ファフニール? いいえポケモンです。   作:legends

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お待たせ致しましたぁぁぁぁぁ

二巻も終わりを迎え、今回は短めです。


処理

 ヘカトンケイルを撃退した後、悠とリーザは大和によって怪我を治させてくれたとはいえ、念のため具合を確認するために病室へ移動された。

 

 検査の結果、リーザはほとんど異常なく、悠は左肩の傷がまだ残っていたが、ある程度治療すれば大丈夫との事で、左肩には包帯が巻かれていた。

 

 また、深月によると負傷者は今の二名に加え、残りが時計塔にいた職員十名との事。計十二名が負傷者として見られるが、悠とリーザは大した怪我を負ってはおらず、職員全員が時計塔の下部にいたため、幸いにも死者は出ていなかった。

 

 一時的にダウンしていた環状多重防衛機構(ミドガルズオルム)も、制御を第二司令部に移す事で完全に復旧した。

 

 余談だが、深月が悠の作り出したと思われる反重力物質の事と、イリスとの関係について問いただしたのは割愛する。

 

 そうして、大事もなく解決―――の前に、もう一つ問題があった。

 

「大和さん、あの姿はなんだったんですか?」

 

 場所は大和の自室。深月に簡単な聴取があると言われ、入室させた上で問われていた。

 

「うんっ。確かに気になったねあの姿。タイガ、教えて!」

 

 そこからイリスが便乗するかの如く、聞いてきた。

 

「……教えるのはいいけど、何で深月だけじゃなく、イリスや他の皆がいるんですかねぇ」

 

 だがイリスだけならまだしも、何故かブリュンヒルデ教室の竜伐隊主力メンバーが勢揃いしていたのは大和にとって解せなかった。

 

「あの時、大和さんも竜伐隊に配属されてもおかしくない力を発揮しました。そこで、もしその時に支障が出ないよう、予め聞いておきたかったのです」

 

 どうやら、以前からの戦いから見て竜伐隊に抜擢されてもおかしくないと思い、更に配属になった時に皆が驚かないようにあの力の事を聞いておきたかったという。

 

「男性で、しかも“D”ではない人間が竜伐隊に選ばれるなんておかしな話なのですけれどね」

 

「……リーザ、そう言いながら彼に興味津々」

 

「まぁでも、単純にボク達も気になっただけさ。そこはあまり気にしないでくれると嬉しいかな」

 

「ん」

 

 他の皆が言う。なお、ティアはというと悠の看病に付き合っているため、今はいない。

 

「いやいいんだけどさ。いずれこっちから話しておく必要あったかもしれないし。そんであの姿って……十中八九ポケモンの能力解放の事だよねきっと」

 

 そう、彼女達が聞きたかったのは、大和が変身した姿の事。もとい、ポケモンの姿。能力開放をして彼が変身した姿に全員が興味を持ったのだ。

 

「確かにそう言っていましたね。それで、そのポケモンの能力開放というのは一体どういう事なのでしょうか」

 

 あの時見せた、ホワイトキュレムやブラックキュレムの姿。あの時は簡単に説明するしか時間が無かったので詳しい事まで聞けなかった。

 

「深月やイリス達に見せたのがホワイトキュレムって言って、それから電気バリバリダーってやったのがブラックキュレムっていう伝説のポケモンを体現したって事」

 

「伝説の……ポケモン?」

 

「しかもそれを体現させたってどういう事?」

 

 深月とイリスが首を傾げる。

 

「伝説のポケモンは神話や伝説に残ってもおかしくないポケモンで、それを体現させたって事はその見た目と同じようにした感じなんだけど……要するに、ティアが架空武装でドラゴンの姿になったでしょ? あれに近い感じ。言い方を変えれば……擬人化、って感じかな」

 

「擬人化?」

 

 淡々と指を立てながら説明する大和にリーザも首を傾げる。

 

「ん」

 

『人じゃないものを人型にするってこと?』

 

「そう。レン正解。中々お詳しいこって」

 

 レンが文字を打ち込んだ小型端末を大和に見せると、彼が詳しいねと軽く感心しながら言葉を紡ぐ。

 

「まぁ正確には擬人化ではないんだけど、それに近い形で顕現させたって事だな」

 

 本来擬人化とは『人でないものを人に擬して表現する事』なのだが、既にベースとなっている人間(大和)があるため、擬人化とは程遠い。

 

 なので、擬人化ではないが近い形で体現させたのだ。

 

「なるほど。そのような形を取れるのは分かりました。では何故、あの姿になれるのですか?」

 

「というと?」

 

「“D”ではない人間なのにも関わらずあのような姿に変身したり、数々の技を使える事について改めてお聞きしたいのです」

 

 更に深月の質問が追加されたが、大和は少し考えた後に言う。

 

「前にも言ったけど、元々オレが使える技や能力も始めから持ってるだけの話」

 

「……やはり、そういう返答になりますか」

 

 学園長室に隔離されていた頃、以前に聞かれた話とほぼ一緒の返答。転生で得たものであるため、明かせる訳がない。

 

 すると、フィリルが手を挙げながら言う。

 

「……そういえば私、こんな話を聞いた事がある」

 

 それは、彼女が祖国にいた頃の話―――。

 

 

『―――かつて、突如として我々の元には竜と共に異質な者がいた。竜と戦い、異能の権能を使う者―――それは敵となるか味方となるか。いずれにせよ、我々にとって脅威となり得る存在と化すだろう―――』

 

 

『…………』

 

 フィリルからそのような話を聞き、皆が沈黙する。

 

「……これは小さい頃に聞いた神話の話なんだけど、あくまで私の個人的見解」

 

 どうやら、彼女が小さかった時に聞いた話題らしい。それにしては中身が神話級とスケールが随分と大きい話だが。

 

「流石に大河くんがその話と合うとは思えない」

 

 彼女が始めて大和の名前を口にする。今まではずっと“あなた”や“彼”と呼んでいた。大和が内心で始めて名前を呼んでくれた事に軽く歓喜の念を抱くが、今そのような事を思う場合ではないと割愛した。

 

「色々とややこしくなるな。この話はもう無しにしない?」

 

「……そうですね。いくらなんでも大和さんが神話の時代から生きていたとは到底思えませんし」

 

 想像すると不気味になってきたので、深月はこれ以上追求しない事にした。

 

「んで、話は終わり?」

 

「はい。お時間を取らせまして申し訳ありません」

 

「そんなかしこまらなくていいって」

 

 深月の謝罪に大和が手で制しながら笑う。

 

 そのまま女性陣が退室していき、大和は一人、自室にポツンとなる。

 

「まさか、な」

 

 まさか自分が神話の時代からいたなんてナイナイと思いながらベッドに横になる。

 

 質問攻めに合ったので、眠気を誘うのには十分だった。




本当は大和も時計塔と体育館(原作では時計塔の瓦礫が体育館の屋根に直撃したが)の修理班のメンバーに加えたかったのですが、ヘカトンケイルの攻撃で深月を庇った事、健闘した事などが学園側から評価されてなくなりました、と言っておきます()

次回から三巻に参ります。

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