……ってのを7/31の読者様の感想で思い出し、
8/1に急きょ企画!
時間が取れたのが8/2! ネタを出しては捨て、ネタを出しては捨て……
「これだ!」というネタを思いついたのが8/3!
というわけで……本日公開となりました。
遅刻失礼しました!
なんて気持ちのいい天気なのだろう。高名な画家が描いたかのような青い空に、綿あめのような真っ白な雲。暑いぐらいの陽光が肌を刺してくるけれど、それが生きているのだと実感させてくれる。ああ、生命って素晴らしい。心臓が鳴るのは己がこの世にいる証なのだ。瞼を閉じて温かい風を思いっきり吸い込む。何度でもいう。自分は生きているのだ。生きているのだと言い聞かせる。そうでなくっちゃやってられない。
「スバルくん、前進んだよ」
「あ……うん」
一転して陰鬱なオーラを纏うと、前方に開いた数人分のスペースへとスバルは足を進めた。陽気な様とは程遠く、地獄へと向かう死者のような歩みだった。事実、この小学五年生はこの世の地獄へと向かっている。よく詳しく言うのならば、登っているのである。
「キャアアアアアアアア!」
女性の甲高い悲鳴が加速をつけて通り過ぎて行った。スバルたちから10数メートル離れた場所で、黒いロープが落下していっている。それは自身の身をスバルに負けじとピンと張ってみせると、弾みをつけて弛んだ。上側がしっかりと固定されているため、下側が反動で上へと持ち上がる。ロープの先には先ほど悲鳴を上げていた女性がゲラゲラと笑っていた。
「なんで笑っていられるんだろ……」
「そうかな、楽しそうじゃない?」
僕はとてもそんな気分には成れない。伊達眼鏡で変装している有名人にそう言いたくなるのを、ぐっとこらえた。
「ミソラちゃんはほんとこういうの好きだよね」
「へへ~、刺激的で面白いじゃん」
全国の男の子を魅了するこの笑顔も、今のスバルにとっては悪魔の嘲笑にしか思えなかった。
今日は久々にミソラと2人で遊びに出掛ける日だ。最高の一日にする。そう考えていたのだが、ミソラから提案されたのはとんでもない場所だった。ここは標高約100メートル。二ホン最大のバンジージャンプ場である。無論、シーサーアイランドのちょっと高い岩場ですら「落ちそうで怖い」と涙していたスバルにとっては立派な死刑台である。
もし今、流れ星が目の前を通り過ぎるのならば「家に帰らせてください」とサウザンドキック並の高速で三回唱えていただろう。だが今は太陽が燦々と輝く真昼間である。加えて、ミソラの前で逃げ出すなんて言う恥ずかしい真似できるわけがない。
男として守り切りたい最低限のプライドに背中を押されて、ズルズルとこの長い行列の先頭近くにまで来てしまったのである。後10分もしないうちに、スバルは100メートルのダイブを行うのである。
恐る恐ると下を窺ってみる。切り立った崖と大きな川がパックリと口を開いている。ブルリと体を震わせた。
「そんなに怖がることじゃないよ。ウェーブロードに比べたらずっと低いよ」
ミソラはクイッと変装用メガネを持ち上げながら知的にふるまって見せる。スバルの気などどこ吹く風と言わんばかりにはしゃいでるようだ。
「いや、あれは電波変換してるし……今回は違うし……」
「う~ん、どうしてもダメ! ってなったら、電波変換したら良いんだよ」
「おいミソラ。甘やかすんじゃねえよ」
ウォーロックがハンターVGから出て来て抗議したが、スバルにとっては暗闇に現れた恒星だった。
「その手があったね!」
「明暗でしょ!?」
そうだ、自分には電波変換の力があるのを忘れていた。これがあれば標高100メートルなどなんの弊害でもない。ロープ以上の命綱がある以上、恐いものなんてなにもない。自信に満ち溢れたスバルの笑みはすぐに崩れることになる。
「荷物はこちらにお願いします」
「…………へ?」
「荷物はこちらにお願いします」
ニッコリと微笑む係員の手の中には大きい籠がどっしりと居座っていた。
「荷物……?」
「はい、サングラスとペンダントも」
「ハンターVGは?」
「もちろんお願いします。壊れたら責任とれませんから」
プルプルと腕を震わせるスバルに変わって、ウォーロックがハンターVGを籠に放り込んだ。ゲラゲラという殴りたくなるような爆笑つきでだ。さらにやってられないことが起きた。
「ごめん、スバルくん……」
伊達眼鏡を押さえながら、ミソラが頭を下げた。これは仕方ない。度が少しも入ってないこの安物眼鏡を取れば、そのとたん標高100メートルで大パニックが起きるのだから。それを分かっていても、流石にスバルは文句をつきたくなった。ミソラがどうしてもというからここに来たというのに。
加えてスバルの安いプライドが邪魔して「じゃあ帰ろうか」とも言い出せなかった。
「観念しろよスバル」
