提督と艦娘の日常(仮)   作:お芋侍

22 / 69
今回、ちょっと暗い話が出てきます。


16 ①

prrr...prrr....ガチャッ

「やあ吉川、プレゼントは気に入ったかい?」

「取り敢えず火計か火刑、どっちがいい?」

「お前は呉の軍師か何かか!?」

 

 ある日のこと、提督が人員補充の書類に目を通していたらおかしな文があった。それは、

 

『葛城、リットリオ、大和、武蔵、大鳳の着任』

 

である。発行者を調べてみたら村上だったので電話をし、冒頭のような会話になったのだ。

 

「いやいや、大和に武蔵に大鳳だぞ!?普通なら喜んでるところだぞ!」

「どう見ても厄介事の臭いしかしねぇわアホ!てかなんで俺んとこに来るんだ!」

「チッバレてたか」ボソッ

「聞 こ え て ん ぞ」

 

 リットリオに葛城は良い。前回の作戦の報奨なのだから。しかし、大和と武蔵、大鳳はそうじゃない。

 この三名は、希少性がずば抜けて高い。大型建造を100回回しても出てこない事がざらにあるからだ。普通なら他人にあげたりしない。それなのに何故ウチに来るのか。

 

「いやな、その三名はちょっと訳ありでな」

「ならその訳を話せ。出なきゃオマエの嫁にセロリと小松菜のサラダのレシピを送るぞ」

「止めろ、それだけは本当に止めろ!話すから、な!?」

 

 話を聞くと、この三名は前回逮捕された呉山提督の艦娘で、逮捕されたあと艦娘達は他の鎮守府、又は艦娘を辞め、日常に溶け込んでいった。

 この三名も本来なら艦娘を辞めるつもりだったが、海軍上層部がコレに待ったをかけ、強制的に続けさせたのだ。何故待ったをかけたのか、それは先ほど言った希少性の高さ、そして戦闘力の高さである。

 大和と武蔵は速度を除けば戦艦一のスペックを持ち、大鳳は中破でも発着可能の装甲空母である。

 これ程の戦闘力のある艦娘を放逐するのは不味い、上層部はそう判断した。

 だが艦娘にとっては傍迷惑な話でしかない。せっかく軍を辞める機会を、潰されたのだから。

 それからは上層部の判断に従い、各鎮守府を巡ったがそこで待っていたのは、大和と武蔵、大鳳のネームバリューしか興味のない提督。そして、そこにいる艦娘のいじめであった。

 配属された鎮守府は、提督が「大和達がいるならウチの鎮守府は大丈夫だね」と発言しちゃうほどのノウタリンであった。

 確かに大和達は他の艦娘と比べたらずば抜けたものだが、それを生かすのは我々提督の仕事なのだ。戦艦と空母だけでは戦闘は出来ない。この提督はそれを分かっていなかった。

 そして何よりも彼女たちにとってキツいのは、所属している艦娘からの虐めであった。

 

 最初は無視程度のものが、時が経つにつれ本人の前で陰口や嫌味、コップの水をぶっかけたり、極めつけは、大和の艤装に罵詈雑言の悪戯書きが、それも全体的にびっしりと描かれていた。

 流石にこれは提督が直ぐに気付き、対処したがこの段階でもうすでに三人とも提督達を信用できなくなっていた。

 その後は上層部の調査で判明し、別の鎮守府に飛ばされた大和たちだったが、此処が最初の鎮守府より質が悪かった。

 そこの鎮守府の提督は何よりも戦果を求めていた。戦果の為ならありとあらゆる手段を使って勲章を、上層部のパイプを太くしようとした。

 潜水艦を使ったデコイ、相手の戦力を削るために低レベル艦による片道切符作戦、疲労が限界でも出撃させる等、ブラック鎮守府より酷いことをやっていた。

 思った以上の戦果を挙げなければ暴行された。最悪提督の暴行で死ぬ艦娘もいた。素手ではなく道具を使った、万力や鞭、ナイフや焼き印等、拷問といっても良いぐらいの事を、そこの鎮守府は、提督はやっていた。

 何故、それが今の今まで気づかなかったのか?それは高速修復剤で傷を直していたからだ。築き上げたパイプを使い、高速修復剤を安く、大量に購入。遠征でもかき集め、暴力で傷ついた艦娘をバケツでぶっかけていたのだ。高速修復剤は有りとあらゆる傷、怪我を直す。その効果を使った、悪質なものであった。

 最初は手厚い歓迎を受けた大和たちだったが、出撃で中破する回数が増えると提督の反応が180度変わった。最初は手足を縛られ、吊るされた状態で艦娘の暴行シーンを目の前で見せられ、「これ以上失態を繰り返すようなら、判ってるな?」と釘を刺された。

 それでも中破してしまうと、暴行を加えられた。時には仲間に暴力を加えるよう強要した・されたことも。

 そして極めつけは、性的暴行であった。

 

「俺たちが奴の鎮守府を強硬捜査したとき、どうやらその最中だったみたいでな。···悲惨な光景だったよ」

「………」

「その後は、そこに所属していた艦娘を救出、提督はその場で抵抗、射殺された。最後は俺達に怨み言を言いながら撃ち殺されたよ」

「……そうか…」

「救出された艦娘は彼女達を除いて全員軍籍から除外、今は施設で日常に復帰できるように訓練中だ」

「…まさか、彼女達というのは」

「そう、大和たち三人だ」

 

