(僕が亜人……それしかありえないか……)
僕は完全にふさがった胸の穴を見て思う。あの即死の傷が完治しているのだ。普通の人間なはずがない。
(もうこの際そのことはどうでもいい。今はこの状況をどうにかしなくちゃ。)
「があああああ!!!」
僕の目の前では、シュウが相変わらず苦しんでいる。僕が起き上ったときは驚いた表情をしていたがすぐにまた苦しみだしたのだ。
(あの目……あの背中の触手……人間じゃない……かといって
いろいろ自分の身に起こりすぎて、逆に冷静になってきたようだ。その結果考えたが、シュウの正体は喰種で間違いなさそうだ。さっき僕を攻撃してきたのはあまりにも腹が減って本能で僕を食べようとしているからだろうか。そこで僕に一つの考えが生まれた。
(喰種の食糧は人間……僕は亜人……なら……)
そう、それは――
「シュウ! 僕を食え!」
――自分を食わせること。
「何を……言って……がああ!!」
「ほら、そんなになるまでお腹すいてるんだろ? さっきの僕を見たろ? 僕は亜人だ、僕を食っても僕は死なない。」
「いや……だ……食い……たくない」
シュウは苦しそうにそう言った。
どう見ても強がってるようにしか見えない。だがなぜ? あんなに苦しんでるのになぜ食べないんだ?
「バカ言ってないで早く食べろ! 僕は不死身なんだ!」
「食いたくねぇつってんだろ! ……早くどっか行け……!」
シュウは頑なに僕を食べることを拒む。なんで、そこまでして食べないのだろうか。 僕はふと、昔のことを思い出していた。僕とシュウがまだ小学校の時の事だ。
僕らは一緒に小学校に入学したのだが。その時は僕はシュウのことを知らなかった。だが内気な僕がクラスで一人でいるとシュウが話しかけてくれたのだ。その時からずっと僕らは一緒に遊んだ。シュウの家にも遊びに行ったりした。シュウのお母さんとお父さんはとても優しい人たち
だったというのは、シュウの両親は僕らが二年生に上がったころに事故で亡くなってしまったらしい。それ以来シュウはおじさんのところで暮らしていた。シュウは最初はずっと落ち込んでいたが、僕が何度も話しかけてやっと元気を取り戻してくれた。
だが、僕らが三年生になったころに僕とシュウが喧嘩したことがあった。きっかけは、覚えていないがシュウはその時ものすごく怒っていたのを覚えている。殴り合いにまでなったほどだ。いや……殴り合いではないか……シュウの拳が僕の頭に当たった時僕は気を失ってしまったのだ。ワンパンだ。今考えたら喰種の拳だ子供だろうと相当な威力だろう。
僕が起きたのは病院のベッドでだった。子供の喧嘩中に当たり所の悪いパンチが偶然飛んで来たんでしょうとか医者が説明したらしく大事にはならなかった。運が悪かったとあの時は思っていたが、今思えばシュウが喰種だとばれなくてラッキーだ。
見舞いに来たシュウがすごい泣きながら謝ってきたのを覚えている。シュウのおじさんも僕と僕の親に謝っていた。僕の親は優しい人たちなので無事だったから大丈夫とか言ってたっけ。
僕も大して怒っていなかったので普通にシュウと変わらずに接した。
シュウのあの時の泣き顔はすごかったなぁ。あの時なんて謝ってたっけなぁ……――
――ごめん……嫌いにならないで……いなくならないで……――
――そうだ、そんな風に謝ってたっけ。
そこで僕は気づいた。
(ああ……そうか……シュウは怖いんだ……お母さんとお父さんみたいに大切な人が、自分の前からいなくなるのが……)
だから、食べないんだ。食べたら僕がシュウのことを嫌いになってしまうと思っているから……自分からいなくなってしまうと不安だから……
僕は両手を大きく広げた。
「シュウ……」
「何……してんだ……早く行け……」
「僕らは友達だ。」
「――!」
「僕はお前のことを嫌いになんてならない。お前の前から居なくなるなんてない。だから……お前も僕の……前から居なくならないで……くれよ……お願いだ。」
後半は泣きながらだからとぎれとぎれになってしまった。
シュウも目に涙を浮かべている。
「リン……ドウ……ああ……いなくならねぇよ……ずっと友達だ……」
そういいながらシュウは僕に近づいてくる。
そして僕を抱きしめた。僕も広げた両手で秀を抱きしめた。
「食ってくれシュウ。」
