彼の持つ"ドラゴンをメイドに変える能力"だが、実はこの能力はある意味最強の能力である。その理由を説明するにはまずこの世界の"メイドさん"という生き物の事を話さねばならないだろう。
そもそも"メイドさん"とは何かと簡潔に述べれば"メイド服を着た女性型の生き物のようななにか"である。
そう牛や豚、人間や悪魔のように歴とした種族であり"生き物"なのだ。ちなみに種族名は"さん"までが正式名称である。
純粋な"メイドさん"の個体数自体は800~1000体程と言われているが現世、天界、冥界、冥府にすら"メイドさん"という種族は分布しており、何処の世界でも秘境と呼ぶに相応しい僻地に"メイド村"などと呼ばれる集落を作りながらひっそりと暮らしているのだ。なんでも次元の狭間にすら"メイド村"があるらしいが定かではない。
基本的にはとても温厚な生き物であり、個人差はあるが、突然スカートめくりをしてもプリプリ怒られる程度で済む程だ(人間にも個人差があるようにあくまでも目安である。する対象は良く考えるように)。
この世で最も強い種族はドラゴン。これに異論のあるものは居ないだろう。なら次に強い種族は神? 悪魔? 天使? 堕天使?
そのどれでもなく"メイドさん"なのだ。
個体差はあるが"メイドさん"はなんと単純に竜種と互角の身体能力を持っている。その性能は他種族を余裕で殴り殺せる程である。"メイドさん"のクォーターであるグレイフィア・ルキフグスが最強の女性悪魔として君臨している事からも明らかだろう。
そのため、基本的に温厚な彼女たちとは言えどもメイドの村そのものを襲おうものならば、神すら真っ青になるような怒濤の報復が待っているのは想像に難しくはない。
これらをふまえた上で考えると彼の"ドラゴンをどらごんメイドに変える能力"は、最強の種族に次に強い種族の特性を加えて理論上、究極の最上位種に昇華させるというデタラメな能力なのだ。
実際にどらごんメイドとなったドラゴンの能力が最低でも1.5倍以上になっていることからその凄まじさがわかるだろう。
ちなみに"メイドさん"には人間などとは大きく違う生態を持っている。
例を上げると……。
常にメイド服を着ているが別にメイド服しか着れないわけではない。
女性しか存在しない。
ドワーフ以上に手先が器用。
純粋なメイドさんの発生方法は不明だが、村の定員数より減ると新しい娘が増えている。
メイドさんが産みたいと思えばどんな種族や性別の違いすら越えて子供が持てる。
嗜好がとてつもなく強い。
特に特殊なのがその強い嗜好である。"メイドさん"は個々で何かひとつのモノに対して並々ならぬ執着を持つ生き物なのだ。
例えばユルギスの家のどらごんメイドではクロウは煙草、ミドはゲーム、リヴァイアは酒だ。
このように"メイドさん"はそんな自分の嗜好に合う嗜好品を摂取している時に強い多幸感を覚えるのである。そう、強い多幸感を覚えるのだ。
そもそも多幸感とは非常に幸せな感じ。特に、薬物などがもたらす過度の幸福感の事を言う。
つまり"メイドさん"にとっての嗜好のモノとは自分の人生を掛けるだけの価値のあるものなのだ。合法ドラッグなのだ。故にそれさえあれば"メイドさん"的にはどんな状況でもウルトラハッピーなのである。
大概の"メイドさん"は村の中で取れるモノが嗜好となるのだが、魔王クラスや、戦神クラスに実力の高い"メイドさん"の場合だと村には無いレアなモノが嗜好となるケースが非常に多い。"メイドさん"は自分の趣向のモノを長期間摂取していないと欲求不満となり不機嫌になってしまうのだ。
不機嫌な"メイドさん"はとても怒りっぽくなる。そして質の悪いことにそんな"メイドさん"に限って異様に実力が高い。
"メイドさん"がぶちギレたことで滅んだ国や、神話体系がある程である。
そんな危険な欲求不満な"メイドさん"を解消するために立ち上がった者が一人いる。我らがユルギス神父様だ。
まあ、その経緯は欲求不満でたまに他の種族の街で暴れ、大災害クラスの被害を起こす"メイドさん"をどうにかして欲しいと聖書の神がぼやいていたのを彼が小耳に挟んだからだったりするが、偉大な功績の前に動機など些細な事だろう。
