流星のロックマン 思いつき短編集   作:悲傷

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クリスマスネタ、ま、間に合ったぜ!
間に合ったよね?25日はまだクリスマスだもんね!?


君との夜

 手がかじかむような冬の夜。今にも雪が降ってきそうだと見上げてみる。気の利かない夜空は雲に隠れて、星一つ見えやしない。こういう時ぐらいはサービスしてくれてもいいじゃないかと、誰に言うわけでもなくぼやいてみる。

 

「なんだ? 楽しそうにしてたじゃねえか、クリスマス会」

 

 そういう意味じゃないよと、無神経な相棒をあしらっておく。そう、そういう意味じゃないんだ。

 楽しいものではあった。委員長の家でやったクリスマス会。美味しいケーキを食べて、キザマロがちょっとした手品をやって見せて、隣でゴン太がチキンをほお張って、それを委員長がたしなめて……。最後にプレゼント交換をして……こんなに楽しいクリスマス会は今までになかった。そう汚い包装からレトルト牛丼10パック入りが出てきたまでも含めて最高だった。

 

「そうじゃないんだよ、ロック」

 

 

 彼らのことは好きだ。思い返しただけで今も笑みがこぼれてくる。だが気持ちはすぐに別の方へと向いてしまう。街灯の下でハンターVGを取り出して、ブラウズ画面を開く。クリスマス特別番組の生放送が行われていて、ステージの中央で歌っている女の子がいる。

 

「やっぱり忙しそうだな」

 

 ウォーロックの言葉にうなずくこともなく、画面をじっと見つめていた。サンタクロースの衣装を着て、今日はギターを置いてマイク片手に踊っている。客席からは歓声が上がっている。

 

「分かっているんだ」

 

 彼女は歌手だ。アイドルだ。それも国民的な。こんな大イベントがある日にフリーになるわけがないのだ。たとえそれが、恋人同士で過ごす特別な日であっても。

 

「仕方ないよね」

 

 笑顔を届けたい。それが彼女の夢だ。それが叶っているのだ。自分が邪魔をしてはいけない。そんな彼女の気持ちを踏みにじるようなこと、自分にはできない。

 画面では歌を終えて、子供たちから花束を受け取っている姿が見えた。満面の笑みだった。子供たちも、そして彼女も……。

 ブラウズ画面を閉じた。たった数分で、なんだか一段と寒くなった気がする。

 

「帰ろう、さっさと」

「電波変換するか?」

「気前がいいね」

「俺も寒いんだよ」

 

 クスリと鼻で笑うと、相棒の善意に甘えることにした。

 

 

 望遠鏡を覗いてみる。あれから時間が経ったのに、お風呂にも入ったのに、相変わらず雲はかかったまま。

 ハンターVGの時計を見てみる。並ぶ数字は23と、57。もうすぐ終わるのだ。今日という日が。もうあの番組は終わっている。何時間も前にだ。でも、その後にあいさつ回りが残っている。番組にかかわった人たちと打ち上げをしたり、頭を下げたりするらしい。結構時間がかかるとか、彼女は呟いていた。歌ってテレビに映って、もうヘトヘトなはずなのに。

 それでも……と、淡い願望抱いてしまうのは「必ず」という返事をもらったせいだろう。だからどうしても期待してしまう。分かっているのに。

 

「来てはくれないよね」

 

 でもそれでいいと言い聞かせる。彼女は明日も仕事がある。いや、年末年始に向けてまだまだ山済みなのだ。自分の為に時間を割く必要なんてない。もしあいさつ回りも終わっているのなら、寝てもらったほうが良い。

 とうとう、時計は23と59を示した。

 

「寝よう」

 

 なんだが馬鹿らしくなってきた。恥ずかしくなってきた。上着を脱いでベッドへと身を投じる。目を閉じる前に、最後に時間を確認した。0が四つ並んでいた。うん、やっぱりそうだ。もう彼女は寝ているのだろう。最善の選択を彼女はしたのだ。

 

「お休み……」

 

 ウォーロックに呟いて目を閉じる。ドシンと音がしたのはその直後だった。

 

「あいたたた……」

「もう、焦り過ぎよ」

 

 慌てて飛び起きる。部屋の真ん中に赤い服を着た女の子がうずくまっていた。

 

「電波変換解くの早すぎよ。天井近くで解こうが、床に降りてから解こうが、一秒も変わらないじゃない」

「だ、だって~」

 

 お尻をさすりながら起き上がるのは、まぎれもなくあの子だった。

 

「ミソラちゃん!?」

 

 さっき脱いだばかりの上着を羽織って近づく。ハンターVGから目をこすりながらウォーロックが出てくる。

 

「あ、スバルくん! 今何時!?」

「何時って……」

 

 答えられなかった。言葉が詰まってしまったから。ミソラの服装は先ほど見たものと同じだった。赤い分厚い服に、赤い帽子。サンタクロースの衣装だった。

 固まってしまったスバルに変わって、ミソラは自分で時間を確認した。そしてうなだれた。

 

「0時1分……。ごめん、スバルくん……」

 

 心底申し訳なさそうな顔をするミソラに、スバルは首を横に振った。

 

「そんなことないよ。来てくれて……」

「ううん……」

 

 今度はミソラが首を振った。そして気づいた。ミソラの目元の滴に。

 

「だって……だって……スバルくんと一緒にクリスマス、迎えたくって……約束したのに……ごめんね」

 

 気づいた。なんて鈍感なのだろう。彼女が泣きながらも求めていたものに、今やっと。

 彼女の手を握る。開いた翡翠色の目に自分の顔が映る。

 

「今から、ここに行こう?」

 

 スバルがブラウズ画面に地図を開いた。そこを見てミソラの目が丸くなる。

 

「……え? 外国?」

「そう、ここは時差が一時間あって、まだ24日なんだ。スカイウェーブでさ、冬の夜空を見ようよ。日付が変わるまで」

 

 ミソラの目が大きく開いた。

 

「エヘヘ、素敵なプレゼントもらっちゃったな」

「サンタさんなのに?」

「プレゼントは男の子がするものでしょ?」

「ハハ。良いよ、いくらでもあげるよ」

 

 そして手を握る。彼女の手を、温もりを離さぬようにと。

 

 

 スバルの部屋から二本の線が飛び出し、星空へと消えていった。




 ロックマンユニティの壁紙で、サンタコスのミソラが配布されましたね。もう一月近く前の話ですが。
 あれを見たときに「よし、これをクリスマスネタに使おう!」と考えていたのですが……。はい、完全に忘れていました。

 とりあえず、今日一時間かけてようやくかけました。クオリティ低い? すまん、許してくれ!!

 何はともあれ、メリークリスマス! あと一時間もないけれどね~~。

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