意地悪なウォーロックに引きずられるようにして、スバルはズルズルと飛び降り地点へと連行されていった。
「スバルくん……」
「流石に罪悪感覚えたかしら?」
隣に出てきたハープに頷いた。スバルが飛んで自分が飛ばないというのは流石に申し訳ない。自分の好きな人が、げっそりと言う顔で晴天を仰いでいるのだから、当然とも言えた。
「なんとかしてお詫びしたいな……」
ションボリとしたミソラを見てハープはため息をついた。こんなつまらないことで2人の間に溝ができるのは絶対に避けたいところだ。だがいい意味でも悪い意味でも素直なことしかできないミソラには、この状況を打開する方法は無いだろう。ここはお姉さんとして一肌脱がなければならない。
「なら……」
ハープがこそっと耳打ちした。ミソラの白い肌が一瞬で赤く染まった。
「そ、そんな……ハープ!」
「ほっぺにチューぐらいしてあげなさいよ。『スバルくん、かっこよかったよ』と駆け寄って、軽くキスしてあげればいいのよ」
「はううう……」
そんな漫画のヒロインみたいな行動できるわけがない。架空のドラマではなく、好きな人に行う現実なのだからなおさらだ。でもそれ以外の方法が思いつかないのも事実であって……。
「分かったよ……すればいいんでしょ、すれば」
「そう来なくっちゃ」
はんばやけくそになったミソラにウインクすると、ハープはスバルへと近寄った。ちょうど前の人が飛び終わって、人形のように立ち尽くしているスバルの足にロープが括り付けられるところだった。
「スバルくん、ミソラから伝言よ」
からかっていたウォーロックをついでに殴り飛ばしながら告げた。
「ミソラちゃんから?」
「ええ、喜びなさい。飛んだらキスしてくれるんですってよ、キス」
屍のような顔つきが男らしいものに一変する。そんなハープの予想とは違い、スバルはぽかんと口を開けるだけだった。
「あら? 聞こえなかったかしら、キスよキス。それも唇によ」
焦って約束を盛ってしまった。ミソラには後で謝っとこう。スバルは唇を結ぶと、小さくうなずいた。
「分かった、ありがとう」
「ええ」
どうやら効果はあったらしい。ようやくスバルの目が尖った。一呼吸置くと、躊躇いもなく標高100メートルの世界へとダイブしてみせたのだった。
「すげえな、悲鳴もあげねえとはな」
「ちょっとは見直した?」
バンジージャンプを終えて帰路につきながら、スバルはウォーロックに胸を張って見せる。
「本当は怖くて声も出なかったんじゃねえか?」
「違うって言ってるだろ」
喧嘩する男2人の横で、ミソラは小さく縮こまっていた。ハープから約束を盛られたことを聞かされて緊張しているのである。
「さあ、スバルくん。そろそろご褒美の時間よ」
ミソラがビクリと飛び跳ねた。恥ずかしそうにはしているものの、嫌そうにしていないことから、まんざらでもないのだろう。
「じゃあ……」
「いや、良いよ」
「え?」
ミソラの声にハープのものが重なった。断られるなんて夢にも思っていなかったからだ。これじゃあスバルは何のために飛んだというのだろう。
「良いの、スバルくん?」
「うん、いらない。それよりも……ごめん、ミソラちゃん」
スバルは視線を逸らすと、頭をかいた。
「ミソラちゃんに変な気を使わせちゃったね。情けなかったね、僕」
ようやくハープは気づいた。スバルは単にかっこ悪い自分を見せたくなかっただけなのだ。自分がしたことは、単に男のプライドを傷つけただけだったのだと。
「私もまだまだ女を磨かないとね」
「ケケケ、お前……」
「フン!」
ハープの弦がウォーロックの首を絞めあげた。
「て、てめえまだ何も……」
「どうせろくでもないことでしょ!」
いつも通りの痴話喧嘩に苦笑いして、スバルはミソラに言うべきことを口にした。
「ミソラちゃん。僕、もっと男らしくなって……」
頬に柔らかい感触がした。温かくって、少し潤いがある。
ハッと横を見ると、間近にミソラがいた。
「今のはご褒美とか関係ないよ。私がしたいからしたの」
今度こそ小悪魔的な笑顔をして、ミソラはスバルの手を取った。
「さ、ソフトクリーム食べよ。良いお店あるんだ」
「う……うん、じゃあ行こうか」
「アハッ、楽しみ~」
細い指に自分の指を絡めながら、スバルは頬の感触を思い出した。
ちょっとだけもったいなかったかなと、唇をかみしめた。
今回はランダムキーワードを元にネタを作成し、製作時間二時間ほどで無理やり完成させました。
今回のキーワードは「解決」「見上げる」「落ちて行く」でした。
ええ、ほとんど使えてないです!
ただバンジージャンプというネタは思いつけたので、無駄では無かったなと思います。
まあ、書いている私自身が恥ずかしく思えるほど甘くできたので……うん、いいんじゃない?
文章が拙い? 雑?
文句あるやつ前に出ろや!
謝罪させていただきます……orz