜けな声を出してしまう。

 

「せっかくブラック頼んだんだから、コーヒーの風味を楽しもうぜ?」

 

 シュウはにやにやしながら言った。こいつ……風味よりも僕のリアクションを楽しむきだ……

 

 仕方なく、僕は覚悟を決めてコーヒーを口に含んだ。

 その瞬間、より一層コーヒーの芳醇な香りを感じた。だが……それをはるかに凌駕する苦味が咥内を刺激した。

 

「う……うおお……これは……」

 

 意味の分からないうめき声を漏らしてしまった。

 

「や……やっぱり、僕にはまだ早いと思うんだ……」

「だらしねぇなぁ、仕方ない、一個だけなら砂糖いれていいぜ。」

 

 にやにやとしながらそういい、シュウは優雅にコーヒーを飲む。あのシュウがかっこよく見えるとはコーヒーとは恐ろしいものだ。

 

「じゃあお言葉に甘えて入れさせてもらうよ。」

 

 砂糖を一個入れてかき混ぜる。それでもかなり苦いが、さっきよりはマシだった。

 

「うう……苦い……よくこれをぐびぐび飲めるな……」

「コーヒーでぐびぐびって表現はどうかと思うぞ……逆にこんなおいしいものをなんで飲めないんだよ。」

「苦手なものは苦手なんだよ……」

 

 僕は口直しに、サンドイッチに手を付けた。ふかふかのパンに新鮮なレタスやハムが入っていてとても美味しい。

 

「このサンドイッチ美味しいね。そういえばシュウは、なんか食べ物頼まないの?」

「ん? ああ、俺はいいよ。腹減ってないし。」

「ふーん。シュウってあまり食べないよね。」

 

 シュウはかなり少食だ。僕と遊びに行ってもあまり何かを食べたところを見たことがない。小学生の頃からの付

き合いなのにだ。給食とかもよく残していた。

 

「胃が小さいんだよ。そんなこといいからお前はさっさとコーヒーを飲めるようになれよ。」         「うっ……わ……分かったよ……」

 

 ぼくはちびちびとコーヒーを飲みだした。

 

 この店は結構常連がいるのか、ちびちびと飲んでいる間にも結構人が入店してきた。そしてまた店のドアが開いて誰か入ってくる。

 それは綺麗な女性だった。長くて艶のいい髪を持ち、整った顔には黒縁の眼鏡がかかっていて知性的に見える女性だ。

 

「あの人、すごい美人だね。」

「ああ、この間来た時にもいたわあの人。確かにかなりレベル高いよな。」

 

 そういうシュウだったが、なぜか顔が少し険しかった。

 

「シュウ、体調悪いの? 大丈夫?」

「え? あ、ああ実は少し風邪気味でな。」

「あまり、無茶しないでよ?」

「大丈夫、大丈夫、いいからさっさとコーヒー飲め。」

 

 シュウは笑いながら言った。何か変だが、僕は特に気にせずに、またちびちびとコーヒーを飲んだ。

 

 なんとかコーヒーを飲み切ったので、そろそろ僕らは店から出ることにした。その時あのカネキとかいう人が、さっきの美人とぶつかって、なにやらしゃべっている。彼の顔から察するに、大学で言っていた美人ていうのは彼女のことか。なにやら本をもって話している。あれは高槻 泉(タカツキ セン)の作品だろうか? 僕は本は漫画くらいしか読まないが、高槻泉の名前はよく聞くので有名な人なのだろう。ああいう美人と話せるとは実にうらやましい。

 

「あいつ……また食う気か――」

 

 シュウが何かつぶやいた。

 

「なにか言った?」

「え? あ、ああ早く出ようぜ。」

 

僕らは店を出た後、別れた。

 

 

 

 

 

 翌日、シュウは大学に来なかった。

 朝、風邪を引いたので休むという旨のメールが届いた。昨日風邪気味といったのでそれが本格的に風邪になったのだろう。

 『見舞いに行こうか?』と返したが、『いいよ、心配すんな』と返されたのでなんか素っ気ないなあと感じていた。いつもなら、さっさと見舞い品もってこいとか言いそうなのに……

 まあ、心配するなと言ってるので気にしないことにした。     

 

 

 

 

 

 結局、シュウは風邪が長引いたらしく、今週は大学に来なかった。おかげで僕は大学で常に一人だった。今更友達を作るような社交性は僕にはない。

 というわけで、僕はいま休日で大学も休みでかなり暇だった。せっかくなので、服とか漫画を買いに行こうと思い。近くのショッピングモールへ行き、適当に何か買った後、腹が減ったのでショッピングモールの中にあるファミレスに立ち寄った。そこで、僕はどこかで見たことのある二人を見た。一人は綺麗な長髪に目が行く美人とthe文系って感じの気弱そうな青年――間違いない、喫茶店にいた美人さんとカネキとかいう人だ。

