好きなように書く艦これ小説~タウイタウイのうさぎ姫~ 作:はあしー
自分、タウイ鯖です。明石放置多いです。
この世界の俗にいう【妖精】とは固有の形を持たない少々特殊な生命体である。
遥かなる時の果て、在りし日の艦艇・兵装・人間などの思念の集まりだと認識され、しばしばこの世界の既存技術力をド外視したオーバースペックぶりを発揮する。
鉄の塊でしかない船に思念があるのか、宿るのか、という疑問は尽きないだろうが、あいにくここはそういう世界である。そういった要因が絡むのか、是非は分からないが一般人には【妖精】を視認することが出来ないらしい。
可愛らしいファンタジー要素を含み、尚且つ深海棲艦との長き戦いにおいて非常に有能である彼女たち(?)を艦隊司令部――提督達は「妖精さん」と親しみを込めて呼ぶ。
俺もそのうちの一人だ。
「妖精さん」にはパートナー、相棒とも呼べる者がいる。
艦娘だ。
第一羽:タイマン、ぴょん!
一見してシューズの様な推進機によって生まれる推力を得て、白波を切り裂きながら軽やかに水上を舞う姿はとても美しい、と思う。しかし、彼女の向かうべきところは休日の遊覧航行とは縁もなく色香のない只の戦場であった。
どこまでも続く蒼穹の地に女が立っている。
凛と佇み、何事かを思案する彼女には歴戦の戦士を思わせる確かな威厳が存在した。
百戦錬磨の覇気を纏う軍人。
しかし、彼女の見た目、顔つきは幼女と呼ぶべき愛らしい物であり、違和感によって二度見ないし三度見してしまうことだろう。
海面すれすれで風に吹かれ塩に侵されても尚輝きを放つボリューミーな真紅の長髪に艦名を模した物なのか、三日月を象るヘアピンと、しなやかに一房を縛る紐。ウサギのぬいぐるみの様な物で腿まで伸びたそれを纏めあげている。
そんな、幼女趣味丸出し全開である幼女――睦月型駆逐艦四番艦である卯月は「これはやばいぴょん・・・」と太平洋へと続く暁の水平線に浮かんだ「謎の」と形容すべき漆黒の影に目を細め一人ごちた。
画的にどうだろう・・・?と思考するくらいには鉄の塊でしかないそれを全身に装着した彼女は所謂艦娘と呼ばれる特異な存在である。
艦娘とは【妖精】と【人】の中間的存在だろうと文献という歴史語りにより当たりをつけられている。
その点では彼女達と触れ合い、多くの戦地を背中合わせで生き抜いて来た彼女達直属の上司である司令官――提督と似通った考え方であった。
艦娘は艤装と呼ばれる艦艇の兵装を模した兵器をその身に纏い海面を駆ける。
鎮守府正面海域、1-1と呼称される海域は鎮守府ないし警備府・基地・泊地正面に広がる大海原のすぐ近く。やや沖に出た辺りのことを言う。
正面海域ということもって勢力分布的に艦娘に利があり、付近に出現する宿敵――深海棲艦は駆逐イ級(下位クラス)のみ確認されていることもあって攻略は容易(イージー)である。
無限にも等しい数の鋼鉄の原子をひたすらに押し固めた大戦艦の横っ腹にすら大穴をブチ開けてくる重雷装巡洋艦だとか。
火力任せの大口径砲から繰り出されるふざけた一撃は紙装甲でしかない駆逐艦には掠めるどころか爆風を受けた時点でアウト。一瞬にして人類を超えるオーバーテクノロジー兵器がおしゃかになったりだとか。
そういった事には成りえない。しかし、得てして例外は存在するわけで――
それは睦月型駆逐艦、卯月が1-1海域の警備の最中のことだ。
深海棲艦特有の黒霧のオーラを漂わせている人型の何か。その姿形を捉えた。
( ――あれは16インチ連装砲ぴょん・・・? )
駆逐艦としての本能が、冷静なれと命令する思考に反してぬめり・・・と恐怖を与える。
それ自体が何人もの艦娘の命を葬ってきた憎たらしい超大な砲であると同時に強靭な盾であった。睦月型の主兵装である12センチ単装砲がどれだけ荒ぶろうと頼りないだろう。恐らく傷一つつかない。
刃物が頬を掠めるほどの鋭利な緊張感を放つ毒々しい真っ黄色の粒子が人型の何かから溢れ出し、卯月の警戒レベルは既に振り切れていた。
「戦艦ル級フラグシップ」
徐々に荒くなる吐息の後に言葉を紡いだ。
(なんで1-1にフラルが・・・はぁ。意味わかんないぴょん・・・)
卯月に限らず艦娘達の覚えではフラルがいるのはありえない。という考えだ。
そもそもなぜ鎮守府正面海域で駆逐イ級が闊歩しているか。一口にそれは捨て身の敵情偵察だろう。
特型駆逐艦以降の駆逐艦は長距離、つまり遠洋航海が可能になりその性能は在りし日の世界を震撼させたという。搭載している酸素魚雷は隠密性に秀でており、それでいて大火力だ。駆逐艦は量産しやすいという性質も併せ持つので捨て駒、所謂捨て艦としては非常に有益である。道徳を無視するということなら、だが・・・。
