士郎君は、メディアさんに恋をする   作:zeke

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復讐者

「―――っ!」

 

 痛みと共に俺は目を覚ました。

 眼を開けると共に見慣れた天井が現れる。上半身を起こし周囲を確認すると、見慣れた部屋に敷かれた布団の上に俺は寝かされていたみたいだ。

 

「起きたみたいね、マスター」

 

 布団の傍にはキャスターが正座した状態で待機しており俺を看病してくれていたみたいだ。

 

「ああ、すまない。あれからどの位時間が経った?」

 

「そうね、あなたがお義母様と修行を始めてかれこれ5時間位経過したかしらね」

 

 何!?それじゃあもう夜じゃないか!いかん、急いで夕食の準備をせねば!!

 

「あ、動いては――」

 

 布団から立ち上がろうとすると突然の激痛が全身に走る。

 グッ、何だよこれ!?

 

 痛みで体のバランスを崩してしまう。

 

 

「ッ!」

 

「キャッ!」

 

 その拍子でキャスターを巻き添えにした状態で部屋の畳に倒れ込む。

 俺の顔の数cmの距離にキャスターの顔があり、澄んだ海の様な蒼い瞳に綺麗な紫色の髪がローブの下から見え隠れする。神話時代に生きた元王女という事もあってその顔立ちは神秘を含んでおり、エルフ耳を抜きにしても人間離れした美しさがローブの下に隠されている。

 

 吸い込まれるようにキャスターの蒼い瞳を見つめているとキャスターの瞳も俺の眼を見ており俺は徐々に顔が赤くなっていく。

 

 突き刺さるような視線を背中越しで感じ、その視線元に視線を向けるとそこにはアイリ義母さんが障子から顔を半分だけ出した状態でこちらを見ていた。

 

「士郎、子作りは計画的にね!予防道具が必要なら購入するから!!」

 

 グッジョブと言わんばかりに親指を立ててこちらに良い笑顔を向けて障子から覗かせていた顔を引っ込める。

 

「ば、馬鹿!何言ってんだよ、義母さん!!」

 

 益々俺の顔が熱を帯びて真っ赤になる。

 見ればキャスターも顔を真っ赤にして俺から顔を背けている。

 

「ま、全く義母さんにも困ったもんだな。キャスター」

 

「え、ええ。ま、全くね!」

 

 満更でもないのだけれどもとキャスターから声が聞こえて気がしたけれども気のせいだろう。キャスターもこんなに顔を真っ赤にしているし……

 

 キャスターと互いに背を向けあい気まずい雰囲気が部屋の中に漂う。

 気まずい。非常に気まずい。

 

「なあ、キャスター。俺、一体どうしたんだ?体がすごく怠くて思うように体が動かないんだけれども」

 

「アイリ義母様が放ったあの技。最早魔法の領域よ。対象を同時に斬りつけるあの技、習得すればサーヴァントと互角に渡り合える筈よ。それと、あなたの体が痛いのはあなたが無意識の内に慣れない自身への強化魔術をして自分の魔力を殆ど使ったからよ。はい、これ。飲んどきなさい」

 

 そう言ってキャスターは何かの塊を俺に渡してくる。

 

「これは?」

 

「魔術結晶の欠片よ。これを飲めば少しだけれども貴方の魔力が回復するはずよ」

 

 そうか……って、ちょっと待て!

 そう言えばさっきなんか嫌な事を言われた気がするんだが……まあ、藪蛇をつつく必要はないだろう。うん。こういうのは聞かないが吉が正解だ。この前慎二に借りたゲームで出てきた選択だ。

 

「ありがとうキャスター。これで多少は動ける筈だ」

 

 渡された魔術結晶の欠片を飲むと俺の中で魔力となって魔力が少し回復する。おお、凄いなこれ。

 

「そう、動けるようになったのね。それじゃあ、もう一度アイリ義母様と戦ってあの技を習得するのよ」

 

何でだろう、なあ~バッドエンドの選択肢を選んだはずではないんだが……

 

「ちょっと待て、待ってくれキャスター!お前今何て言った!?アイリ義母さんと再戦だって!?あんな攻撃再び受けるなんて御免だぞ!それならバーサーカーとやりあう方が良いぞ!それに飯はどうするんだよ!」

 

「甘えた事を言わないでマスター!あなた、そんなんでこの聖杯戦争に勝てると思っているのかしら?それと、食事の心配ならば大丈夫よ。セラさんから、食事は私達アインツベルンのメイドが用意します。ええ、アインツベルンの名に懸けて今度こそあの忌々しい衛宮士郎をぎゃふんと言わせますのでご心配なくですって。マスター、あなた何をしたの?」

 

 クッソ!セラの奴、未だにあの事を根に持ってやがるのか!!もう時効じゃないのか!?いい加減許してくれても良い頃合いだと思うんだが。

 ってか、うちの嫁さん候補が何かどす黒いオーラを体から出してるんだが何故に!?

 

「セラにさ、事あるごとにアインツベルンの自慢されて比較されたんだよ。んでさ、少しばかりカチンと来ちゃってアインツベルンの城に行った時にセラに料理対決を申し込んだんだよ。そんなにアインツベルンが凄いんならば、是非とも庶民の俺を唸らせる絶品の料理を作って見せてくれって。そしたら、セラが良い機会ですからアインツベルンの実力を庶民の貴方に教えてさしあげますって、それで料理対決が始まったんだが審査員アインツベルンの城にいるホムンクルス全員。まあ、セラからしたら俺が如何に劣っているか風潮する良い機会だわな」

 

「……まさか」

 

 良かった~。嫁さん候補からどす黒いオーラが出てたんだがそれが消えた。

 キャスターが引きつった顔をしているが、まあそうだろうな。

 

「まあ、キャスターのお察しの通り結果はセラの惨敗。アインツベルンの汚点となったセラは衛宮士郎に復讐を誓い、復讐の機会を狙う復讐者となったのでした」

 

「それじゃあ、セラさんに命を狙われてるんじゃないの?」

 

「それはない。セラが負けたのは料理対決での事で俺を殺してしまえばセラは一生出来損ないメイドとして語り継がれる事に成る。セラが望むのは汚名返上であって俺の命ではない」

 

「そう、それじゃあアイリ義母様との再戦に支障は無いわね」

 

 し、しまった!ここでキャスターを心配させとけばアイリ義母さんとの再戦を回避できたかもしれなかったのに!くそ、またアイリ義母さんと戦わなければいけないのか…

 

「――解ったよ。お前と出会い、お前をこの聖杯戦争で勝たすと決めた俺の運命だ。俺も男だ。腹を決めるさ」

 

 何かキャスターの顔が赤くなっているが気のせいだろう。

 

「期待しているわよ、マスター」

 

 ああ思う存分期待しておいてくれ。俺はそれに答えるだけだ。

 正義の味方を名乗る男が惚れた女すら守れないなんて格好が悪いからな。

 

 さあ、正義の味方はまずは狂戦士すらも恐れるゴッドマザーを打ち負かして見せましょうかね。

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