エムエムは朝から不機嫌であった
それというのも
「いやぁ、皆さん。かなり遅れてしまって申し訳ありません。私、帝都諜報部のハバキと申します。これからよろしくお願いします」
ハバキが長期任務を終え、イェーガーズに合流したためである
「エムエムさん、お久しぶりです」
「死ねよ、今すぐ死んでくれ。頼むから死んでくれ(エェ、オ久シブリデスネ……)」
「本音が駄々もれで建前が隠れるとは、相変わらず僕は嫌われてますね」
嫌悪感をこれでもかと出すエムエムとその嫌悪感を笑って受け流すハバキ
「副隊長があんなに突っかかるなんて珍しいな」
「エスデス隊長が言っていましたが、元同僚だそうですよ」
「ふーん」
エムエムとハバキとこの場にいないエスデス以外のイェーガーズの面々は和気藹々と話している
しかし
「とりあえず、仕事の邪魔だけはしないでよ(ハッ、この猫かぶりの蛇野郎が何をほざいてるのよ。私は副隊長でアンタは平隊員だってことを忘れるんじゃないわよ)」
「えぇ、それはもちろん(テメェの方こそ、ほざいてんじゃねぇよ……クソマゾ女が。インペリアルガード時代の冷徹さの欠片もねぇお前がキャンキャン吠えてんじゃねぇよ)」
「じゃあ、よろしく(冷徹さ無くとも、アンタを今ここでなぶり殺すのは可能よ)」
「えぇ、こちらこそ(上等だ。やってみろってんだ)」
表面上では当たり障りのない会話をする二人だが、水面下では殺伐とした会話を続けており、青筋が出るほどであった
「殺す!!」
「え?何でイキナリ!?」
「やめんか、バカ者」
皇帝に報告を終えたエスデスが帰ってくるやいなや殺し合いを始めようしたエムエムを凍り漬けにした
「それと、貴様もだ」
「何の事でしょう?」
ハバキはとぼけるが、エスデスはハバキが手のひらに隠し持っているナイフに気付いていた
「まぁ、帝具を使わなかっただけでもよしとしよう」
エスデスはイェーガーズに大臣から聞かされた『新型危険種』について報告し、駆除もしくは生け捕りを命じた
(さて、貴様の実力を見せてもらうぞ。元インペリアルガード)
「噂に違わず怖いですねぇ。『新型危険種』は」
「何を言っている。帝具を使わず圧倒している貴様が言う言葉か?」
笑みを浮かべるハバキの後ろには腱を切られて身動きのとれない新型危険種が何体も横たわっていた
「いやいや、こちらが殺されないように、且つ新型危険種を殺さず捕らえなきゃいけないんですから、怖いに決まっているじゃないですか。さて、この辺りはもういないようですし帰りましょう」
ハバキは帰ろうと歩きだすと、横たわっている新型危険種を見つめ続けているクロメに気付いた
「あの……なんで見ているんですか?」
ハバキは新型危険種の生態に興味があるのかと思ったが、よく見るとクロメの口元からヨダレが出ていた
「あの、クロメさん。さすがに新型危険種は食べられないかと思いますよ。生け捕りが目的なんですから」
それを聞いたクロメはショボンとするが、ハバキは懐から非常食を出して、これで我慢するように言った瞬間
「いだだだだだだだだだだだだだだだ!手!手!手!」
クロメはハバキの手ごと非常食に噛みついていた
ハバキは離れるように言うがクロメは肉食獣の如く噛みつき離れようとしなかった
それを見ていたエムエムはハバキに茶々を入れるが、噛みついていたクロメを投げつけられ黙らされた
そんな姿を遠くで見ている男がいた
男はフードをかぶっており、顔はハッキリと見えないがイェーガーズを見てニタリと笑うとその場から姿を消した