笑顔を咲かせた少女は紛れもなく…   作:西部荒野に彷徨う海賊

138 / 138



 お久しぶりです。
 本っっっ当にお久しぶりです!

 ひょっとしたら、もう西海はこのサイトに戻ってこないつもりではないだろうか、と少しでも疑った方は挙手を(笑)

 しかし!
 西海はようやく再起動しました!

 ……ってもパソコンが届かなかっただけですけどね。
 いやぁ、新しいキーボードが打ちにくいったらもう!



 という訳ですので、またこれからも西海の描く夜伽ノ美雪たちの世界を、どうぞよろしくお願いします!m(_ _)m





121話 再確認

 

 

 

 感情――とは、なんだ?

 少しこの題目について思索してもらいたい。

 

 感情には様々な種類があるだろう?

 怒りや悲しみから始まり、楽しいやつまらない。

 嫉妬に羞恥心、ときめきや不安。

 

 まぁ、――などなど。

 

 挙げていけばキリがないのかもしれない。

 人間が生きていく中では身体の中――心と呼ばれる部分でありとあらゆる感情を抱き、多様に渡って渦巻くものだ。

 

 さて、ここで一つ質問をしよう。

 君達は、感情を制限したことはあるかい――?

 

 

 ……いや、言い方を変えようか。

 感情を操作できる能力を持っているかい?

 

 

(くそ、何で俺ばかりこんな目に……)

(ほんと、私ってツイてないなぁ)

(どうせ僕は、このまま一生孤独なんだ)

 

(あいつ、マジでウザい)

(ムカつく、死ねばいいのに)

(絶対に許さない……殺してやる、殺してやる)

 

(大丈夫かな……友達、できるかな)

(もし本番で失敗したらどうしよう)

(ここで成功しなきゃ、みんなに笑われる……)

 

 頭に思い浮かべる言霊たちは全て感情という一種の心の病気から成り立っている。

 体内にウイルスが侵蝕し、発熱や衰退といった症状を現すのと同じだ。

 

 

(俺って、いつかは必ず死ぬんだよな?)

 

 

 世界の終わり。

 それは未来永劫へと続く世界の行く末を見ることができなくなる、自分自身の『死』を表現していると言っても過言ではないと主張したい。

 

 運命であるべき自らの死を想像した時、人間の感情は恐怖の色に染まる。

 死という未知の体験への恐ろしさ、それが刻一刻と迫り来る未来への不安。

 

 真剣に考え出したらきっと止まらなくなる。

 一度、ベッドに横たわって部屋を暗くし、目を瞑って瞑想してみると良いだろう。

 

 その時、君達はきっと恐怖する。

 同時に、自分の抱える運命に不安を抱く。

 

 死ぬのは怖いと。

 現世から切り離されてしまうのは嫌だと。

 自分の世界に終焉が訪れることは恐怖だと。

 自分という人格が消えてしまうのは悲しいと。

 

 …………さて。

 瞑想に耽ってはそのような感情に身を泳がせた後、君達にはこう考えてもらいたい。

 

 

 

 今の自分の行為に、意味はあったのか? ――と。

 

 

 

 こんな台詞を吐く者がいる。

 

「俺は高校の頃、全く勉強してこなかったからな。もう、大学に入った所で付いていけないだろう。人生諦めて、大人しくフリーターでもしているか」

「今ここで専門知識を学んだとして、夢を叶えられる確証はどこにもないんだ。不安でしょうがないよ、自分の未来がさ。だって、未来の自分が、その自分の心が輝けている証拠なんてどこにもないんだから」

 

 雑踏に紛れる会話。

 世界にネットワークを拡散するSNS。

 匿名だらけの掲示板。

 

 至る所に、そんな言葉が出てきている。

 不安という感情に騙され、人々は加減の知らない弱音を吐く。

 

 

 

 それらを聞き、見てきて――。

『私』は思った。

 

 

 

 あぁ、無駄だな……と。

 

 

 

「不安や悲しみは誰にでもあるじゃないか。だって僕達は人間なんだからさ」

 

 誰かがこう言った。

 確かに、そうなのかもしれない。

 

 感情の主流は不安や悲しみだと論じよう。

 今までも多くの精神分析者や生物学者もそう主張してきた。

 

 

 だが同時に、思ったのだろう。

 感情は、本当に必要なものなのか――?

