「最初はどこに行くの?」
「うん。新しいお店ができたから、そこ行きたいの!」
碧の瞳に星が散りばめられる。よほど楽しみにしていた場所なのだろう。
「スバル君も気に入ってくれると思うよ?」
「そっか、楽しみだな!」
「もうすぐそこに……見えた~!」
ミソラの声に合わせて高鳴る胸を抑え、指先を見る。
「……え?」
階段の横に構えられた屋台だ。若者がつい足を運んでしまいたくなるようなデザインのそれの横には、メニューが書かれた看板に、飲食するための簡易な丸テーブルと椅子が並べられている。そして、その屋台の上に堂々と掲げられた看板には
「HUZIYAMA?」
「そっ!」
「このお店、HUZIYAMAパフェの姉妹店なんだ」
「だろうね……生地もクリームも山盛りだからね」
大人の手でも片手で支えきれない馬鹿でかい黄色い生地。それから溢れんばかりのクリームが顔をのぞかせている。いや、溢れてる。包み紙が無かったら地面に滴り落ちていた。クリームを生地で包むというよりは、巻いているという描写が正しい。太巻き寿司を思わせる。
明らかにクレープではない重量感を確かめながら向かいに座るミソラを見る。この怪物に幸せそうにかぶりつく彼女の手元には、まだ二体同じものが控えていた。ブラックホールというつぶやきは街の賑やかさに消えていった。
ミソラの体内にはそれが三つはあると確信した。スバルとクレープの格闘が大詰めを迎えていたとき、彼女は満面の笑みで三つ目をペロリと平らげていた。
吐き出しそうになるクリームを押し込み、少し青くなっていた顔がさらに青くなった。完全に食べる意欲を削がれてしまった。
「い、いる?」
「ふぇ?」
きょとんとした目を返し、うつむいた。
「今日のスバル君、大胆だね?」
「……え? あ、いや! 違うよ! 自分で食べるさ!」
意味を理解したスバルの顔は信号機のように、青から赤へと変わる。慌てて残りを口に運ぶも、急に放り込まれたクリームを体が処理しきれるはずも無い。当然拒絶反応が起きる。
むせるスバルが可愛らしく、クスクスと笑うその頬も少し赤かった。