笑顔を咲かせた少女は紛れもなく…   作:西部荒野に彷徨う海賊

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 友達「お前の小説まだ読んでるけど、あんま笑えるとこの要素がないよな」
  僕「笑える場面が必要なのか……ギャグとか?」
 友達「ん~、かもな。面白くなると思うし」
  僕「へぇ、まぁ考えてみるわ。ところでお前勉強の方進んでる?」
 友達「なわけ」




22話 作詞作曲者

「――つまり、作曲はまず、曲の土台となるコード進行を組み立てる事が必要って訳。後は適当な仮のフレーズを思い浮かべて、サウンドに合ったメロディーを産み出すのよ。個人差はあるけど、あたしは作曲だけに打ち込めば一週間に一曲は完成させる事ができるわ」

 

 作曲担当の西木野真姫。

 

「――まとめますと、作詞というものは、楽曲に命を吹き込むようなものなのです。それは、芽生えた蕾に春の息吹を吹きかけて花を咲かせるような、とても重要かつ優しさ、その中に含まれるロマンや神秘的な存在も必要となります。曲の世界観を見極める事が大切なのです」

 

 作詞担当の園田海未。

 

「へェ」

 

 そしてマネージャー担当の、俺。

 

 俺達三人は部室に集まり、端の横向きの机に並んで一列に座っている。

 

 さっきまで俺は、二人に作詞作曲の指導をよろしくされていた所だ。

 

 しかし――

 

「やッぱ難しいわァ、音楽」

 

 俺が後頭部に両手を組みながら背もたれに寄り掛かり、仰け反り返る。

 

 音楽……というか歌は、よく聴く方だと自分では思っていた。

 好きなバンドグループやお気に入りのソロの歌手だって自分の中に存在している。

 友達の竜三からお薦めされる歌手グループのCDだってよく聴くし、耳に残るようだったらインターネットでその歌手やグループの事について個人的に調べてみたりもしていた。

 

 聴くのは好きだ。

 

 だが自分で制作するとなると、話は一八〇度回転する。

 

「ま、まぁ……最初のうちは、頭の中で思い浮かんだメロディーやフレーズを組み合わせて、感覚的に脳内で再生する所から始めれば、何とかいけるのではないかと……」

「そうね。それに美雪にして欲しい事はあくまであたし達のサポート役な訳だし、ちょっと行き詰まった場面でアドバイスをくれるだけで良いの。何も一から作詞作曲を全てやってくれ、なんて頼んでいる訳じゃないんだし」

 

 海未と真姫が慰めるように言う。海未の方はどこかぎこちない苦笑混じりだったが。

 

「……こないだのよ」

 

 俺が口を開くと、二人は手に持つシャーペンを、いろいろと書き記されたノートの上に置いて、俺に注目する。

 

「朝練の時、お前らの歌聴いたンだが……」

「あぁ、あたしが貸した音楽プレイヤーで?」

「あァ」

 

 先週の土曜日、朝練時に真姫から渡された音楽プレイヤーに入力されていた四曲の歌。

 うち一曲は真姫のピアノソロだったが、μ's全員で歌っていた他の三曲の事を、俺は思い出していた。

 

「お前ら、歌唱力とか抜群と言える程に良かッた訳だが……繰り返し聴いてると、歌詞も深くこだわられていて、海未の言う曲の世界観が詳しく伝わッてきた。特別気に入ッたのが『START:DASH!!』なンだが……あれの二番後の落ち着いたかつ単純な曲調は、結構好きだ」

 

「そ、そう……ですか」

「ふ、ふぅん……」

 

 ……少し褒めすぎたか?

 海未は若干顔を染めて俯き、真姫は誤魔化すように脚を組んで赤い髪の毛をクルクルと指で回している。

 

 だが、それは俺の素直な感想だ。

 

 故に、関心からの疑問が湧く。

 

「お前ら高校生だろ? まだ俺を含めていなかッたμ's九人の結成から日は浅いはずなのに、なぜあそこまでのクオリティを仕上げる事ができた?」

 

 訊いた所によると、あれら三曲の歌の作詞作曲は全て、海未と真姫の二人が受け持ったらしい。

 

 たかが高校生二人に、それ程の力があるというのか。

 

 片や家元道場の跡継ぎとしての噂があり、日頃から文武両道を怠らない高校二年生。

 片や大病院の一人娘としての期待と羨望の眼差しを受け、親の背中を追って勉強を欠かす事ができないだろうとされる高校一年生。

 

 そもそも俺には、二人がスクールアイドルなんてものに関与している事自体が不自然なように思える。

 

 そんな暇があるのかと。

 

 作詞作曲は簡単なものじゃない。

 今までの二人の話を聞いていれば、それこそこいつらの苦労もより分かる。

 

「お前ら、決して暇な訳じゃないンだろうによ。だがそれにしちゃ曲が出来上がるまでの期間が短すぎる気がするンだが」

 

 後方に仰け反りながらの体勢で、俺は二人の顔を視界に入れて言う。

 

「……あたしは」

 

 ふと、真姫が言う。

 

「あたしは小さい頃……それこそ小学一年くらいの時から、ピアノを弾いていたの。元々音楽が好きで、ママに買ってもらったピアノを遊び半分で弾いてた。でも音楽にかける想いが少し、熱くなっちゃったっていうか……いつの間にかコンクールで賞を取れるぐらいまでに上達していたのよ」

 

 でも、と彼女は顎を手の甲に乗せ、机に肘を立てる。

 