 

 

 きっと誰もが必要だと言う。

 感情が備わっていなければ、そもそも魂を持つ生命体ですらないのだと。

 

 感情というプログラムを組み込まれないロボットが地平線から昇る太陽を眺めた所で、眩しいとも思わないだろう。

 しかし心という部品を挿入され、感情というデバイスを入力されれば、なんて綺麗で輝かしい惑星なんだと関心する――それが、人間としての姿だと。

 

 始めて目の当たりにする光景に感動したのだ。

 真夜中の暗闇でしか生活できない吸血鬼が、始めて太陽を拝んだ時も同義だろう。

 

 

 再び考えてみよう。

 人間は、そんな些細な出来事に感動できる心を持っているか?

 

 

 太陽があるから世界は明るい。

 太陽のおかげで人間は行動できている。

 

 人間は、太陽に深い感謝を示した経験があるか?

 

 そこに嬉しいやありがとうなんていう感情は存在しない。

 青空の太陽を見上げた所で眩しいとしか思わず、挙げ句の果てにはカメラのシャッターを押した後に「太陽の光が邪魔だな」と言う始末だ。

 

 愚かだ。

『私』から見れば本当に愚か者だぞ人間は。

 

 人間という有機生命体は歓喜や感謝の感情など滅多に抱かず、常に悲哀や不安、退屈といったやりきれない気持ちを抱き続けている。

 過去にあぁだったから未来はきっとこうなんだとか、自分の足跡も将来も否定しながらその先の結末に恐怖し、怯える生活を永遠と続けている。

 

 過去はもう存在しないのだ。

 未来はまだ存在しないのだ。

 

 それなのに人間は、自分はいつか死ぬのだと先の話に不安という感情を覚える。

 その癖、今日も地球を照らしてくれてありがとうとは一言も、今の太陽に向かって言った試しはない。

 

 

 

 

 

 

 

「ギャッッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!! おいどうしたクソッたれ共ォ!! 俺を殺すンじゃなかッたのか!? 血祭りにあげて骨も肉もバラバラに砕いて引き裂いてェ!! クスリをやッた後のような達成感と快感に身を躍らせるのが目的だッたンじゃねェのかァ!? 法の裁きからも親の命令からも束縛されずにィ! ありとあらゆる犯罪行為への免罪符を手にしているテメェらがァ! 女一人もヤれねェでどンな存在価値や人生の楽しみッてもンを見出して! 『この世界』に生まれてきて良かッただなンて感じていられンだァ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 この少女もそうだったのだ。

 自分が犯した過ちを常に心に留めておきながら過去に怯え、築き上げた多方向への人間関係が崩れてしまう未来を危惧していた。

 

 しかし、この時ばかりは違う。

 感情が消え去っている。

 故に、彼女は――夜伽ノ美雪はここまで化け物になれる。

 

 その理由や原因などは後々に語るとして、今の彼女には過去への後悔も未来への恐怖も、何もない。

 しつこいようだが、それはつまり彼女に感情がないからだ。

 

 憤怒や欲望の感情が汚く渦巻く男達を何人も殴り、蹴飛ばし、余りある暴虐を振るっていく。

 感情はおろか思考も何も存在しない彼女の無は『何らかの力』によって、彼女をある意味では活性化させている。

 

 それは、感情が無であることが第一条件。

 人間が抱く無駄な恐怖や不安をいっさい取り除き、しかし楽しみや快楽も無自覚ながら脱ぎ去っている人間の末路。

 

 

 

「おいおいそンなノロマな動きで良いのかァ!? 一〇〇%を越えた本気でかかッてこなきゃマジで殺しちまうぞォ!!」

 

 

 

 笑顔。

 それは狂笑。

 しかし感情はない。

 

 ありがとうの感謝も。

 許さないの憤怒も。

 助けての恐怖も。

 どうしようの不安も。

 傍にいて欲しいの悲哀も。

 気持ちいいの快楽も。

 もう無理なんだという絶望も。

 必ずやり遂げるという勇気も。

 手を伸ばせばいつかという希望も。

 

 ましてや、死にたくないという泣き言も。

 生きていたいという執着も、何もない。

 

 

 つまりだな、『私』は――。

 

 

「良いねェ果てしない血みどろの世界!! 最高だぜ狂瀾怒涛のステージッ!!」

 

 この夜伽ノ美雪を見ていると――。

 

「考えたくもねェ!! 俺はもう自由だッ! 竜三も柊も親父も英玲奈も関係ねェ!!」

 

 正しいかどうかはさておいて――。

 

「穂乃果もッ! 海未もことりも! 花陽も凛も真姫も! 絵里も希もにこもドウダッテイイッ!!」

 

 この世界、人間にとって――。

 

 

 

