笑顔を咲かせた少女は紛れもなく…   作:西部荒野に彷徨う海賊

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 今更になって不安になってきました……。








112話 開戦

 

 

 

 

 次世代型メンタルウェポンに鳥類を模った飛行型の無人偵察機なんていうものは、サイズや重量、また役割機能別に多種多様に渡って存在するらしい――もしかすると、今も俺達の上空では夜空の暗闇に紛れ、解析型の小型カメラを搭載した鳥型機器が旋回しているのかもしれない。

 

 左右に幽寂な林地帯が広がる一本道では鋪装された路面が剥げ、適当に配分されたような凹凸のコンクリートを下面から砕いて目を出した草っぱらも見えている。

 

 盗撮対策として車内の明かりは消し、小型のペンライト一本を片手に持った柊蒼太郎の左右に俺と竜三が身体を丸めて座り込んでいた。

 

 暗がりの車内で後部座席を倒し、広げられたスペースに柊は印刷された硬いA1サイズの白紙を広げる。

 バンの天井にペットボトルのキャップサイズの丸形機械を取り付けると、レーザープロジェクター方式の映画上映のように、小型機器のレンズから単色光の照明が発生し、広げられた白紙に映像を映した。

 

「地図か……」

 

 竜三が呟くと、柊は白紙一面に広がる映像を確認するように一通りペンライトで照らす。

 

「そうだよ、愚音隊が隠れ家として利用している高層ビルの内装間取り図だ」

「随分と複雑に組み入ッた廊下に無茶苦茶な部屋配分だな……とンだ欠陥住宅の悪質物件だ」

「もともとは難民条約に参加することになった日本が、その年にやってくるインドからの難民達を受け入れるため急遽として建設したものだからね。難民は受け入れられるけど、我が儘や贅沢は言えない」

 

 と言うのも、まず目に付いた点では『窓のない部屋』が存在するという点だ。

 

 ただの長方形――そこに入り口として開き戸のドアの記号はあるものの、外気を取り入れるための窓が取り付けられていない。

 つまり、ビルの壁際から離れた『中心部』に、一つ一つの狭い部屋が配置されている。

 

「まあ、一から説明していくよ」

 

 柊は右手のペンライトの電源を落とすと、自らの人指し指でもって俺と竜三の視線を誘導する。

 

「ビルの真ん中には一階のフロントから二四階までを突き抜ける大きな吹き抜けがある。二階から二四階までは全てが全く同じ構造。吹き抜けの廊下を挟んで北の方面には折り返し階段と二機のエレベーター。ただあまりエレベーターは使わない方が良いかもね」

「敵の集団と鉢合わせでもしたらやばいしな。あの狭い空間じゃ逃げ場を確保する間もなく圧迫されちまう」

 

 確かに、竜三の言う通りだ。

 マンション鬼ごっこなんて遊びがあるが、自分が降りようとボタンを押したその階に付いた途端、鬼役が目の前に笑顔で立っていたら扉が開くと同時にゲームオーバーだ。

 

「吹き抜けに面する廊下から通じる道は片側それぞれ三方向ずつ。そのうちの二方向はこっち――吹き抜けの隅にあたる扉を開けて展開される廊下には、両サイドに部屋が三つずつ。途中の曲がり角を曲がるとビルの端――つまり一番長い廊下に出て、部屋は両サイド合計で十九室だ。反対側は逆に二方向だったね。吹き抜けに面する廊下から直接出られる階段の踊り場は部屋じゃないから」

「随分と部屋数が多いな。俺達の侵入がばれたと同時、どの部屋から敵が出てくるか分かったもんじゃねえ」

 

 確かに、これも竜三の言う通りだろう。

 陽動作戦で目立たずビル内に侵入できたとは言え、何かの拍子――例えば防犯カメラに俺達の姿が映り、建物内に警告が発せられれば全部屋から敵の集団が現れてもおかしくない。

 

 そうなれば、俺達は廊下の真ん中で袋叩きだ。

 

「ッてこたァ、……つまり」

 

