勢いだけで、二時間で無理やり仕上げたぜ!!
飛んでいきたくなるような夜。スバルは今日の星空をそう名付けた。展望台から見上げるそれは濃い藍色で、星の輪郭がくっきりと見て取れる。それこそ手を伸ばせば届くのではないかと思えるくらいに。
「っと、いけないいけないっと。ロック、今何時かな?」
ハンターVGを取り出して相棒に尋ねる。だが返事が無い。画面を見てみたが、ウォーロックの姿はどこにもなかった。
「電波ウイルス退治にでも行ったかな」
異星人の彼には天体観測と言う楽しみは分からないのだろう。それでも今日の空は見るべきだとスバルは断言する。
「ふたご座流星群……今日だって言うのに」
ふたご座流星群。12月の5日頃から20日頃にかけて出現し、14日前後に極大を迎える。年間三大流星群の1つだ。そして天地研究所の発表によると、今日が最もたくさんの流星が見れるらしい。
「時間はもうすぐ……だな」
天体オタクにとっては絶対に外せない年間行事。それが目前に迫っている。だがその笑みが少し曇った。理由はメール画面に合った。新着の案内が無いが、一応開いて更新してみる。やはり、あの子からの返信は無い。
「まあ、無理もないよね……ミソラちゃん、海外でも人気出てるわけだし」
彼が待っているのは最初のブラザーで、最も大切な人だ。アイドルとしての人気はニホン国内のみならず、最近は海外にもファンが増えている。この年末を控えたくっそ忙しい時期だというのに、アメロッパで海外遠征ライブをしているほどに。
「一緒に見ようって、約束したのにな」
無理もないか。と言い聞かせるように呟いた。風が吹いてきた。冷たさに身を縮こまらせた。
コートの襟を上げて、マフラーも締め直しておいた。鞄からアウトドアでも使える厚手のブランケットも取り出した。11歳のスバルには少々大きいが、小さいよりかはマシだ。
「気を取り直そう。今日は大事な日なんだから!」
天地さん曰く、今日は例年以上にたくさんの流星が見れるらしい。せっかくの大イベントなのだ。楽しまないと損だ。天体オタク失格だ。
「……あ」
そうしているうちに見えた。一筋の流れ星が見えた。
「始まった」
それから2,3本流れ星が落ちたが、すぐに止んでしまった。数分経っても、空には何も変化が無い。
「おかしいな、天地さんや宇田海さんが観測を見誤るわけないし……」
もう少し時間がかかるのだろうか。星を見るためなら何十分だって待てる。そう自負しているのだが、なぜだろう。ハンターVGの画面を開いては閉じ、また開いている。そんな自分に気づいた。
メール画面を見て、隣を窺った。当然誰もいない。この夜の展望台で、スバルは1人ぼっちだ。
「……ハァ……」
溜息を吐き出した。胸の内側で小さな針が刺さったような気がした。
「昔は平気だったのにな」
父が行方不明になって、心苦しくなって、孤独を選んだ昔の自分。あの時の自分なら、この時間を心地よく感じていたことだろう。いや、去年までは確かにそうだった。
「いつからだろう」
少し歩いて、見晴らし台の全容が見れる位置に移動した。
「そう、ちょうどあの辺りだったかな」
アイドルを引退して、新しい道を進むことに決めて……でも、それは1人ぼっちになるということで……孤独に耐え切れずに泣いていた彼女。そんな彼女に思わず手を伸ばして、泣きたくなるような思いで告げた、あの一言。
「あの時から……なんだよね」
誰かと繋がれる。1人ではないと思えるブラザーバンド。最初になってくれたのが彼女だった。「ありがとう」そう言ってくれた。
「違うよ。あの時助けられたのは……」
スバルが言葉を言い終える前に、光がその場に舞い降りた。ピンク色の光は見晴らし台の真ん中に降り立ち、すぐに人へと姿を変えた。
「お、お待たせスバルくん!」
「ミソラちゃん!?」
ピンク色のパーカーを着た少女がそこにいた。ゼーゼーと激しく息をしている。
「終わったの、ライブ?」
