行き場を無くした雷   作:四季乃

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どうもお久しぶりです。
前回から間がだいぶ空いてしまって本当にすみません…

さて、今回は本格的な戦闘となります
秋の戦闘初披露です!


第七話

 

 

数分も乱紅蓮の上で風景を楽しんでいると、一気に空気中の瘴気濃度が上がった。ムッとした生暖かい気持ち悪い空気が秋達を包んだ。土蜘蛛が近い証拠なのだろう。ただ、景色を楽しんでいたわけではない。しっかりと監視もしていた。

 

「秋、あそこよ!」

 

先を越されはしましたが。

 

心の中で言い訳がましいことを考えながら、秋は黄泉の指差した方向に目をやる。全長10mはあろうかという巨大土蜘蛛が、優雅に樹木を押し倒しながら全身していた。

 

「いつもよりデカイわね。いけそう?秋」

 

「はい。黄泉は土蜘蛛を引きつけつつ、左をお願いします」

 

「了解!」

 

秋はその返事を背後に聞きながら、乱紅蓮から飛び降りた。途中で身体強化も行う。一度成功したおかげか、不安定さは全くなかった。

 

ホッとしつつ、着地時の衝撃を膝を曲げて緩和する。身体強化のおかげで、相当な高さから飛び降りたが、全く痛みを感じなかった。上では乱紅蓮の咆哮波の炸裂音が響いた。

 

しかし、いつまでも立ち止まっているわけにはいかない。土蜘蛛に気づかれる前に、秋は鳴神を抜刀し、自分の担当である右足目掛けて一気に疾走した。

 

土蜘蛛は黄泉が乱紅蓮で引きつけてくれているので、気づかれる心配はない。

 

秋は走りながら霊力を鳴神に通した。鳴神が淡い光を浴びる。その瞬間、体の中の霊力の流れが変わった。霊力全てを持っていかれそうになるのを、ギリギリで食い止める。バチバチと放電の音が次第に大きくなる。

 

久しぶりに味わうこの緊張感。

 

秋は身震いを止められなかった。秋の霊力を十分に吸った鳴神は、抑えられない雷がバチンと周りの埃と感電して、大きな音を立てて火花を散らす。

 

鳴神が自分の手に吸い付くように軽い。まるで自分の体の一部になったかのようだ。

 

ほんの数メートルを走り抜け、土蜘蛛の腹の下に潜り込んだときに、ちょうどよく頭上で黄泉の声が響いた。

 

「乱紅蓮、咆哮波!」

 

その数秒後、大出力の光と共に土蜘蛛の左足は薙ぎ払われて消える。

 

「ぎゃhskhgおっっっっっーーーーーー!!!」

 

 

わけの分からない悲鳴が辺りに充満する。

 

秋はそれを心地の良いBGMの様に感じながら、十分に放電している鳴神を大きく横に振り切り、目の前の足を薙ぎ払った。秋は土蜘蛛の足の状態を確認せず、すぐに大きく後ろに跳躍し、その場から離脱する。

 

まるで落雷を間近で聞いていたような大音量が、黄泉の耳のすぐ側で響いた。

 

黄泉は真下で起こっている現象を、乱紅蓮の上から落ちないようにギリギリまで首を伸ばして確認する。土蜘蛛の腹の下で起こっている現象を一目で理解した黄泉は、同時に先程の音の原因も悟った。

 

未だにバチバチと放電している土蜘蛛の足。秋が横に振り切ったときに生じた幾多もの雷が、土蜘蛛の足にぶつかり、砕き、違う足にぶつかり、また砕く音だった。

 

その数秒後、周りに少なくない衝撃波を発生させながら、全ての支えを失った土蜘蛛の巨体が沈んだ。それと同時に、鳥たちが一斉に飛び立った。

 

黄泉は秋の隣に乱紅蓮を着地させた。その顔には、少なからず驚愕の色が見て取れた。そして好奇心も。今まで見たこともない方法で土蜘蛛の動きを止めた秋の戦闘方法に、黄泉は強く興味を引かれた。

 

「動きは止めたけど、この後どうするの?」

 

「焼きます」

 

「や、焼く?」

 

「ええ。焼き蜘蛛。…あまり響きはよくありませんね。食べますか?」

 

「食べないわよっ!」

 

黄泉の突っ込みに多少安心したのか、変わらぬ笑みを浮かべて秋は言った。

 

「離れててください、感電しますよ」

 

黄泉は少々納得のいかない(というかなぜ感電するのか理解が出来ないといった)顔をしていたが、秋は黄泉が小さく頷いたのを確認すると、すたすたと地をモゾモゾと這っている土蜘蛛の元へと歩いて行った。

 

秋が近づいて来たのを察知したのか、一層激しくモゾモゾするが、全く何の効果も及ぼさない。今の土蜘蛛には攻撃はおろか、秋を正面に見据えることも出来ない。

 

