今回は久しぶりに書きました。最近は短編を書いては友達の漫画の原案を作ったりしていました。
ここまで来ていただきありがとうございます。ここから先は作者の私でも展開が予想できない物語。読むならば心して…ww
「…てね。お…。みん…いを」
薄れゆく意識の中で、少女声が繰り返し聞こえた。何を言っていたのか、誰が言ったのか。今となっては分からない。ただ、分かるのはこの言葉は自分に向けられたもので、とても大切な一言で、その少女がこの上なく幸せそうな顔をしていたということだけだ。
◇
「…!…すか!大丈夫ですか!」
なんどその声を聞いただろうか。体が何度も揺すられる感覚と、耳元で聞こえる大きな声で私は暗く、重い夢から脱出した。薄っすらと目を開けてみると、目の前に広がっていたのは、満天の星空ではなく、心配そうに私を見ている二人の少女であった。
服装は制服。恐らく中学生か高校生だろう。少しばかり大人びて見える髪の長い少女は恐らく私と同い年ぐらいだろうか。私はまだはっきりしない意識の中、ぼんやりとそんなことを考えていた。
「よかった!黄泉!この人意識が戻ったよ!」
「…あなた、今までのこと覚えていますか?」
髪の短い少女の嬉しそうな声とは裏腹に、髪の長い少女は静かに、しかしまるで警察署での尋問をされているかのような有無を言わさぬ凄みがあった。
「今までの、こと…」
そういえば、少しばかり硝煙の様な臭いがする。近くで戦闘でもあったのだろうか。何と?硝煙の臭いが大気中にこれ程漂っているということは、それだけ切迫した戦闘だったということだろうか。
辺りを見回せば、誰も通りかからなそうな道路である。こんなところで戦闘があっても周りに被害は出ないだろう。
しかし、どうして私はこんなところにいるのだろうか。自分が気を失っていたという記憶はあるが、どうして記憶を失ったのかということは分からない。いや、そもそも…
「私は…誰だ?」
「「え?」」
私の呟きに二人の少女は声を揃えて言った。それもその筈だ。いきなり初対面の人間が自分が誰なのかと聞くのだ。いや、初対面かは実際私には分からない。もしかしたら、過去に会っていたかもしれない。しかしこうなってしまった以上、確認の仕様がないが。
私には、どうしてここいるのか。そもそもなぜ私が硝煙の臭いから“戦闘”などという危険な考えに至ったのか。まったく見当がつかなかった。記憶を失う前は、そういうことを行う職業にでも就いていたのだろうか。
「もしかして記憶喪失ってやつ?黄泉…」
「かもしれないね。…仕方ない。少し私たちと同行して貰えますか?医者も完備してある施設にご案内しますから。身分証明…」
困り果てた様に、黄泉と呼ばれた髪の長い少女が言った言葉を半分も私は聞き取ることが出来なかった。
「鳴神!」
目を覚ました時から微かに気付いていたのだ。空気中を漂うその臭いを、私は無意識のうちに頭の中から除外していた。だが、黄泉というらしい少女の服に付着していた小さな赤い染みを見つけたとき、除外していたものは突如として舞い戻り、私の意識を白く塗りつぶした。
なぜこんな過剰反応を起こしたのかは分からない。ただ単に赤い染みに恐怖した訳ではなく、体に染みついた何かが、私の脳に直接警告を鳴らしたようだった。
私が叫ぶと、どこからか刀が私の手元に飛んできて、束の部分が自然と手の中に納まった。その事に内心驚きながらも、そのまま『鳴神』の鞘を外し、先ほどの少女達に切っ先を少しもブラさずに向け続けた。
刀を握った記憶が無い私が、ここまで完璧に鳴神を構えられたということは、やはり戦闘職種かなにかだったのか。しかし鳴神を抜いた私は、先ほどまで彼女達に抱いていなかった憎しみと警戒がありありと滲み出してた。
刀を向けてから始めて、二人が刀を持っていることに気づいたくらいだ。普通なら、こちらを先に見て警戒するのだろうが、私の場合先程の言葉の方が警戒の優先順位は高かったようだ。
なぜ、ここまで私が自分自身について客観的になれるかと言えば、記憶が無いためなのかもしれない。体が勝手に動くのに逆らえない為に、思考と行動が分離したためとも言ってもいい。
しかしいきなり刀の切っ先を向けられた側としては、警戒心を私以上に抱いていた。それもそのはず。保護しようと思った対象にいきなり警戒心剥き出しで、刀を抜かれたとあらば、そちら側も警戒をせざるを得ない。
「!何?どうしたの?」
「記憶の混乱かしらね。それとも、身分がバレると不味いことでもあるのか」
しかし二人の少女たちは刀を抜こうとはしなかった。
「貴様ら、何者だ?名乗らねば、敵と見なし、斬る」
