「んー、言ってもいいけど…何で?」
「いえ、さっきの話があまりにもヘビーだったので…」
青葉の質問に首をかしげながら聞き返していた有馬だったが、青葉の少し青ざめた顔を見て「まあ、良いかな」と言い、質問に答えた。
「私が吉川君に恋をしたのは、さっき言ってたけど変態に付きまとわれたときかなー。それまでは仲のいい友達ぐらいにしか見てなかったし、恋心が芽生えるとは思ってなかったんだよね」
日本酒をチビチビ飲みながら、恥ずかしそうに言った。
「あの変態はしつこかった。何度も何度も。一度女性トイレにまで入ろうとしてたし」
「おい、それは初耳だぞ」
「言ってなかったからね。皆に心配をかけたくなかったし」
今考えてみれば相談すれば良かったね、と苦い顔で言った。
「でも、吉川君はそいつから何度も私を守ってくれた。私も武術には自信はあるけど、男性に比べると力も無かったし、何よりそいつ自身も海軍仕込みの格闘術を覚えていてね。何度か襲われそうになったけど、彼が睨みを利かせてくれたおかげで奴も手が出せなかったんだ」
「…別に大したことはしてないさ」
「そう言いながらあのバカの一挙手一投足、用心深く見てたのはどこの誰だったかねぇ?」
「テメーは黙ってようか?」
「手をパキパキ言わせながら威圧するのはやめてください怖いです…」
「ったく雉も鳴かずば撃たれまいに…」
「話を元に戻していいかな?」
「「イエス、マム!」」
顔は笑っているが目が笑ってないのを確認した二人はすぐに彼女に敬礼した。
…彼女の顔が真っ赤だったので効果は半減していたが。
「夜中に帰る道にもあの変態はいたからね。そのまま帰ったら危ないという事でこの二人が行ったんだよ」
「そしたら変態が包丁持って暴れまわっているのを見たと」
「うん。あのまま帰ったらどうなっていたか、今考えてもぞっとする。村上君は今でこそ体術がそこら辺の軍人より強かったけど、当時はそこまで強くなかったから、吉川君一人で押さえられるのか心配だった」
「…当時じゃ俺が一番弱かったしなぁ」
「今は違うんだろ?問題ないさ」
「そしたら、あっという間に押さえたからビックリ。でも、腕に血が付いてるのを見たとき、物凄い不安に襲われた。気が付いたら、彼の腕をつかみ、怪我がないかみてみたわ。…結果それが変態のだった時はほっとしたよ」
「あんな破れかぶれの攻撃、当たってたまるかっての」
「普通はそれが難しいのよ?破れかぶれの攻撃って見極めるの難しいし」
お酒を飲みながらかのせいか、三人の顔は真っ赤であった。
「まあ、そこからはさっき聞いた通り、憲兵が来てそいつを連行していったわ。でもこれで終わったわけじゃなかった」
「それがあの鬼の話に繋がる、ということか」
「背後から暴徒鎮圧用のテイザーガンでやられたからね。気が付いたら手足を縛られていた。それからは酷かったわ、無理やりキスするわ、殴りつけてくるわ、最後には私を犯そうとしてたもの」
「…そんなことまでされていたのか」
悲痛な顔で聞いていた提督であったが
「でも、その最後のギリギリで貴方は間に合ってくれた。私にはそれが嬉しかったわ」
とにっこり笑っていた。
「でも、そいつを殴り飛ばした後私を助けようとしてくれたけど、彼も私に危害を加えるんじゃないか、そういう風に考えてしまったの」
「だがそれは···」
「仕方の無い事かもしれない。でも助けてくれたのにそんなことを考えてしまったのも事実だよ。暴れてたりしてたしね」
「でも彼はそんな私を助けてくれた。落ち着くまで抱きしめて『大丈夫だ。もう大丈夫だから』と言ってね」
「落ち着いた後、急いで逃げようとしたけどそのとき彼が『伏せろッ!』と言ってド突いた。その時だった。銃声が聴こえたのは」
「彼を見てみたら地面に倒れかけてたわ。服もあっという間に血で真っ赤になり、地面にも血がポタポタと落ちていた」
「でも、彼は倒れなかった。彼が見ている先を見れば、地面に倒れていたはずのソイツが拳銃を彼に向けていた」
「彼に拳銃を向けながらソイツは言った」
「あの発言だな」
「あの時、私は彼を助けようとした。もしかしたら、不意をつけば奴が持っている拳銃を奪えるかもと。そうしようと行動に移す前に彼が動いた」
