「おいおい……随分と舐められたものだな……コピーしたくらいでこのワタシを超えられるとでも?」
絶対悪は少しイラついた様な声で話しかける。自分より圧倒的に劣るはずのノアが、他者を逃がして戦おうとする事が考えられなかったからだ。
「お、おいノア、流石にマズイって。俺は戦うぞ?」
「早く逃げよう……アッキー。多分今のままじゃ足手まといになる……」
クゥは気がついていた。瘴気を吸ったことにより力が使えなくなっている事に。このまま戦ったところで勝ち目など無い。ノアに任せるのが得策なのだ。
「さぁ、私が止めるから。早く行って!」
「止める?笑わせるなぁッ!」
最早見える速度ではない。一撃。ただ一撃のパンチがノアを妖怪の山から博麗神社まで吹き飛ばした。
「なっ……嘘……だろ……」
「ノア……ちゃん……?」
「ハハハ……弱い、弱すぎるぞ!しかし何という体だ!最高だ……最高に気分がいい!妖神人の様に抵抗力が異常に強くない分よく動く!だがしかし……妖神人の体が無くては始まらん……さぁて、邪魔者も消えた、次は……」
貴様らだ。と言う前に額から血を流しているノアが絶対悪を殴りとばす。もう戻ってきたのだ。更には遅れてこの世界の博麗霊夢、霧雨魔理沙もやってきた。
「はぁ……はぁ……やら……せない!」
「ほぅ、思ったよりやるな。痛くも痒くも無いがなぁ!」
「なるほどねぇ……アレが絶対悪。気味の悪い奴ね」
「私たちが相手だぜ!」
「逃げるしか……無いのか……?俺は……逃げる事しか出来ないってのかよ!」
「もう!今は逃げるの!アッキー早く!」
次元の穴に翔がクゥに投げ込まれ、その後に続きクゥも飛び込んだ。その後、空風録の世界が真っ黒な闇に染まってしまった事をアマツに伝えられた。
「残念ですが……恐らく貴方達の世界は……」
「クソッ!あの時戦って居たら……!」
「いいえ、自分を責めてはなりません。戦って居ても恐らくは……」
「死んでいた。そうだろ?アマツ。」
そう言ったのはパラドクシス。並行世界を見る事が出来る彼にはわかっている。戦えば殺されていたと言うのだ。
「アッキー……」
「クゥ、ごめんな……」
「ふふふ……絶対悪にやられた君達の世界はまだ死んじゃいない。これだけ教えてあげるよ。ノアもまだ生きている。」
「何!?本当か!?」
「ああ、ノア……彼女の作戦は上手くいったようだよ。」
次龍神の下界では妖神人が龍の社で寝かされていた。
神人の娘、博麗紅音は神人から絶対悪の瘴気の力を引きはがす手段を考えていた。しかし一向に思いつかない。
次元神力を当ててみても、妖力、神力、霊力を当てても何も変化がない。
「どうすれば……。ん?何よ。」
「は、はは博麗の巫女……」
咲人は怯えていた。博麗の巫女が居る。逃げなきゃ殺される。良くて半殺しかも知れない。そんな考えが咲人の頭に巡り、動けなくなる。紅音の容姿は博麗霊夢にそっくりだから余計に恐怖が支配する。
「……あのねぇ、私は何もしないわよ。」
「ひぃぃっ!」
「はぁ……初対面でこんなにビビられちゃ流石に凹むわ。そんな怖いわけ?
「やめ……来ないで……!」
「分かったわよ、全く。取って食うわけじゃあるまいし。どうやったらパパが戻るか考えなきゃだし。」
博麗紅音はその場を後にした。ほっと胸をなでおろし四つん這いになりながら、眠る神人に近づいた。
「あれ……なんだろ……これ。」
神人の寝ている近くの床。そこに少し凹みがあるのだ。そこを触ると、取っ手が出てきた。恐る恐る引っ張って開けてみると、そこには木箱に入った神威があった。
「日本刀……?ただの日本刀じゃ無いような気が……」
ガタッ!と戸が開く音が聞こえ焦って神威を収納する。入って来たのは神人の式神、八咫だった。
「ん?どうした。そんなに暑いか?この部屋は。」
「いいいいや、ななななんでもないですはい!」
隠すのが下手である。
「神威を見つけた位で怒りはしない。安心しろ。」
「よ、良かったぁ……」
「あ、やっぱりか。確証は無かったんだが」
「え゛」
騙された。心の底から自分の情けなさを責めまくった。が、八咫は怒ることなく神威をまた取り出し手渡してきた。
「それはお前に預けよう。私の意思は主人の意思だ。使ってくれ。」
「え、あ、は、はい」
良いのだろうか。本当にこの刀を使っても。と考えては見たが、ありがたく使わせて貰うことにした。
一方絶対悪は。
「ふふふ……ハハハハハ!いい能力だ。妖神人だけではない、探したい奴を探せるとは便利な能力だ。次はこの体だなぁ!」
次元を引き裂き。接近する。
ーー次は貴様だ。『晴夢』!