行き場を無くした雷   作:四季乃

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更新の日がだいぶ空いてしまって申し訳ありません。

今回から、原作ルートです。



第十四話

side:神楽

 

お勤めで夜が遅いため、どうしても昼間に睡魔がやってくる。授業中、まともに授業を聞いたのは、全部合わせて何時間あるだろうか。それくらい授業中は爆睡している。

 

先生も、私が母の病気の件で忙しいと思っているので、おそらくは見逃してくれているのだろう。

 

ちなみに、私が遅刻をしたり、早退をよくするのは、全て『母が病気で入院しているから』ということになっている。ようはカモフラージュだ。

 

環境省の仕事で。とは流石に中学生の私が言うことが出来ないため、特例で認められている。おそらくは上からの圧力もあるとは思うが・・・

 

というわけで、私は今朝も机の上で許されている睡眠を貪っていた。

 

「つーちみや!」「お弁当作ってきたの。一緒に食べよう?」

 

そう話しかけてきたのは、このクラスで唯一会話をかわし、友達と呼べる存在にいる、柳瀬千鶴(やなせちづる)真鍋美紅(まなべみく)であった。

 

「土宮はさ、すごいよね。ちゃんと宿題やってくるしさ!」

 

「普通だよ、ちょっと忙しいだけ」

 

「やっちんは、もう少しちゃんとやろうよ。毎回見せてもらってたら、土宮さんに悪いって」

 

「えーだってさ・・・」

 

普通の、悪霊という存在を知らない少女たちとの会話は私にとって、唯一普通の少女になれる時間でもあった。

 

私も土宮家に生まれていなければ、こんなふうに何にも囚われず、宿題や進路の愚痴をこぼしながら、好きな人の話なんかを、友達と話すことができていたのだろうか。

 

時折、この二人と話すことでそう思ってしまう自分がいる。土宮家に生まれたことを後悔しているのではない。ただ、たまに、普通の女の子として生活してみたい。そう思うことだけなら許されるだろうと、この二人と会話をしている時はそう思えるのである。

 

「お弁当どこで食べる?屋上でもいいかな?」

 

「うん!」

 

「やっちん、あそこ寒いのに好きだよねー」

 

「何を言う!弁当を屋上で食べる。これこそ青春の醍醐味ではないか!!」

 

満足そうに言う千鶴の顔が、どうにも面白くて、私は吹き出してしまった。それにたいして千鶴は不満を漏らしたが、私は笑顔で対応した。

 

私が唯一普通の女の子として生活出来る場所。ここを守るためにも、強くならなくてはならない。

 

そう、決心した。

 

side:秋

 

資料のチェックが終了すると、黄泉に連れられた私は対策室の武器庫へと来ていた。せっかくだから、退魔武器の方も点検してしまおうという、黄泉の考えに基づいてだ。

 

「結構、ガタがきてるわねー」

 

そう言って、黄泉は一本の槍を手にしながら言った。

 

その槍は確かに霊力の衰えが感じられた。使われていないのではないが、こういった非常用の武器というのは、使用者が度々変わる。違う人間の霊力を流すというのは、退魔武器にとって相性の問題もあり、武器が疲弊しやすいのだ。

 

「しかし、おかしくないですか?この退魔武器。アイロンや、チェーンソー、これは・・・ボイラーですか?これ、本当に退魔武器なんですか?」

 

「マイケル師匠が作った武器は、みんな優秀よ。でも、結構点検に出したほうが良さそうね」

 

黄泉の指示で、使えそうな武器と点検に出す武器とを仕分けが始まった。多くの退魔武器が揃っているが、武器と見えるのは数個しかない。それ以外は使い方もよく分からないようなものばかりだった。

 

そういう武器は人気がないのか、変な武器だけが疲弊しておらず、点検に出さなくても良い。という結果になった。

 

やっぱり、この武器誰も使っていないんじゃ・・・

 

「マイケル師匠が今日あたりにこっちに来るっておっしゃってたし、いい機会だったわ」

 

私が心の中で疑惑を持っていると、黄泉がまた知らない名前を出してきた。

 

「黄泉、さっきから気になっているのですが、そのマイケル師匠と言うのは、いったい誰ですか?」

 

「あぁ。説明していなかったわね。マイケル師匠っていう方は・・・」

 

