ファフニール? いいえポケモンです。   作:legends

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原作にはない事を入れるとなると時間がかかる……。
お待たせしました。


希望

 状況が逼迫(ひっぱく)している最中、大和とフィリル、キーリの三人はまず遥の元を訪ねたが、戻っていた様子がなかったため先に悠の所へと向かう。

 

「大和? それにフィリルとキーリまで……何かあったのか?」

 

 悠の部屋をノックした後、彼が出てきたが三人のただならぬ雰囲気を見る限り、何か良くない事があった事を悟る悠。

 

「フィリルの竜紋が変色した」

 

「なっ……」

 

 大和の一言に、驚く悠。

 

 キーリが彼にも状況を説明しながら、フィリルが大和の上着を返し、端が変色した竜紋を悠に見せる。

 

「一体どうして……」

 

「悠、先生はいなかったからとりあえず深月のところへ行くぞ」

 

「あ、ああ……分かった」

 

 状況を上手く飲み込めていなかった悠だが、一大事である事は間違いないので悠を含めた四人で深月の部屋へ向かう。

 

「―――はい。あれ、兄さん? それに大和さん、フィリルさんとキーリさんまで。何か、あったようですね」

 

 先程の悠の時のように、彼らの様子が変に思った深月は真剣な表情になって彼らを部屋へ招き入れる。

 

 そして、彼女にもフィリルの竜紋が変色した事を伝えると、険しい表情で呟く。

 

「……そういう事ですか。道理で―――」

 

「どうしたんだ?」

 

「フレスベルグがまだエルリア公国周辺を飛行していると、篠宮先生から連絡があったんです。そのせいで空路は完全に遮断されています」

 

「逃げ切るのは最初から無理だとしても……援軍も来られないって訳か」

 

 どの道今からミッドガルやニブルが動いたところで、間に合うとは思えないのだが。

 

「ええ。この場にいる私達で対処するしかありません。幸いにも大和さんが対処法を見つけてくれましたが……あなただけに頼りっきりになる訳にもいきません」

 

 深月は重々しく答えるが、それを聞いたキーリが口を開く。

 

「大和以外、何をしても通用しなかったのに、一体どう対処するか教えて欲しいものね」

 

「確かに私達の攻撃はフレスベルグを傷付ける事すらできませんでしたが、あの戦闘で得たものもあります。丁度、私なりの分析を加えた報告書を纏めていたところでした」

 

 机の上に置かれたタブレットPCの前に深月は移動し、言葉を続ける。

 

「特筆すべき事象は、私の反物質弾がフレスベルグに通用しなかった事。反物質弾が対消滅を起こさないという事は、つまり……フレスベルグの体は物質と定義されないモノで形成されている事を意味します。そしてこれは憶測ですが……具現化したと思われるアルバート王の魂。本来魂というのは、物理法則の中にはない概念です。これらを説明しうる仮説を調べたところ、一件だけ該当するものがありました」

 

 そう言うと深月はモニタに表示される資料を切り替える。

 

 それは『魂を具現化する未知の媒介粒子』という表題が付けられた論文。執筆者の名前は……宮沢健也(みやざわけんや)

 

 大和は"宮沢"という名字に何処か既視感を抱いたが、今考えるべき話題ではなかったので、割愛する。

 

「この仮説では、フレスベルグの能力を精神具現化媒介粒子の生成―――"霊顕粒子(エーテルウィンド)と定義しています。媒介粒子で形を得た精神体は、この世界の法則に当てはまらないモノとなるため、あらゆる干渉が通じないのだとも書かれていました」

 

 ページをスクロールさせながら深月は説明を続ける。

 

「金色の鳥に見えるフレスベルグの体は、恐らく具現化した精神体なのでしょう。だから私達の攻撃が通用しなかったのだと考えられます。ですが―――」

 

 そこへ、深月は大和に視線を向ける。

 

「大和さんは唯一、その精神体に攻撃できる手段を持ち合わせていたので、フレスベルグに攻撃できた……という事で良いんですよね?」

 

「そうだな。その解釈で間違っていない」

 

 深月の問いに、大和がはっきりと答える。

 

「もっと言うと、超能力や念動力、霊や魂に関係する技を使えるから、その線が有効だと思ったまでさ」

 

(最も、リムの受け売りに過ぎないんだけどな)と心の内で彼のデバイス(相棒)に感謝の意を伝える。

 

「超能力、念動力、それに霊や魂に関する技……ですか。なるほど」

 

 深月は興味深そうに顎に手を添える。 

 

「ではあの時、私達が金色の粒子に呑み込まれて身動きが取れなくなった事と同様に、あなたも同じ目に遭ったと思いますが……それはやはり私達が肉体を持っていたからなのでしょうね」

 

「どういう事だ?」

 

 上手くそれらの事象が結びつかず、悠は首を捻る。

 

「私達の精神は肉体の内側にあるものですから―――具現化しても体に閉じ込められたような状態になったのではないかと推測できます」

 