彼はまず直接"メイド村"に出向き、商会の立ち上げを促した。それにより他の種族と大々的に交易が出来れば色々なモノが"メイドさん"たちの手に渡るからである。
元々温厚な種族な事もあり、どの村の"メイドさん"もそれには意欲的であった。だが、大きな問題もある。それは"メイドさん"は僻地で細々と暮らしているため、特にこれといった交易品を持たない事だ。
交易はしたい→交易がしたくてもこちらが渡す交易品がない→交易ができない→レアな趣向の"メイドさん"の欲求が満たせない→レアな趣向の"メイドさん"が不機嫌になる→"メイドさん"の大災害→いくえ不明
という最悪の事態となっているようである事に彼は気付き、そこで彼は思い付く。
レアな趣向と言っても例えば宝石や、ケーキなど基本的に外の世界ならば普通に流通しているモノばかりだ。なら特殊な趣向のメイドさんを嗜好品をお給料代わりに出稼ぎに行かせれば良いのではないかと。
そこで彼は"メイドさん"に呼び掛けたところ想定よりもかなりの数の"メイドさん"がわらわらと集まってきたのである。正直、これまで見てきた"メイド村"の"メイドさん"の総数を越えている気がしないでもなかったが、そこは"メイドさん"なので仕方がない。確実に普通の嗜好の"メイドさん"の方が多いが仕方ない。
そして彼は"メイドさん"の嗜好品を提供する代わりに"メイドさん"を派遣する人材派遣会社"ギュンギュスカー商会"を立ち上げたのだ。
幸い"メイドさん"力仕事はあまりしたがらず、争い事は経験値を多くドロップするモンスターの如く避ける傾向にある。そのため、戦争には基本的に関わらず、二十分に対価を払えるような貴族の屋敷で雑務をこなすことが主な仕事になっているのだ。
ちなみに"メイドさん"に力仕事を頼むと少しムッとした顔でぶつぶつ言いながら何だかんだでやってはくれるが、好感度が下がるのは間違いない。まあ、倫理的に男性が女性に力仕事を頼むのは普通に考えればアウトだろう。"メイドさん"は"メイドさん"である以上に女の子なのである。
さらに蛇足だが、同じ"メイドさん"を長期間雇い。親密度を深める事で"メイドさん"と付き合う事や、"メイドさん"と結婚も可能である。まあ、"メイドさん"次第だが恋愛とはそんなものだろう。
これらが後世に"メイド"と言えば奉仕を仕事としているという印象を与えたのは想像に難しくない。
ちなみに"メイドさん"は基本的に浮気や、ハーレム展開は御法度である。そんなことをした日にはクォーターのグレイフィア・ルキフグス含め、"メイドさん"に伝わる呪法・玉崩天やら一夫多妻去勢拳などと呼ばれ、語るのも憚れる恐ろしい物理攻撃を繰り出して来ることだろう。後、財布のヒモは"メイドさん"に握られると見て間違いない。
◆◇◆◇◆◇
「と、言うのがこれから来るカトリック最強の神父。ユルギスとメイドという種族に纏わる私が知る限りの話だ」
「な、なんでそんなこと知っているの?」
「ユルギル神父様の事を知らないカトリックの聖剣使いは殆ど居ないよ。何せ世界中に点在するユルギル神父様の孤児院には聖剣使いの適性のある者を集中的に集めているのだからな。私もそこの出だ」
「そ、そうなの…」
とある町外れの廃教会に青髪の少女と金髪の少女がいる。青髪の少女が金髪の少女に話していたのだろう。
「おや? 随分と早い。まだ時間前のはずですが…」
すると廃教会の入り口から2人の人影が入って来た。
ひとりは神父服を着て朗らかな笑みを浮かべながら3m近い剣身を持つ幅の広い大剣を肩に担いでいる男。もう片方は背の高い灰髪のメイドの女性だ。
「ではとりあえず始めましょうか。私の目的は思い上がった火人の成の果てに引導を渡すこと。任務通り、あなた方はエクスカリバーの回収に当たって下さい」
「頑張ろぉー」
ミドの間の抜けた声により、街を巻き込んだ紛争がここに始まった。
設定を考えながら自分の頭がおかしいなと思う今日この頃。マイクラ生活も長くなった…。