応援の第一陣がトラック諸島に到着した三日後、佐世保からある護衛艦三隻が出撃した。
改いずも型護衛艦二番艦 ”つしま”
金剛型護衛艦六番艦 ”こまごめ”
金剛型護衛艦七番艦 ”つるみ”
計三隻の船がトラック諸島に向かっていた。
責任者は有馬 美咲少将。
次に搭乗している士官は
神代 緋鉄(カミシロ ヒテツ)中佐
坂本 明日香(サカモト アスカ)大尉
ジャッカル・ツヴァイク大尉
の三名。現時点では応援の中ではほぼ最高戦力の一つという扱いとなっていた。
若手のホープ二人に百戦錬磨の古強者の雰囲気を纏う男。更に航空戦力として七本槍に挙げられる少将である。特に少将は大規模作戦の経験がある為、第一波の応援をプラスすると、防衛は十二分に可能―――その筈だった。
「第一陣殲滅! 第二陣、三分後に接近!」
「雲龍達は後退! 神代中佐!」
「了解! 千歳! 千代田! 出撃してくれ!」
『『了解!』』
「叢雲は引き続き”つしま”の護衛を! ジャッカル大尉は出撃準備をしてください!」
『了解! もう、トラックは目の前だというのに……!!』
『了解』
―――”つしま”のCIC内では、怒号と蒸暑さが占領していた。
現在、”つしま”は敵の攻撃に合い戦闘、交戦していた。普通ならすぐに終わる筈の戦闘だったのだが、今回は予想を上回る数の敵が”つしま”に殺到した。その数、約50程。
その為、”つしま”はエンジンを完全に停止。トラック諸島に応援を要請した。
しかし、トラック諸島側にも敵が来ており、応援には暫く時間がかかるとのことであった。
「応援が来るまでここで踏ん張ります。皆さん、すみませんがここで脱落するようなことは一切しないで下さい。
誰かを犠牲にする作戦は、する気も無いししません。―――無事にトラック諸島に、皆で着きましょう」
……何か最終回じみたことを言っているが、ぶっちゃけた話未だにスタートラインにすら立っていないのである。悲しいなぁ。
「こりゃあ予想以上の戦場だな。千歳、千代田。無理するなよ」
『うーん…多分無理かも。敵の数が多すぎるし、それに……二式から送られた情報では変な敵もいるみたい』
「変な敵?」
『うん、―――灰色のオーラを纏ったチ級がいるって……』
更にヤバい敵が、彼女たちに近づいてきていた。
「この程度じゃないわよね?」
「この程度じゃ私たちの渇きは抑えられない」
「さあ、もっと」
「もっと私たちに」
「「生きる実感を、殺す実感を寄越しなさい」」
突如、”つしま””こまごめ””つるみ”に警報音が発された。
「どうしたの!?」
「敵艦隊、更に接近。第二波、およそ40!」
「全戦力を投入したの!?」
『……出るぞ』
「ジャッカル大尉、危険すぎます!」
『問題無い―――何時ものことだ』
ジャッカル大尉は意味深なセリフを残し、通信を切った。
「大尉? 大尉!?」
「…ジャッカル大尉の出撃を許可します。明日香大尉」
「了解!―――叢雲、”つしま”の護衛、それ以外のことはしなくていいからね!?」
『了解!』
「更に少将権限でジャッカル大尉所属の第六駆逐隊の出撃を。雲龍?」
『了解。あまりしたくないけど……』
「ごめん。―――でも、ここで皆死ぬ訳にはいかないから」
『分かってるわ。天城は護衛として残しておく』
「お願い。…勝手な願いだけど、援軍が来るまで持ちこたえて」
有馬少将にとって苦渋の決断であった。現在、”つしま”に搭乗している艦娘の大部分が駆逐艦か、空母勢なのだ。戦艦の攻撃力を持っているメンバーは少なく、現在持っているのは神代中佐の榛名・扶桑。有馬少将のローマ・重巡の妙高ぐらいなのだ。そもそも航空戦力をベースに組み立てている為、戦艦等の打撃陣は全く入れてなかったのだ。―――それが、今になって最悪な事態になっている。
無論、駆逐艦のほかにも軽巡もいるが、駆逐艦同様、彼女らが本領発揮するのは主に夜戦。彼女たちの鎮守府では、昼ではあまり期待できないのが現状なのである。
「ジャッカル大尉! 敵は重巡をベースにした打撃艦隊です! 一発でも直撃したら即撤退を!」
『了解。―――ジャッカル・ツヴァイク。出るぞ』
「引き続き出撃を! 雲龍艦隊はジャッカル大尉のフォローを!」
「千歳、千代田! 艦攻・艦爆、全スロット使え! ボーキ何ぞ気にすんな! 思う存分やってやれ!」
『了解。―――さてっと、出来る限りの援護をしないとね』
『お姉。無理しちゃだめだよ?』
『お姉ちゃんだもの。お姉ちゃんが頑張らなきゃ、ね』
―――現戦力での防衛戦が始まった。
「先ず先方は…三体か」