自分でも驚くほど低く、冷徹な声だった。依然として、刀をブラさず構え続ける私に対して、何かを感じ取ったらしい、髪の長い少女は隣の髪の短い少女に刀を置くように指示し、自らも足元に刀を置いた。
戦闘の意思はない。そういうことだろう。しかし、私は警戒を解くことが出来なかった。もし、私が『鳴神』を下ろした途端に、刀を拾って斬りかかって来たら?そう思うと私は刀を下ろすことはもちろん、微動だにすることも出来なかった。どうして私はここまで頑なに、少女たちに対して敵意を向けるのか。
分からないことばかりだ。
「名乗らなかったのは、申し訳なかったと思っているわ。私たちは環境省超自然災害対策室。悪霊を狩る専門家よ。私は、退魔師の諌山黄泉。でこっちが退魔師見習いの土宮神楽よ」
髪の短い少女が少し怪訝そうなのは“見習い”を退魔師の後ろに着けられたからだろう。しかし、ここで反論しては、緊張が切れて何を仕出かすか分からない、記憶喪失少女がいるために、反論は飲み込んだようだった。
「環境省!?…退、魔師…っぐ!」
聞いた事柄を整理し、返答しようと思った矢先、激しい痛みが頭を襲い、私はまたあの暗闇の中に引きづりこまれた。だが、“退魔師”その単語を聞いたとき、一瞬安堵のようなものを抱いた様な気がした。
◇
私、諌山黄泉が自らの素姓を明かした途端、目の前の少女は再び地に伏した。
まったく何だというのだ。記憶喪失かと思えば、いきなり刀を構えて敵意をぶつけてくるし。あの殺意は一般市民の出せるものではない。黄泉は直感でそう思った。
あれは間違いなく、実戦を経験し、『死』というものを少なくとも、どういうものであるかを知っている目だった。
そして叫んだ途端に飛んできた刀。たしか『鳴神』と言っただろうか。少女が叫ぶとどこからともなく飛んできた。あれは恐らく退魔刀だ。あれから流れ出す霊力は途轍もない量だった。刀自体にも霊力は当然あるが、その量は使い手によって左右される。
つまり、刀を強くするか弱くするかは、刀鍛冶を離れ、使い手に渡った時点から、常に退魔刀の使い手である退魔師に譲渡されるのである。
すなわち、この目の前で気を失っている少女もまた、途轍もない霊力の持ち主ということになる。もしかしたら、私、いや神楽よりも上かもしれない。だとしたら、この少女をこんな、人も通らない場所にほおって置くことなど、到底出来ない。
「黄泉、どうする?」
神楽が不安そうに聞いてきたが、その答えは既に神楽自身も分かっていることだろう。ただ、一応確認したかったのだろう。
「もちろん、連れて帰るわよ。対策室に。こんなところに放置していったら、いつ悪霊が喰らうか分からないし、それに…」
黄泉はもう一度、倒れている少女を一瞥して言った。
「この人が持っている霊力は半端じゃない。もしかしたら、前室長よりも上かも」
「げっ!あの人以上になったら、人間白叡じゃん…でも、霊力の量だけじゃなくて、あの刀も多分そうとうレアものだと思う」
しばしの時間二人でこの記憶喪失の筈なのに、色々おかしい部分を持っていて、正直敵なのではないかと思案しかねないこの少女を、どうしようかと散々議論したが、結局は対策室に連れて帰って事情聴取及び、誓約書を書いてもらうという方向で一致した。
しかし問題はその連れて帰る方法である。少女一人といえど、先ほどの戦闘でただでさえ消耗している体力で、人を運ぶというのは大変困難だた。
「しょうがない、人を呼ぼう。私たちだけじゃ人一人を背負って帰るには、遠いよ。本拠地は。そこからは車で対策室まで運べるけど」
「乱紅蓮に乗せて行けば?」
神楽は黄泉の獅子王を見ながらそう言ったが、その考えは素早く黄泉によって却下された。
「振動が大きいわよ。もし途中で気がついて、さっきみたいに刀向けられたらどうする?今度こそ、 逃げ場無いわよ」
「誰かに運んでもらうんだったら、その人も危ないんじゃ…」
「うちの対策室メンバーは刀首筋に当てられたぐらいで動揺しないわよ。それにおぶらせるのは、飯綱以外にするから、安全でしょ?」
確かに、飯綱にこの少女をまかせるのは、違う意味で危険な気がするが。
「ん〜黄泉。それ、少し質問とはずれてるような…」
「細かいことは気にしない!ほら、一騎に無線いれて!」
その後細かい説明をした後、対策室メンバーの誰が危険人物を運ぶかで、かなり揉めたというのは、余談である。
さて、一話どうでしたでしょうか。
長ったらしくて申し訳ありません(ーー;)修行します
原作のレールを壊さないように、でもしっかりオリキャラには活躍していただこうと思います。オリキャラの名前ですが、次回明らかになりますので、ご容赦ください
では、また次回お会い出来ることを祈って
ご意見、ご感想お待ちしております