 屈ませていた身体を起こし、両膝を立てて天井に頭をつけながら、俺は愛用の黒いパーカーを着直し、ジッパーを胸元まで閉める。

 

「誤魔化す必要はない、か。最初から俺達の侵入を警告させ、数多くある部屋の全てから愚音隊の奴らを誘い出してやればいい」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 二五階建ての高層ビル――頼りないビニールボートに乗って命懸けでもって荒波の海を渡り、軍隊制服の屈強な男達が構える検問所でしつこい質問攻めを受けた後にようやく日本という島国に上陸できた外国の難民達が住んでいた、彼らにとって唯一の安息の地。

 

 その住宅も、今では音ノ木愚音隊の支配に冒されている。

 難民達は贅沢を言えない――彼らの身分では住居侵入に犯されたと国に告訴することもできない。

 

 元から、日本という国は難民の受け入れに積極的ではなかった。

 ある条約規定に背いてしまった償いとして難民条約に参加したが、不本意の下の合意であったことは間違いない。

 

 国は難民のために動かない。

 ましてやその場所に暴力団の息がかかっているものなら、なおさら国は手を出せない。

 

「俺達のとっちゃ、ここはまさに天国だよな」

「馬鹿野郎が、天国かこんな埃臭い空間であってたまるかよ。背中に翼の生えた小さな男の子達がトランペットを吹いている、雲の上の神秘的なお伽の国のイメージを瓦解しにくるんじゃねえ」

「なに、お前ってそんなメルヘンチックな思想の持ち主だったか?」

 

 お気楽に談笑する二人分の影。

 広いホールがある一階――ロビーの中心から見上げると広く切り取られた吹き抜けの天井が高く伸びるそこのエントランス付近に、音ノ木愚音隊の下級構成員はマシンガンを両手に並んで突っ立っていた。

 

「別にそうじゃねえけどよ……天国へと旅立った人達はそこの永久住民権を与えられる訳だろ? このボロマンションに残った難民達は家賃代わりに俺達の下での労働を強いられている。さて、ここは天国か?」

「馬っ鹿、だから『俺達にとっての天国』だろ? 難民が何だ、強制労働が何だ。そんなもんは日本人である俺達にゃ関係ねえ。よそ者が弾かれるのはどこの国だって一緒さ」

 

 エントランスの大きな両開きの扉は現在、閉ざされている。

 街の明かりもここまでは届かないが、今では警戒するよう言われた侵入者の対策としてだ。

 

 室内には壁に取り付けられた不甲斐なく点滅している蛍光オレンジの照明。

 暗がりのロビーには他人の姿は見えない――端の方に設けられたバー席やカウンターにも、反対側に位置するラウンジのソファにも人の気配はない。

 

 二人は見張り役だ。

 時間制で交代できる、自分の持ち場の管理という仕事をしている最中だ。

 

「このビルの所有権はすでに愚音隊の下にある。つまり俺達の本拠地、難民達はそれ以外ってことだ。ここに乗り込んでくるかもしれないっつぅ水浦勢力だって、この場所は味方も何もいねえビジター会場よ」

「その水浦勢力って奴らだが……本当にここに来るのか? 梶ヶ谷さんの話じゃたったの三人ぽっきりなんだろ? どこに勝算を見出して喧嘩を売りに来る?」

「さあな。まあ知らんが、あいつらなりの考えがあるんだろ。六〇人以上を三人きりで相手すんのはまず無理だが、陽動作戦の奇襲ならありえる。俺達もここで見張り役を買っているが、正面玄関から堂々と入り込んでくるほど馬鹿じゃねえだろ」

 

 水浦勢力の三人とは……やはり夜伽ノ美雪と水浦竜三、そして音ノ木愚音隊も未だ正体の掴めていない『もう一人の男』のことだろう。

 どうも音ノ木愚音隊のリーダー、梶ヶ谷燐桐と水浦竜三の間では過去、一悶着以上のしがらみが存在するようだ。

 

 自分達には無関係だと思える事柄だが、その自分達も今では進路を見失い、路頭に迷った挙げ句、音ノ木愚音隊に世話を見てもらっている身分だ。

 