秋はそんな土蜘蛛の上に軽々と飛び乗った。そのまま土蜘蛛の体の中心に深々と鳴神を突き刺した。

 

「っぎあああああぁぁぁ」

 

またも悲鳴が上がるが、土蜘蛛のスタミナも切れかかっているのか、先程よりは音量が少し小さい。

 

「焼け、火雷」

 

秋は土蜘蛛に突き刺した鳴神の柄を掴み、低い声で言った。その声に呼応するかのように、数本の白い稲妻が5m程上昇したかと思うと、赤い輝きに変わりバチバチと放電した。数本の赤い稲妻は捻れながら一本になり、二メートル程の高さで首をもたげるように、折れ曲がり土蜘蛛を見据えた。刀一本から発生させられたその形は、雷というよりはむしろ…

 

「赤い…大蛇?」

 

目の前で大きな赤い稲妻大蛇が首をもたげている状況に、黄泉はポツリと呟いた。

 

赤い雷大蛇は主である秋の命令のもと、スルスルと土蜘蛛の体へと巻きつき、ギチギチと土蜘蛛を締め上げていく。ついで

 

ーーー ボッ。

 

赤い大蛇が土蜘蛛に巻きついた状態で発火した。すぐに土蜘蛛は炎に包まれ、シュウシュウと有機物が焼ける音と臭いが辺り一面に充満する。土蜘蛛が息絶えたのは火を見るよりも明らかだった。

 

秋もそれを確認したのか、鳴神を土蜘蛛から引き抜いた。すると同時に土蜘蛛を覆っていた真っ赤な炎も何事も無かったかのように一緒に消えた。

 

「結構美味しそうに焼けましたよ」

 

先程の低い声からは想像も出来ない、明るい笑顔で秋は黄泉に土蜘蛛の一片が刺さった鳴神を差し出してきた。

 

まだ煙が出ているが、なるほど良い焼け具合である。

 

「ってだから、食べないわよっっ!!」

 

黄泉は、変わらない秋の声に安堵し、ベシッと鳴神に刺さっている土蜘蛛をはたき落とした。

 

地に着いた途端、土蜘蛛の破片は白い灰になり、風に飛ばされて消えてしまった。見れば、本体も同じように体の端から、ハラハラと風に飛ばされている。

 

しかし、黄泉はふと違和感を感じた。

 

(どうして、秋はあの炎の中にいて平気何だろう?)

 

秋は見たところ、火傷どころか擦り傷一つない。これだけの戦闘で、石の一つや二つが顔に当たって切れていない方が、珍しいのだが…

 

秋は怪訝そうに眺める黄泉の目を気にしないで、鳴神を鞘に収めた。

 

「… 終わり、ましたか?」

 

どう見ても倒したであろう土蜘蛛を眺めながら、秋は眉間に少しだけシワを寄せて言った。

 

「どういうこと?本体は消えかけてるし、大丈夫じゃ…」

 

黄泉がそう言いかけたときだった。もはや原型をほとんど留めていない土蜘蛛の目から、細い何かが飛び出した。細い何かはこちらを気にもせず真っ直ぐ北北東に、つまり国道に向かって飛んでいった。

 

「やっぱり!」

 

秋は閉まったばかりの鳴神を抜刀し、細い何かが飛んでいった同じ方向へと走り出した。黄泉も少し遅れてそれに続く。走りながら黄泉は目の前を飛んでいる何かを凝視した。

 

「あれは、蟲?」

 

「ええ、おそらく寄生型のものだと思いますが。私も実物は初めてです」

 

そう言っている間にも、蟲と秋たちの間は確実に離されている。木の生い茂った森の中で、蟲を遠目で追うのがそろそろ辛い。秋が小さく舌打ちしたのが聞こえた。

 

「乱紅蓮!」

 

黄泉は獅子王を抜刀し、乱紅蓮を召喚する。そのまま乱紅蓮の上に飛び乗り、秋にも手を伸ばす。秋も今度は拒否せず、素直に黄泉の手を握り乱紅蓮に飛び乗った。

 

乱紅蓮は高く飛翔し蟲をしっかりと捉えた。道路との距離はおよそ400m。乱紅蓮は蟲目掛けて真っ直ぐ降下していく。このスピードなら国道に入る前に片付けられる。黄泉はしっかりと乱紅蓮に掴まった。

 

「乱紅蓮、咆哮「待ってください!」…?」

 

乱紅蓮が口を開け、衝撃波を少し作り出したが、黄泉の命令が最後まで言わなかったため、情けない大きさになって消えた。

 

「人がいます。咆哮波は撃たないでください」

 

促されるまま、黄泉は秋が指を指している先を見た。前を飛んでいる蟲の奥に確かに一人、ガードレールの側に立っている。おそらく女性だ。

 

