「そう言えばセイバーって聖杯に願う願望って何なんだ?」
スケルトン…俺がそう呼ぶ竜牙兵達による学校襲撃で遠坂とのこ競り合いは結局うやむやになり学校から下校途中にふとセイバーの願望を聞いてない事に気づいた俺は帰宅するとリビングにいたセイバーに問い開ける。
ソファーでテレビを見ながらポテチを食されていた騎士王様はお茶を飲みこんで口を開いた。
「私の願望…ですか?特にありません」
「あれ?いや、でも、ほら、ブリテンの滅びを変えたいとか無いの?」
アーサー王伝説。少しパラ読みした程度だがその結末はカムラン丘にて息子のモルドレッドとの一騎打ち。なんやかんやで結局ブリテン滅びちゃったんだが、この騎士王様はどうお考えなのだろうか?
「いえ、全く」
そうきっぱりと答える王様。
あれ?
「ブリテンが滅びたのは残念ですが、それも仕方ないこと。我が騎士や民草たちはよくやってくれたと思いますよ」
……あれ?益々おかしい事に成った。それじゃあ、セイバーは何のために戦っているのだろうか?女の子を戦場に立たせていては正義の味方の名が廃る。ここは是非ともその真意を聞いておかなければ
「えっと~、それじゃあ、セイバーは何のために戦っているんだ?」
「それはですね、ずばり聖杯が欲しいからですよ!士郎」
「……詳しく」
そこから聞いたセイバーの本音。
私はブリテンを治めた。マーリンっていうクソ野郎やモルガンっていうキチガイがいたけど私よくやったよね?少女時代のままで成長止まっちゃったし。
え、羨ましい?ふざけんなクソが!貧乳じゃん!!私もうちょっと胸大きくなるはずだったんですけど?
まあ、愚痴はともかく私よくやったよね?蛮族とかブリテンを守るために円卓の騎士達と頑張ったよ。たまにランスロットがなんか艶めかしい視線を向けてきたけど頑張ったんですけど。
特に願いとかないけれども、今の時代で言うならば退職金の代わりに聖杯貰っても罰は当たらないよね?ってか、寄越せ!というのが本人の弁。成程、確かに分からなくもない。
同僚から向けられるいやらしい視線、血を分けた子息との殺し合い。それは、女の子にとって余りにもひどい仕打ちであっただろう。
うん。だが、ここはセイバーに聖杯を譲ってもらおう。
特に聖杯に向けて叶える願いがないのならば交渉の余地はあるだろう。
「そうか、セイバーも大変だったな。俺の理解を超える苦労あったと思う。それは俺じゃなくセイバー自身が知っているはずだ。後世の人間がその人の苦労を知る事なんてできないと思う。そんなセイバーに鞭を打つようで悪いが、今回の聖杯戦争の聖杯を譲ってはくれないか?」
ここで彼女に剣を突き付けられても仕方ないだろう。
俺は彼女にそれだけの事をしただから。
首を刎ねられたとしてもそれは仕方のないことだろう。それらは甘んじて受け止めよう。
だが、そこにわずかな可能性があるのならばそれに賭けるべきだろう。
それは神が与えてくれたチャンスかもしれない。だが、俺はそのわずかな可能性に賭けたい!