黄泉が説明しようとしたその瞬間、黄泉の携帯が電話の着信を伝えた。

 

side:神楽

 

学校から帰宅したあと、私は大体道場に来ることが多い。稽古の意味合いも込めているが、相棒である退魔武器『舞蹴拾弐号』の点検もかかせない私の週間の一つであった。

 

いつも通りの手順を済ませ、最後に機械用の油をスプレー噴射していたその時であった。

 

「NOー!!刀のお手入れには、椿油を使ってくだサーイ!それこそ、日本人の心ネ!」

 

私の背後に上半身裸、下半身はふんどしだけ。という変人が立っていた。私は思わず、手に持っていた、機械用の油をその変人に、これでもか!という程噴射した。

 

機械油を噴射された変人は、悲鳴とともに目を手で覆っていた。反射でやってしまったからか、後から少し落ち着いて考えてみると、そもそも人に機械用油を噴射するなんて!!と反省と申し訳なさが私を襲った。

 

そんな回想に苛まれていると、背後から「あら」という声が聞こえた。

 

「もういらしていたんですか、マイケル師匠」

 

「彼がマイケル・小原師匠ですか。なるほど、なぜかあの武器を作る意味が分かった気がしますよ」

 

馴染みのある声の方を振り返ると、黄泉と秋が道場の入口に立っていた。

 

side:秋

 

「ふーむ。いい輝きをしてマース。まるで新品同様ですネー」

 

「だって、なかなか使わせてもらえないんだもん」

 

「もう少し経ってからね」

 

変人・・・もとい、退魔武器職人、マイケル小原は神楽の刀を見ながらそう言った。

 

神楽が実戦であの刀を使ったのは、私も数回しか見たことはない。経験もそうだが、技術的にも、神楽はまだ前線を張らせるには少しだけ私も不安があった。

 

「黄泉さん、獅子王を見せてくだサーイ」

 

獅子王を鞘から取り出し、眺めたマイケル師匠は満足そうな笑みを浮かべて言った。

 

「素晴らしい輝きデス。でも少し、霊力が疲れてますネ。研ぎ直したほうが良さそうデス」

 

そう言うと、マイケルは獅子王を鞘にしまい、黄泉に視線を送った。どうしますカ?そういう意味であろう。

 

「お願いします。武器のお手入れは必要ですしね」

 

「分かりましタ。ところで、あなたは誰ですカ?」

 

マイケル師匠は獅子王を自分の手持ちの袋へとしまってから、私の方に視線を向けた。

 

「あぁ、自己紹介が遅くなり申し訳ありません。私は先日対策室に配属されました、白澤秋と申します。以後、お見知りおきを」

 

私が丁寧にお辞儀をすると、彼もまた丁寧に返してくれた。外国人のような風貌の割には、意外と礼儀正しいなと思った。

 

「では、あなたの刀も見せてくだサーイ。場合によっては研ぎ直しますヨ」

 

そう言うと、私が差し出した鳴神をそっと鞘から抜いた。

 

「これは、珍しいデスネ。霊力が疲れるどころか生き生きとしてイマス。使っていないわけではないですよネ?」

 

「えぇ。私の鳴神は私の霊力で刀自体の霊力も構成されているんです。だから、私が常に霊力を送り続けている限り、刀が衰えることはありません」

 

私がそういうと、マイケルはしばらく鳴神を眺めたあと、研究したいので持ち帰ってもいいかと聞いてきたので、丁重にお断りした。

 

マイケルは残念そうに黄泉の獅子王を持って帰っていった。対策室の武器の修理もお願いしたから、明日は対策室の方に来てくれるだろう。

 

しかし、あんな格好であの人は捕まったりしないのだろうか?

 

そんな疑問が心を過ぎったが、すぐに頭から消え去った。

 

「さて、ご飯にしますか!今日は、秋が大いに腕を奮ってくれるわよ!」

 

黄泉がハードルを上げるので、いささか心配ではありますが、今日のご飯は皆さんに喜んでもらえるよう、頑張ろうと思います。

 




マイケル師匠。こんな人がいたら、間違いなく捕まっているだろうな。と確信しています。

さて、原作ルートですので、なんとなく流れがわかる人もいるのではないでしょうか。原作に沿いつつ、秋も頑張りますので、一緒に物語を追って頂ければ幸いです。

それでは、また次回、お会いしましょう。

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