「ああ、ありがとう……」
シュウは口を開けて僕の肩に噛みついた。
「ぐっ……」
肩に痛みが走るがそんなことどうでもいい……シュウが生きてさえいてくれれば……――
――ドズッ
という音が聞こえた。なんだ? と思った瞬間腹のあたりから激痛が走った。
「あああああ!!」
「ぐ……うう……」
痛みで絶叫した。だがシュウも苦しそうに呻いている。そこで僕は気づいた。
シュウの腹の背中側から何か黒い腕のようなものが出ているのが……
その黒い腕には血が付いている。つまりこの黒い腕が僕とシュウを貫いたということだ。
その腕の持ち主が何者か確認するために僕は首だけを回して視線を背後に移す。
そこには見たことのない化け物がいた。
そいつは170cmくらいの身長で、腕が異常に長かった
そして黒い包帯のようなものがぐるぐる巻きついている。まるで幽霊だ。
そいつは自分の右腕で僕らを貫いている。
そしてもう一つ僕はあることに気付いた。あの黒い幽霊の体から何か粒子のようなものが出ている。その粒子の行方をたどると僕の体にたどり着いた。いや……あいつの体からでているんじゃない……僕の体から出ている……
じゃあ、あいつは
そんな僕の考えはお構いなしに、そいつは僕らを貫いてないほうの腕を振りかぶって僕らに攻撃してきた。
「リンドウ……少し我慢しろ。」
シュウは僕ごと後ろに跳んで体から腕を抜いた。
「ぐっ……」
急に抜いたため、腹部に痛みが走る、その上大量の血が出ていて意識が遠のきそうだがそんな事気にしてる場合じゃない。とりあえずあいつから離れることはできた。あいつは左腕の攻撃を空振って、その場で一瞬止まってこちらを見てから地面を蹴って僕らのほうに跳んできた。
(速っ――!!)
そいつは一蹴りで、10m程離れている僕らのところに跳んできた。喰種のような力だ。
「近づくんじゃねぇ!」
だが、シュウはすかさず背中から出ている触手でその黒い幽霊の体を袈裟懸けに切り裂いた。
「やった!――!?」
しかし、切り裂いた部分は一瞬でまた結合してしまった。なんて再生力であろうか。
そして幽霊は、自らを切り裂いたシュウへと顔を向け、腕を振り上げる。
「シュウ逃げて!」
そうは言ったが、シュウと幽霊の距離が近すぎる上にシュウは傷を負っている。そんな状態で逃げられるはずがないのだ。
そして幽霊の腕が振り下ろされる。
だが、その腕が僕はゆっくりに見えた。いや……それだけじゃないシュウの動きも必死そうな表情も何もかもがゆっくりに見える。
そしてシュウとの思い出がフラッシュバックされて、頭の中にどんどん湧いてくる。これは……走馬灯というやつか? あれ自分じゃなくても起こるのか? いや……シュウは僕にとってそれほど大事な存在ということだろう。
そう思ってる間にもシュウとの思い出は止まらない。
一緒に遊んだこと、一緒に昼寝したこと、一緒に野球観戦に行ったこと、一緒に恋バナしたこと、一緒に笑ったこと、一緒に泣いたこと、喧嘩したこと、病院でのこと、あの涙のこと。
――一人の僕に声をかけてくれたこと――
それらが頭の中を駆け巡り、僕は涙を流していた。
あの黒い幽霊の腕が徐々にシュウに迫っていくのが見える。
終わる。思い出が終わる。
そう、思ったときには僕は叫んでいた。
「やめろおおおおおおおおおおお!!!!!!」
僕は人生で一番の大声を出した。喉が張り裂けそうになるほどの声を。止まってくれと願いながら、大切な親友のことを思いながら――そして、その願いは叶った。
「止まった?」
僕はつぶやいた。
あの黒い幽霊の動きがシュウに攻撃が当たる寸前で止まったのである。でも、何故だ? 人間の言葉が通じるような生物に見えないぞ。
「僕……らは……友達……だ」
「!?」
「しゃべった!?」
シュウは驚き、僕は声も出ずに驚いた。その言葉は幽霊が発したのだ、あいつ喋れるのか……だがその声は僕にそっくりでさらにその言葉は僕が先ほどシュウに言った言葉だ。やはりあの幽霊は
幽霊は次いで何かをしゃべる。
「みん……な……死ん……じゃえ……」
「――!」
僕はその言葉を聞いたとき、胸が苦しくなった。どこかで言ったことがあるような気がするが思い出せない……
何故かすごく悲しくなった、そう考えているときに、奴は急に動いた。
