行き場を無くした雷   作:四季乃

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前回の投稿から、二週間程度が経過してしまいました。
一週間に一話という目標だったのですが…
これからは頑張ります。

さて、今回はアクションが多いです。そして、秋の秘密が少しだけ明らかに!?

黄泉たちが手も足も出ない骨鯨。秋はどう戦うのでしょう?


第十二話

side:秋

 

もう少しで待ち合わせの時間だった。少し前に爆発音が聞こえたから、戦闘が始まったのだろう。

 

「いよいよですね」

 

「気楽に行けよ。サポートは任せろ!」

 

桜庭はガッツポーズを作りながら、言った。

 

私はそれに笑顔で頷く。

 

黄泉たちが作ってくれた時間で、だいぶ集中出来た。今頃、室長のおかげで日本海沿岸には停電が起こっても大丈夫なように、手を回してくれているはずだ。

 

何も心配することはない。自分が持ち得る最高の雷をお見舞いしてやればいい。未だ思い出せない自分の居場所よりも、今の居場所。この対策室のメンバーとして、最善を尽くそう。

 

前方でさらに大きな爆発音が聞こえた。おそらく黄泉たちだろう。

 

だが、白い煙が見えるだけで、一向に黄泉たちの船が近づいてくる気配がない。作戦としては、時間になっても劣り班が待機ポイントまで後退しなかった場合、秋たちが向かうということになっている。

 

時間はすでに5分を過ぎている。

 

「桜庭さん、行きましょう」

 

私の提案に桜庭は小さく頷き、操縦室へと消えていった。するとすぐにエンジン音が聞こえ、船は白い水蒸気の上がっている場所へと向かう。

 

無事であって欲しい。この業界でそれを望むのはタブーなことだとは知っている。だけどまだ、あの人たちを手放したくはなかった。

 

 

 

水蒸気に包まれた空間は予想以上に視界が悪く、3m先も視認できない状態である。

 

「これじゃ進めないな…」

 

レーダーの反応からこの半径10mの範囲に黄泉たちの船があるのは確かだった。だとすれば、もう強硬手段を持ちいるしかない。

 

「桜庭さん、私がここを離れたら、すぐに離脱してください。電圧は出来るだけ弱めるつもりではいますが、万が一のことがあってはいけないので」

 

「了解だ。しかし、どうやって船まで?」

 

「そんなに長くは持ちませんが、これなら多分もつと思います」

 

「何が…?」

 

秋が桜庭の問に答えることは無かったが、その代わり鳴神を鞘から抜き、バチバチと体から雷が放電を始めた。

 

「舞え、風雷!」

 

秋の声に応呼するように、白い稲妻が秋の両足に纏わりつき、滑車のような形へと変わった。秋は滑車が形作られたのを確認すると、勢いよく飛び上がった。

 

「飛んでる、のか?」

 

「ええ。でもそんなに長くは使えないので、あまり便利とは言えませんが…ともかく、私はこれで黄泉達を探します。桜庭さんは避難を!」

 

桜庭はエンジンをふかして、安全圏まで後退する。それを確認した秋は霧の中をゆっくりと眺めて、さらに上昇した。

 

100mほど上昇し、周辺の様子を伺う。あれだけの爆発があったのだ。爆心地はおそらく爆風で霧は晴れているはず。そう予想して、白い空間を眺めると、一箇所だけ霧が晴れている場所があった。

 

「黄泉!」

 

見ればそこには黄泉達を乗せた船が今まさに骨鯨にひっくり返されそうになっているところだった。

 

秋は上空から一気にその場所目掛けて下降する。潮風のせいで、目が少しだけ痛かった。秋は鳴神を握る手に力を込めた。

 

守ってみせる!絶対に。もう失わないと決めたから!

 

 

side:秋

 

船の上に着地する直前に足に展開していた風雷が消滅した。風雷を展開していた時間は3分程度。よくもったほうだろう。船は骨鯨の体当たりのおかげで30度程傾いていた。

 

「秋!!」

 

私が船に着地すると、黄泉が駆け寄ってきた。少しだけ悔しそうな顔をして。

 

黄泉の考えを把握した私は、少しだけ心が温かくなった。だが、今はそんな感情を抱いていられる程の時間は与えられなかった。船が幾度となく続ける骨鯨の体当たりのせいで、浸水し始めたらしく傾きがひどくなった。

 

「黄泉、神楽たちを連れて、事前に用意したボートで脱出してください。あとは私がやります」

 

「秋はどうするの?」

 

「防水の無線機を持っています。退魔終了後、連絡を入れるので回収をお願いします」

 