ジャッカル大尉は、他の人間と比べ違うところがある。それは―――艦娘の性能を持っているという能力だ。
今ではその外道な研究をやらかした研究所は”消滅”したが、そこから逃げ出したジャッカルを元帥が保護、今では元帥直属として活躍するほどの実力を持っている。
―――無論、触れてはならない闇の部分にも。
ジャッカルは腰に下げていた
「―――先ずは、貴様からだ」
目の前の重巡リ級に散弾をぶちまけた。
散弾で頭がザクロみたいにグシャグシャになったのを見た敵は、敵討ちだといわんばかりに砲撃を繰り返す。しかし、ジャッカルが頭を吹っ飛ばした敵を、ミートシールドにして攻撃を凌いでいた。
そして、敵の攻撃が収まったのと同時に敵に接近、そして
「二体目」
後ろの腰に吊るしてあった、
「三体目」
二本目をリ級の頭に投げ刺した。この光景を見た残りの敵は逃げようとしたが、
「遅い」
三体纏めて首を刈られた。
「……ここから先は通さん」
「ジャッカル大尉、リ級艦隊を撃滅!」
「早い!? あれが、ジャッカル大尉の力ということなの…!?」
”つしま”のCIC内では、ジャッカル大尉の脅威の殲滅に驚いていた。それはそうだろう、生身の人間が深海棲艦を倒しきっているのだから。
しかし、これを見た神代中佐は顔を暗くした。
「(俺にも…あれぐらいの、いや、せめて海上に立てることが出来れば……
陸限定とはいえ、生身で軍刀でハ級を叩き斬り無力化したほどの実力者だからこその願望なのだろう。
実際は、彼専用のパワードスーツを所有しているが、先ほどの戦闘でシステムエラーが発生し出撃できず、現在整備員が急ピッチで整備している。
だからこそ、彼は焦る。
「(頼む…早く、早く整備が終わってくれ……!!)」
しかし、彼の願いは神様には届かなかった。
『お姉ッ! しっかりして、お願いッ!』
「! どうした!?」
『敵増援、
「どうした!? おい…おい!?」
「どうしました!?」
「敵増援、ゾディアックの攻撃で千歳被弾!」
「…拙い、救援にも行けない……!」
「クッ…! 整備員、まだ終わらないのか!?」
『待ってください、システムが完全にバグってて直すのに最低でも五分かかります!』
「もっと早くできないのか!」
『無茶言わんで下さい!?』
「糞ッ!」
神代中佐は、壁を拳で殴った。その時である。
「レーダーに感! 数は……三! 援軍です!」
「ふざけんな! そんな数でどうにかできるはずが……!!」
「待ってください! 音速で接近する物体を確認! 個体名”迅雷”です!」
『―――すまない、レ級の群れに手こずった! 救援に入る!!』
―――漸く、援軍が到着したのである。
「通信が…!」
「これで、貴方達に援軍は来れなくなったわね?」
「まあ、通信機が壊れようが壊れまいが、援軍は来ないでしょうけど」
千代田は考えていた。
「(どうする!? このまま交戦しても、勝ち目はない。でも、
それに、千歳お姉の被害も大きい…なら)」
「一応言っておくけど、君が艦載機を発艦させるよりも早く、私たちの魚雷が襲い掛かるよ」
「それでもいいなら、止めないけど」
「―――馬鹿にしないでくれる?」
千代田は艦載機を出すための吊り手を固く握った。血が出るほどに。
「魚雷が怖くて―――」
そして、後ろに載せていた
「空母がやれるかぁ!!」
「無駄だって」
「わからないの?」
艦載機を出そうとする前に、チ級フラの二体が魚雷を発射した。しかし、
「舐めないで!」
寸でのところで回避に成功。片手で千歳を回収し交戦しようとしたところだった。
空から声がするのだ。
「ホォアァァァァァァ―――」
その声はどんどん大きくなり、そして、
「チョオオオオオオオォォォォォッッッ!!!!!」
左にいたチ級にぶち当たった。
「なぁっ!?」
「キャアアア!?」
着弾と同時にドデカい水柱が起き、右のチ級がその衝撃で水切りのようにバウンドしていた。
そこに彩雲が低空飛行で突っ込んできた。
彩雲に掴まった男が言った一言目が、
「いってええええええええ!? 固ッ!? ビックリするほど固ッ!!」
―――
「ビックリはしましたが、右腕を犠牲にすれば何ともありません」
水柱がおさまり、そこに立っていたのは、右腕が無くなっていたチ級であった。
「それでいいんだよ。師匠が来るまでの時間稼ぎだったんだから」
「時間稼ぎ?」
「―――こういうことだ」
突如、チ級のいた場所が爆ぜた。
「チッ!」
しかし、相手もさること。この攻撃をギリギリで回避。そして直ぐにもう一体のチ級が合流した。
「糞ッさっきので仕留めておきたかったんだがな……!
