その企画で書いた作品です。
高鳴る胸を押さえ、ドアの前に立つ。
「フフ、緊張しているのね?」
紫色のドレスに身を包んだクインティアが微笑んでくれる。男性を魅了する彼女の笑みを見ても、スバルの鼓動に変化は無い。
「心の準備はいいかしら?」
「……はい!」
もう一度笑って、ドア開ける。
鏡の前に座った女性に目を留めたとき、世界が止まった。時計の針の音すら隔離された世界で、彼女に釘付けになる。
「ど、どうかな? スバル君?」
愛する彼女の言葉で、スバルはわれに返った。
「と、とても綺麗だよ。ミソラちゃん!」
「ほ、ほんと?」
相変わらず、顔を赤くすることでしか、愛情表現ができない初々しい二人。
そんな二人をからかう男が、スバルの背後から襲撃する。
「おいおいスバル! 男なんだ、もっと気の利いた台詞言ってやれよ!?」
「し、シドウさん!?」
「世界で一番綺麗だ! とかな?」
「そ、そんな恥ずかしい台詞、僕は言えませんよ!」
慌てるスバルと照れるミソラ。いつもと変わらない。昔から変わらない。それは、横に出てきたウォーロックも同じだ。
「スバル~、相変わらず分かりやすくって変わらねえな、お前は!」
「あなたも変わりませんよね?」
スバルをからかったウォーロックを、アシッドが更にからかう。この二人の関係も変わらない。
「んだと! アシッド! やろうって……」
「パルスソング!」
ミソラのウィザードのハープが飛び出した。ウォーロックを的確に射抜き、黙らせておいた。
「こんな日ぐらい静かになさい! 会場で騒いだら、こんなもんじゃ済まさないわよ!」
「な、なんで俺だけ……」
アシッドだって喧嘩を売って来たのだ。自分だけ怒られるなんて、ウォーロックには納得できない。
「ふぅ、ウォーロック。あなたも変わりませんね」
「あ? 何がだよ?」
「鈍感って意味でぼふっ!」
アシッドの顔がパルスソングで歪む。隣で横たわるアシッドと、そっぽを向いているハープを、ウォーロックは不思議な目で交互に見ていた。
にぎやかなウィザード達のやり取りが終わったのを見計らい、ミソラの隣にいたスズカが立ち上がった。
「さあ、会場に移動しよう!」
入り口に一番近いシドウがアシッドを連れて、外にいるクインティアと合流し、スズカが追って外に出る。
開いた扉に誘うように、スバルはミソラに手を指し伸ばした。
「スバル君……」
「行こうか、ミソラちゃん」
会場は大勢の人で埋め尽くされていた。
スバルの両親である大吾とあかねは仲睦まじく笑い合っている。その姿を見て、苦笑いしている天地と宇田海。
近くの席では、ルナ、ゴン太、キザマロ、ツカサ、ジャックと彼らのウィザードが大人しく席についている。一緒にいる中年の男性は育田先生だ。
昔なら、お腹を鳴らしているゴン太をしかりつけるルナとキザマロの姿が見えただろう。しかし、もう皆二十五歳だ。その程度のマナーはわきまえている。
スズカ着いた席には、マモロウと監督ウィザードさんが待っていた。アイスも実体化して席に着く。そこには、一枚の遺影が置かれている。
WAXAとサテラポリス関係者まで出席している。ヨイリー博士にウィザードのジョーカー。日本支部の局長さん。WAXAに勤めることになったハートレス。シドウとクインティアの席はここに用意されている。
皆、スバルの戦いに深く関わった者達ばかりだ。
司会進行役のシドウはクインティアと別れ、会場の前に置かれたスタンドマイクの前に立つ。
短い恒例の挨拶を済ませ、蝶ネクタイを締めなおし、声を張り上げた。
「それでは! 新郎新婦の入場です!」
真っ赤なバージンロードの端っこで閉ざされていた扉が重い音を立てて開かれれる。そこに映る二人の影。
新婦のミソラが、新郎のスバルの腕に手を回し、スバルがエスコートする。
写真を撮る大吾と、奇声を上げるあかねとゴン太。監督がカメラを回し、ヨイリーとジョーカーが静かに笑みを浮かべる。
彼らの惜しみない祝福を受け、二人はゆっくりと、一歩一歩を踏みしめるように、新たな自分達の関係へと歩みを進める。
一番前に立っている神父の前に立ち、スバルとミソラは手を離した。
二人が、夫婦の契りを交わす儀式が始まる。
「あなたはこの者と結婚し、神の定めに従って夫婦となろうとしています。あなたは、その健やかなときも、病めるときも、喜びの時も、悲しみの時も、富めるときも、貧しきときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、そのいのちのかぎり、堅く節操を守ることを約束しますか」
お決まりの言葉。けれど、二人にとってとても大切なこと。
だから、二人は言う。
「約束します」
「約束します」
噛まずに言えたことに、スバルは内心ほっと胸をなでおろした。
