「うーん、良い朝ですー」
五月に入ったとある日の早朝、吹雪は日課の早朝ランニングをする為、駆逐艦寮の前で準備運動をしていた。
吹雪が準備運動をしていると、後ろから声をかけられた。
「吹雪ちゃん、おはようっぽい~」
「吹雪、おはよう。良い朝だね」
吹雪が後ろを振り向いてみると、そこには夕立と時雨が立っていた。
「あ、おはよう二人とも。もしかして付き合ってくれるの?」
「ううん、ただ単に早く起きただけっぽーい」
「今日は吹雪の初ローテの日だからね。今回は僕らも参加するから早く起きてアドバイスでもしようかなと思ったんだ。」
「そうなんだー。そういえば夕立たち以外で参加する娘とか知ってる?」
「いや、流石にそこまでは知らないかな」
「でも、私たちもいるから大丈夫っぽい!大船に乗ったつもりで任せてっぽい!」
そういうと夕立はエッヘンと胸張った。気のせいか犬耳みたいな髪の毛もピョコピョコ動いているように見える。
因みに夕立と時雨はここの鎮守府では古参組で、二人とも改二済みである。
「…………」
吹雪は夕立の胸と自分の胸を見比べ
「……ハァ~」
ため息をついていた。
「では、会議を始める」
朝の九時、提督は食堂に皆を集合させ、会議を開始した。
「今回皆に集合してもらったのは他でもない、深海棲艦のことだ。彼らとの停戦協定も今日から失効し、戦闘が開始される。
我々の仕事はシーレーン(海上交通路)の防衛と、このトラック諸島の防衛である。彼らはあらゆる手を使って、この二つを攻撃するだろう。
今回の題材は、シーレーン防衛の班決めだ。空母2隻、戦艦か重巡一隻、軽巡以下三隻で構成する。なお、これは暫定的なものだから変えても問題ないが、ここトラック諸島の防衛も忘れないようにね」
「提督ー。私たち雷巡組はー?」
雷巡組を代表した北上が質問した。
「出来ればトラック諸島の防衛に専念してほしいが、まあ君たちの意思に任せるよ。ヘタに手を出して痛い目を受けたくないからね」
「はいはーい、わかったよー」
「他に質問はないかな?あ、あと今回はテストとして俺が構成した艦隊で出撃してほしい」
「? なんで?」
「バランスよく構成したと思っているが、まだ分からないからね。まあ一発目からとんでもない敵が出てくるとは思わないし、新しく入ってきた娘に経験させるいい機会だ。実戦に勝る経験は無いってね」
提督がそう言うと、皆納得したようだ。
「では、発表するぞ。旗艦、龍驤。二番、飛龍。三番、陸奥。四番、時雨。五番、夕立。六番、吹雪だ。呼ばれた娘はすぐに出撃準備するように。
以上、解散!」
「じゃ、皆ー。出撃するよー」
「「「「はーい」」」」
「は、はい」
「緊張せんでも大丈夫やでー。今回はウチらもいるんや。そう簡単に沈まんよ?」
「す、すいません」
「謝っちゃてるっぽい」
飛龍の掛け声に吹雪以外は気の抜ける声で返事していたが、初の実戦になるかもしれない吹雪は緊張のあまりカチコチになっていた。
(う~、緊張するぅ~)
「大丈夫だよ。吹雪」
カチコチになっている吹雪を時雨が背中をポンポンと叩いて吹雪を励ましていた。
「フフッ、大丈夫よ。このメンバーならもし襲撃されてもあなたを守りながら援軍を待つのは簡単だから、ネ?」
「陸奥さん…」
「ほらほら、飴でも食べなさい」
「あ、ありがとうございまびゅ」ガリッ
(((((あ、噛んだ)))))
「――――――――ッ!!??」
緊張のあまり舌を噛んでいた吹雪であった。
「っと、彩雲から連絡がきたわ。十時の方向に敵艦隊接近。駆逐イ級が3、軽巡ホ級が2、戦艦ル級が1、全てエリートよ」
「おー、その程度の艦隊なら簡単やねー。経験値ウマウマや」