「愛してるぜ世界ッ!! 俺に最高の舞台を用意してくれる神様よォ!! 人類なンかじゃ指先はおろか視界の先にすら届かない天の高みで見守ッててくれ!! 俺が、夜伽ノ美雪が寵愛するこの世界で、一心不乱に前へと突き進む勇気ある姿をよォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

 

 

 

 感情とは、『敵』ではないか、と。

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「えぇ……やはり、やはりあなたは最高です美雪!! 下っ端など相手にしていないで、仲間だからとか遠慮なんてしないで! 私も自分の『感情』に素直になって真っ先にあなたに挑戦すべきでしたっ!!」

 

 

 しかし、その言葉と同時――。

 

 

「……海未?」

 

 

 

 感情が、「ただいま」と声をかけた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 熟睡の最中に目覚まし時計の騒音で意識を覚醒させられる感覚とは違う。

 座席で居眠りをしていて駅に到着した電車の停止とアナウンスにハッとして目を覚ます感覚ともまた違う。

 

 本当の漆黒に包まれながら、ヒビを広げて外殻を割り、卵からかえった雛の、光が広がる世界へ歓迎される瞬間を味わったような気分だ。

 

 その通路には悲壮な光景が展開されていた。

 なぜか俺が対峙していたはずの來栖麗羅の姿はなく、一〇人を越える男達が身体の関節をありえない方向に曲げながら吐血して床に倒れ、足下や壁には飛び散ったような、または果物を無理矢理に潰して果汁が弾けたような血痕がおびただしい量で描かれている。

 

 まるで、肉食動物が森に迷い込んだ人間達を貪ったかのような。

 そんな残骸が広がる世界に、俺はなぜか衣服や両の拳を血塗れにさせながら突っ立っていた。

 

 

 ……俺が暴れたのか?

 いや、だが記憶がなぜか曖昧で――。

 

 

 前髪や髪にも濡れたような感覚があるが……この異臭はもしかしたら、返り血によるものなのか。

 真っ赤な世界が広がる景色の中に、見知った顔が決して清楚や妖艶とは言えない凶悪な笑顔で佇んでいるのも理由が分からなかった。

 

 ただ――。

 

 

「取り敢えず、海未…………刀を、捨てろ」

「あら、急に大人しくなってしまってどうしたのですか美雪? まるで先程とは別人のようです」

 

 これは問題だ。

 現状ではそう短く判断した。

 

 先程までの俺がどのような行動を取っていたか、足下から目の前に展開される景色を見ると想像もしたくない訳だが――。

 血に塗れた残酷な世界に園田海未が存在する――それだけで大きな問題なのに、なぜ彼女は右手に銀の刃を携えている?

 

「……どうしてここにいる」

「あなたこそ、なぜこのような戦場に身を投じていたのですか?」

「質問に答えろ海未」

「あなたこそ私の質問に答えていません。互いの中に数え切れない疑問は存在するのです」

 

 読めない。

 なぜ、このような状況が生まれたのか。

 

「……美雪、忘れている訳ではないですよね?」

 

 やがて海未が先に口を開いた。

 まるでRPGゲームに登場するような衣装を纏い、本物の輝きが映える銀の日本刀を右手で持ち上げては刀身を肩に担ぎ、薄く笑みを浮かべて――。

 

 

「私は、あなたの監視役ですよ?」

 

 

 言葉に凄味があった。

 上司が部下にきつく言い聞かせるレベルのものではない――明らかに、自分の方が上位であり、優勢なんだと誇張するような重みすらあった。

 

 思わず、俺は一歩後退る。

 海未は溜息を吐いた。

 

 

 

「駄目ですね……今回は、もう駄目です」

 

 

 

 ……?

 何が――、と。

 

 問おうとした途端、海未の身体は動く。

 素早く、野生のスタートは來栖麗羅の空間移動レベルには劣るも、矢澤灯愛以上の軽やかな俊敏さと恐怖を駆られる迫力があって――。

 

「あ……?」

 

 首筋に与えられた一瞬の痛みと同時、目の前に極彩色を眺めながら俺は意識を手放した。

 

 

 

 







 ほんと、中途半端なとこで終わっていたのですね、前回は……。

 さてさて、作者の務めを最後まで果たすべく西海も頑張りますので、読者の皆様方にも、これからも再び僕の作品を見守ってくれたらなと思います。


 それでは、次回にお会いしましょう!(^^





 PS,一人暮らしというものは大変ですし、何より寂しいですね。
   (たまにはかまってくれても)ええんやで。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(必須:5文字~500文字)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。