レミリアは見た事のない少年が神人の神威を持ち出し歩いて来た事に対して疑問を抱いていた。その少年は始終挙動不審で明らかにおかしいだろうとしか私に思わせない。とりあえずちょっとだけ信用して確認だけのために博麗神社へと連れて行くことにした。首根っこを掴んで引っ張る。抵抗しなければ普通に連れて行くと言うのに……
「おい!いい加減暴れるな!右腕が疲れるだろうが!いや、その前に自分で歩け!」
「その前に離して……歩けないです……」
泣き言しか言わない少年に呆れながらも神社にたどり着く。が、突如行く手を阻む者が現れた。その姿はどう見ても妹のフランドール・スカーレット。しかし様子がおかしかった。どう見ても自分の妹とは雰囲気が違うのだ。
「久しぶりだな……」
「はぁ?さっき会ったでしょうに。それとも何?私がデザートのプリン盗ったのまだ怒ってるの?アレなら今度何かデザートを譲る事で……」
「何の話だッ!そんな訳無いだろう!」
確定した。こいつは私の知っている
「いだぁぁぁぁ!!」
「逃がさないわよ。とりあえずフランの偽物を退治するから手伝いなさい」
「偽物でもない……私は破壊神フランドールだぁぁぁ!!」
オーラが大地を抉る。少々本気を出さねばまずいかもしれない。オーラと同時に黒い瘴気が吹き出ている。少年は突然ごめんなさいを連呼し始めた。腰が抜けたか、ずっと倒れたままジタバタしている。
「全く、しょうがない奴め。手を掴め、私が戦う」
仕方なく少年をつかんだまま戦うことにした。巻き添えを食らって死なれたら後味が悪いのは私だ。
片手で渡り合えるとは思っていないが私には弾幕という手段がある。どうやらあちらは弾幕ごっこで戦ってくれそうもない。非殺傷などと生温い事を言っている場合でもなさそうだ。
「神葬撃『トライデントグングニル』!」
「フンッ!」
神人と戦うために作り出したスペルを試しに撃ってみた。しかし普通にパンチだけで弾かれるとは予想外だ。かなりの密度の妖力と魔力だったはずなんだが。しかし掴んでいる少年がやかましい。一度殴って黙らせてやろうか。
「喰らえッ!」
「おっと、危ない」
私がよそ見をするとは。アイツの拳はトライデントグングニルを殴り飛ばせる。私とて当たればただでは済まないだろう。当たればだが。連撃を全てかわす。神人より攻撃速度が遅いから助かる。あんな化物の速度で目を慣らした私にはこの拳はかなり遅く見える。
「クソッ!何故だ、何故当たらない!この私がコイツに劣っているはずがないッ!」
「どいつの話をしているか知らないけど、私の戦いは神人仕込みよ。生半可な戦い方で勝てると思わないで。神紅『スカーレット・ノヴァ』!!」
スカーレット・ノヴァ。これは私が神人のスペル、ザ・グランド・クロスを真似て作った物。しかしやはり攻撃力が足りないのか、奴の攻撃で全て弾かれてしまう。このままではジリ貧だ。……あれ?少年がいない。まさか落としたか!?足元を見ると少年は神威を抜いていた。少年は無傷でピンピンしていた。
神威を使って何か魔法陣を書いていた。
「最後はコレで……!」
神威を魔法陣の真ん中へ突き立てようとした瞬間。破壊神フランの拳が彼の頭を吹き飛ばした。あっさりと少年は殺されてしまったのだ。破壊神フランを私は全力で蹴り飛ばし、死体から遠ざける。私が手を離したばっかりに少年は死んだ。弔い合戦とはらしくないが、目の前でされたのだ。やらなければ彼に失礼……
「いったぁぁぁぁい!!!ってあれ?なんでこんなに早く……」
「な……」
少年の頭は再生した。しかも超スピードで。おそらくは神威に付いていた次元神力を無意識に使用したのかもしれない。少年は再びへっぴり腰になりながらも足をがくがくと震わせながら立ち上がり、魔法陣に神威を突き立て魔力を流した。
「行くよ……神威!」
魔法陣からとんでもない量の魔力が逆流して神威に吸い上げられていく。触れば消し飛んでしまうかもしれない程の魔力が神威に渦巻いている。
「アストラル・ブレイク!!」
振り下ろした瞬間、破壊神フランの防御を貫き彼女の体を焼き尽くす青白い炎が上がった。コレを食らえばどんな化物だろうと消し炭にされてしまうだろうな。
「うわぁぁぁぁ!!ぐっ……くそ!熱いッ!止めろォォ!!」
全てが終わった時、立っていたのは私だけだった。神威が何かしら作用しているようで彼の体から魔力がほとんど抜けていた。私が思うにアレを使う分には問題無かっただろうが、神威が補助をしてアレを無理矢理使わせていたように見えた。
「はぁ……2人を運ぶ私の身にもなってくれ」
博麗の巫女に報告くらいする必要があるだろう。全身大火傷のフランを担ぎ少年を引き摺って神社へ向かった。……そういえばなんで神社から誰も出てこない。全く、留守なのか?
一人で不満になりながらもレミリアは神社へ入って行った。