 そういえば喫茶店で仲良く話してたな……あんな美人と食事とは羨ましい……

 まあ、僕はあの二人と話したことなんてないので、気にせずに適当にご飯を注文して食べた。

 

 

 

 

 

 ご飯を食べ終わった僕は、家に帰って適当にテレビを見ていた。だがそこで大学で出された、レポート提出の課題のことを思い出した。

 

「はぁ、めんどくさいなぁ、でもあの教授結構厳しいからなぁ……」

 

 そう言うながら僕はカバンを開く。だがそこで問題が起きた。

 

「あれ?ペンケースがない?」

 

 そう、カバンにはペンケースが入っていなかった、これではレポートが書けない。

 

「多分大学に忘れてきたなぁ、あー本当にめんどくさいなぁ」

 

 パソコンの使用が許可されていたら取りに行く必要はない、だが課題を出した教授は、パソコンでのレポート作成を禁止している。なんでもパソコンを使うといろんなサイトから適当にコピーしてきて終わらせる奴がいるので、せめて手書きにして学生たちに苦労させたいらしい。全くはた迷惑な話だ

 

「はぁ、仕方ない取りに行くか……」

 

 僕はペンケースを取りに行くために大学へ向かった。

 

 

 

 

 

「えーっと、あ! あったあった。全くパソコンの使用ぐらい許可してくれよ。」

 

 僕は、無事に大学の教室の机に置き忘れていたペンケースを回収した。 

 外はもうすっかり日が落ち、民家やコンビニの光のみだった。

 僕はさっさと帰ろうと思ったが、ふとシュウのことを思い出した。

 

「全然顔見てないし、見舞いに行ってやるか。」

 

 メールでは大丈夫と言っていたが、そろそろさみしくなっているはずだと思い僕はシュウの家に行くことにした。

 シュウの家はこの間喰種の捕食事件があった高田ビルの近くにある。危ないかな? とも思ったが、この間事件があった場所なのでCCGの警備もあの辺りは激しくなっているはずだ。そんな状況でまたあの周辺で捕食しようなんて思わないだろう――今思えばこの油断があんなことにつながったに違いない。

 

 

 

 

 

 というわけで、今僕はシュウの住むアパートへと路地を進みながら向かっている。シュウは高校まではおじさんの家に住んでいたが、大学に入ってからはアパートに住んでいる。なんでおじさんの家に住んでいるのかは、後日話すとしよう。

 そんなこんなで気づいたらもうアパートの近くに来ていた。

 

「あいつ風邪治ってるかな? リンゴ買ってきたけど、リンゴくらいなら食べれるよね? っていうか子供の時から一緒だけど、あいつが風邪でしかもこんな長い間休むなんて珍しいな……ん? あれは……」

 

 なぜ全く話したこともないのに、こんなによく見るのだろうか? もはや何かしらの運命さえ感じる……そう……カネキという人がいた……隣にはまだあの美人がいる。

 そのカネキという人は道で美人さんと話をしているようだった。美人さんの頬がほのかに赤らんでいる。

 くそ……何を話しているか気になる……だめだ! ここにいたら羨ましすぎて悲しくなる。僕は駆け足でそこを通り過ぎようとした。

 だが、その時僕は信じられないものを見た。

 

「――シュウ!?」

 

 僕は叫びそうになったが、声を抑えてたった一人の親友の名を言った。何故か――それはその親友がいたからに他ならない。いたといっても、20m程離れたところにいるのが街灯に照らされて見えてる程度だ。

 先ほど信じられないものを見たと言ったが、この程度なら何ら問題ない、風邪が治ってコンビニでも行く途中かもしれないからだ。だがそれにしては様子がおかしい。シュウはカネキという人と隣の美人さんを二人の後ろから睨んでいる。それもおかしいが一番おかしい所は、シュウの体だ。シュウの体にはこの距離からでもわかるほどの無数の傷が付いていた。かなりの重傷に見える。

 それを見た瞬間僕は、シュウの下へ走りだした。勝手に足が動いた。

 近づいてくる僕に気付いたのか、シュウは顔を青ざめて僕に背を向け走り出した。僕はその背中を追う。

 

「はぁっ……はあっ……なんで逃げるんだよ!」

 

 叫んだつもりだったが、喉からはかすれた声が出ただけだった。運動なんて全然してないので呼吸だけで精いっぱいだ。その上足も遅い。

 だが、それを差し引いてもおかしいものがある。

 

「あいつ……なんであんなに速いんだよ!」

 