僕のほうへ体を向け、奴は腕を振り上げ、すぐさま振り下ろす。
だが、そこで世界の動きがまたゆっくりに見えた。また走馬灯だ。しかし、脳裏をよぎるのは先ほどとは違う過去だ。
喪服を着た人たち、泣いている母、寂しげに置かれた棺
――場面は変わり、雨の中一人で立っている幼い自分、何かを叫んでいるようだ、だが、その声は聞こえない。
こんな過去僕は知らない。だけど何故だろう……この光景を僕は何か見たことがある気がするのだ。
だが、そこで走馬灯は終わる、もう幽霊の腕は目の前だ、だが僕は不死身の亜人。死ぬことなんてない。
その時、僕は横から強い衝撃を受けた。僕は横に大きくふっ飛んだ。僕がいた場所を見ると、そこにはシュウがいた。そして幽霊の腕は無情にもシュウの体を切り裂いた。血を吹きだして倒れこむシュウ。それと同時にあの黒い幽霊は煙のように消えてしまった。
貫かれた腹部から血が出て痛む。それでも僕はシュウの下へ向かう。
「シュウ!! 大丈夫か!?」
「いや……ダメっぽいわ。」
シュウは、弱弱しくかつ軽い感じでそういった。
シュウの体からはとめどなく血があふれだしている。こんなの止血のしようすらない。
「なんで……なんで僕をかばった!? 僕は不死身なんだ死なない体なんだぞ!」
シュウにそう問い詰める。その眼で復活するのを見たはずなのになぜかばったのか本当にわからなかった。
シュウは答える。
「体が勝手に動いちまったんだ……頭では分かっていても……どうしてもお前が傷つくのを見たくなかったんだろうなぁ……」
「そんな……そんな理由で突っ込んだのか! それで死ぬなんておかしいじゃないか!」
僕はいつの間にかまた流れ出していた涙を気にせずシュウを責める。
だがシュウの口から出た言葉に僕は責めることができなくなった。
「だって……俺ら友達だろ。」
「!!」
シュウは当たり前のことを口にするようにそういった、僕はもうそんな理由なんて言えなかった。シュウの行動を理解できてしまったから……逆の立場なら自分も同じことをしていただろうと思ってしまったから……
「最後にお前の顔見れてよかったわ……」
「最後なんて言うなよ! また一緒に遊ぼうよ! レポートなんて何枚でも手伝ってやるよ!」
涙は止まるどころかどんどん溢れ出てくる。体中の水分を出し尽くすのではと思うほど出てくる。
「だから……いなくなるなよ……」
それしか言えなかった。シュウは穏やかな顔で
「悪いな……もう遊べそうにないわ……いままでいろいろ迷惑かけたけど――」
そこでシュウも涙を流して、言葉に詰まる。必死に口を動かし声を出して僕に思いを届ける。
「――本当に……ありがとな……」
そこでシュウは目を閉じる。手が冷たくなっていくのを感じた。
「あ……ああ……あああああああああああ!!!!!!!!」
空へ向かって咆哮する。そこで僕の体に異変が起きた。体が動かなくなって目がかすんできた。僕もまた血を流しすぎていたのだ。僕はシュウの上にうつぶせになるように倒れこむ。声も出なくなってきた。また死ぬのだろうか……でも自分の事より親友の死がよっぽど辛かった。
その悲痛の中で僕は完全に意識を失った。
……――早くするんだ! この人だけでも救うぞ!」
何か聞こえてくる。だが僕の意識は完全ではなく、その意味も声も理解できない。
「ですが先生、内臓の損傷が激しすぎます!」
「くっ! 仕方ない、一緒に倒れていた青年の内臓を移植しよう!」
「先生! その青年は死亡していたと報告がありますがよろしいのですか? 何か問題にならないでしょうか!?」
「責任は私が持つ! 今は生きてる命が優先だ!」
そして僕の悲劇は
投稿遅れて申し訳ありません! こんな不定期な投稿を続けますが見続けてくれたら幸いです。
本編の話ですが、問題が生じました。私が出そうと思っていた赫子がほかの方の作品と完全にかぶってしまいました。「やべぇどうしよう……」と思いましたがこのアイデア変えると話がだいぶ変わってしまうのでそのままにします。ですので私の作品で「これパクリじゃね?」って思っても温かい目で見てください。本当にかぶっただけなのです。
余談ですが、最近プラスティックメモリーズというアニメにはまっています皆さんも見てみてください。
ではまた次回お会いしましょう。