今回の私は、自らの命を()してこの作戦を終わらせるつもりはない。必ず成功させて、対策室に戻る。その意気込みは作戦開始前に黄泉に伝えてある。だから、黄泉も分かっているだろう。

 

「了解!0155(マルヒトゴウゴウ)までに連絡が無かった場合には、こちらからこの周辺の海域を探索するわよ!」

 

「大丈夫です。それまでには、必ず終わらせますから」

 

強く頷き、黄泉はボートへと乗り込んでいった。私はそれを見送ると、静かに深呼吸をした。

 

また骨鯨の突進がある。もうこの船はもたないだろう。沈む前に終わらせる。

 

鳴神の刀身からはバチバチと潮風を受けて、放電していた。

 

「舞え、風雷」

 

持って3分の風雷を足に展開して、もう一度船の上空へと戻る。するとそこには骨だけで構成された鯨のような生物がいた。

 

鳴神に握っている右手を通して霊力を流し込む。赤い炎の電蛇が私の体の周りにとぐろを巻いた。

 

「焼け!!火雷!!」

 

土蜘蛛を倒したときの倍ほどの大きさと長さのある赤い大蛇は、骨鯨を一瞬で包み込み、大量の炎をあげた。空を焦がさんとするその勢いはバチン!!という乾いた音と共に次第に収束していった。

 

骨が収縮するときに起こる音とは少しだけ違っていた。

 

「焼ききれなかったということですか・・・?」

 

赤い炎が消えた場所には、所々を黒く焦がした骨鯨が海に横たわっていた。物理的な攻撃は回復出来るようだが、焦げに関しては回復する必要は無いと判断したのだろう。骨鯨は攻撃主である、私の方へと大きく頭をもたげた。

 

今までは海の中に沈んでいたため、全体像を把握することはできなかったが、通常の鯨ならば心臓があるべき場所に、赤い光が点滅しているのが見えた。

 

その瞬間、頭に鋭い痛みが走った。

 

「何・・・これは?・・・っぐ!!」

 

頭痛と共に映像がフラッシュバックした。おそらくは、過去の記憶であろうが、鮮明に思い出すことはできない。そして私の意識はその記憶とともに、白い意識の中へと消え去った。

 

side ???

 

普段俺が、表に出てくることは滅多にない。だが、この間の夢の中では久しぶりに秋と話をすることができた。

 

まぁ、あいつは俺のことなんて忘れているから戸惑っていたが。

 

だが、俺は再びあいつの体を借りねばいけない事態がやってきた。秋の目を通して見た赤い光は、おそらくあれで間違いないだろう。俺はあれを回収せねばならない。

 

秋に説明をしないまま、体を借りるのは申し訳ないが、今回は仕方あるまい。

 

『体を一時的に借りるぞ!秋!!」

 

side out

 

秋が意識を失ったのと同時に足元に展開されていた風雷も消えた。秋の体は重力に従い、真っ逆さまに落下していく。だが、その数秒後、落下は止まり、秋の体は白く発光していた。

 

発光が弱まったそこには、黒髪、黒い瞳を持つ姿の秋ではなく、白い髪をなびかせ、赤い瞳をした姿があった。

 

髪の白い秋は、鳴神を握りなおすとその場から骨鯨目掛けて一気に落下した。そして大量の海水を鳴神で払いあげるのと同時に叫んだ。

 

「水雷!!」

 

爆発と水蒸気が周囲を包んだ。しかし、秋はとまらない。風雷が展開されてもいないのに、海上から骨鯨の心臓付近にまで一気に上昇。胸元にある赤い結晶を抜き取った。

 

赤い結晶を取られた骨鯨は、まるで砂が風に吹かれるように、消えてなくなってしまった。

 

「物理的攻撃が効かなかったのもそのせいだろうな。やはりこの世界にいるか。三途河!!」

 

赤い結晶を睨みつけながら、秋は言った。その赤い結晶を握り締めると、手の中に消えていった。

 

秋は沈みかけている、先程まで骨鯨が体当たりをしていた船へ着地した。もって2分といったところだろう。

 

「こちら秋。目標クリア。回収を願う」

 

無線でそれだけを伝えると、秋は無線の回線を切った。切り際に、黄泉が心配している旨を言っていたが、それを秋は聞かなかった。まるで、それは秋本人が聞くべきことだと判断したように。

 

そして秋は、船のまだ当分は沈まないだろうと思われる場所に、倒れ込んだ。

 

 




はい。ということで、お分かりの人は少しだけ展開が読めてしまったかもしれません。

秋に体を借りた秋ではない誰かが、発したあの名前。

覚えていますか?分からないという方は、『喰霊 零』本編を見ると分かるかもしれません。

それでは、また次話でお会いしましょう。

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