すまない、本当にすまない
書いてはみたがイマイチの出来だったのだ
本当にすまない
タツミがイェーガーズから離脱してから1週間
ナイトレイドは帝都から姿を消していた
それはドクタースタイリッシュによってアジトを見つけられたからであるが、その代償にドクタースタイリッシュは私兵と共に物言わぬ屍となってしまった
これがドクタースタイリッシュの単独ではなくイェーガーズならナイトレイドは全滅を免れなかっただろうが、それは『もしも』の話
ドクタースタイリッシュが死んだという現実は変わることはない
「さて、これで厄介者が一人減ったな……」
カグラはナイトレイドのアジトの報告書を読みながらそう呟いた
「だが……」
次の報告書の内容にカグラは苦虫を潰したような顔をした
『人身売買』
報告書にはそう書かれていた
ナイトレイドがいなくなったのは表向き、帝都の恐怖が無くなったと民は喜ぶであろうが、裏ではナイトレイドによって抑制されていた闇が動き出してしまっていた
「これで10件目とは……警備隊じゃ限界があるか」
「ドーモ、ボス」
オールベルグの『影』は音もなく隊長室に入っていた
「人身売買の調査が終わりました。今回はブローカーの集団と貴族が三人。貴族は過去に何人も買っており、その後に買われた者のほとんどは死んでいます」
「ご苦労。『蛇』と『双子』の潜入は?」
「問題ありません。『蜘蛛』と『牛』も夜に仕掛けるとのことです」
「分かった……依頼人はどうなった?」
「マスタージンが治療しましたが……」
「そうか……そうか……」
カグラは目を伏せてそう呟いた
「なら、いつも通り依頼人の家族に金を渡してくれ」
影は「かしこまりました」と言うと部屋から姿を消した
ーーーとある屋敷
屋敷の主は下卑た笑い声をあげていた
屋敷の主は人身売買で得た新しい『おもちゃ』で遊ぼうとしていた
地方の者は帝都の闇を知らない
だからこそ、人身売買とは知らず使用人として子を売る親もいる
親は「きっと元気にやっているだろう」と思っていても、子はその闇に飲まれ命を落とす
それが帝都の闇
「さてさて、楽しい時間の始まりじゃ」
屋敷の主は勢いよく『おもちゃ』のいる部屋を開けた
「ーーーなっ!」
しかし、そこにいたのは彼が思うような『おもちゃ』ではなく
「いらっしゃいませ……主様」
今にも自分を食らうような『化物』のような少女であった
「ひぃぃぃぃぃぃ!!」
屋敷の主は一目散に逃げ出した
本能で自分が買った少女に『殺される』と悟った
『おもちゃ』で遊ぶ日には屋敷の警備は全員出払っているため助けはこない
だからこそ、彼はもしもの時に用意していた抜け道から逃げ出そうとした
「あぁ……何で逃げるのですか?主様」
いつの間にか少女は屋敷の主の後ろにいた
「私が欲しいから買ったのでしょう?なら最後まで楽しみましょう?……主様の命が尽きるまで」
少女はオールベルグの『蛇』
ーーー双子side
「あらあら?もう終わりなの?」
「そうみたいだね。『姉様』」
「それは悲しいことね。『兄様』」
『双子』の仕事は終わっていた
屋敷にあった全ての命を狩り尽くし、
「死体しか愛せないなんてかわいそうな人ね。『兄様』」
「でも死体になれたなら幸せなんだろうね。『姉様』」
『兄様』『姉様』と言っているが、屋敷にいるのはただ一人
オールベルグの『双子』
かつて、彼女も人身売買で買われた
双子の兄弟がいたが、兄弟は彼女の目の前で殺された
それは買った主が最も楽しむやり方で惨く殺された
彼女の精神はその時に壊れ、今は主が喜ぶ殺し方を覚えた殺人鬼
そして、カグラに拾われた
『自分達』と同じ様な子を生み出さないために『双子』は今日も『主』と同じ様な人間を殺す