 三人とも見つかったときは憔悴状態で、直ぐにちゃんとした施設で治癒しないと危険な状態であった。特に大和は怪我が酷く、時間との勝負であった。

 

「彼女たちは治療が終わった後、精神チェックしようとしたんだ。だが、大和が精神が非常に不安定だったんだ」

「………」

「武蔵と大鳳のお陰で落ち着けさせることに成功したが、彼女達の目を見て分かったよ。

ーーーああ、俺の事を信用どころか、ヒトを敵として見ているな、とな」

 

 それはそうだろう。今の今まで虐待を受けていたのだ。信用、信頼等できるはずが無い。

 

「武蔵と大鳳は、どうにか信頼関係を結ぶことができた。だが大和は二人以外の話を聞かない」

「…本来なら、軍籍除外し、日常復帰を目指すはずなのに、それをしていない。つまり、上層部は未だに彼女らに拘っているのか」

「連中は艦娘をヒトではなく、道具としか見てないからな。それでもブラ鎮に比べたら遥かにマシな思考ではあるが」

「…だがよ、お前の所でも良かったんじゃないか?」

「ちょっとマズッてな…。ちょっとウチの娘達と仲が悪くなってな…」

「何でだよ?」

「…大和の服に糸屑が付いてたから、除けようとしたら思っきしブッ飛ばされた」

(恨みというかなんというか、…根が深いぞ)

「それが原因でビス子達と対立してね。これ以上は無理だと判断したんだ」

「んで、俺に寄越したわけか…」

「それに、お前は虐められたことのある経験者だしな。そこんところのフォローもできると思って」

「そんな理由でかよ…。一応言わせてもらうが、多分意味ねえぞ」

「それでもだ。…頼む」

「…やれやれ、分かったよ」

 

 溜息を深く吐き出し、村上のお願いを聞いた。

 

「やれやれ、上層部の汚いケツを拭く羽目になるとはな…」

「面倒だが、奴らに嫌われるのもバカバカしいがな」

「「ハァ…」」

 

 

 

 

  数日後

 

「雲龍型正規空母、葛城 着任します!」

「ヴィットーリオ・ヴェネト級二番艦、リットリオです。よろしくお願いしますね」

「ああ、ようこそ。わが鎮守府に」

 

 鎮守府にやってきた葛城にリットリオに挨拶し、笑顔で対応していた。

 大和達は午後から来るとのことで、午前中にやってきた二人を相手していた。

 

「ところで、雲龍姉さんと天城姉さんいるの?」

「残念ながらウチの鎮守府にはいないな。まあまた近いうちにやってくるさ」

「提督、ローマは…?」

「弾薬が足りんでな…」

 

 そんなこんなで二人の着任式が終わり、昼飯を食べ終わり、運命の午後の着任式が始まった。

 

「戦艦、武蔵だ」

「空母、大鳳です」

「……………」

「…大和」

「…戦艦、大和」

 

 本人達を目にした提督は絶句した。演習に見た覇気、やる気が全く無くなっていたのだ。やられたことを考えると仕方のないことなのかもしれないが、これは骨が折れるな…と思った提督であった。

 提督自身は、艦娘としての活躍はしなくてもいいと考えていたが、上層部は戦果を出してほしいとやたらしつこく打診してくる。もういっそ上層部に乗り込んでシバキあげようか考えてしまうほどだった。

 軍人としては活躍してほしいと思うのは確かだが、この光景を見るとそう思わなくなる。

 

「…ようこそ、わが鎮守府に」

「…もういいかしら?もう自分の部屋に戻りたいのだけど」

「あ、ああ…構わないよ」

「では失礼します」

 

 そのまま自分の部屋に帰っていく大和。しかし武蔵と大鳳はその場に残った。

 

「君たちは戻らないのか?」

「…提督、貴方は信頼に足る人物ですか?」

「あん?」

「貴方の友人の、村上少将が言ってました。―――吉川は俺が知る中で最も信頼に足る人物だ、と」

「…あいつめ」

「私達は村上少将の人柄を知っているし、信用できる」

「ですが、必ずしもその人が言った通りの人物とは限りません」

「まあ、私は大丈夫だと思っているがな。ここの艦娘は感じが非常に良い。今まで回って酷い所は、艦娘の感じも非常に悪かったしな」

「…私は、貴方のこれからを見て判断させていただきます。宜しいでしょうか?」

「ああ、構わんよ。初めて会って信用してくれ言っても無理な話だしな」

「ありがとうございます」

「では、私達も部屋に戻ることにしよう。では提督、また明日な」

 

 そう言って武蔵達は提督室から出て行った。

 

「…さて、先ずは何の仕事をやらせるべきかねぇ…」

 

 先ず大和に必要なのは、自分の誇りを取り戻すこと。俺たち人間側が糞を塗り付けた誇りを、綺麗にする。そうすれば、武蔵達も立派になるだろうと思っている。

 だが、彼女の心はガッチリと閉じきってしまっている。この序の心を開けることができるのは、

 

「長門、だろうなぁ…」

 

 演習の時に相手をした長門以外に提督は思いつかなかった。

 そして、心を閉ざした大和と長門が、再会する。

 さあ、これからどうなるのだろうか…。

 

 

 

    続 く




どうも、おはこんばんにちは。お芋侍です。
今回は大和達が吉川たちの鎮守府に着任。しかし、大和は心に大きな心の傷が…?
のような話になっております。あとこの話は何話か続きますので、温かい目で見守ってください。

誤字脱字がございましたら、感想欄にお願いいたします。





今回3800文字オーバーて…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。