ー?ー
後方の扉が勢いよく開き、多少乱れてはいるが素直に綺麗だと思える緑色の髪を持つ女性が肩で息を切らしながら部屋の内部に視線を走らせる。
予想通りならマチルダであろう。そんな風に考えていたら杖を引き抜き私に向け構えた。芸術的な速さだね。私が杖を使わない魔法使いだから問題無いがこの世界においてはこれで私は負けが決定していたな。はてさて、ティファニアは母親を亡くしたばかり、彼女にきちんと説明出来るか不安だ。
だがティファニアからマチルダに説明がなければ納得してはくれないだろう予測は簡単につく。まずはティファニアを私から遠ざけて警戒心をさげますかね。こんな状況で冷静過ぎなんでないかい、私。
ーティファニアー
マチルダ姉さんが飛び込んで来た後、私と彼そしてお母さんにと忙しく視線を飛ばし、一気に杖を引き抜き彼に向けた。
「貴方は何処の誰?ここで何をしていたの?」
マチルダ姉さんの誰何の声を聞き、初めて私も彼の名前を聞いていない事に気付いた。助けて貰ってお礼も言ってない気がする。でもその前に。
「待って、マチルダ姉さん。この人は私を助けてくれた人なの。」
マチルダ姉さんは私の言葉を聞いて少し杖を下げた。それを見た彼は、
「杖を下げなくて良い。見た事のない奴は簡単に信用しては駄目だ。」
などと言い、マチルダ姉さんの方に私を押しやる。私は後ろ髪引かれる思いだがマチルダ姉さんへの説明の為に向かった。彼はお母さんを寝かしたベッドの端に腰かけ、腕を組み眼を閉じている。
マチルダ姉さんは杖を構え直し、私を後ろ手に庇い、彼を警戒しながら説明を聞いてくれた。名前を聞いてない事も言ったら溜息をつかれた。あんな状況じゃそこまで頭回りません。確かにちょっとどうかとは自分でも思うけど。
説明後マチルダ姉さんは彼に近づきお礼を言った。
「妹を助けていただきありがとうございました。」
「いや、母親の方は助けられなくて申し訳なく思っている。」
「仕方がない、とは言えないけれど妹が生きていてくれた。それだけでも良しとします。」
「そうか。」
ここが今日中にお礼を言う最後のチャンスかもしれない。それに確認の為ににも声をかける。
「助けてくれてありがとう。それとマチルダ姉さんに状況を説明したら使い魔とか言われました。貴方は私の使い魔ですか?」
「その前に、名前を聞いて欲しいね。」
彼にそう言われ私のはつい先程の反省が生きていない事にしぼむ。
だから姉さんは私の事をぽややん娘っていうのかな。くすん。
次話にて名前を発表します。