ーーー蜘蛛side
「う~ん……こんなものかな?」
「貴様!私を誰だと思っているのだ!?」
「貴族様……とでもいいたいのかい?」
「分かっているなら、どうなるのか分かっているだろ!!」
「いやいや、貴族様なら何をしてもいいってわけじゃないんだよ?」
貴族の男は声を荒げるが蜘蛛の巣によって動くことが出来ない
蜘蛛は蜘蛛で男の怒号を気にせずマイペースに仕事を進めていた
「さて、これで最後っと」
蜘蛛は糸を引っ張ると血だらけの少女が出てきた
「貴様ァァァァァァァァァッ!!よくも娘を!!」
貴族の男は蜘蛛を殺さんばかりの殺意を向けるが蜘蛛の巣から離れることは出来なかった
「はっはっはっ……血も涙も無い貴族様でも娘が殺されれば怒りもするよね」
「殺してやる!殺してやる!!」
「僕達の依頼人も今の君と同じ気持ちなんだよ?いや……依頼人より、今まで殺した人達の方がもっと強い『恨み』があるよ」
「何を言っている。私は貴族だぞ!地方から来たゴミなんぞ貴族である私がどうしようと勝手ーーー」
蜘蛛は貴族の男を縛っていた蜘蛛の巣を纏め、全身の骨を折った
「いやはや、救いようのないというのはこのことだ。辛うじて息があるようだね。苦しみながら死ぬといいよ」
蜘蛛は人を殺した後とは思えないように笑いながら屋敷から出ていった
ーーー牛side
「ふんッ!!」
牛は道場破りのように正面の門を拳で壊し屋敷へと入る
もちろん、そんな入り方をしたせいで警備の者が牛を囲むように集まってきた
「ふむ……警備の者。俺の獲物はこの屋敷の主だ。邪魔をしなければ殺しはしない」
牛の言葉に耳を貸さないのか警備の者は牛へと襲いかかる
「忠告はしたぞ……」
牛は構えを取らなかった
だが、警備の者は牛から弾かれるように吹き飛んだ
「自分の器を知らぬからだ。そのまま倒れていろ」
牛は屋敷の主の元へと歩いていく
その途中で警備の者が牛の歩みを止めようとするが、牛の歩く速度は変わらない
しがみつく者もいるが止まらない
剣やナイフを突き立てようとするが折られる
銃や矢を放つが全て受け止められる
牛の前には全てが無意味であった
「ここだな」
ドアを破ると屋敷の主は部屋の隅で震えていた
「来るな、来るな!金ならやる!!お前を雇ったやつの倍の金額をやる!!だから、殺さないでくれ!!」
「殺される覚えがあるのなら、最初からせぬことだ」
牛はここで初めて構えた
「最後の慈悲だ。苦しまずに一瞬で終わらせよう」
「嫌だ!死にたくない!死にたくない!!」
「それはお前に殺された者も同じ事を言っていたはずだ!!」
一閃
牛の拳は警備の物の目にも止まらぬ速さであった
拳を振り抜ぬき、屋敷の主が壁に激突した後に鈍い音が響いた
それほどの速さと重さを持つ拳であった
「俺の仕事は終わりだ」
牛は先ほど来た道を歩いて帰っていった
警備の者はほとんど無力化されており、牛の帰りを遮るものは誰もいなかった
ーーーカグラside
「いやいや、まさか警備隊長が私の所に来ていただけるとは」
カグラは標的であるブローカーに『使用人の斡旋』を理由に近付いた
そして、カグラはブローカーの事務所で酒を交わしながら斡旋の話をしていた
「それで、どのような者を見積りましょうか?」
「そうさな……俺が欲しいのは……」
カグラはブローカーの腕を握ると帝具の力を解放し、ブローカーを燃やした
「お前の命だ」
ブローカーは叫び声をあげる暇もなく、炎に包まれ絶命した
「これくらい書いておくか」
カグラは筆を取ると壁に『オールベルグはまだ生きている』と描いた
これがナイトレイドに変わる抑止力になると信じて