「うん! で……急いでやって来たんだけれど……」
そう言いながら空を見上げる。何の動きも無い、静かな空が広がっていた。
「もう、終わっちゃった!?」
「う~ん、どうだろう?」
あれから次の流星を見ていない。天地さんたちの予測が間違っていた可能性も出てきている。明確な答えは出せなかった。
「そっか……ごめんね。楽しみにしていたのに」
「いいよ、そんなこと。ミソラちゃんに……」
唇を丸めるようにして口を噤んだ。
「私がどうかした?」
「……なんでもない」
「そっかぁくちゅん!」
突然のくしゃみ。当然だろう。冬の展望台に今のミソラは薄着過ぎる。
「いけない……室内から移動して来たから、防寒具忘れてきた」
「ミソラちゃんって時々抜けてるよね」
「もう、意地悪言わないでよ。っていうか入れて!」
「え? うわ!?」
スバルが気づいたときには、ブランケットの中にミソラが飛び込んできていた。
「わ~、暖かいね、これ」
「う、うん……」
ブランケットが大きいと言っても、2人だ入るとなると少々辛い。ゆえに、スバルはミソラと密着している状態だ。ミソラの冷えた体温が伝わってくる。
「……あ」
ミソラもようやく気付いたらしい。自分がしでかしたことについて。
「ご、ごめん……」
「い、いや、良いよ別に……」
としか言いようがなかった。別にスバルからしたら嫌なことではないのだ。むしろミソラが嫌ではないかと気になってしまう。いや、それ以上に……自分でも体が熱くなってしまったのを感じる。それが気づかれていないだろうか。
顔をうつむけて、横目でミソラを窺う。彼女も俯いたままだ。パーカーが邪魔して顔色が窺えない。何かしないと。何か話題を……。
「りゅ、流星まだかな……?」
「そ、そうだね……」
上ずった声で答えたミソラは、少し考えるそぶりを見せた。
「私、家に防寒具取りに行こうか? このままだとスバルくんも嫌だよね」
ミソラがハンターVGを取り出そうとした。
「待って!」
思わず、叫んで止めていた。ミソラのキョトンとした顔があった。
「あ、えっと……一緒にいてほし……」
ミソラの顔がブワッっと真っ赤になった。
スバルは激しくかぶりを振って、空を指さした。
「ななな、流れ星って、いいいつ来るか分からないから! さ、そ、その……」
「あ、そ、そういう……」
「そ、そう! そう言う意味で……」
「じゃ、じゃあ……そうするね」
ミソラがいそいそとブランケットをかぶり直した。スバルも右に倣う。とその時だった。
「あ、来た!」
空にまた流れ星が通り過ぎた。
「うそ、見えなかった」
「またすぐに来るよ」
スバルが言った通りだった。二つ目の流れ星が。間をおかずに三つ目。今度は四つ目が終わる前に五つ目が。それが折り重なって、星の足跡が夜空に描かれていく。
「凄い……これ凄いよ!」
流星群だ。藍色の空が黄や赤や青で彩られていく。季節外れの花火のような光景が広がっていた。
「綺麗……」
輝かせる彼女が側にいた。そう、側にいる。この大切な時間を共にしてくれる人が隣にいる。
そっと彼女の手を握った。まだ寒かったようで、氷のように冷たかった。驚いた彼女の頬が赤くなっていたのは、寒かったからだろうか。指を絡ませて、互いに握りしめる。
そして2人はまた星空を見上げた。
流星群はより勢いを増して、2人に降り注いだ。
2021年12月14日の夜遅くに、15周年だと気づいて、
15日の夜に無理やり仕上げた作品です。
いや、誤字脱字の確認や推敲とかせずにかいたから、ぐっちゃぐちゃですね。
ただ……いつもミソラ視点になっていて、マンネリ化していたので、スバミソ小説は書かなくなっていたのですが……今回は綺麗にスバル視点で描けたなと思います。
そこだけは自分で評価したいですね。
気が向けばまた書く”かも”しれません。
アレオリ3ともども、気長に待っててもらえればと思います。
では失礼。