「このままじゃ、あたしが病院を継がずに音楽の道へ行くって言い出す事を恐れた両親に、ピアノを禁止されてね。もう自分の指で音楽を奏でる事はないんだと思ったけれど――――あの頃の感覚が、まだ身体に残っているのかもしれないわ」

 

「真姫の家が持つ病院は、それこそ全国的に有名なものですからね」

 

 海未の言葉に、真姫は小さく噴き出すように笑った。

 

「まぁそんな訳で、今までは一人で放課後に音楽室でピアノと向き合っていた訳だけど……またこうして堂々と曲を作っていられる。その事に、あたしは喜んでるのよ」 

 

 あたしの指がね、と。

 真姫は左手の長い、頼りないような細い五本の指を、俺の目の前で開かせた。

 

 ……今の言葉からの憶測なのだが、彼女は自分がスクールアイドルとして活動している事を、両親に隠しているのかもしれない。

 ピアノを弾く事さえ禁じる親だ。スクールアイドルなんてものにうつつを抜かしている娘の姿を見れば、即刻止めに入るに違いない。

 

「大変ですねェ、医者の娘は……」

「? 美雪、何か言った?」

「何でもねェ」

「……そう? まぁいいわ、次は海未ね」

「はい?」

 

 真姫が振ると、海未はキョトンと首を傾げる。

 

「あたしが曲を作った後、それを聴いた海未って驚く速さで歌詞を完成させてくるのよ。それも海未のお堅い性格には似合わない言葉が綴られた用紙が何十枚も。最初はさすがに度肝を抜かれたわ」

「ほォ……そりゃ興味深いな」

 

 確かに、言われてみればそうだ。

 

 園田海未という人間は、実に誠実で清らかであり、武士道精神を貫く性格だ。

 

 正直な話、彼女にはアイドルは似合わない。

 

 端麗な容姿やスマートな体型は、見る者を虜とする魅力があるだろう。道場の稽古などで身体は丈夫に鍛えられているのか、ダンスでもキレの良い踊りを見せていた。

 

 だが彼女は全国を統べる弓道部のエース。

 日常から見ても、彼女の堅実な性格はアイドル向きではない。

 来年辺りでは学園の生徒会長として、書類の山に立ち向かっていそうな雰囲気がある人物だ。

 

 そんな海未は、

 

「そ、その……これは……と、とっても恥ずかしいものなのですが……」

 

 俺の前で顔を赤らめ、もじもじとした様子で、スカートから伸びる柔媚な太股を擦り合わせている。

 ……トイレか?

 

 そう思っていると、海未はやがて告白する。

 

「ち、小さい頃に……ぽ、ポエム、を……よく、描いていたのです……」

 

 そしてようやく、俺は思い出す。

 

 園田海未は、家元道場の跡継ぎ、立派な武士である前に。

 幼馴染みを取られたとこの俺に嫉妬心を抱く程の、純情で可愛らしい女の子なのだと。

 

「私は、文章を書くのが得意でして……自分で可愛らしくアレンジして表現してみようと思いって……小さい頃から今まで、ポエムを続けていたんです。私が作詞を担当する事になったのも、その事を知っている穂乃果とことりが推薦した結果ですし……」

 

 恥じらうように顔を背けながら言葉を紡ぐ海未が、本当に可愛らしい女の子に見える。

 

「へぇ、意外ね。でも凄いじゃない」

 

 意表を突かれたような表情を一瞬浮かべて真姫が言うが、決して馬鹿にしている訳ではない。

 俺にも真姫にも、海未の趣味を取り上げて笑いのネタにする権利がなければ、園田海未という凛々しい女性のイメージが崩壊する事もない。

 実質、その海未のポエムの経験が、今のμ'sを支えている結果に繋がる訳で。

 

「こ、こんな事、穂乃果とことり以外には秘密にしていたのに……真姫は真剣に話してくれたので……」

 

 ……なるほど。

 

 μ'sの曲の完成速度や仕上がり内容が高い事は、これで承知できた。

 考えてみれば、μ'sは何も初心者の集まりという訳でもないようだ。

 

 この二人の他にも、衣装作りが得意なことりや、ダンスが上手である絵里と凛もいる。

 

「もしかしたら、結構アドバンテージかもな」

 

 俺は呟いた後、そこで大事な用件を思い出した。

 

「……なァ、お前ら」

 

 俺は切り替えるよう、声のトーンをやや落として言った。

 

「少し神妙な話になッちまうンだが……海未と真姫は、このμ'sで、どこまで狙ッてンの?」

 

 この唐突な質問に、海未と真姫は目を開いたまんま、瞬きもせずに俺の顔を凝視しながら黙り込んだ。

 

 さて、これが一番重要な事だと思う訳だ。

 

 本気でラブライブ出場を目指し、全国の天下を我が物としようと入れ込んでいるのか。

 学園を廃校から守る為に、周囲からの注目を浴びたいが為に続けるのか。

 ただ単に、興味本位か。

 

 だが作詞作曲を担当する二人からすれば、ただの興味本位という訳はないだろう。

 

 やがて、彼女らは答えを出す。

 

「ラブライブ優勝――これしかありえないでしょう?」

「ま、それが当然よね」

 

 敢えて、理由は訊かない。

 

 彼女達がなぜそう変わったのかは予想も付かないが、今はその即答だけで十分だ。

 

「……了解」

 

 

 




 この作品、なんだかんだ二〇話越えてる訳ですが、結構ダラダラなペースで物語が進んでいますよね……。

 ですがそんな作品を今回も読んでいただきありがとうございます!
 次話もカロリーメ○トを片手に頑張りますので、応援よろしくお願いします!

 ※次話、懲りずにまたもや新キャラご登場させるか検討中――どうしよ、出したいな
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