絶対悪が次元神界から去った数分前まで時は遡る。神威を手に入れた咲人はそれをじっくりと見つめていた。まるで手に吸い付くような感覚。元から自分の物だったかのように錯覚するまでの扱い易さ。日本刀のような形状であるそれからは重さを全く感じない。
「なんでだろう……魔法?」
理解ができない。この刀から何かしら干渉を受けている訳でもない。それなのに強い自分がイメージされる。神威を鞘に収納し、腰に差しておく。
「……ふふっ」
自然と笑いがこみ上げてきた。コレがあれば誰にも負ける気がしないのだ。自分が望めば神威は全てを切り裂いてくれる。神威を持ったまま、彼は神社を出て階段を降りる。
何者も自分に敵わない圧倒的な力を得た気がして仕方がない。試し斬りにあの化物を断ち切ってやろう。そうしたらもうこんな場所にはいなくていいんだから。早く来い絶対悪。
「いや、やっぱ来ないで欲しいなぁ……」
思い出して全力でへっぴり腰になる咲人だった。
空を見上げると誰かが永遠亭のある方向へ飛んでいくのが見えた。誰だ……?なんだろう黒い人が抱えられてたような。でも誰かは知らない。まぁいいや、多分関係ない。
「待て」
「えっ!?だ、誰……ですか?」
「私は……そうだな。この世界のレミリア・スカーレット、とでも言うべきか。神人が倒れたと聞いて来たが、何故お前が神威を持っている?」
先程の経緯を話す。が、レミリアは信じてはくれなかった。そもそも神人の式神である八咫が貸したという事そのものが怪しいと言われてしまった。確かに主人の武器をそうやすやすと渡すわけがないのは当たり前の話ではあるが、これは事実。しかし話をしている咲人がとんでもなくビビリながら話すものだから信憑性が無かった。
「とりあえずちょっと来い。真実かどうか確かめる」
「ひぇぇぇ!!信じて下さいぃぃぃ!!」
哀れ、咲人は自分より背の低いレミリアに首根っこをつかまれ引きずられて行った。ちなみにここは階段だ。ガンガンと腰に石段の角が当たるし、さらには神威が引っかかるためズボンが下がりそうになる。
全くツイてない。
一方、絶対悪の力がまだ抜けきっていないフランドールは、次元神界を一人で抜け出し世界を飛び回っていた。無論、自分をいいように扱い続けた絶対悪に復讐するために、探しているのである。
「チィッ!気分が優れない……あの気色の悪い塊のせいか……!絶対に奴を叩き潰してくれる!」
そう言って、フランドールは世界を移動する。何の偶然か。そこは次龍神世界。真下には何かを引き摺り歩く姉の姿。
彼女からすれば怒りの対象でしかないソレを見て、彼女の気が変わった。
────そうだ、奴を仕留めてからでも問題は無いじゃないか
ニヤリと笑う彼女には、オーラに混じって黒い瘴気が混じっている事に、誰も気が付かなかった。