 逆らう訳にもいかない。

 謀反を起こそうものならまず一番に梶ヶ谷燐桐からターゲットされるだろうし、水浦竜三が自分を保護してくれる可能性なんて見出せない。

 

 しかし。

 音ノ木愚音隊の構成員達は、別に寝返ろうだとか考えている訳もなく、梶ヶ谷燐桐という人物を嫌っている訳でもない。

 

 梶ヶ谷燐桐はメンバー達にそれほど無茶な命令や仕打ちをする訳でもないし、そもそも自分達だって拳の喧嘩は好きだ。

 おまけに何故だかは知らないが、音ノ木愚音隊では今までモデルガン止まりだった趣味を、本物の拳銃の使用許可で立て替えられる。

 

 どうせ自分の人生は道路に落ちている犬の糞のようなものだ。

 なら、捨てた人生を己の好き勝手に、常識や法律も無視して無茶苦茶に謳歌してやればいい。

 

 そんな無法者達で結成された集団だ。

 梶ヶ谷燐桐は、そんな彼らを纏め上げるのに相応しい人物だと皆が知っている。

 

 それに、今回の件だって。

 構成員達はその考えを一致させる。

 

 

『六〇人以上を相手に、たったの三人では手も足も出ないだろう』

 

 

 おかげでメンバー達は今までも今日も、警戒心というものを固めていなかった。

 張り詰めた緊張感なんてものも漂わせず、たったの三人で俺達に何ができるのかと相手を滑稽に思わざるをえなかった。

 

「まあ梶ヶ谷さんや結城さんが出て来なくとも、俺達二人だけで何とかなるんじゃないか? こっちには銃っていう立派な獲物があるんだぜ? ったく、こいつを渡された時はハリウッド映画の出演依頼でもきたのかと思ったわ」

「殺したって問題ないってことなのか……。正直、梶ヶ谷さんの考えていることがいまいち分からないんだがな……。マジで警察とか動いてこないのか?」

「平気だろ、今までもそうだった。拳を固めるだけの丸腰相手にこっちは銃で圧倒してきた。俺達に勝てる奴らなんか少なくともこの世にはいねえよ」

 

 所詮は社会の流れに沿って歩くことができなかった掃き溜めのゴミクズ共、と言った所か。

 彼らは世の中を知らずにいる。

 

 人を殺めることができる武器を所持したことにより簡単に舞い上がり、自分達はこの獲物で何者をも支配することができると酔い痴れている。

 

 梶ヶ谷燐桐の上司に暴力団が絡んでいることも。

 自分達が所持するマシンガンなんかよりも高性能な最先端科学兵器がこの世に存在することも。

 

 何も知らない。

 何も知らされていない。

 

 自分達が最強だと。

 音ノ木愚音隊というグループに所属している限りは人生勝ち組だと。

 

 そう思っている。

 社会を甘く捉えすぎている。

 

 だから今回も高を括っていた。

 自分達の武器に、たった三人が敵う訳がない、と。

 

「――っ」

「あ……!」

 

 気づいた時には遅かった。

 

 

 ガガアアアアンッッ!! と轟音が炸裂したと同時。

 エントランスの両開きの硬質ドアが爆発の衝撃を受けるように粉砕された。

 

 ギャギャアアッッ!! と唐突に目の前に出現した急速度の物体に、二人の男はド派手に数メートルほど吹っ飛ばされる。

 居眠り運転手が前方の危険に気づいて咄嗟にブレーキを踏んだかのように、ドアを砕いてエントランスへと侵入した大型ワゴン車は高音をタイヤに軋ませながら急停止した。

 

 大量の埃が舞うと同時に外気の涼しい風がロビーに入り込み、夜空から降り注がれる月明かりが粉々のエントランスを照らした。

 ロビーの中心部で停車されたワゴン車の運転席と助手席、それと後部座席の扉はスライド式に開かれ、舞いに舞った埃の中から影が現れる。

 