(とにかく今はコイツをどうにかしなきゃ)
既に卯月はフラルの狂気に支配された16インチ砲の射程範囲だ。
戦艦の砲撃はリーチが極大であるのに対し駆逐艦の矮小な砲弾はめっぽう届かない。この位置からなら尚更。
しかし戦艦の砲撃にも弱点は存在する。それは距離を詰められたときだ。
あまりに長すぎるリーチはそう都合よく目の前の兎に命中させることはできない。そこが絶大な火力を有する大口径の死角だ。卯月はそこを突こう、と瞬時に思案。
経験の浅い者ならビビって逃げてしまうかもしれないが、それは愚策だ。
コイツに背中を向けた瞬間砲撃のシャワーが降ってくる。
とすると尻尾を巻いて逃げる選択肢は破棄。
なによりそんなことは卯月のプライドが許さない。
元来駆逐艦は体躯は巡洋艦と比べ小さい傾向にあるが、獣の如き闘志、戦いに対する貪欲さはどの艦よりも強い。
あの兎を目の前にした虎の様な、如何にも私が狩猟者であり獲物を喰らうハンターなのだ!という確固たる自信を粉々にしてやる。
――もしも兎が虎を喰い殺す世界があるとすればどうだろうか。
「おもしろいぴょん」
そんなことなど露知らず。
盾とも砲台ともいえる表面が漆がかった砲身をフラルは自分の獲物へと照準を合わせながら。
深海へ飲み込まれそうな薄気味悪い微笑を浮かべて。
16インチ砲が開戦の狼煙をあげる。
戦艦VS駆逐艦。
交戦開始だ。
直後、卯月は自身に装備された天津風より借り受けた新型高温高圧缶とタービンを全開まで機動させ、熱を上げる。之字運動を開始。睦月型は他の駆逐艦と比べると装甲は最低クラスである。それこそフラルの砲撃を直撃でもしたものなら海のもずくの如く。紙のように。それだけは避けねばならない。
しかし睦月型はこと回避においては、はっやーいはやーいと定評のある島風を除きナンバーワンである。そして、卯月は自身の膨大な戦闘経験から回避に対しての理解が誰よりも深く、技(わざ)は業(わざ)と呼べるほどの達人の域にまで達している。
ドカン!と放出された弾丸は卯月を狙ったものであるが僅かに斜め右後方に着弾。
それを極限まで鍛え抜かれた体術と体重移動により、まるで兎の様に。
紫煙吹く16インチの爆風をまるで追い風を受けるが如く、衝撃(インパクト)の瞬間に寸分の狂いもない推力操作によりぴょん!ぴょん!というコミカルな擬音と共に飛び跳ねた卯月は衝撃を殺しつつも、爆風を利用し自身を加速させた。
駆ける真紅の髪がサラサラと波うち煌く姿は戦場の女神のようだ。
練度を上げるほど艤装と艦娘の親和性が高まるということは艦娘達の間では常識だが、並外れた練度の艦娘が披露する身のこなしというのは常軌を逸脱している。並大抵の艦娘では不可能だ。
砲身の操作、フラルの瞳孔が指す視線や筋肉の絶妙な収縮から卯月はフラルの次の砲撃地点を予測。
ふざけた動き、可愛らしい仕草で凶弾を回避しているがその動きは未来予知に等しい絶対なる見切りの元生まれた回避運動であった。
勢い衰えず僅か数秒で16インチ砲の射程を潰しきった卯月に驚愕のあまり目を見開くフラル。その瞳には先程までの狂気ではなく焦りの色が伺えた。
だがもう遅い。
姿勢を低くして海面を高速航行する卯月には16インチ砲では反撃することすら出来ない。砲撃は卯月を置き去りにして明後日の方向まで伸びる。
フラルの兵装は大口径の主砲と電探のみであり、そこには絶対に獲物を殺すという凶悪な意思しか宿らない。皮肉なことにその狂気が自分に返ってくる。
この位置からでは卯月は狙えない。
卯月は魚雷管を駆動させる。
グイィンという作動音と共に61センチ三連装酸素魚雷を斉射し水中を疾走させた。
放たれた魚雷は酸素を吐き出しながらほんの少しだけ白みのある雷跡痕を残す。それでも一般の魚雷と比較すると素晴らしい隠密性を誇るだろう。だが、今この瞬間においてそれは必要ない。
「くらえぴょん!」
幼女らしい明るくも可愛らしいとろけるような声音を精一杯にして張り上げる卯月。
長髪を纏めるあげるウサギが可愛らしく微笑んだ気がした。
整合性を求め、努力の果てに極限まで精密化された魚雷の強化攻撃にフラルは断末魔を上げる他なかった。
遊びで書いたので次はいつになるかは私にも分からない・・・。
以下卯月ステータス
<泊地所属艦娘提督所見>
卯月改 LV150
○新型高温高圧缶
○新型高温高圧缶
○61センチ三連酸素魚雷
運59