「獣のような叫び声をあげながら、拳銃を持っている腕をへし折り、その後膝を足で叩き折った」
「壁に叩きつけて、凄まじい殺気を出しながら拳を握ったのを見たとき、私は彼を止めたの」
「············」
「彼に殺人を犯して欲しくなかったから。ただその一心で」
「その思いが届いたのか、そいつを地面に落として彼はそのまま倒れたわ。その時よ、村上君と憲兵、そして医師が入ってきたのは」
「失血が多くて助かるかどうか分からない、と医師から言われたとき、視界が一瞬で灰色になったわ。女性憲兵から色々聞かれたけど、全く覚えてない。気が付けば彼が寝ているベッドの横にいたわ」
「彼が意識を取り戻すまで五日掛かった。その間私は彼が意識を取り戻すまで、祈りもしない神に祈ったわ。彼をどうか助けて、と」
「意識を取り戻した時、私は泣いて喜んだわ。今思ったら恥ずかしすぎてドン引きするぐらいね」その時かな。私が彼に恋してるのを自覚したのは。···少し真面目に喋っちゃったねー」
恥ずかしそうに、でも嬉しそうな顔をしながら彼女は言った。
一方提督はと言うと
「·········」
「うっは、すげえ顔が真っ赤だブべラッ」
「余計な事は言わんでいいッ」
「ア"ダダダダッ!?」
村上の顔をアイアンクローのようにギリギリとかましていた。
「···提督ってもしかしてタラシなんですかね?」
「もしかしなくてもタラシじゃないかな。あでも当時浮いた話も無かったし違うのかも?」
「今だったら増えそうですね。···無自覚みたいですし」
「ということは告白したんデスカー?」
「いや、してないんだー」
「「「···え?」」」
「告白すると、そのまま彼に依存しそうだったからねー。告白するのは全てが終わった後にしようかなと」
「···その問題って何ですか?」
「それはナーイショってね」
その後は彼の話を肴にしながら六人で飲みあってたのだった。
その後、夜明けが近くなったので「ここらでお開きにしようか?」と言って潰れている加賀と金剛を背中にしょって店を出た。
「全く、酔いつぶれるまで飲んでどうすんだ」
「手伝いましょっか?」
提督の横を歩いていた青葉が聞いてきた。
「···頼めるか?」
「頼まれましたー。では加賀さんはお任せください」
「頼む」
加賀を青葉に任せて一緒に鎮守府まで歩いていると
「···提督」
「何だい?」
「楽しかったですか?」
「?ああ、楽しかったが」
「次も参加していいですか?」
「あー、···どうだろ。二人がオーケーしてればいいけど」
「あ、ソコんところは大丈夫です。アドレス交換しましたし」
「いつの間にしたんだ」
「因みに金剛さんや加賀さんもしましたよ?」
「早っ!?本当いつの間にしたんだ!?」
誰もいない道を歩きながら青葉と喋っていると
「こういう時間って無かったですねー」
「いきなりどうした」
「いや、こういう風に提督と喋りながら歩くことが、ですよ」
「···そういや無かったな」
「···もし嫌じゃなければ、時々青葉と一緒に歩きませんか?」
「そうだな。それもいいかもしれん」
気が付くと鎮守府に到着していた。
「じゃあ青葉は加賀を空母寮にお願いねー」
「はーい、それではまた」
青葉と別れ、戦艦寮に向かっていると
「何だ、貴様か」
「那智か。どうした、この時間に」
「何、早く起きたからその周辺をブラブラしていただけさ」
「そうか」
「···貴様、酒臭いぞ」
「さっきまで飲んでいたしな。後ひとつ頼みたいことがあるんだが」
「背中にしょっている金剛を戦艦寮に連れていって欲しい、だろう?」
「何故分かったし」
「伊達に貴様の艦隊に所属している訳じゃない、ということさ。では私がやっておこう」
「頼む」
金剛を那智に頼み、夜明けの太陽を見ながら提督は思った。
(この幸せな時間が、ずっと続くようにしないとな)
提督は新たにそう思った。
どうも、おはこんばんにちは。お芋侍です。
すみません、昨日はパソコンの調子が良くなかったので投稿できませんでした。
これでようやく六話が終わりました。長かった…。
しかし相変わらずの低クオリティ。もっと精進せねば。
明日から大学が始まりますので投稿が遅れます。
誤字脱字ございましたら感想欄にお願いいたします。
あ、それ以外でも大歓迎ですよー。