「おかしいぞおい……俺は確か入り口の扉付近に車を停めて扉を開けたと同時に手榴弾を投げ込む過程を話されていたと思ったんだがな……」

「いや、ほんとごめんね? ちょっと何故だかブレーキのかけ方をど忘れしちゃってさ」

「テメェ……もういッかい車の教習所で勉強し直してこいクソ野郎が。つか、はなからこの方法で突入するつもりだッたろ」

 

 運転席から降りた男は不均衡の黒髪に眼鏡をかけ、大学の入学式にでも行くような新品のスーツとネクタイを纏っている。

 あとの二人はそれぞれ私服のようだが――片や赤のシャツに紺のズボンを着た金髪の男に、片や黒のパーカーと黒のスラックスを揃えた銀髪の男……に見える少女だ。

 

 柊蒼太郎。

 水浦竜三。

 夜伽ノ美雪。

 

 彼らは車体の右側に回り込み、埃まみれの空間で激しく咳をしながらワゴン車の側面に背をつけ、肩を並べて膝を立てながら座り込む。

 

「つか、今絶対に何人か轢いただろ」

「結果オーライでしょ。とりあえず僕達は建物の中に侵入はできたんだし」

「おい、早く移動しなきゃまずいンじゃねェのか。今の馬鹿でかい物音ですぐにこのロビーに群れが集まッてくる」

 

 先程の二人の愚音隊構成員とは違い、この三人の間では確かな緊張感が存在していた。

 無謀すぎた登場に怪我はなかったものの、これからの舞台ではワゴン車といった大型守護壁に包まれながら扉に突撃するよりも、よっぽど危険なステージが展開されている。

 

 休んでいる暇はない。

 一刻も早くこの場を去り、目的地を捜さなくては――。

 

 三人が同時に立ち上がる――直後だった。

 

 

『お待ちしておりました、水浦様』

 

 

 温和な柔らかさを持った女性の声に、三人は咄嗟に身構える。

 しかしまた直後、彼らは揃いも揃って眉を潜め、思わず自らの目を疑った。

 

『お待ちしておりました、水浦様』

 

 衝撃で舞った粉塵の中に一つの影が浮かぶ。

 その女性は電光装飾の多い煌びやかなメイド服を着こなし、前で両手を重ね、ピンと背筋を伸ばした正しい姿勢で彼らを出迎えるように見つめていた。

 

「柊っ! 女は來栖麗羅だけじゃなかったのか!!」

「ま、待て!」

 

 水浦竜三が焦燥の中で拳を振り上げようとすると、柊蒼太郎がメイド服の女を警戒視しながら制止をかける。

 

 同時、夜伽ノ美雪も気づいた。

 

『お待ちしておりました、水浦様』

 

 その声も――柔らかそうな頬の赤みも艶の輝く黒髪も、キレイに澄んだ透明の瞳も本物だ。

 しかし視力二・〇は見逃さない。

 

「アンドロイドだッ! タイマー式の時限爆弾が口の中に――ッッ!!」

 

 それ以降の言葉はなかった。

 夜伽ノ美雪は素早く車体の後部座席のドアを開き乗り込むと、水浦竜三の腕を掴んだ柊蒼太郎を車内へと引っ張り込む。

 

 

『それでは行ってらっしゃいませ、水浦様』

 

 

 状況を理解した水浦竜三も車内へ引き摺り込まれて後ろ向きに座席へ倒れ、柊蒼太郎の身体を下敷きにした体勢を維持しながら両足の脚力でドアを閉めようとする。

 

 しかし一瞬の差で遅れていた。

 ドガアアアアアッッ!! という鼓膜を突き破る程の爆音がロビー全体を越えて轟くと同時、爆発の炎火に三人が避難したワゴン車も情け無用に横倒しに薙ぎ払われる。

 

「うぐっ――!?」

「……がっ――かはぁ……っっ!!」

 

 暴力的に揺さぶられる車内の閉塞空間で彼らは互いの身体を衝突させ合いながら身を躍らせる。

 大きな車体は坂道を転がるボールのように何回も宙で回転しながら、ロビーのカウンター席へと突っ込むように着地した。

 