「俺はキャスターが好きだ。いや、好きなどというレベルを超えて愛している」
「……」
「俺の愛は狂っているかもしれない。君を傷つけるかもしれない。だが、あえて言おう。俺は、令呪を使って彼女の願いを叶えるつもりだ。この思いは間違っていると思うか、セイバー?だが、俺はこうも思うんだ。惚れた女の願いすら叶えられないで何が正義の味方だと!俺の願いは正義の味方に成る事だ。けれども、正義の味方を名乗ろうとする人物が惚れた女の願い一つすら叶えられないで正義の味方は名乗れないと思うんだ!だから、セイバーに言うよ。俺はこの聖杯戦争を制して彼女の願望を叶えるつもりだし、セイバーに今願う願望がないならば、聖杯を俺達に譲ってくれないか?」
それは、命がけの交渉だっただろう。
他の魔術師達からみれば異質で異様な光景だっただろう。だが、それで良いのだ。
俺はキャスターの横に生涯魔術師として並び立つ事は出来ない。
だが、それでも出来ることはあると思う。世界に対しての最大の嫌がらせと衛宮士郎としての思惑が出来ると思う。それが、令呪を用いてのキャスターの願望を叶えることだ。
神代の魔術師であるキャスターならばうまい事出来そうだ。聖杯が汚染されいようがいまいが、どうでも良い。彼女の、惚れた女性の願いすら叶えられずに正義の味方は名乗ってられない。
それが、切嗣、爺さんとの約束。魔術刻印を継承するうえで交わした約束。
その内容とは、ただただ、自分の失敗した出来事を後世へと語り聞かせる事。その時の状況であれ、内容であろうとも、それを決めるのは自分達が決め、それが良くも悪くなろうとも一種の判断材料を残し伝えて行く事。それが、爺さん、衛宮切継から衛宮士郎に対しセルフギアスロールによる魔術刻印継承に対する対価であり、未来永劫伝えて行く契約である。
その内容は後世へと養っていく判断材料を培っていくものであり、魔術師という言わば研究職を理解し爺さんが俺の与えた唯一無二の試練。
その問いのセイバーは、
「解りました。我が剣は貴方に奉げると誓った」
「……それじゃあ!」
「聖杯を使う予定もありませんので」
そう言って微笑むセイバーは女神のような笑みを浮かべていた。
セイバーは元々息をのむ様な美人だ。女神の様な微笑みを浮かべるセイバーについつい見惚れてしまい、聖杯を譲ってくれると言ってくれたので俺はついつい嬉しくなってしまい、
「そうか、ありがとうセイバー」
そう言って思わずセイバーに抱き着いてしまった。
背中から突き刺さる視線を感じ、
「あ~、士郎がセイバーに浮気をしてる~」
「士郎、浮気?」
「お嬢様、見てはいけません」
そんな声を背中から浴びせられ急ぎセイバーから離れ声のする方向をみるとそこには、イリヤ姉とメイドのリズとセラがこちらを見ていた。
ってか、いつの間に……
「キャスターに言いつけてやるんだから」
そう言って颯爽と走っていなくなるイリヤ姉。
「お嬢様、お待ちください!」
その後を追いかけるセラ。
「士郎、浮気ダメ。良くない」
そう言い残してセラの後を追うリズ。
「……終った。俺の人生おわた」
がっくりと全身の力が抜け地面に四つん這いになる俺。
これでキャスターに嫌われたかもしれない。
俺の隣にキャスターの居ない世界なんて世界なんてもう、どうでも良い。
「どうしたのですか、士郎?」
「どうやら今回の聖杯戦争はもう俺達に勝ち目は無くなった。ってか、もう勝つ気が失せた」
キャスターに嫌われた世界なんてもうどうでも良いや。
地面に突っ伏した状態で悲嘆に暮れる。
「マジカル★アイリパーンチ」
「ガアッ」
突然の背後からの衝撃。
痛い。すごく痛い。死ぬほど痛い
「本当、あの子の悪戯にも困ったものよね~セイバー」
そして、俺の背中に乗る人物。
四つん這いで痛む頭を押さえながら視線を背中に向けるとそこにはアイリ母さんが俺の背中に座っていた。
母さんは俺の背中に座った状態でセイバーに指示を出す。
「ねえ、セイバー。キャスターを道場に呼んできてくれないかしら?」
「道場ですね、解りました」
そう言って俺と母さんの前から走り去るセイバー。速いな。
「さてと、士郎。キャスターちゃんが来たら貴方に少し説教をしないとね?」
母さんの美しい顔をこの時ばかりは直視できなかった。
「さあ、このあの人に似て女たらしのドンファンには肉体を交えたOSHIOKIが必要みたいね。フフ、腕がなるわ~」
「あ、ちょ、母さん!?」
爺さん、早く帰って来てくれ!!
俺は居ない爺さん、衛宮切嗣に助けを求めるが果たしてこの願いは爺さんに届くのだろうか……