「つまり……肉体を離れて、精神だけにならなきゃフレスベルグには干渉できないって事なのか?」

 

「この理屈では、そうなりますね。ただ、そうなると私達は肉体に守られていたのだとも言えます。精神だけで立ち向かっても、きっとアルバート王のように……」

 

 フィリルを気遣ってか、深月は途中で言葉を切る。

 

 魂だけの人間はフレスベルグにとって餌でしかない。と悠は考えるが……。

 

「待て、それだと大和は精神だけの状態になっていたから粒子の中で動けていたって事か?」

 

「そうだと考えたくはないのですが……霊顕粒子の漂う中、自由に動けたのだとすればそれしか方法が思い浮かびません」

 

 悠の問いに深月が逡巡しながらも答える。

 

 しかしそれは、合っているようで違っていた。

 

「いいや? それはちょっと違うな」

 

「え?」

 

「動けたのはオレがゴーストタイプになったから……って言っても、何の事かさっぱりだよな。待ってて、今その証拠を見せるから―――」

 

 そう話した途端、大和の体が宙に浮き始める。

 

『!?』

 

 その場の全員がギョっと驚いた表情を浮かべる。

 

「簡単に言えばオレが幽霊になっちまえばいい」

 

 言いながら大和は部屋中を自由自在に飛び回り、挙句の果てには部屋の机をすり抜け、部屋の壁にぶつかる事なく透過して出る入るを繰り返して見せた。

 

「という訳」

 

 そして、最初の位置に何事もなかったかのように戻る。

 

『…………』

 

 当然、皆は沈黙。本人は結構真剣なつもりだが、あまりにブッ飛んだ出来事にその反応が自然な方だ。

 

「……最早何でもありですね」

 

 黙っていては話が進まないと思ったのか、呆れながら深月が沈黙を破る。

 

「でも、これなら勝機はある、かも?」

 

 そこへ今まで黙っていたフィリルが口を開く。一つでも多く希望に縋りたいのだろう。

 

「でも彼以外、どうするのよ? 他は皆手詰まりのように思えるのだけど」

 

 キーリは疑問を抱く。先程大和に頼りっきりになる訳にはいかないと言ったばかりのため、結局は彼に頼るしかないのではないかとの事だろう。

 

「っ……それは―――」

 

「待ってくれ」

 

 そこへ悠が物申すかの如く声を上げる。

 

「少なくとも俺には、あと一つだけ試していない方法がある。深月もこれから、何か有効な作戦を思いつくかもしれない。大和だけに頼るのは最終手段だ。だから結論を急ぐな」

 

「ふうん? それは気休めじゃなくて?」

 

 キーリが試すような言い方をする。

 

「気休めじゃない。本当だ。まだ可能性は残っている。大和だけに負担をかける訳にもいかないしな」

 

 悠ははっきりと告げた後、深月に顔を向ける。

 

「リヴァイアサンの時と似たような状況だが、深月も最後まで諦めないでくれ。例え何一つ対策が浮かばなかったとしても、俺が何とかする」

 

「兄さん……」

 

 瞳を揺らし、不安そうな表情を浮かべる深月。

 

 キーリはそんな悠達を何か言いたげな眼差しで見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで? 話って何用ですか」

 

 大和がドカっとベッドに腰掛けながら質問する。

 

 竜紋変色の経過を見つつ作戦を練ると、深月はフィリルを自分の部屋に残し、彼らには指示があるまでは休むよう命令した。

 

 キーリは何か言いたそうな表情だったが、「大和と作戦の話をしたい」と言ったので渋々ながら別れた後、悠は大和を自分の部屋へ招いたのだ。

 

 彼は少し考えた後に了承し、今現在に至るという訳だ。

 

「……済まない、今までお前には話した事がなかったよな。"本当の俺じゃない"という事を」

 

 悠は告げる。ショックを受けるかもしれないが、その可能性がある(・・・・・・・・)以上、話す必要があると感じたのだ。

 

 深月に責任を感じさせないため、これまでずっと隠し続けていた彼の重荷。

 

「どういう事さ」

 

「実を言うと、俺は……昔の記憶をかなり失っているんだ―――」

 

 以前、イリスに話した胸の内に秘めていた内容を大和にも共有がするが如く、淡々と話し始めた。

 

 ユグドラシルとの取引による弊害。力を得るための代償。

 

 深月を悲しめさせないがために、記憶を失い本当の悠(・・・・)という存在がどんなモノだったのかが……分からなくなった。

 

 その結果、深月の大切な想いすら失っていた。

 

 ではどうして今、その事を彼に話を持ちかけたのか。イリスにしか話していない事を彼に打ち明けたのか。

 

 それはもう一度―――同じ過ちを繰り返すかもしれないという自責の念からきたもの。

 

 大和一人に全てを任せる訳にはいかない。それ故に話しておく必要があると思ったまで。

 

「悪い。いきなりこんな事を言われても混乱するよな」

 

「……ふぅー……」

 

 大和は溜め息を()く。

 