 何とかタイヤを下に、通常の姿勢で車体の振動が落ち着いたのは不幸中の幸いか。

 ボクシング選手は相手に殴られる瞬間世界がスローモーションに見えると言うが、まさにその感覚の余韻が彼らの頭を酔いに溺れさせる。

 

 人型のアンドロイドを使用した時限爆弾。

 タイミング的に音ノ木愚音隊は、いつ水浦勢力が自分達の本拠地を攻めてきても構わないよう対策を張っていたのだろう。

 

「くっそが……無茶やりやがる」

「これは、完全に意表を突かれた感じだね……」

 

 後部座席から転がり落ちるようにロビーの床へと倒れ込んだ水浦竜三と柊蒼太郎。

 コンクリートの床は無残に焼かれ、アンドロイドの腕やら足やらの部品がもがれた状態で転がる大火傷のロビーを見回しながら、膝に手を付いて立ち上がる。

 

「…………あぁっ!?」

 

 柊蒼太郎が突如大声を張り上げた。

 今度も敵襲かと身構える水浦竜三も、車内で身に受けた衝撃の痛みに顔を顰める。

 

「ど、どうした……」

 

 お互い目立った怪我はないようだ。

 多少の擦り傷や軽い打撲なんかあった気はするが、致命傷の出血に至るものではない。

 

 敵の襲来といった様子も見られなかった。

 訝しげに柊蒼太郎の顔を見れば、彼は呆然とした表情で凹凸と焼け跡の目立つワゴン車を眺めている。

 

 硬質の扉に正面から突っ込んでいた癖にいまさら車の心配か……と呆れる水浦竜三も、咄嗟に気づいた。

 

「なっ……」

 

 そこに、いるはずの人物がいない。

 爆発の衝撃を受けた時には閉まっていたはずであった後部座席の反対側のドアが開いていた。

 

 バーカウンターの隣は折り返し式の階段がある。

 その階段への入り口が、反対側にいる水浦竜三からも車体の吹き抜けから見て確認できる。

 

 さて。

 夜伽ノ美雪はどこに消えた――?

 

「美雪ちゃぁぁぁぁぁん!? どうして君はそう何でもかんでも一人で行動する悪癖が出ちゃうのかなーっ!? いい加減にしないと本気で二四時間コンビニスタイルでストーカーしちゃうぞ本当にっ!!」

 

 すぐさま追いかけようと柊蒼太郎がネクタイを締め上げてロビーの床を蹴る。

 ガシッ! とその腕を後方から力強く掴まれ、彼の身体を止めた。

 

「み、水浦くん……何を――」

「あいつのことは放って置いてもいい」

「っ……!?」

 

 それは、水浦竜三から出た意外な言葉。

 柊蒼太郎も、きっと水浦竜三だって夜伽ノ美雪のことは大事に思っているはずだと確信していたのだが――。

 

「いやいや、彼女はまだメンタルウェポンなんていう科学方面には完全な初心者なんだから――」

「それでもだ」

 

 急に水浦竜三が冷静になったと思う。

 彼は柊蒼太郎の腕を掴む右手に、さらに力を込めた。

 

 

「俺達が一緒に行動した所で、美雪の足を引っ張るだけだ」

 

 

 それは本当に確信めいた様子があった。

 何か、これから巻き起こる恐ろしいものの襲来を警告するかのような――。

 

「……どういうことだい?」

 

 粉末が舞い散るロビーで、二人の少年は互いの顔を見合わせる。

 

 片や真剣に。

 片や疑問を抱いた目で。

 

 柊蒼太郎には分からなかった。

 なぜここまできて……この状況下で水浦竜三は立ち止まるのかと。

 

 彼は言う。

 

「美雪は一人でも大丈夫だ。俺達は俺達で梶ヶ谷のいるはずの指令室を探す。美雪は一階から回った。俺達は危険も承知でエレベーターを使って二四階から降りていく。あいつの手下共の相手をしながら、虱潰しにな」

 

 

 

 

 










今更になって気づいたけど、あまり戦闘描写とか得意じゃなかった~……。
さて、どうしよう――。



不安しかありませんが、次話もよろしくお願します!


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