「どうする?あの人気づいてないみたいだし… 見えない人だったら気づかないで取り憑かれるわよ。あの蟲は寄生型だし」

 

「… 私が強化して飛びます。落下の勢いと、稲妻を使かえば何とかいけると思ので」

 

「分かった、でも私も行くわよ。秋ばかりに主役張らせてられないし」

 

秋は無言で頷いた。

 

「乱紅蓮!」

 

黄泉の声と共に乱紅蓮が急速落下を開始する。十分な速度を付け、乱紅蓮から飛び降りた。同時に黄泉は乱紅蓮を消した。

 

秋は落下しながら身体強化を行い、秋の体が白く発行する。秋に手を引かれて、黄泉も一層落下速度を上げる。

 

だが、

 

「マズい!」

 

身体強化され、うっすらと霊力の幕に覆われた秋にやっと気付いたのか、蟲が空中でクルリと向きを変えた。だが、翼の無い二人には落下中の方向転換は不可能だ。

 

それを知ってか知らずか、蟲は二人目掛けて白い糸を吐き出した。秋は放電する鳴神でそれを振り払う。バチバチと燃えて糸は瞬時に燃えて消えたが、落下角度が大幅に反れた。

 

下を見て着地点を予想するに、女性よりも数m左にズレている。

 

蟲は邪魔されないと悟ったのか、真っ直ぐ当初の飛行コースを滑空していく。ガードレール沿いに立つ女性に向かって真っ直ぐ。

 

激しく羽をバタつかせ蟲は、女性に取り憑くために六本の足を正面に構えた。女性はその音が聞こえたのか、ふと顔を上げた。

 

「き、きゃぁぁぁあああ」

 

しかし、この場所からでは到底間に合いそうもない。

 

(っく… 諦めるしかないんですか!)

 

秋はキツく拳を握り、蟲の行動を眺めることしか出来なかった。

 

だが、

 

ーーー タタタッ!

 

取り憑く準備万端の蟲と女性の間に神楽が素早く入り込み、蟲を真っ二つに切り裂いたのと、秋達が着地したのは同時だった。

 

ペタンと女性はその場に座り込んだ。

 

先ほどの悲鳴と、一瞬で顔色が変わったのを見れば、あの女性が“見える側の人間”だということはすぐに分かる。一般人にしてみれば、どれ程の恐怖かは想像に難くない。

 

秋達は神楽と女性の元に駆け寄った。女性の顔色は真っ青を通り越して、真っ白になっている。この分だと腰も抜けているだろう。神楽もホッとしたような表情を浮かべていた。

 

「助かったわ。ナイスフォローよ、神楽」

 

「ええ。本当にありがとうございました。神楽のお陰で一番起きてはならないことを防げました」

 

二人で神楽に感謝の意を伝えると神楽は照れながら、へへっと短く笑った。

 

秋はふと神楽の後ろに座り込む女性のカバンが目に入った。そして、一度短く考えてからそっと黄泉の耳元でそっと呟いた。

 

「黄泉、あの女性のカバンの中。気付いていますか?」

 

「ええ。どうせ誓約書書いてもらうし、ついでに回収するわ」

 

黄泉も真剣な顔で女性を見つめた。

 

「さて、神楽。一般人にお勤めを見られた場合の対処は?」

 

「誓約書でしょ。分かってる」

 

そういうと、神楽は女性に肩を貸す。やはり腰が抜けているのか、歩き方がおぼつかない。フラフラ歩く女性の耳元で、黄泉はそっとカバンの中からビンを取り出す。

 

「これは預かっておくわ。命は大切にして」

 

ジャラジャラと大量の薬が入っているビン。おそらく自殺するつもりだったのだろう。女性は観念したようにガクンと首を垂れた。

 

環境省専用車に乗せられる女性の後ろ姿を見ながら、秋は少しだけやり切れない感じがしていた。

 

「なぜ、人はあんなにも命を軽々しく捨てられるのでしょうか」

 

“命”そう呟いたとき、やけに心に響いたのは気のせいだろうか。自分の中の何かが、その単語に敏感に反応する。

 

「それはその人自身にしか分からないわ。ただ、私たちはそんな人たちでも守る義務がある」

 

「…ええ。そうですね」

 

守る。それは私に出来ることなのでしょうか。

 

 

「へぇ、これはまた懐かしい人がいるじゃないですか」

 

木の上に立っている少年と思われる人影は面白そうに笑った。

 

「今日は偵察だけでしたが、予想外の情報を得られました。これは、大幅な脚本の変更が必要ですね」

 

そう言うと、少年はどこからか飛んできた蟲につかまり、夜の暗闇の中へと消えていった。

 

 




次回は真面目に更新しようと思います
これからも不定期になるかもしれませんが、よろしくお願いします。
見捨てないで… 泣

また次回、皆様と出会えることを祈って…
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