「知ってたよ」

 

「え―――?」

 

 ただ一言。悠は彼の言葉に虚を突かれて言葉に詰まる。

 

「お前は隠し通せてたつもりだろうけど、オレには"お見通し"よ」

 

 ヤレヤレと言わんばかりに片手を横に差し出すような形を取る大和。

 

「どうして……知ってるんだ?」

 

「悪いが"白"のリヴァイアサンの時に見させてもらった。ユグドラシルが過去の兵器の情報を提供する代わりに記憶を失っちまうという代物。はっきり言ってオレは正気を疑うね」

 

 困惑する悠に対してバッサリと言う大和。

 

「でもまあ、助かったよ。そっちから話してくれたお陰で手間が省けたわ」

 

「手間が省けた?」

 

「その事について悠と話し合おうと思ってたところだったのよ。悠のプライバシー以上に関わる事だからあまりこっちから言いたくなかったんだけどね」

 

 悠の内部を探った以上、何処かで話す必要があると感じていた大和だったが、中々切り出せない事に葛藤していたのだ。

 

「そうだったのか……。でも、結果的に心配をかけていた事に代わりはないよな。本当に済まない」

 

「なんの。寧ろやっと言ってくれたかって安心してるよ」

 

 ホッと笑みを浮かべる大和。

 

「それはそれとして……こうして話してくれたって事は、またユグドラシルの力を借りる訳とかじゃないよな?」

 

「……ああ、そのつもりだ」

 

「はぁー……やっぱりそうするつもりか」

 

 大和が溜め息を()く。彼が以前危惧していた事が当たってしまったのだ。

 

「分かってる? そんな事したら、また記憶を失うって」

 

「ああ、それは重々承知している。だが、フレスベルグに通用する手立ては、もうこの方法しかない。それに、ユグドラシルは言ったんだ。自分以外のドラゴンを殲滅(せんめつ)しろって。なんなら俺の脳へ転送しようとしたデータの中に、フレスベルグに通用する兵器がある可能性がある」

 

 ユグドラシルから送られてきた力の情報―――旧文明の兵器データはあまりに膨大で、彼はその転送を途中で止めてしまっている。対竜兵装マルドゥークも、一部の装備を不完全な状態で物質化している有様。さらなるダウンロードでマルドゥークのデータを補完すれば、突破口が開けるかもしれないと考えたのだ。

 

「気持ちは分かるんだけどさ……」

 

 大和も悠が兵器のデータを手に入れる代わりに記憶を失う事に不安が募っている。殊勝(しゅしょう)な心構えだが、忘れる事に躊躇いはないのかと。

 

「勿論オレも何とかしたいと思ってる。でもまた同じ手を使って悪化したらどうするよ? オレでもどうにもならないぐらい手遅れになってからじゃ遅いんだぞ?」

 

 大和がありとあらゆる手段を使っても悠の記憶を取り戻す見通しが立たなければ、彼もお手上げになると注意をする。

 

 しばし悠が考えた表情を浮かべると、悠は何か決心した様子で急にその場から立ち上がり―――。

 

「……大和、済まない、この通りだ!」

 

 ―――頭を下げ、お願いをしてきたのだ。

 

「お、おいおい悠……」

 

 急に頭を下げられ、戸惑う大和。

 

「分かっている。深月との思い出や過去の記憶を忘れたい訳がない。思い出せなくなる事を恐れていない訳じゃない。それでも、フィリルを助けるために頑張ってるお前一人だけに全てを任せる事をさせたくない」

 

 悠の目にもフィリルを助けようと躍起になっている大和を見て、自分だけ何もしない訳にいかないためそう言った。

 

「分かってくれとまでは言わない。だが、俺もこの状況をどうにか打破したいんだ。だから、それだけは伝わって欲しい」

 

 だから頼むと言って、悠は大和を仰ぎ見る。彼の答えを待っている。

 

「……あーもう、ズリぃよ悠。そこまでしてお願いされちゃ断るこっちが悪いみたいじゃねーか」

 

 頭をガリガリと掻きながら言う大和。

 

「はー……分かったよ。今回だけだぞ。それ以上はナシな、問答無用で」

 

 悠の必死な想いが大和にも伝わったのか、先に彼が折れる形となった。

 

「ありがとう、大和」

 

「いい? 絶対だかんね? やっぱりもう一度とかするんだったら何が何でも止めさせるから」

 

「ああ、分かっている」

 

 満足のいく回答が得られたのか、悠はその場から立ち上がる。

 

「話は終わり?」

 

「そうだな。時間を取らせて悪かったな、大和」

 

「いいって」

 

 そう話しながら大和の自室から出ていく悠。

 

(アイツにも、話しておかないとな)

 

 そのまま自室に向かうのではなく、悠の隣にある部屋へ向かう。

 

 フルスベルグと戦うために最後の手段を使うのなら、彼女(・・)にも話しておかなければならない―――。

 

「イリス」

 

 扉をノックしながら、彼女の名前を呼んだ―――。

 

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