提督と艦娘の日常(仮)   作:お芋侍

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「うーん、あと少しで書類が終わるな…」

 

ある平日の昼過ぎ頃、書類を一人でガリガリ書いていた提督が残りの書類の数を見てそう言った。

本来ならばその日の担当秘書艦と一緒にやる仕事なのだが、その日はあまり緊急性の高い書類も無く、一人で終わらせることが出来る量だったので一人でやっていたのだ。

本日の秘書艦は加賀だが、現在この鎮守府は慢性的な航空隊の練度が不足している為、時々空母全体で練度を上げる訓練を実施している。

…まあ、航空機の種類も艦攻に偏っている為、雷撃をどれだけ的(敵)にブチ当てる事が出来るか、そういう事を考える事がメインになりかけているが。

 

「それにしても、平和だなぁ」

 

コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。どーぞー、と言うと入ってきたのは羽黒であった。

 

「あ、あのぅ提督さん…。ご飯食べてないって聞いてきたんですけど…」

「ああ、あと少ししたら全部終わるからその時に食べようかと思っているが、どうした?」

「ええと、ですね…」

 

モジモジしながら顔を真っ赤にしていたのでなんとなく察した提督は

 

「…一緒に食べるかい?」

「! は、はい!」

「じゃあ、少し待ってくれ。直ぐに終わるから」

 

嬉しそうな笑みを浮かべた羽黒を見て、ほほえましいなぁと思った提督であった。

 

 

 

「羽黒はどれを食べるかい?」

「あ、サバの南蛮漬け定食を頼もうかと…」

「オーケー、すまないけど羽黒は席を確保しといてくれ。君の分も一緒に持っていくから」

「分かりました」

 

一時半を過ぎた時間でも食堂では人が多く、空いている席はそんなに多くはなかった。

理由は二つあり、一つは鳳翔が経営している店に行く人が半分なのだが、最初のところに書いている訓練の日はお店を閉じているのだ。結果、その半分が食堂に来ているのが一つ。

二つ目は食堂を一般開放しているので現地の人もよく来ているのだ。

それに、ここの食堂の味を好む現地の人も多い為、日本食レストランを経営したい人は此処の食堂で修行するという噂話もあるほどだ。

 

「よっと、おまたせ」

「あ、代金…」

「良いよ良いよ、女の子に支払わせるのは男としていかんのだし」

「あ、ありがとうございます」

 

羽黒と楽しくお喋りしながら食事をしていると、加賀達が食堂に入ってきた。

 

「おー皆、訓練は終わったのかい?」

「ええ、とりあえずこれで大丈夫だろうというところまで鍛えたわ」

「加賀さん、五航戦を可愛がっていましたもんねー」

「人聞きの悪いことを言わないでください赤城さん。光る原石を目にしたら磨き上げたいと思うでしょう?それと一緒ですよ」

「ああ、道理で瑞鶴がえらいへばっているんだな…」

 

赤城達の後ろを見てみると、魂が抜けかけた瑞鶴の姿が確認できた。…飛鷹が隣で支えているので、ゴリゴリにされたのだろう。

 

「そういえば、他のメンバーは…?」

「隼鷹は酒屋に直行、なんか新しい酒が入ったとか言ってたけど。

 瑞鳳と翔鶴、鳳翔さんは自分の店に向かって行ったわ。夜の居酒屋の準備するためだとか。瑞鳳と翔鶴はそのお手伝い。

 龍驤は『新しい店を開拓するでー!』と言って町の方に出かけているわ。」

 

羽黒の質問に加賀が全部答えていた。というか隼鷹、この前酒を買ったばっか無かったっけ。

 

「もう全部飲んだそうよ」

「さりげなく心を読むのは止めてくれないかい?」

「あ、提督。ここにいたんだー」

「飛龍、蒼龍」

 

振り向くと料理を盆に乗っけた飛龍たちが横にいた。

 

「よかったら私たちも良いかな?」

「ああ、良いよ。赤城たちもどうだい?」

「では、お言葉に甘えて」

「なんか久しぶりですねー」

 

そう言い、飛龍たちは提督の右横に座り、赤城たちは左横に座っていた。

残った瑞鶴と飛鷹は羽黒の横に座った。

因みに羽黒はこの時、恥ずかしがりな性格が災いし提督の横ではなく真向かいにいたので、何の抵抗もなく提督の横に座った飛龍達を羨ましそうな目で見ていた。

 

「で、どうだ?今回開発された流星改と62型は?」

「ええ、かなりいい機体ね。彗星だと厳しかったのが62型だと成功率が上がったほどよ。流星改も流星の上位機だけあって効率よく的を沈ませる事が出来たわ」←加賀

「あとは戦闘機、だな」

「烈風や紫電改二も良い機体だけど烈風改に比べるとね…」←飛龍

「と言ってもボーキはそんなにないからなー。あと一週間待ってくれ」

「そんなに気にするほどでもないと思いますよー?」←蒼龍

「危険性を出来るだけ排除するにこしたことはないさ。…ところで赤城よ」

「ふぁい?」モグモグ

「ケッコンしたはずなのに以前より食べる量が増えてないかい?」

「ほふでふか?(そうですか?)」

「飲み込んでから喋りなさい」

(あうあう、さっきまで提督と喋っていたのに~)グスン

 

さっきから提督と喋れない羽黒であった。

 

 

 

食べ終わった後、暫く赤城たちと喋っていた提督だったが、その後羽黒と一緒に食堂を出て海辺の散歩をしていた。

 

「…はぁ」

 

しかし、羽黒の表情は暗かった。理由は

 

(どうして私って臆病なんだろう…)

 

というものだった。

 

「ん?どうした、ため息なんぞして」

「ご、ごめんなさい!」

「いや、謝らなくてもいいんだけど」

 

苦笑している提督の顔を見て羽黒は自分の顔が真っ赤になっているのが自覚できた。

 

「悩みがあるなら、俺でよかったら聞くよ?」

「…提督、どうして私は臆病なんでしょうか?」

「…どうして、そう思ったんだい?」

 

羽黒は提督に自分の悩みを告白した。

んー、と悩んだ後、提督はこう言った。

 

「君は臆病ではないと思うよ?」

「え…」

 

思いもしない答えにびっくりしているところに、提督はこう続けた。

 

「きみは周りをよく見ている。普通なら気付かないものでもよく気付くし。事実、君が旗艦の時は奇襲されてもすぐに気付いて対応してるしな」

 

「それに君は自分を臆病だと言っているが、それは違う。―――優しすぎるんだ」

 

「君は誰かが傷つくことを嫌う娘だ。誰かが傷ついてたり泣いてたらら助け出すでしょ、君は」

 

「その気持ちは非常に大切なものだ。そしてそれは君が臆病という事では無いんだよ」

 

そこまで言った後、提督は最後にこう言った。

 

「―――あまり自分を卑下にするな。君は十分魅力的な女の子なんだから」

「…ありが、とう、ござい、ます…」

 

泣いていた羽黒を提督は頭を胸に抱き寄せ、泣き止むまでじぃっと待っていた。

 

 

 

「ご、ごめんなさい提督!ずっとしがみついてて…!」

「いや、別に気にしてないよ。―――悩みは解決できたかい?」

「はい…!」

「うん、良い返事だ」

 

 

 

後日、青葉新聞にこのことが一面に出され、恥ずかしさのあまり布団に包まってゴロゴロと赤い顔で転がる羽黒の姿があったそうな。




どうも、おはこんばんちは。お芋侍です。
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