 そう、シュウは異常な速さで走っていた。高校の体育祭の時に走ってた時よりはるかに速い。しかもあんな傷だらけの体で。

 だが、その傷だらけの体のせいだろうかだんだん速度が落ちてきてる。

 そしてシュウが路地の角を曲がった先で止まった。そこは行き止まりだった。引っ越したばかりでまだ土地勘がなかったのだろう。

 

「なんで……逃げ……るんだ……よ……」

 

 僕は過呼吸になり、下を両ひざに手をつき俯きながらも質問した。

 だが、シュウは答えない。

 

「シュウ、早く病院に行――っ!」

 

 僕は顔を上げ病院に行こうと、言おうとしたが最後まで言えなかった。シュウの様子がさらにおかしくなっている。

 

「う……うああ! うああああああ!!」

 

 顔を両手で抑え、苦しそうに呻いている。

 

「シュウ! 大丈夫か!?」          

「来んな! 俺に近寄んな!」

 

 シュウはそう言い僕を拒絶した。何か見られたくないものでもあるのだろうか? 僕に背中を向ける。だがそんなこと言ってる場合じゃない。

 

「何を隠してるのか知らないけど、早く病院に行くぞ!」

 

 僕は、顔を抑えているシュウの手を引っ張って無理やり立たせようとした。だが手を顔から離させると、僕はあるものが目に入った

 

「っ!?」

 

 最初に見えたのは赤、それはシュウの瞳の色だった。普通は黒いはずの瞳が、真っ赤になっていた。そしてその周りの白目の部分は、白とは正反対の黒に染まっていた。両目ともその色合いになっていた。

 

「シュウ! その眼は何だ!? 何か病気か!?」

 

 そう問い質すが、シュウの様子がだんだんひどくなっていく。

 

「いいから……俺から離れろ! もう抑えきれそうにない!」

「抑えるって何を――」

 

 次のセリフが言えなかった。シュウの背中から飛び出してきた何かに驚いたからだ。

 それは細長くて先が鋭くとがっている黒い触手のようなものだった。触手といってもやわらかいというイメージはなく金属のように固そうに見える。それが一本シュウの背中から飛び出してきたのだ。

 

「な……何なんだよシュウ! そ――」

 

 またセリフが言えなかった。その触手が僕の体を貫いたから――厳密には僕の心臓をだ。その触手は細長いといっても成人男性の腕回りほどあった。そんなものが僕の心臓を貫いたのである。

 

「がばっ……ごぶっ…」

 

 ゆっくりとその触手が体から抜かれる。それと同時に口から血が溢れ出る。体に力がはいらなくなり、地面に倒れ伏す。目に血流が行かないからか段々視界がボヤーとして来た。そのぼやけた視界の先には涙を流しているシュウの姿が微かに見えた。

 

「――めん」

 

 シュウが何か言ったのが聞こえたが、シュウの涙もその言葉の意味も、もう考えられない。

 体が寒くなってきた。

 ああ……これが……死か――                             

 

 

 

 

 

 ――じゅわ       

 

 その奇妙な蒸発音と共に僕は意識を取り戻した。僕は訳が分からなかった。心臓に穴が開いたんだ生きているはずがない。そう思いながら僕は立ち上がる。時間は死んでから全く立っていないようだシュウが僕が死ぬ前と同じように涙を流しているからだ。だがそのシュウの表情は僕を見て驚いているようだった。当たり前だあのケガで生きているんだから。だが本当になぜ生きてるんだ?

 そこまで考えて僕は、あることに気付いた、さっきから何か奇妙な音が聞こえる。それは僕の胸のほうから聞こえる。何だと思い僕は自分の胸を見る。

 

「――!?」

 

 そこには信じられない光景があった。僕の胸には大きな穴が開いたままだった。そしてそれが徐々にじゅわじゅわと音と煙を上げながら再生していっている。

 

(なんだこれは!? こんなの普通の人間じゃな――) 

        

 そこまで考えて僕はある生物のことを思い出していた。

 その生物は喰種と同じで姿かたちは人間と一緒で、人間社会で生きている。だが喰種と違って人を食べたりなどの害はない。

 では、何がその生物は人間や喰種と違うのか? いやその生物にはどの生き物にもない大きな特徴がある。   

 それは――死なない(・・・・)――つまり不死身だ。その生物は何があろうとも死なない。絶対に。

 そいつらの……いや、僕らの名は――

 ――亜人(あじん)                                                                                                                                                                                

 

       




 最後まで読んでくれてありがとうございます!
 初めての作品なので至らないところがあるかもしれませんが、どうかこれからも読んでほしいです。
 書く時間が短いので、投稿はかなり遅くなると思いますが、付き合ってくださったら嬉しいです。
 
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