流星のロックマン 思いつき短編集   作:悲傷

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 去年の12月24日に書いた作品です。ちょうど風邪引いてたんですよね……


二人のクリスマス

 大勢の子供達が綺麗に包装された箱を両手で掲げて歓喜の声を上げている。そのまま両親に手をひかれて会場を後にして行く。

 その様子をゲストとして出ていたスズカは満悦の笑みで見送っていた。

 今日はクリスマスイブ。この日のために用意された生放送のイベントにスズカも参加していた。約二時間に及んだこの番組ももう終わりだ。運よく会場に来れた子供達にプレゼントを渡し終えたところだ。受け取った最期の子供達が可愛らしい二人のお姉さんサンタから貰った箱を持って親と共に家路につこうとしている。この日のために準備された可愛らしい赤白のサンタクロースの服もそろそろ着替えなくてはならなくなるのかと思うとちょっと寂しくなってくる。そんな事を考えていると、ハンターVGからパートナーのアイスが何かを訴えてっきた。

 

「スズカ、お友達は良いの?」

「え? ……あ」

 

 隣に目をやると、同じくゲストとして出演していた親友のミソラがいた。自分と違って悲しい目をしている。こつんと肘で肩をつつくと、ミソラは慌てて表情を全国に向ける笑みに戻した。まだ番組は終わり切っていないからだ。

 

 

 

 番組終了後、オクダマスタジオの通路をスズカは歩いていた。大仕事が大成功に終わった後だと言うのに、その表情は冴えない。スズカの胸中を察しているのだろう、アイスもあの子のことを心配している様子だった。そのミソラがなぜあんな表情をしていたのかは分かっている。ミソラの家庭事情を知っている者ならば誰もが今のスズカとアイスの様になる。

 ミソラは両親も親戚もおらず、天涯孤独の身だ。『朝起きたら靴下の中に、父親と言う名のサンタクロースが用意してくれたプレゼントがある』なんて思い出は無い。あのミソラの表情は、そんな一家庭では当たり前の光景にあこがれているものだ。ふうとため息をつくと、曲がり角で声をかけられた。その人を見て、スズカの胸につっかえていた物は、スッと綺麗に消えた。

 

 

 

「今日は反省会だね?」

「良いわ。それより、早く会場の外に行きましょう? スズカちゃんに呼ばれているんでしょ?」

 

 番組途中で私情を表情に出してししまった事を悔やむミソラ。いつもはこんな時はマネージャーであるハープと反省会と言う名の説教時間をくらうのだが、今回は見逃してくれた。ミソラが母親のことを思い出しているのをハープも知っているからだ。そんな事よりもと呼び出されたオクダマスタジオの噴水へと足を運ぶ。時間は夜。辺りはもう真っくらだ。昼以上に冷たくなった空気がツンと肌をさす。

 

「あれ? ここだよね?」

 

 スズカの姿が無い。二人が不思議思ってハンターVGを手に取ると、ちょうどメールが入って来ていた。

 

「ミソラ、なんて書いてるの?」

「えっと……『お幸せに』なにこれ?」

 

 答えはすぐに出た。ピュンと青い光が噴水のすぐそばに降り立ち、姿を現したからだ。

 

「あ、スバル君!?」

「やあ、ミソラちゃん」

 

 一番愛しい人が、地球を救ったロックマンの姿で姿をあらわにした。どうやらスズカに協力してもらい、ミソラをこの場に呼び出したらしい。

 

 

「回りくどいことするね?」

「……二人きりになりたかったんだけど……ダメかな?」

「ううん。そんなこと無いよ。嬉しい」

 

 服装と対局な表情をするスバルと同じく、ミソラも同じ色に顔を染める。

 

「あの……あのね? 今日は君にプレゼントがあるんだ?」

「ほんと!? やった!」

 

 喜ぶミソラを見て、スバルは電波変換を解いた。スバルの格好を見てミソラは思わず「あっ」と声を上げた。

 ダボッとしたズボンに大きすぎるコートと帽子。全部真っ赤だ。白い袋を肩に担ぐようにしている。

 

「今晩は、君だけのサンタクロース……って、ダメかな?」

 

 照れくさそうに頬をかくスバル。そう、今のスバルの格好はサンタクロースだ。

 

「……」

「ミソラちゃん」

「……しい」

「え?」

「うれしい!」

「うおっと!?」

 

 ぴょんと駆けだし、スバルの首に手をまわして抱きついた。勢いに押されそうになり、スバルはグッと足で倒れそうになるのをこらえる。ひんやりとしたミソラの耳が自分の頬に擦れる。

 

「その格好でも寒いんだね?」

「あ、そうだった」

 

 ミソラはいわれて気付いた。番組終了後に控室に戻る前にスズカに呼び出されたため、今のミソラはサンタの姿のままだ。

 

「今日はスバル君だけのサンタさん……なんてね?」

「ハハ、最高のクリスマスだよ。なら、君だけのサンタからのプレゼント」

 

 肩から下げていた袋を開けて、中からそれを取り出し、広げて見せた。赤と青の刺繍が入ったマフラーだ。それをミソラの首にかけてあげる。

 

「ちょっと大きかったかな?」

「そんなこと無いよ。あったかい……」

 

 スバルの温もりに包まれながら、ミソラはフゥと目を閉じる。

 その様子に満足していると、鼻がむずむずとうずいた。クシュンと小さいくしゃみが起こる。

 

「今日は冷えるね?」

「風邪ひいたらダメだよ? だから……はい!」

「あ、ありがとう」

 

 ちょっと大きいマフラーを半分をスバルの首にまわしてあげる。

 

「ほんと、これ思った以上に暖かいね?」

「うん……でも……」

「でも……?」

 

 サンタ服に負けないくらい顔を真っ赤にしながらミソラは言った。

 

「スバル君が、一番暖かいよ」

 

 言ったそばから恥ずかしさに耐えきれなかったのだろう。マフラーを持ち上げ、顔を隠してしまった。

 そんなミソラが愛しくて、スバルも同じく言葉を返した。

 

「僕も、ミソラちゃんと一緒にいられるのが一番暖かいよ?」

 

 恥ずかしいが、それ以上に嬉しかったのだろう。ミソラは真っ赤な笑みで見上げてくる。

 スバルも今更ながらに恥ずかしくて目を反らしてしまう。

 後はお互いに何も言わない。ただ身を寄り添い合わせて噴水に向き合った。チラリと白い光が目に入った。

 

「あ……雪」

「ほんとだ、ホワイトクリスマスだ」

 

 見上げると、チラチラと綿菓子のような雪達が優しく舞い降りてくる。それは二人の世界を包み、泉湧き上がる水達の光と共に互いの存在を象徴し合う。

 真っ暗だった世界にダイヤモンドがちりばめられていく。

 ただ自然から与えられた祝福を目に焼き付けていた。

 

「スバル君」

「なあに?」

「ありがとう、最高のクリスマスだよ」

「……僕もだよ」

 

 キラキラと照らされる世界の下で、二人のサンタクロースはそっと身を寄せ合った。

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