二人の下に運ばれてくる煌びやかな台。そこには、宝石も付いていない二つの金属の輪っかが載っている。
神父のスバルがミソラの左手を取り、薬指に通す。
続いて、スバルに渡されたもう一つのリングを、ミソラがスバルの左手に通す。
会場が息を呑む。
二人の口付けが交わされた。
割れんばかりの拍手が二人に送られる。
二人が席に着き、空気が柔らかくなってきたころ、シドウのユーモアのある司会によって、前に人が立ち、次々にスピーチをしていく。
スバル側の代表として、ツカサが前に出る。ツカサは重い話をしなかったが、自分が変われたのはスバルの優しさのおかげだと語った。
「スバル君、今度はその優しさで、ミソラちゃんを幸せにしてあげてね?」
ヒカルの言葉に惑わされ、ツカサはスバルを深く傷つけた。しかし、スバルはそんな自分に、もう一度ブラザーになろうと笑って言ってくれた。
そんな彼とブラザーになりたいという気持ちがあったから、ヒカルと和解できたのだ。今は表には出てこないが、大分丸くなったヒカルも今の二人を祝福してくれている。
今、ツカサとヒカルにできるのは、新しい出発をしようとしている二人を応援し、送り出すことだ。だから、ツカサはスバルに最大の笑みを送る。
二人の間に、もう溝なんて無い。
いたずらっぽい、けれど親友の心からの祝意を示した言葉に、スバルは頷いた。
「……うん!」
ミソラ側の代表は親友のルナだ。彼女も、昔はスバルに恋をしていた。結局、気持ちを伝えることなく失恋で終わった彼女の心境はどんなものなのだろう。
ミソラはルナの気持ちに気づきながらも、スバルの心を奪った。それが友として、
罪悪感は微塵も無い。しかし、彼女の立場になると、何も感じないわけにはいかなった。
ルナはミソラが大切な親友であることを語る。
「ミソラちゃんの優しさなら、きっとスバル君の支えになってくれます」
胸が少し痛くなった。
「ミソラちゃん、スバル君と幸せにね?」
美しい笑みを見せるルナに、ミソラもまっすぐに目を見つめ返して頷いた。
「それでは、新郎新婦二人による、初の共同作業です!」
スバルとミソラの前に運ばれてきたのは巨大なケーキだ。高さは150cmぐらいだろう。
「僕達が出会ったときも、これぐらいの身長だったよね?」
「そうだったっけ?」
「そうだよ。ミソラちゃんに追い越されないようにって、あの時必死に計っていたから」
「もう、スバル君ったら!」
当時の子供っぽいスバルを想像し、笑みがこぼれる。
「あ、見て、スバル君」
「うん?……あ~!」
ミソラが指差す先は、ケーキの天辺だ。ロックマンとハープ・ノートを模った砂糖菓子の人形置かれている。二人は仲良く手を繋いでいる。
「なんか、もったいないな……」
「……ねえ」
「なあに?」
長いナイフをミソラに渡そうとしたスバルは、手を止める。
「僕達は夫婦だよね? 君づけ、ちゃんづけを止めないかな?」
「あ、止めるの?」
「うん……呼び方は大事だよ」
かつて、ツカサに言われた言葉を思い出しながら、スバルはミソラに提案した。
「これからは、ミソラって呼ぶね?」
「うん、よろしくね、スバル!」
二人はナイフを共に握り、シドウの合図でケーキに入刀した。
分厚い瞼でも防ぎきれない陽射しが顔を焼く。
「ん? うん?」
入ってきた景色はいつもの丸い天井だ。自分の部屋だ。
「なんだ、夢か?」
とても良い夢を見てしまった。
名残惜しそうに重い身体を起こし、室内の階段を下りる。
「あれ?」
違和感を感じた。
「僕のベッド、あんなにちっちゃかったっけ?」
よく見ると、ベッドだけじゃない。あらゆるものが小さい。
首を傾げていると、部屋のドアが開いた。入ってきた顔が笑みに変わる。
「おはよう。朝ごはんできてるよ」
それを見て、スバルの目が疑問で丸くなる。
「あれ? なんで僕の家にいるの、ミソラちゃん?」
「もう、寝ぼけてるの?」
ミソラがここにいることだけでは無い。
今のミソラは11歳のミソラじゃない。大人になっている。そう、夢に見たような。
「ちゃんづけ、君づけは止めるんでしょ?」
スバルの眠っていた頭がようやく起き出した。
「さあ、冷めない内に食べちゃお、スバル!」
今日は、ロックマンシリーズ生誕25周年だって!?
そして、12月14日は流星のロックマンシリーズ6周年だと!?
昨日の夜に知りましたorz
今日、大慌てで書いた作品です。
一年ほど前に考えて、没にしたネタを脳内サルベージしてきました。
執筆時間90分なので、大した作品じゃないです。スイマセン。
まあ、時間かけりゃあ良いって物でも無いのですけれどね。
来年は忘れずに、流ロク作品を書きたいところです。
さてと……クリスマスネタと年末年始ネタを考えないかんな……