そこの千歳姉妹! ここは俺が引き受けた! とっとと下がれ!」
「何言ってんの!? 無理に決まってんじゃない!」
「阿呆! お前の姉を守りながらは無理っつってんだ! いいから下がれ!」
「……分かった。後でお礼するから、無事でいてよ!!」
千代田は千歳を肩で担ぎ、そのまま戦線を離脱した。
「さあ。―――いざ、参る!!」
”無明”を構え、提督は敵に突っ込んでいった。
「二十体目…!」
ジャッカルが交戦し始めて30分が経過。航空支援と魚雷支援のお蔭でどうにかここまで減らせたが、彼にも疲労が見え始めた。
『提督! 引いてほしいなのです! もうこれ以上は……!』
『そうよ! あとは雲龍さんがやってくれるって…』
「そうか……」
ジャッカルがその通信を受けて、後退しようとした瞬間だった。
『敵、更に増援! 駆逐イ級後期フラだと思われます!数、20』
『そんな……!?』
「…俺のことは気にするな」
『提督!?』
『……いいんですね?』
「構わん」
『分かりました。なるべく急ぎますので、それまで耐えてください』
『雲龍さん!?』
『無茶だ、疲れている状態で重巡十体を相手するのは自殺行為―――』
「大丈夫だ」
『提督……』
「…俺を信じろ」
『……分かったわ。直ぐに、直ぐに戻るから!』
暁が涙声で通信を切り、接近中のイ級の撃破に向かった。
「さて」
ジャッカルが息を大きく吸い、吐き出し、吸い、吐き出しを繰り返し、息を整えた。
「…行くぞ」
弾切れの
「本日二度目のぉぉぉぉぉぉ―――」
そう、またあいつである。
「ホアッチャーーーーーーーーー!!!!!」
今度は三体纏めてブルズアイ!に仕留めていた。
「チィィッス! 間宮のお菓子のお届け(強襲)でーっす!」
「………」
「ちょ!? 無言で剣を構えんの止めて!?」
シリアスな空気を蹴り壊したら誰だって警戒する。
「そ、そんなことより貴方に朗報! 駆逐艦にも救援が向かってきているから安心してくれ!
そして、もう直ぐ師匠から貴方にプレゼントだ」
「……贈り物?」
「そう!―――お、来たな」
豊能が大空を見上げると、あるものが降ってきた。
ジャッカルがそれを掴む。
「……これは、メイスか」
「特殊ギミック付のが付くみたいだけどな」
そう喋っていると、リ級から砲弾が飛んできた。
「げえ!?」
「………掴まっていろ」
ジャッカルが早速貰ったメイスを、振った。
砲弾が面白いぐらいにメイスに叩き落とされる。
「…成程。いい武器だ」
「あー…ごめんけどお願いが……」
「…何だ?」
「上空に俺を飛ばして」
「分かった」
そう言うや否や、豊能の襟を掴んで、
「―――ヌオオオリャアアアアアッ!」
「予想外のパワーだぁぁぁぁぁぁ……」
上空目掛けてブン投げた。その後直ぐに彩雲が再び回収、再び大空へと戻っていった。
「………」
ジャッカルはその姿を確認した後、
「さて―――行くぞ」
メイスを握り、敵に躍りかかったのだった。
今回で残ったフラグ? 後篇で回収するから待ってて下さいお願いします(焼き土下座
という訳で、ちょっと設定がおかしくなった部分もあるかもしれません。(特に豊能らへんとか……)
なので、「ちょっとこここういう風に変えて下さい」という要望がございましたらメッセージを飛ばしてくれると有難いです。
誤字脱字、その他ございましたら感想欄にお願いします。
作者は感想文が出るたびに喜びます。
クリスマスなんて…クリスマスなんて……ッ!!(彼女いない男の叫び)