「親父、いつもの」
「あいよ」
カグラは久しぶりのオフを帝都の飲み屋で過ごしていた
出された酒のボトルの一本目はイッキ飲み、追加で二本目、三本目も同じように頼んで飲む
この飲み屋では見馴れた光景ではあるが、始めて見る客はドン引きする光景である
「相変わらず、凄い飲みっぷりだな」
カグラが三本目のボトルを飲みきるタイミングでレオーネが声をかけてきた
「レオーネか……お前がこの飲み屋に来るなんて珍しいな」
それを言われたレオーネはハッと気付いたが店の出入口、窓といった外への逃走経路となるところは塞がれていた
「さて、貯ってるツケ払って貰おうか?」
店長がレオーネに迫る
ナイトレイドであるレオーネが店長相手に青ざめている
なぜなら、この店長
昔、帝都の裏賭博で行われていた闇試合を拳一つで勝ち上がり王者として君臨していたほどの実力者
裏賭博の大元が潰れてからは飲み屋の店長ではあるが実力は衰えるどころか、益々磨きがかかっているとの噂があるほど
「ヤ、ヤダなー……店長、支払うから来たに決まってるじゃ~ん」
本当は別の理由で来たが、レオーネは泣く泣くツケを払うこととなった
「で、レオーネ。何か用か?」
カグラはレオーネのことを気にせず、四本目の酒を開けていた
「なぁ~、カグラ~……私にも酒くれよ~……それなら話すからさ~」
「なら、三回回ってワンと言ったあとに裸踊りでも「それでいいなら!」
その発言は回りの客も驚いた
レオーネの目と言葉はマジであり、三回回ってワンと言うと服を脱ごうとする
レオーネの酒に対する欲はプライドすら無いに等しかった
「やめろ、冗談だから脱ぐな。ほら「サンキュー!カグラ」
脱ぐのを止めるとレオーネはグラスに入った酒を一気に飲んだ
「ぷはぁ~……やっぱ、酒はいいなぁ~」
「それで、用はなんだ?」
「実は「入るぞ」
凜とした声と共に白い軍服を纏った女性と黒い軍服を纏った女性が飲み屋に入ってきた
エスデスとエムエムである
「ふむ、小汚ない所ではあるが客はいるな」
「まぁ、こういう所が隠れた名店っていいますからね~」
「……注文は?」
エスデスとエムエムの突然の来店に客には緊張感が生まれているが店長はそんなことには関係なく注文を聞いた
「私に物怖じしないとは中々の男だな。そうだな……名物でも貰おうか」
店長は注文を聞くと調理場に戻る
(店長すげぇ!)
(まぁ、命のやり合いではないからこの程度は平気なんだろ)
「おい、警備隊隊長。女を連れて昼から酒とはいいご身分ですね」
エムエムがカグラ達の前に現れた
「お前達の仕事がなっていないせいでエスデス様自らが特殊警察を組織し、指揮を執らねばならなくなった事態……どうしてくれる?」
エムエムはカグラを威圧し、その手をカグラの顔に近付けようとするが
「エムエム、名物が来たぞ」
「はい、ただいま戻ります~」
料理が来たおかげでその手は引っ込められた
「本日のランチ、ホーク豚のしょうが焼きだ」
「うわ~……まさに庶民向けのものですね」
「だが、名物には変わりない。いただこう」
エスデスとエムエムが食事を始めるとレオーネはこそこそとカグラと話し始めた
「カグラ、あの二人はマジでヤバイんだよ」
「まぁ、そうだろうな」
「エスデスは禍々しい殺気を出すし、エムエムは本能で察した……アイツだけは絶対勝てないって」
「エムエムは元インペリアルガードだ。確実に殺すなら俺とアカメ、ブラート、マイン、カムイがいないと無理だ」
カグラは「シェーレがいたらもっと楽だったんだが」と付け加えると酒を飲んだ
「店主!」
エスデスの声に店内は更なる緊張感に包まれた
呼ばれた店長はそんな事は気にせず、エスデス達の席に向かう
「なんでしょう?」
「実に美味い料理だ。部下にも食べさせてやりたいのだが、持ち帰りは可能だろうか?」
店長は「出来る」と答えると持ち帰りの注文をとると、また厨房へ戻った
店長は手際よく調理を終え、持ち帰りの品をエムエムに渡した
「また機会があればくる」
そう言ってエスデス達は店から出ていき、店の客は緊張感から解き放たれた
それと時を同じくして、竜船では激戦が始まっていた