「でも、油断は禁物よ。最初っから全力で叩き潰すわよ」
「せやね、んじゃ、艦載機の皆―!お仕事お仕事―!!」
「第一次攻撃隊、発艦!龍驤の隊に続いて!」
空母の娘たちが式神を、弓を使って艦載機を発艦させた。今回は敵空母がいなかった為、大した被害も無く、イ級を二隻、ホ級を一隻沈ませた。
「うーん、あんま倒せんかったねー」
「いや、あれだけ沈ませたんだからむしろすごいことだと思うわよ?」
陸奥がそう言ったが龍驤は納得してないようだった。
「敵艦隊、こっちに向かってくるわ」
「相当おかんむりっぽい」
「ル級は私が相手するわ。夕立と時雨は吹雪と一緒にホ級とイ級をお願い」
「りょ、了解!」
「…あの調子だとテンパりそうだね。夕立、僕が援護するから君が最初に突っ込んでル級と他の敵艦を引っぺがすよ」
「了解っぽーい!」
夕立はそういうと全速力で敵艦に突撃していった。
「吹雪は僕の隣に」
「で、でも大丈夫なの?夕立ちゃんが単身吶喊していったけど…?」
「夕立にとってはいつものことだよ。それに―――」
そう言いつつ、時雨は腕についてる10cm高角砲(高射装置付き)を相手に向けてこう言った。
「―――僕の目から逃げられないってね」
ドン!ドン!ドン!と撃ち、全てル級に命中させていた。
(す、すごい…!)
怒ったル級は時雨たちに向けて突撃したが、そこに陸奥が乱入した。
「貴女の相手は私よ」
41cm連装砲を相手めがけて撃ちながら陸奥もル級めがけて突撃した。
ル級も撃ち返してくるが陸奥はそれを避けたり弾いたりしながら間合いを詰めていき
「せええぇぇぇいッ!!」
ゴギャアアアッ!!!と、遠くからも聞こえるほどのチョッピングライトをル級に喰らわせ―――
「まだ終わってないわよッ!」
―――そのままル級の顔をつかんでゼロ距離砲撃を当てた。
流石にこのダメージには耐えきれなかったのか、そのまま海にブクブクと沈んでいった。
一方夕立はというと
「その程度じゃ当たらないッポイー!」
と言いながらホ級の懐に飛び込み
「そぉい!」
とホ級を掴み、イ級めがけて投げたのだ。
ガゴオオオオン!と音と共にホ級とイ級が激突、体勢が崩れたところを時雨がスナイプ、ホ級を中破させた後、そこを夕立が魚雷パイルで爆殺させた。
残ったイ級はその場から逃げようとしていたが、その後吹雪の雷撃で沈んでいった。
戦闘が終了した後、敵が出て来なかった為、そのまま鎮守府に帰投した。
「お疲れッポイ―」
「ようやったやん、あれだけ出来れば上出来やで」
「有難うございます!」
今回初めての戦闘でイ級を沈めることに成功した吹雪は心の中でガッツポーズをとっていた。まあ初めての戦闘で初めて戦果を取れたのだ。嬉しさもひとしおだろう。
「皆、ご苦労様」
気が付くと提督がこちらに向かっているのが確認できた。
「皆無事に帰還できたでー」
「知ってるよ。龍驤達なら吹雪を守りながら帰還できる技量があるのは分かっていたしね」
「提督さん、褒めて褒めて~」
「おー、良し良し」
「えへへ~」
夕立が提督に甘えている姿を見た吹雪は胸の奥がチリッと嫌なモノを感じていた。
「吹雪もよくやった。これからもその調子でな」
「はい!」
しかし提督に話しかけられたらそんなモノも感じなくなったので吹雪は大したものでは無いだろうと判断した。
のちにこの気持ちが分かったのは半年後のことである。
どうも、おはこんばんちわ。お芋侍です。
またもや連日投稿。しかも今回は戦闘回。詐欺だ―!?と言われそうで怖いです。
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